[コラム]2025.4.24

【ビールを通して感じる韓国㉞】セルフオーダーシステムでのクラフトビールの注文

セルフオーダーシステムでの注文は好きですか? クラフトビールを頼む場合はどうでしょうか?

店内注文をセルフオーダーシステムを使って取る飲食店が、日本ではだんだんと増えています。
当初は​従業員が​客と​接する​機会を​​減らす​ことによる感染症対策の一環としての導入が主な目的でしたが、その後の人手不足に、人件費の高騰などの影響によりコストの削減の必要性が高まったことなどが重なり、さらに導入が進んでいます。店側のメリットとしては他にも、注文の聞き間違いなどミスの減少につながることもあります。
客側にも自分のペースで注文できるというメリットがある反面、 初めての利用や機械が苦手な客の場合は誤った注文をしてしまう可能性もあります。

日本の場合、セルフオーダーシステムの注文方法には、大きく以下の2種類があります。
(1) テーブルに​設置されている​タブレットから​注文する
(2) QRコードなどに​アクセスし、​客が​自身の​スマートフォンから​注文する​

特に年配者にはあまり好意的には受け止められないことが多いセルフオーダーシステム、さらに(2) の場合は通信利用料の利用者側負担もあり、日本では少なくとも客側からは望ましいかどうか微妙な評価があるように感じます。
では、韓国の場合のセルフオーダーシステムはどうなのか。クラフトビールのお店を中心にご紹介したいと思います。

韓国はキャッシュレス大国

韓国では、セルフオーダーして決済まで行うタッチパネル式の機械がファーストフードやカフェのチェーン店だけでなく、フードコートや食堂などにどんどん導入されています。
韓国政府がクレジットカード利用推進策を実施してきた結果、韓国でのキャッシュレス普及率は95%超とキャッシュレス化が非常に進んでいます。そのためセルフオーダーシステムの導入は注文を機械が受けることによる人件費の削減だけでなく、キャッシュレス決済の普及という目的を兼ねていて、決済まで機械で行う場合は現金対応がないものがほとんどです。
国際ブランドのクレジットカードであれば多くの店舗で利用できますが、支払まで機械で行う場合は韓国で発行されたカードしか使えない場合も多く、旅行者にとってはかなり不便とも言えます。

これまでに見たオーダーシステム

では、クラフトビールを扱うお店に限ってみるとセルフオーダーシステムの導入はどうなのでしょうか。やはり、導入率は日本より高いと感じます。そして新たに導入するお店も増えています。

席に備え付けのタブレット

一番多かったのは、席にタブレットが備え付けてある場合です。

(2024年2月・Deado Brewing Company@大邱)

韓国語表記しかできないものもありますが、英語表記に切り替え可能なものもあります。英語切り替えができた場合でもすべてが翻訳されているわけではなかったりもしますが、私にとってはビールの説明が英語の方がずっと分かりやすいのでありがたいです。

(2024年4月・Hand and Malt Brewlab@ソウル)

意外なことに、タブレット注文を導入しているところでもほとんどは注文のみ。決済まで兼ねていて、終わらないと注文が通らないタイプのものは一度しか使ったことがありません。ちなみに、このときは私が持っているクレジットカードでも決済可能でした。

(2024年2月・Whasoo Brewery@慶州)

タッチパネル式の機械

ファーストフードやフードコートにあるようなタッチ式パネルが設置されているところも、今まで行ったクラフトビールのお店で一か所だけありました。
ただし、こちらのお店の場合は、渡されたバンドを使ってビールはセルフで注ぐため、タッチ式パネルで注文するのは料理のみです。こちらの機械を使うにも、バンドのタッチが必要でした。


(2024年7月・Trevier@蔚山)

その他

韓国の飲食店に入ると、厨房やレジに近い場所に店員さんがオーダーを入れるのに使う、座席表が表示されているパネルがあるのをよく見かけます。これを客側で操作して注文するセルフオーダーシステムを取っていたところも一か所だけありました。韓国語での説明はあったものの、私は最初そのシステムに気が付かず、店員さんがたまたま来たタイミングで口頭で注文してしまっていました。
実際には写真左側のパネルから、自分のテーブルの位置を選択しセルフでオーダーを入れることができます。


(2024年7月・Turmbrau@蔚山)

今年になって見かけたオーダーシステム

これまでは昨年までに見てきたものでしたが、今年になってから新しいタイプのものも見かけました。どちらも今までに何度か行ったことのあるブルワリーのタップルームで、前回までは普通に対面でオーダーを取っていたところです。

プレイグラウンドブルワリー

以前のプレイグラウンドブルワリーの紹介はこちら(【ビールを通じて感じる韓国㉓】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(9) プレイグラウンドブルワリー(PLAYGROUND BREWERY)の新しいタップルームでビール!@高陽市)(2024.5.30)から…

私が金浦空港に降り立つたびに、ソウル中心部に向かう前に立ち寄るプレイグラウンドブルワリーのタップルーム。今回行ったときには、テーブルの上にこんなものが置いてありました。

これの上に自分のスマホを置くと、開くメニューから注文することができますが…

自動的に日本語になってしまい、その翻訳が微妙でかえって英語よりもわかりずらいという現象が起きてしまいました。今までのようなメニューも置いてあったので、併用して何とかしましたが、今までで一番使いにくかったです。
それでも、このお店はビールが美味しいだけでなく、親切であれこれサービスしてくれることもあり、セルフオーダーシステムが使いずらいぐらいでは私の足は遠のくことはありません。今回も、3杯目のビールを頼んだときに、新製品のマロンビールの試飲を持ってきてくれました。しかもつまみとして合うから…と、マロンペーストとクラッカーを付けて。

アメイジングブルーイング

以前のアメイジングブルーイングの紹介はこちら(【ビールを通して感じる韓国⑥】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(2) アメイジングブルーイング(AMAZIING BREWING)@聖水洞)(2023.5.16)から…

約2年ぶりの訪問でしたが、「日本人だったよね」と私を覚えていてくれた方が、タブレットをセットして置いてくれました。その言語は日本語。タブレットで日本語表記にできるものを見たのは初めてでした。
ビールの名前の画面はちょっと分かりにくく、最初はせめて英語にしたいなあと思いましたが、言語切り替え方法が分からずそのまま使いました。


ビールの名前とは違って素晴らしかったのは、それぞれのビールの説明。ほぼ完璧な日本語になっていました。

セルフオーダーシステムの話からは外れますが、アメイジングブルーイングでは個々のビール注文のほかに、お店の一部でセルフタッピングで飲むこともできるようになっていました。


今回は個々にビールを注文したので、次回行くときには利用してみたいと思います…が、アメイジングブルーイングのある聖水洞は、古い建物がなくなるかリノベーションするかして、新しい街へとどんどん変わっている地域。今回、隣が工事中だったので、遠くから見てドキドキしながらの訪問でした。
次も、またここで美味しいビールが飲めることをまず願います。

韓国のクラフトビールのお店では導入が進んでいるのを感じるセルフオーダーシステムですが、以前からあるような食堂などに導入されたのはまだ見たことがありません。店の規模が大きいチェーン店、メニュー数が多いところ、客層に若者が多いところ、賑やかな街にあるところでは導入率はかなり高いですが、それ以外のところは以前の形を保ったままです。
今後導入がどう進んでいくのか、これ以上進まないのか…韓国のビールの動向と合わせて、見守っていきたいと思います。

*日付の記載がない写真は、全て2025年2月に撮影しています

セルフオーダー韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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