[コラム]2023.5.7

幸福感がいっぱい!特急「踊り子号」で伊豆への旅

踊り子号

「踊り子号」は、東京駅から伊豆方面へ向かう特急列車である。乗客のほとんどが伊豆方面への観光客であり、その車窓は非常に変化に富んでいて飽きることが無い。ゴールデンウィークの合間の2023年5月2日、東京駅から伊東駅まで2時間弱の列車旅をビールと共に満喫してきた。

 10:30 東京駅発車

踊り子号

東京駅を10時30分に出発する「踊り子9号」。発車前のホーム上は、多くの人たちが片手にスーツケースを引きながら、もう片手にはレジ袋に弁当や飲み物を提げている。その表情はすでに旅行気分で笑顔が見られ、ホーム上は和やかな雰囲気に包まれている。もちろん私も準備に抜かりは無く、エキナカでビールと弁当を入念に吟味してある。

踊り子号

この列車に乗る時の重要なポイントがある。それは、進行方向左側、席番で言うと「A席」を確保することだ。踊り子号は小田原駅付近から先の区間は海岸線を走るのだが、オーシャンビューの車窓は進行方向左側に広がる。今日の席は「1号車10番A席」。車窓とビールを最高に楽しむための準備は、切符を買う時から始まっているのである。

踊り子号

列車は定刻に東京駅を発車、さっそく1本目のビールを開ける。石川酒造の、その名も「東京駅」。エキナカの酒屋で入手したのだが、イングリッシュペールエール風のクラシカルな美味いビールである。赤煉瓦の東京駅舎をイメージさせるような落ち着いた味わいが、旅立ちの興奮を落ち着けてくれるようだ。

 10:45 多摩川

踊り子号

東京都から神奈川県へ、列車は多摩川を渡る。車窓には京急線の鉄橋。日本最初の鉄道が開通した東京(新橋)から横浜の間は現在は多くの路線が並走しており、車窓から様々な列車が多く見られる。乗り鉄の私には車窓から目が離せない楽しい区間である。

 10:52 キリンビール横浜工場

踊り子号

川崎と横浜の間、鶴見付近を走行中の車窓の左後方にキリンビール横浜工場が見える。高速道路の高架橋とマンションらしき建物に挟まれた一瞬であるが、ビール好きで乗り鉄の私としては、この場所ではこれをチェックしないと気が済まないのである。

踊り子号

列車は横浜駅でさらに多くの乗客を迎え、車内は賑やかになり観光列車の雰囲気も盛り上がってくる。2本目のビールはスプリングバレー豊潤<496>、先ほどのキリンビール横浜工場に縁の深いビールである。列車で飲むビールは沿線にあるスポットとのペアリングを考えると、一層美味しく楽しめる。

 11:15 シウマイ弁当

踊り子号

そして東京駅であらかじめ仕入れておいた弁当は、崎陽軒のシウマイ弁当。うまく横浜つながりでまとまったと悦に入る。5個のシウマイを、まず何もつけずに1個、からしだけで1個、しょうゆだけで1個、そしてからしとしょうゆで残り2個。味変を楽しむのが、この弁当を食べる時の私の流儀だ。他のおかずも挟みつつ、ビールとのペアリングを楽しむ。ある映画で「口が埼玉になる」という名言があったが、今は「口が横浜になる」だ。至福のひと時である。

踊り子号

ふと車窓に目をやると、ちょうど大船の車庫の横を通過中、偶然にも異なる形式の4種の車両が並んでいた。左から横須賀線の新しい車両、古い車両、成田エクスプレス、横浜線。これらは全て横浜駅を発着する車両である。口だけではなく、目も横浜になってしまったようだ。

踊り子号

茅ヶ崎駅を通過すると列車は相模川を渡る。奥に見える国道の橋の向こうはすぐに海で、流れはほとんど無く穏やかな水面である。

 11:37 相模湾

踊り子号

小田原駅を発車すると、待望のオーシャンビューである。やや高い場所から見下ろすように広がる相模湾は、東海道線の車窓の白眉である。新幹線からも眺めることはできるが、こちらの方が海に近くスピードも緩いので、存分に海景色を楽しむことができる。あちこちの座席から美しい景色に歓声が上がり、車内は和やかな一体感に包まれる。

踊り子号

列車は熱海から伊東線に入り、伊豆半島の海岸線をたどる。伊豆多賀駅付近では海水浴場も見えるが、この時期では人影はほとんど見られない。夏になれば多くの海水浴客で賑わうのであろう。

踊り子号

今日の目的地である伊東駅が近づくと、並走する国道のヤシの並木が南国ムードを盛り上げる。列車は伊東駅から先は伊豆急行線に直通するが、周辺に観光地の多い伊東駅で降りる乗客も多い。車内の三分の一くらいの人たちが立ち上がって荷物の整理を始めている。

 12:13 伊東駅到着

踊り子号

12時13分、定刻に伊東駅に到着。駅前は大きなソテツの木がそびえ、駅舎のオレンジ色の瓦屋根と青い空が美しい。5月初旬にしては暑いくらいの陽気、まるで沖縄のようだ。

東京駅から伊東駅まで2時間弱の列車旅、運賃と特急料金をあわせて3890円。お手軽に楽しめる踊り子号の旅には、都心から海へと変化に富んだ景色と和やかな車内の雰囲気で、幸福感が満ち溢れているのである。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはスタウト。趣味は乗り鉄。

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