[イベント]2010.10.25

秋こそボック

 10月も残り少なくなり、「そろそろツィードを着ようかな」と思う季節に飲みたくなるビールがボックである。
 ボックは下面発酵のハイアルコールビール(アルコール度数6%~さらに高いもの)で、春に飲まれるビールというイメージがある。しかし、個人的には秋こそボックの季節だと思っている。それは、ボックが秋の味覚によく合うと思っているからだ。
 ボックの特徴を一言で表現すると「モルティーなビール」である。麦芽の馥郁たる風味こそボックの魅力だ。軽くトーストしたパンを思わせる香りは、「ビールは麦の酒だ!」と感じさせてくれる。そして、その豊かで深みのある味わいが秋の食材とマッチするのだ。
 特によく合うのがキノコやサーモンや栗。キノコをサッとバターで炒めたり、サーモンのムニエル、栗のリゾットなどとの相性は言うまでもないが、キノコ鍋や鮭の幽庵焼き、栗御飯といった和食にも合うので是非トライして欲しい。そして、さらにお薦めなのが柿やブドウといった果物とのペアリング。果物を肴にビールを飲むというのはちょっと「?」と感じる人もいるだろうが、まーいっぺんやってみてください。やみつきになるはずである。干し柿やレーズン、干し芋といったドライフルーツとも相性抜群である。

トラディショナル・ジャーマンスタイル・ボック
 モルトのキャラクターがしっかりしていて、ミディアムからフルボディの下面発酵ビール。ホップのキャラクターは低く(フレーバーは低、アロマは非常に低いといったレベル)色合いは濃い銅色から濃い茶色。
*明るい麦わら色から濃い黄金色までの色合いを持つジャーマンスタイル・ヘレス(ドイツ語で”薄い”という意味)・ボック、さらにアルコール度数の高いドッペルボック(8%程度)やボックを凍らせて氷を取り除くことによってアルコール度数を上げるアイスボック(なかには14%ほどあるものある)といったサブカテゴリーがある。
*ボックの名前はドイツのアインベックという町で生まれたビールなので”アインベック”が訛ってボックとなったという説が有力だが、発音が”雄ヤギ”と同じなので「ヤギのキックのように強いビール」から名が付いたとの説もある。そのため、ボックのラベルにはヤギのキャラクターが描かれているものが多い。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

藤原 ヒロユキ

ビール評論家・イラストレーター

ビアジャーナリスト・ビール評論家・イラストレーター

1958年、大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ビールに関する各種資格を取得、国際ビアジャッジとしてワールドビアカップ、グレートアメリカンビアフェスティバル、チェコ・ターボルビアフェスなどの審査員も務める。ビアジャーナリストアカデミー学長。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド刊)、「ビールはゆっくり飲みなさい」(日経出版社)が大好評発売中。

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