[ビアバー,ブルワー]2015.5.20

ビア女の酒場放浪記(1)ブルワリーガーデン タップルーム

5月のよく晴れた週末、静岡県三島駅から伊豆箱根鉄道駿豆線(通称、いずっぱこ)に乗り換え、終点の修善寺駅に行ってきました。
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旅の目的は、文学の香り高い修善寺ではなく、日本百名湯のひとつである修善寺温泉でもなく、ただただ「ビールを飲むこと」。
(ビール好きの人にとっては当たり前かもしれませんが、会社の同僚に言うと引かれるんですよ、大概は)

歴史と豊かな自然に囲まれたこの場所に、今回の目的地「ブルワリーガーデン タップルーム」があります。

タップルームはベアード醸造所が直営する酒場で、国内に5ヶ所の店があります。
なかでも修善寺のタップルームは「ベアード・ブルワリーガーデン 修善寺」と呼ばれる醸造所に付属しており、醸造所のすぐ上の部屋でできたばかりのビールが飲めるのです。

ベアードビールとは、
アメリカ人のベアード・ブライアンさんが2000年に沼津で醸造を開始したクラフトビールです。
日本ではまだ馴染みの薄かったエールビールばかりを造る醸造所を軌道にのせるというのは並大抵の苦労ではなかったでしょう。
しかし奥様のさゆりさんのサポートと、ブライアンさんの実直なビール造りは結実し、ベアードビールの名は日本のビールファンなら知らぬものはいないまでに成長しました。
そして2014年6月、ここ修善寺に醸造所の規模を大幅に拡大して移転したのです。

新醸造所へは、修善寺駅からさらにバスに乗り換え10分の「ラフォーレ前停留所」で下車。
周囲を畑や田んぼに囲まれた小道を進み川に向かって坂を下ると大きな鉄筋コンクリートの醸造所がみえてきます。

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狩野川のほとりに立ち、自然に囲まれた美しい場所でした。
敷地内では無農薬でホップや野菜、果物も栽培されています。

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醸造所の正面は木漏れ日が落ちるビアガーデンです。

出来立てのビールが味わえるタップルームは醸造所の3階です。
さっそくエレベーターで上へ。
ピカピカに磨かれた20基の注ぎ口が並ぶカウンター。
テーブル席や、風が吹き抜けるビアデッキがあります。

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大きな窓から1,2階の大部分を占める醸造所を見下ろせます。
土日祝日には日に3回工場見学ツアーが開催されていますから、参加してみましょう。
ベアードのおいしさの秘密をたっぷり聞けました。

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巨大な10基の発酵タンク。
海外への輸出量増加を見越して、今後さらに増設する計画が上っています。

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麦汁を煮たてる醸造釜からは煙突がすらりと伸びています。
ホップは生ホップを100%使用。
釜に詰まらせることなく煮沸できるホップニックと呼ばれる機械を導入したことによりこれまで手間がかかったホールホップを効率よく使用できるようになりました。
ホールホップのみ使用しているブルワリーは今のところベアードだけ。
さらに熟成中のビールにもホップを投入し香りをより一層華やかなものにしています。

ベアードのビールはすべて無濾過、瓶内&樽内熟成。
グラスに注がれる時まで酵母は生きて進化しています。

酵母が最後まで元気である秘密、それは砂糖。
酵母に栄養を与えてアルコール度数を高めたり、ビールの色を出すために、それぞれに合ったものが使われます。
瓶や樽の中で二次発酵が進むためベアードのビールはどれもガスの添加を行わず自然発砲。
だから舌当たりが良いうえにお腹に溜まりにくく何杯でも飲めてしまいます。

それを確かめるためにタップルームに戻って、出来立てのビールを頂きましょう。

こちらタップルームは食べ物の持ち込みが自由!
仲間同士好きなツマミを持ち寄って気楽に飲めるのは嬉しいところ。
開放的な雰囲気はドイツのビアガーデンを思い出させます。
電車を乗り継いて静岡まで行くのですから、駅弁とのマリアージュなんていうのも一興です。

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緑が濃い季節にはテラスで風に当たりながら飲むものいいものです。
水が川底の石に当たってちゃぷちゃぷと音を立てる狩野川、木々の間を抜けてきた涼しい風、時折鼻腔をくすぐる麦汁の甘い香り。

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ビールは12種類の定番ビールに加え、数種類の季節限定ビール。
その味わいは自由、大胆、多彩、それでいて自然に対する謙虚さも感じる見事なバランス。
無自覚に生活している日本人よりもブライアンさんのほうが和の心を理解しているのではないか。
繊細な味の表現から、ふとそんな思いも胸をよぎりました。

ええぃ、百聞は一飲にしかず。あなたの琴線に触れたならまずは飲んでみてください。
ベアードの直営店のタップルームは沼津、原宿、中目黒、横浜にあります。

つい長居してしまいました。
私も都内で復習を誓い、醸造所を後にしました。

ブルワリーガーデン タップルーム
住所/ 静岡県伊豆市大平1052-1
営業時間/月曜~金曜12:00~19:00
土曜・日曜・祝日 11:00~20:00
アクセス/JR修善寺駅下車、バス停3番または4番より乗車し「ラフォーレ入口」で下車徒歩10分弱
Web/ http://bairdbeer.com/ja/

(2015年5月訪問)
☆内容は変更になっていることがあります。
ホームページ等でご確認の上、お出かけくださいね。

タップルームベアード修善寺

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

コウゴ アヤコ

ビアジャーナリスト

1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。

最近はキャンプとサウナにドハマり中。そこにもやはりビールは欠かせない。最高の「ビアキャンプ」&「ビアサウナ」を求めて、日本全国津々浦々旅をしている。

■執筆歴■
-海外生活情報誌ドイツニュースダイジェストで「旅ールのススメ」連載中
ビール小話 (ドイツニュースダイジェスト)2009~16年連載
-東海教育研究所かもめの本棚onlineにて「旅においしいビールあり」
-クラフトビールで乾杯!(日本トランスオーシャン航空機内誌Coralway2020年9.10月号特集)
-ビール王国(ワイン王国)
-ビールの図鑑・クラフトビールの図鑑(マイナビ)
-BRUTUS(マガジンハウス)
-an・an(マガジンハウス)
-CanCam(小学館)
-DIME(小学館)
-東京人(都市出版)
-るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
など
■出演歴■
-アサデス。7(KBC九州朝日放送)
-KURASEEDS(J-WAVE81.3FM)
-食べて!歌って!まるごとユーロ!ドイツ語(NHKラジオ第2)
-トークイントーク(フレンズFM)
-売れ筋RANKING~クラフトビール(KTSライブニュース)
など

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