[コラム]2018.9.23

飲んだ人がワクワクするビールを探し求めて 【Beerに惹かれたものたち12人目 株式会社きんき 伊藤惠造氏・後藤尚太氏】

Beerに惹かれたものたち伊藤惠造氏後藤尚太氏株式会社きんき

「苦いからビールは嫌い」。そのような人たちの「黄金色」「苦い」といった固定概念を覆し、ハマるきっかけとなっているのが「ベルギービール」だ。日本にも専門店や「ベルギービールウィークエンド」といったイベントで楽しめるのは、輸入を手がけているインポーターの存在がある。「株式会社きんき(以下、きんき)」もその1つ。今回は、この会社に勤める伊藤惠造氏と後藤尚太氏にフォーカスする。彼らはどのようにして「ベルギービール」に惹かれ、仕事をしているのだろうか。

お客さんがワクワクするビールを仕入れる

海外の醸造所と飲食店、さらにその先にいる飲み手とをつなぐインポーター。伊藤氏と後藤氏にやりがいを聞いた。

「自分自身にも『お客さん目線』がありまして、取り扱う銘柄に対してワクワクする気持ちをもっています。扱うビールがお客さんに受け入れられたときは嬉しいです。そのお客さんの反応を醸造所に伝えて、ブルワーたちが喜んでいる姿をみるのも、この仕事をしていて喜びを感じるところです」と話すのは営業を担当する後藤氏。

「自分たちが自信を持って仕入れたビールを飲んで、喜んでもらうことです。飲んだ瞬間に『ニコッ』と笑う顔を見たら、こちらも嬉しくなりますね」とは伊藤氏。イベントで自らサービングしたビールを目の前で飲み笑顔になる瞬間は、モチベーションが高まるという。

やはり飲み手が喜ぶ姿を見ることが1番のやりがいになっているようだ。

伊藤惠造氏。
輸入を始める前に試飲会で飲んだ「MALHEUR(マルール)12」には衝撃を受けました。それまで大手のビールしか飲んだことありませんでしたから、甘味のあるアルコール度数の高いビールに「これがビールなの?」と驚きました。

突然、言われたベルギービール輸入事業

日本茶の卸業や繊維製品の付属品を製造している「きんき」がベルギービールの輸入を開始したのは2004年。現在(2018年9月)まで、10カ所の醸造所(ベルギー:8、チェコ:1、スペイン:1)と取引をしている。ベルギービールでは、昔から産業・経済が活発であり、ビールの醸造も盛んで独自の多彩なビール文化を築いているフランダース地方に特化してリーファーコンテナ(冷蔵)で輸入をしている。

伊藤氏は、輸入開始前の2003年に入社。「それまではアパレル業界で仕事をしていました。昔から同社との関わりもありまして、縁があり繊維部門の仕事で入りました」。しかし入社後、思いもよらぬ展開が待っていた。ある日、社長から「今度、ベルギービールを輸入することになった」と言われ、1人で税関手続きから販売までを担当することになった。

「お酒全般は好きでしたが、ビールに特化しているわけではありませんでした。この仕事に携わるまでビールのことは、特に意識した事はありませんでした」。輸入関連については一定の知識があったが、ビールについては初心者であった伊藤氏。輸入したビールを取り扱ってくれるお店を探すため、インターネットを通じて、業務酒販店や飲食店を巡る日々が始まった。「酒販店は、販売する飲食店がないと取引が難しいとわかり、途中からは飲食店を中心に営業をしました」。夕方の開店前に店を訪問し、帰社後にベルギーとのやり取りをした。「当時は日付が変わる頃に家に帰るのが普通でしたね」と当時を振り返る。

一方、「もともと、ビールは好きでした」と札幌の「ポールズカフェ」や酒屋で勤務していた後藤氏は、営業業務や新たに輸入するビールを開拓する担当者を探していた社長が、以前より顔なじみであった後藤氏に白羽の矢を立てたことが縁で2010年に入職。

伊藤氏より入社が遅い後藤氏だが、 実は「きんき」との関わりは輸入事業を始める前からある。取引をする醸造所を探すのを協力したのが、先述の「ポールズカフェ」なのだが、同時期に勤務していた後藤氏は一緒に醸造所を巡る経験をしている。

後藤尚太氏。
衝撃を受けたビールはデパートのお酒売り場で購入した「Duvel(デュベル)」です。

現在は、後藤氏が営業や新しい商品内容を醸造所と確認し、醸造所とのやり取りや輸入の際に必要な書類作成など営業を含め伊藤氏が担当している。

税関審査に取扱店の拡大。美味しい海外ビールが届くのは大変

インポーターとして、大変なところはどのようなことだろうか?

「大変なのは、税関審査の際に必要な資料を用意することですね。食品届けに際し、問題ないか成分表や工程表など細かく調べられます」。必要な書類は現地から送ってもらうが、不備がある場合は送りなおしてもらうことになる。「修正をお願いするのですが、うまく伝わらないことやなかなか返信が返ってこないこともあります」。審査を通過しない限り、ビールを倉庫に運ぶことはできないのはもちろん、税関で保管するための費用もかかるため、事前の準備には相当の神経を使うという。他にも「船で約40日かけて輸送しますから注文して直ぐにビールが届くわけではないので、注文のタイミングや入荷量をはかるのも難しいです。頭のなかは、在庫管理のことが常にありますよ」と伊藤氏。

後藤氏の場合は、「仕入れたビールが売れるかどうかという不安もありますが、それ以上に自分たちが取り扱うビールを入れてくれるお店を確保するのが大変です」と話す。クラフトビール業界は盛り上がりをみせているが、取扱うお店はまだ一部に限られている。まだまだ『ニッチ』な商品だという後藤氏は、「立場が安定しないので、スリルを感じて仕事をしていますね」と話すその目には大変さのなかにも覚悟が感じられた。

今では様々な国のビールを目にすることが多くなり、飲める機会も増えてきた。しかし私たちが飲むまでには、様々な苦労があるのだ。

オーセンティックなベルギービールを伝える

固定概念に捉われず、奥深い味わいのベルギービール。2人は輸入をするときに意識していることがあるという。

「人気があるビアスタイルだからではなく、その銘柄を輸入することで業界を牽引できるビールを探すように心がけています。気になったビールは、醸造所に連絡をして、サンプルを送ってもらい決めています」。情報収集はインターネットや展示会を中心に行い、先を見据えて業界にムーブメントを起こす可能性があるビールを探している。

フラッグシップとして人気を誇る「MALHEUR12」を醸造する「ドゥ・ランツヘール醸造所」も事業開始当初から取引をしている1つで、そのコンセプトは、多種多様なつくりはせず、オーナーであるマヌー・ドゥ・ランツヘール氏が追求する数種の定番ビールの洗練に重きをおいている。

コンセプトがしっかりとしていて、飲み手の心を揺さぶるような満足度の高いビールを届けるのが、「きんき」のポリシーなのだ。

こちらは「MALHEUR10」。桃や青リンゴを思わせるようなアロマ。なめらかな口当たりはアルコール度数が10%を感じさせない。その飲みやすさにグイグイ飲めてしまう。

ドゥ・ランツヘール醸造所とは、親交も深まり、昨年より日本市場向けのビール『MALHEUR ROSSA(マルールロッサ)』を醸造依頼している。その特徴は、すりおろしたリンゴのようなマルールらしさとナッツのようなコクが調和。ドリンカビリティも魅力だ。

後藤氏は仕事のなかで、取扱う銘柄のファンを増やすということを常に考えているといい、「私たちが取扱うビールは、オーセンティックなものが多いです」と流行に乗るだけではなく、信念をもってビールを輸入しているこだわりを評価してもらえるよう日々努力をしている。

最後に今後について聞いてみると、少し考えた後に「お客さんがときめくビールを提供できるようにしていきたいです」と後藤氏はいい、続けて伊藤氏も「引き続き自分たちが輸入したビールに対して、責任と信念をもって提供していきたいと思います」と答えてくれた。

いま流行りのアメリカンIPAとは異なるオーセンティックな世界観をもつビールを揃えている「きんき」。次にビアバーで見かけたら、そのこだわりを一緒に感じつつ味わうことにしよう。

伊藤氏、後藤氏の両氏は、これからも私たちを魅了するビールを届けてくれることだろう。

●取材協力:BRUSSELS 神田店

◆株式会社きんき<東京営業所> Data

住所:〒110-0016 東京都台東区台東1-11-9 上西ビル102

電話:03-5812-4680

FAX:03-5812-4681

Homepage:http://kinki-beer.jp/

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この記事を書いたひと

木暮 亮

ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」、「うちの逸品いかがですか?」、「Beerに惹かれたものたち」、「ビール誕生秘話」、「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

【メディア出演】
テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」

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