[コラム,ビアバー]2019.7.21

ピルスナーウルケルのタップスター第二陣の凱旋! PUの魂を伝える伝道師が未来を照らす

ビールに愛された皆さまへ!

ピルスナーウルケルといえば、チェコビールの名品中の名品。ピルスナースタイルの元祖としても名高いブランドであることは、ビール好きな方なら誰でもご存知かと思います。

タップスターの誕生

ピルスナーウルケル(以下PU)には、公式に認定しているバーテンダー(注ぎ手)であるタップスターという認定資格があります。昨年、日本で初めてタップスターとして認められた佐藤裕介氏に続き、この夏のはじめに日本人として2番目にタップスターとして認められた3名の方がいます。そのうちのお一人、東京は有楽町にあるニユートーキヨー数寄屋橋本店1階Brauhausの店長・野々村光太郎氏にお話を伺いました。

タップスターの証でもある、レザーのエプロンが誇らしげな、野々村光太郎氏

若い層に訴えかける、若いバーテンダー

今回タップスターとなった野々村氏は今年で36歳。学生時代のアルバイトからニユートーキヨーに関わるうちに、「うちのビールはおいしい」ということに早くから気づいていたそうです。1937年創業のニユートーキヨーは、ビールを主軸としたレストラン業務を展開し、日本全国でビアファンを魅了するビアレストラン・ビアホールをはじめとして各種飲食業態で広く運営してきました。その中で、ビールの専門のカウンター職のレジェンドともいえる、80歳にも近いという諸先輩方の、しっかりした知識で、しっかりしたビールを提供するという姿勢を目の当たりにしてきました。そんな先輩方も月日が経てば次々に引退されていく。世代交代の中で、自分がどれだけ根拠をもって、そして将来を見据えたうえで仕事をしていくことができるのかを考え、今回タップスターの募集に手を挙げたのです。

「いらっしゃるお客様に向き合い、その日を頑張ることも大切だが、近未来を見据え、将来的に生き残っていくための技術」

運命の出会いとなったのは、アサヒビール㈱を中核にもつアサヒグループがチェコの名門ビールであるプルゼニュスキー・プラズドロイ社をM&Aし、2018年4月から代表銘柄であるピルスナーウルケルの国内での販売を開始。そして、ニユートーキヨーでも6月から本格的に販売が始まった頃のことでした。
アジアパシフィック・ヘッドタップスターとしてアダム・ブルチェック氏が商品説明会で紹介したのが、ピルスナーウルケルの樽生(ドラフト)です。野々村氏は、初めて飲むピルスナーウルケルのドラフトのおいしさと、注ぎ手によってこんなにも味わいが変わるのかという強い衝撃を受けたのでした。
この時、すでにタップスタープログラムの第一弾として渡欧することが決まっていたピルゼンアレイの佐藤氏の存在も知っていたことから、「次回、このような機会があるなら、ぜひやりたいです!」と強く希望を出していました。2018年のうちから、PUを取り扱う店舗から続々と希望者が集まり、ヘッドタップスターのアダム氏による面談のもと、総合的な判断で、野々村氏を含む3名が指名され、2019年6月、ピルゼン市に招聘されました。

PUタップスタープログラムの日々

5日間にわたる講義と修行・そして試験

その日によって変わるのですが、午前中は講義で、事細かに工場を細部にわたって見学させて頂きました。PUは隠さないことがポリシーで、その歴史や伝統的なトリプルデコクションでの醸造工程など、ほかにはないこだわりを、しっかり教えてもらいます。
そして、PUが醸造したビールを、最後に完成させるのは、注ぎ手であるバーテンダーだという考え方があり、午後は8時間、マスターバーテンダーという位の高い技術者の下で、注ぎの技術をたたきこまれます。日本では考えられないぐらいの量のPUを、指導を受けながら注ぐことで、身体に沁み付きました。それまで漠然として感じていたものが、ガチンとはまった感じです。

講義の際に使用されたテキスト

野々村氏が修行したチェコ・ピルゼン市のレカルナ(LÉKÁRNA)というお店は、たまたまピルゼン市内のバーテンダーが集う場所でした。PU関係者から注目されながら、オープンカウンター越しに「それは違うんじゃないか」「それはこうした方がいい」などと、横やりが入る。先輩方が口出ししてくるのが、またそれも楽しいひと時だったとのこと。

教えを忠実に守りながら、注ぐときは真剣そのもの

基本のハラディンカ、そしてシュニット

ハラディンカ(HLADINKA)はPUが推奨するチェコの伝統的な注ぎ方です。しっかりとした泡を先に注ぎ、ほどよく炭酸を抜くことでビールの味わいを引き出します。ジョッキに液を注ぎ込んで泡を立て、その泡の下に液体を滑り込ませるように注ぎ、チェコでは、たっぷりの泡とビールが一緒に楽しむことが一般的で、泡の分量がおよそ指三本分になるものです。これはニユートーキヨーでも通常メニューで提供されています。
また、シュニット(ŠNYT)と呼ばれる注ぎ方があります。もともとはバーテンダーがお店を開ける前の品質チェックのための注ぎ方でした。グラスの上部に空間が指1本、そして泡が指三本、液体が指二本分。グラス上部に設けられた空間によって、ビールの豊かな香りを楽しむことができます。これはニユートーキヨーではメニューには掲載されていないので、もし飲んでみたい方は、数寄屋橋本店1階店長でありタップスターの野々村氏を呼び止め、会話を楽しみながらオーダーしてみてはいかがでしょうか。

美しく注がれたシュニット。グラスに鼻を近づけ、きめ細やかな泡から立ち上る甘く豊かなモルトの香りを楽しむことができる。

タップスターとなってからの反響

SNSでの発信もしているので、アンテナを張っている若い方々、ビールファンとしてはライト層からの反響が大きいと感じています。インスタグラムで地方の方からメッセージを直接頂いてやり取りをしたところ、とても喜んで頂けたこともありました。PUはファンから愛されている、そんな印象を受けています。
PUの講義を受け、技術を学びながら感じたことは、大切なプロセスがいくつかあり、自分自身が今までやってきたことが間違っていなかったということです。バー周りを清潔に使うことなど具体的なことをはじめ、知識だけではない強い思いが必要だと思いました。「ビール離れ」という言葉もありますが、それは飲み手側だけの問題ではなく、注ぐ側がビールを伝えるということを一生懸命やらないといけないと思います。ビール好きな方々にしっかりと向き合うこと、そしてビールが少し苦手でカクテルやハイボールを飲む方々にも、ビールの楽しみ方を伝えることで、ビールを選ぶようになってくれたら嬉しいです。

PUとNT二つの看板を担う

ビールの伝道師、PUの精神を引き継ぐファミリーとしてタップスターになれたことに喜びを感じる反面、引き締まる思いを感じている野々村氏。PUの看板を背負っているのと同時に、ニユートーキヨーの看板もあります。最初のタップスターである佐藤裕介氏ともコミュニケーションを密にしながら、この銀座の地を、ビール文化の中心地として発展させていきたいと新たな挑戦に目を輝かせていました。

「歴史が動く時には必ずキーパーソンとなる人が現れます。そういった人間を応援する者
として、ビール文化を創っていきたいです。」
妥協を許さず、技術を磨き続ける野々村氏ご自身も、主軸となるキーパーソンとしての器を感じさせます。
挑戦は、今まさに始まったばかり。

 

ニユートーキヨー数寄屋橋店 http://www.newtokyo.co.jp/tempo/newtokyo/sukiyabasi/sukiyabasi_f1.htm

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

MJ

ビアジャーナリスト/Youtube JBJA Channelプロデューサー

ビールと昆虫とリコーダーと天然石が大好きです。JBJAではイベントサポートやBJAチューターも楽しんで取り組んでおります。人に寄り添う記事作成を心がけ、JBJA公式動画サイトJBJAchannelではMCを担当しております。
JBJA公式動画サイト:YouTube JBJAチャンネル

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