[コラム,ブルワー]2018.10.27

ロックな猿たちが弾き語るビールを訪ねて 【ブルワリーレポート THE NIKKO MONKEYS編】

Nikko BrewingTHE NIKKO MONKEYSブルワリーレポート栃木県日光市

日光東照宮や華厳の滝といった数多くの名所が存在する日本有数の観光地である栃木県日光市。2017年12月、この地に5年ぶりに新たなブルワリーが誕生した。「THE NIKKO MONKEYS(ブルワリー名:Nikko Brewing)」だ。今回はこちらのブルワリーをご紹介する。

日光の観光を盛り上げる起爆剤に

2017年は初の1200万人を超える観光客が訪れた日光市(下野新聞より)。ここ数年は、インバウンド効果もあり、訪れる人は右肩上がりの状況だ。

地元でお土産事業にも関わっている鶴巻康文氏(通称ボス猿。以下、ボス猿と記す)は、いくつかあるコンセプトの1つに「地元の観光産業を盛り上げる」を掲げる。「お土産屋さんやホテル、旅館、さまざまな観光施設で高品質なビールを提供し、楽しんでもらうことで、日光に今以上の価値を生み出したいのです」と思いを語る。

ボス猿こと鶴巻康文氏。多忙な日々を過ごしているので、ブルワリーで会えたらラッキーだ。

実は、数年前からビールでの観光産業を盛り上げる活動をボス猿はしている。

「2012年までこの地域には『日光ビール』というブルワリーがありました。それを復活させたい思いがあり、『栃木マイクロブルワリー』さんに委託したり、何社か合同で立ち上げた『日光いろはビール』をつくったりしていました」。

しかし、当時は、クラフトビールに対して、地元から理解を得ることが難しかったという。そのような状況のなか『栃木マイクロブルワリー』でつくった『日光山椒PREMIUM』が2011年インターナショナル・ビアコンペティションで金賞を受賞。「このときは、とても嬉しかった」とボス猿は振り返る。その後も醸造所を建設する物件が見つからないといった紆余曲折を経験しながら2017年より工場を建設し、自社生産にたどり着いた。

当初の構想からは離れた地域に建設された醸造所。最寄り駅であるJR日光線下野大沢駅からは徒歩約20分のところにある。

キーマンとなる2人の存在

ビールづくりについては素人のボス猿。現在、醸造チームは3名で担当しているが、ビール醸造の経験はなく醸造家を探さなければならなかった。ここで思いもよらぬ人物と出会う。ドイツのデーメンス醸造学校で本格的にビール醸造を学び、「エチゴビール」でブルワーをしていた菊地明氏である。

「もともとしている事業で『エチゴビール』を取り扱っていました。ビール事業を始めたいと考えていた時期に知り合う機会があり、交流が生まれました。ブルワリーを立ち上げることになり、経験豊富な菊地さんに指導をお願いしたく頼みました」。醸造方法はもちろん使う設備や機器まで1から教わったことは、「私たちの財産になっています」とボス猿は話す。

工場長を務める横田氏は「『基本が大事』で、それが品質につながることを学びました。決して派手ではなく、基本に忠実な菊地さんの姿勢は、ちょっと浮ついた気分を正してくれました」。

「THE NIKKO MONKEYS」には、菊地氏の精神が受け継がれている。

醸造所内の様子。

そしてもう1人、立ち上げには欠かせないのが、デザイナーチームの「Baby Tokyo」片平優氏。たまたま参加したイベントのスピーチに「人生観が変わった」と衝撃を受け、その場で協力を依頼した人物だ。

「ネーミングやメインキャラクターを相談し、『動物を使おう』ということになりました。日光の動物といえば、猿と神話にある白蛇なのですが、蛇はたくさん描くと『気持ち悪いね』となり、猿になりました。楽しい酔っぱらいがつながって、日光をもっと魅力的な場所にする猿ということで『THE NIKKO MONKEYS』と名付けました。デザインは、イラストレーターさんがパリコレの仕事をしている合間に描いてくれました。賑やかにワイワイしている猿をイメージしたブランドイメージで、こちらに来た方の目に留まり、飲んでもらえたら地元にも貢献できるのではないかと思います」。

ボス猿とデザイナーチームは、認知度を高める広報活動として従来行かないような場所にも積極的に出向き、アピールをしている。

シンプルで、骨太で、飽きることないビール

ビールのターゲットは、普段クラフトビールを飲まないライト層としている。

「『PREMIUM LAGER』のレシピはとてもシンプルです。麦芽(カナダ産)もホップ(ザーツ)も1種類しか使っていません。これが菊池さんの考える美味しいラガービールです」と横田氏は語る。その反面、「シンプルなだけに誤魔化しがきかないので、難しくもあります」と話す。

工場長の横田氏。

「質のいいビールをつくることで、私たちのファンを増やし、そこからクラフトビールに興味をもつ人が多くなれば、クラフトビール業界の裾野が広がると考えています。業界の発展に貢献することも私たちの重要なミッションです」とボス猿はいう。

THE NIKKO MONKEYSのラインナップ。左から「PREMIUM LAGER」「PAIL ALE」「SUMMER WEIZEN(限定醸造)」。

そして、もう1つ菊地氏から受けた教えで大事にしていることがある。それは「洗浄」だ。

「洗浄の良し悪しが品質に影響してしまうことも丁寧に教わりました。他のブルワリーではしていない工程もしっかりとするように言われています。菊地さんは、雑菌対策をとても細かくするので、大手ビールメーカーから『洗浄の鬼』と言われたそうです。ビールづくりは、雑菌との戦いでもあります。つくることに意識が向きがちですが、いかに清潔に保つことが大事なのかを学べたことはつくる以上に私たちの財産になっています」と横田氏。

洗浄をしっかりとすることで、雑菌による汚染が起こらないよう注意を払っている。

ファンから美味しいと評価されているブルワリーほど、取材では醸造技術よりも洗浄の重要性について話を聞く。菊地氏の教えを忠実に守り、彼らはビールづくりに励んでいる。

日光の素晴らしさを感じてもらえるビールづくりを目指して

ボス猿と横田氏に課題面について聞いてみると口をそろえて「経験値の少なさ」を挙げる。

「まだまだ経験も少ないので、トラブルが発生したときに適切な対応ができていないことがあります。これはひとつひとつ経験を積んでいくしかないと考えています」とボス猿がいえば、「まずは基本的なスタイルの品質を向上させていきたいです。基本ができていなければ、応用もできません。ベースとなる部分をしっかりとさせたい」と横田氏。そのうえで、色々とアレンジしたビールにも挑戦してみたいという。

ボス猿が次に挙げたのが「業界内のつながり」。現在は、県内のブルワリーとのつながりはあるが、今後は県外のブルワリーとのつながりをもっていきたいと考えている。様々なブルワリーと交流をはかることは、醸造技術の向上につながるからだ。

課題が明確であるからこそ、乗り越えてやってみたいこともある。

「日光には山椒やいちご、柚子、わさびなどの素材があります。これらを使ったビールにチャレンジしたい」と話すボス猿、横田氏。さらに「都内にお店を出して、日光をアピールしてみたいですね。それと日光にはスポーツチームもたくさんあるので、コラボビールも挑戦してみたい」と営業面からの展望をボス猿は語る。

まだまだ発展途上の「THE NIKKO MONKEYS」。自分たちが掲げる目標に「何が足りないのか」、1つ1つ向き合い、取り組む姿はどんな未来を魅せてくれるのか。追い続けたいブルワリーがまた1つ誕生した。

「THE NIKKO MONKEYS」の醸造メンバー。左上から細田氏、横田氏、金氏、ボス猿。日光の新たな名物になるか。注目していきたい。

◆THE NIKKO MONKEYS(ブルワリー名:Nikko Brewing)Data

住所:栃木県日光市木和田島1564-4

TEL:0288-25-3631

FAX:0288-25-3632

E-mail:nikkobrewing@gmail.com

Homepage:https://nikko-monkeys.beer/

Facebook:https://www.facebook.com/Nikko-Brewing-601417293549294/

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05007木暮 亮

この記事を書いたひと

木暮 亮

ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

【メディア出演】
テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」

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