[コラム]2022.11.30

新幹線でビールと車窓を存分に楽しむ、「こだま号」の旅。

東海道新幹線

東京から新幹線で新大阪へ向かう時に、当たり前のように「のぞみ号」を選んでいないだろうか。どうしても急いでいるのなら、それでもよかろう。しかし、あなたがビール好きで、当日の時間に余裕があるのならば、ぜひ「こだま号」に乗ってみて頂きたい。

11月27日の日曜日、紅葉真っ盛りの観光シーズンの週末。外国人観光客の姿も戻ってきて混雑する昼前の東京駅から「こだま号」で大阪へと旅してみた。

 11:30 発車前

大丸東京店

東京駅直結の大丸東京店地下1階の和洋酒売り場

新幹線で飲むビールは美味い。この事に異論を挟む者はいないだろう。ならば、発車前から余裕を持って楽しもうではないか。東京駅に直結の「大丸東京店」のデパ地下は、旅のお供のパラダイスだ。ビールの品揃えの豊富さに心が躍り、通路を挟んだ隣には広大な弁当・総菜の売り場もある。これから始まる旅のお供を選ぶ時間から、すでに気分は高揚している。

東京駅

新大阪まで3時間54分の旅の始まり

改札を通ってホームに上がれば、すでにお目当ての「こだま723号」はドアを開けて乗客を迎え入れていた。この列車は東京駅を11時57分に発車し、3時間54分かけて新大阪まで走る。のぞみ号ならば2時間半のところ、あえて時間をかけて移動する贅沢。そこにビールがあれば、なおのこと幸せな時間になること請け合いである。

 11:57 東京駅発車

東海道新幹線

東京駅発車時の2号車自由席

ホームの反対側に止まっていたのぞみ号は混雑していたが、我がこだま723号は1両あたり数人という状況。自由席ならば好みの席に座ることができる。一人旅なら2人掛けの窓側に座って富士山を眺めるのが定番だが、何しろガラガラなので、海側の3人掛けを一人で占拠することだって可能だ。

プラカップ

プラカップと栓抜きは事前に用意しておきたい

実は事前に準備すべき重要なアイテムが2つある。プラカップ栓抜きである。プラカップは500mlの大きな物が良い。ビール1本を余裕を持って一度に注ぐことができる。栓抜きがあれば、ボトルのビールを買うこともできる。この2点だけは、自宅を出る際に忘れてはならない。

 12:15 新横浜駅発車

Tokyo Aleworks

Tokyo Aleworksのドライスタウト「Blasda Dhu」

品川、新横浜と乗客が増えていくのは、のぞみ号もこだま号も一緒である。新横浜を発車すれば一段落。乗客は若干増えたが、窓側席も埋まらない程度。快適そのものである。ここで最初のビールを注ぐ。先ほどの大丸東京店で入手した「Tokyo Aleworks」のドライスタウト「Blasda Dhu」である。時間を置いて若干温度が上がったくらいが飲み頃のビアスタイルを選ぶのが、新幹線でビールを楽しむ通である。コクのある味わいと共にドライスタウトならではキレもあり、ゆっくり楽しむことができた。

 12:40頃 熱海駅付近

東海道新幹線

小田原から熱海にかけて左側の車窓は相模湾を一望

車窓の最初のハイライトは、小田原駅から熱海駅にかけての左側に広がる相模湾である。3人掛けの窓側に座っていれば自然に目に入るが、2人掛けに座っていると見落としがちである。しかし、今日は席はガラ空きだ。富士山を目当てに山側に座っていたが、小田原駅を発車したらビールを片手にちょっとだけ反対側に席を移動すれば良い。

 12:50 三島駅

三島駅

三島駅ホーム売店は8号車付近

各駅に停まるこだま号は、ほとんどの駅で5分程度停車する。なぜなら、後続ののぞみ号を先に通すためである。この時間を利用して、いったんホームに出て売店で買い物をすることができるのだ。コロナ禍で多くの駅のホームの売店は閉店してしまったが、三島駅のホームの売店は営業中である。8号車付近にあるので、到着前に車内を移動しておくと良い。ここで入手すべきは「静岡麦酒」。サッポロビールの静岡県限定発売の商品である。

静岡麦酒

静岡県限定発売の「静岡麦酒」は三島駅ホーム売店で入手

駅のホームの売店のビールは回転が速い故に、よく冷えていない場合も往々にしてあるのだが、三島駅で購入したこのビールはよく冷えていた。三島駅を発車後、プラカップに注いで窓際に置くと、外光を浴びてキラキラと美しく輝いていた。なめらかな口当たり、旨味も程よく、爽やかで美味いビールである。

 13:00頃 新富士駅付近

中華弁当

中華オールスター弁当、ビールのアテにピッタリ

実は東京で弁当も購入していたのだが、ここまでお預けにしていたのは、富士山を眺めながら、この静岡麦酒と共に楽しめるタイミングを狙っていたからである。しかし今日の富士山は雲隠れ、こればかりはお天道様の仕業故に止むを得ない。デパ地下で購入した中華オールスター弁当はビールにピッタリの料理が満載、宴の本番スタートと行こうではないか。

 13:25頃 静岡駅付近

サッポロビール

静岡駅から数分後の左側車窓、サッポロビール静岡工場

静岡駅を発車して間もなく左側の車窓には、サッポロビール静岡工場を望むことができる。こここそが、静岡麦酒の生産地。列車に乗りながら、まさに飲んでいるビールの工場を見ることができるのは、非常に貴重かつ贅沢な体験ではなかろうか。これも、こだま号ならではの楽しみである。

 14:37 名古屋駅

名古屋駅

名古屋駅で6分停車、後続の「のぞみ225号」に抜かれる


東京駅を発車して2時間40分、名古屋駅に到着。のぞみ号ならば、すでに新大阪駅に到着している時間である。ここでも6分停車、ホームを散歩していると、後続ののぞみ号が到着。バタバタと大量の乗客が降り、ホームで列を作っていた別の乗客が乗り込み、あっという間に走り去っていった。どちらも同じ車両で同じ行き先の新幹線だが、のんびり走るこだま号から見ると、なんとも慌ただしい。

キリンビール

名古屋駅から数分後の右側車窓、キリンビール名古屋工場

名古屋駅を発車すると、程なく右側の車窓に、キリンビール名古屋工場が見える。これもビール好きなら押さえておきたいハイライトだ。無数に並ぶタンクがビールの色に塗られていて、一瞬の眼福である。

 14:53 岐阜羽島駅

列車は岐阜羽島駅に到着、またもや5分停車。ビールと料理に満足して気分良くホームに出て体を伸ばしていると、轟音と共に通過列車が駆け抜けて行った。フルスピードで走る新幹線を間近で眺めることができるのも、こだま号の乗客の特権である。

 15:51 新大阪駅到着

新大阪駅

新大阪駅に着いたのは、すでに日が傾いた午後4時前

各駅に丹念に停まってきた「こだま723号」は、定刻の15時51分に新大阪駅に到着した。ホームの先には、すでに晩秋の夕日が輝いていた。

東京から大阪へ4時間弱の「こだま号」。空いている快適な車両で、のんびりローカル線のような雰囲気も味わえる。新幹線でビールを楽しむための、絶好の穴場ではなかろうか。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはスタウト。趣味は乗り鉄。

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