[コラム,ブルワー]2018.3.17

全米でも珍しいオープン発酵をするブルワリー 【ブルワリーレポート UPRIGHT BREWING編】

ポートランドのブルワリーを取材する際、現地でビールツアーを行っている「オ州酒ブログ」のRed Gillen氏(以下、Red氏)に取材先に対していくつか要望をした。そのなかに「Red氏が推薦するブルワリーへ行きたい」を挙げた。今回、ご紹介する「UPRIGHT BREWING(以下、UPRIGHT)」がそれだ。実際に訪れてみるととても興味深いブルワリーだった。

ビール1つ1つに個性をもたせる

創業者であり、ヘッドブルワーであるAlex Ganum氏にラインナップについて尋ねると「美味しいことは当然で、他のブルワリーとは異なる個性をもたせるように心がけています。1つ1つにユニークな個性を出すことを大事にしています」と、その表情からは、いろいろなビールをつくることを楽しんでいる雰囲気が良く伝わってくる。

ビールについて語るAlex Ganum氏。伝統的スタイルに独自の考えを加えることで、オリジナリティ溢れるビールを生み出している。

インタビューの途中に「話だけでは、イメージがつかめないでしょう。実際に飲んでみてください」と立ち上がり、併設しているテイスティングルーム(実際には部屋で区切られていないので直結という表現の方が正しいかもしれない)から自慢のビールを注いでくれた。飲みながら話を進めると熱を帯びてきたのか醸造所からボトリングされたビールを提供してくれた。通訳してくれたRed氏も「ラッキーだね」と貴重な経験をさせてもらった。

ボトルビールのさくらんぼを使ったビール。

レシピはつくってみたいものから物語があってつくるものまで様々だ。しかし、「トレンドは追わない」という信念からは自分たちのつくるビールへの強い誇りが感じられる。こうした姿勢でいるからこそ「Pathways Saison」が、オレゴン州で最も感銘を受けたビールに与えられる「Beer of the Year」に今年選ばれたのだろう。

「好き」をアレンジして「オリジナル」へ

「UPRIGHT」のビールは、Alex氏が好きなベルギーやフランスで生まれたファームハウススタイルを基本としている。「2002年までベルモントステーションというボトルショップ(酒屋)で働いていました。そこで色々なビールを飲んで、『あ、このスタイルのビールは美味しい』と感激しました。大好きなものを取り入れることはとても大事ですね」。

「ファームハウスビールはベルギーやフランスのスタイルで、私たちはそれを基本にはしていますが、決して同じものを造っているわけではありません。アレンジをしてノースウエスト風にしています」。その1つは、原料を現地のもの(オレゴン州)を使用することだ。桃、アプリコット、さくらんぼ、そしてぶどうといった様々な果物を使っている。また、オーク樽をはじめとしたバレルで熟成させることでオリジナリティを生み出している。ブルワリーのあちらこちらに樽があり、そのなかにはAlex氏のアイデアが形となったビールが積み重なっている。

ブルワリーには数多くの樽が保管されており、このなかにはすでにビールが熟成されている。他のブルワリーでも当たり前に樽を目にした(しかもどこもかなりの数)。

そのビールはドリンカブルなものからハイアルコールなものまで幅広く、そして何よりも多様なフレーバーは複雑な個性を打ち出し、奥深さを感じさせてくれとても面白い。

どのビールも様々な副原料が使われていて、いろいろなアロマやフレーバーを感じられるのが奥深しく、楽しい。

アメリカでも珍しいオープン発酵

ここを語るうえで欠かすことができないのは、オープン発酵である。これは発酵タンクの上部が解放された状態で発酵をさせる方法。本場のベルギーやフランスでも少なくなってしまった醸造法で、ポートランドではここでしか行われていない。

「オープン発酵は歴史ある造り方です。醸造を勉強するためにニューヨーク州にある『Brewery Ommegang(オメガング)』がオープン発酵でつくっていました。オープン発酵で酵母がつくり出す味が好みで、ここでも取り入れることにしました」

オープン発酵にすることで酵母がつくり出す味が繊細になり、表現力の高いビールになるといい、一部のビール以外はこの手法が取られている。

しかし、解放されていることで雑菌が混入してしまう恐れはないのだろうか。

「発酵室の中には野生酵母が入らないよう管理しています。ですから、それらの特徴であるフルーティー系のものにはなりません」

ランビックで有名なカンティヨン醸造所のような場所をイメージしていたが、そうではなく、発酵室のなかで換気などをして品質管理を行っている。「UPRIGHT」では歴史あるファームスタイルを醸造していくうえで、伝統的な製法を大事にしている。

オープン発酵室。発酵の様子がはっきりわかる。タンク右の発酵中のビールは、取材前日に仕込まれた現地4/21に開催されるFuji to Hoodという日本とポートランドのブルワリーがコラボレーションしたイベントのビール。今回のパートナーは、京都醸造。

これからも製法については、伝統的な方法を変えることなく、自分たちらしいビールをつくっていくという。しかし、変更点もある。「これまでは大きなボトルでの販売をしてきましたが、お客さんから『量が多く、購入をためらう』という声がありました。そこで、小さなボトルに変えて販売することにしました」と新たな挑戦も語ってくれた。

他にはない個性あるビールは、日本をはじめ多くの国のビールファンを惹きつけている。テイスティングルームは週末のみの営業だが、ポートランドに行く機会があったらぜひ現地で味わい、魅了されてほしい。私も再訪した際には腰を据えて、ゆっくりと味わいたいと思う。

◆UPRIGHT BREWING Data

住所:240 N Broadway suite 2, Portland, Oregon 97227, United States

電話:+1 (503) 735-5337

Homepage:http://www.uprightbrewing.com/

Facebook:https://www.facebook.com/UprightBrewing/

 

Alex Ganum氏UPRIGHT BREWINGブルワリーレポートポートランド

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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