[コラム]2020.3.6

ホップを育ててみませんか ~アップデート~

前回「もうすぐ春ですね、ホップを育ててみませんか」を書いてから2年、私たちビール好きを取り巻く環境はずいぶん変わりました。クラフトビールへの関心が高まり、ビールだけでなく原料に対する興味や期待が大きくなってきています。有名なビルの屋上農園でホップの栽培をする人たちが現れたり、マイクロブルワリーが中心となってホップを栽培する仲間を募ったりと、2年前と比べるとホップを目にしたり、ホップに触れたりする機会は圧倒的に増えました。
同時に、自宅でホップを育ててみたい!自分の育てたホップを楽しみたい!という人もきっと増えていると思います。ベランダのプランターや家庭菜園で、自分で育てた野菜は格別ですものね。ホップも同じ。芽吹きを心待ちにし、毎日水やりをし、青々とした葉を茂らせてぐんぐん伸びる姿を見るのは、それだけで心躍ります。夏、小さな毛羽のような花を見つけたら思わずガッツポーズです。育った毬花を摘み取って裂いた時の鮮烈な香りは、ホップ好きならずともきっと魅了されるはずです。

 

ホップ・リテラシーを身につけよう

そんなホップを愛する皆さまに、今、敢えてお聞きします。あなたはホップ・リテラシーを持っていますか?

苗を手に入れる

ホップを育てたいと思ったらまずはどうやって手に入れようか悩むと思います。
幸いなことに以前私がホップ栽培をお勧めする記事を書いた2年前と比べると、ホップの苗を購入できるサイトはぐっと増えました。「ホップ 購入」といったキーワードで検索すればいくつもの販売サイトが表示されます。植え付け時期が限られますので、販売時期を早めにチェックしましょう。同時に販売者のプロフィールもチェックしておきましょう。

ホップの種類や特徴についてきちんとした説明が掲載されているか、栽培方法についてのFAQが用意されているかなど、選んだショップや農園が自分の目的やレベルにあっているかを見極めましょう。

 

ホップを楽しむのに必要なコト

収穫したホップは、一般的なハーブと同じようにハーブティーにしたり、食事に生かしたり、花として花瓶に生けたり、乾燥させてアレンジしたり、お風呂で入浴剤にしたりと自宅で様々に楽しむことができます。ただ、家庭菜園で収穫できる他の野菜やハーブとは異なることがひとつあります。そう、ホップはビールの主原料のひとつであるということです。自分で育てたホップでビールが作れたら…。妄想はどんどん広がりますね。よくわかります。でもちょっと立ち止まって考えましょう。

 

ビールはお酒ですから酒税法に則る必要があること、そして
ホップは農産物ですから栽培方法によって品質は変わってくることの2つです。

 

ある程度の量のホップが獲れるとこれでビールを…と夢見ることもあると思いますが、

ビール(アルコール分1%を超えるお酒)を酒造免許を持たない者が造ることは、酒税法により禁止されています。一般の個人がビールを作ることは今の日本国内では認められていません

 

2019年、日本ホームブルワーズ協会が日本国内で家庭でのビール醸造(いわゆるホームブルーイング)が可能になることを目指して設立されました。自分で育てたホップで作ったビールという夢の実現はいずれ可能になるのかもしれません。でも今はまだその時期ではないのです。

それなら、(酒造免許を持っているところへお願いしたらいいんじゃないかな?)そこにもリスクが伴います。それはホップの品質という点です。

2020年2月21日に福島県田村市で開催された「ホップサミット2020春」に参加されたTHANKS HOPさんが2020年度の活動方針の中のひとつ【ホップ生産者としての方針】内に以下のように書かれています。

2017年から2019年は、ホップをプランターで栽培してきたが、量と質ともに満足のできる結果が得られなかったので2020年からは地植えできる圃場でホップを栽培。今後は、クラフトビールの味を左右するホップクウォリティーを追求しながら、地球環境に負荷のかからない持続可能な農業生産にも力を入れる。
ホップサミット2020春に参加してきました」より

私の経験からも、自宅でプランター栽培したホップは毬花の大きさ、ルプリンの量ともに個人の趣味を超えるものは少なく、(これを使ってビールを作ってくださいとはなかなか言い出せないよね。)という品質でした。理科の実習で作ったバケツ稲と広い田んぼで農家が作った稲では美味しさも実りも違いますね。同じように、

家庭菜園のホップと農産物として栽培したホップは
同じホップでも品質はまったく違うものだと意識しましょう。

 

フレッシュホップ

写真提供:京都与謝野ホップ生産者組合

筆者がプランターで栽培したホップ

今回の記事で参照したサイト

日本産ホップ推進委員会 https://japanhop.jp/
フレッシュホップフェスト https://freshhop.jp/
イシノマキ・ファーム https://www.ishinomaki-farm.com/
THANKS HOP https://www.thanks-hop.com/
株式会社ホップジャパン https://hopjapan.com/
遠野ホップ収穫祭 https://www.lets-hopping.com/
BEER EXPERIENCE株式会社 https://www.beerexperience.jp/
与謝野町ホップ体験 https://yosano-kankou.net/hopevents/
日本ホームブルワーズ協会 https://www.japan-homebrewers.com/
サンクトガーレン FRESH HOP IPA https://www.sanktgallenbrewery.com/freshhopIPA/
PECCARY BEER http://www.peccarybeer.com/
パラダイス・ビア・ファクトリー https://paradisebeer.jp/

酒税法 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=328AC0000000006

ホップ
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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

よしのたま

ビアジャーナリスト

1965年、南信州生まれ。峻険な南アルプスと中央アルプスに囲まれた自然豊かなリンゴ農家に育つ。1女1男の母。大学卒業後1年間、まだ東西に分裂していた時代に南ドイツに遊学し、各街々の地ワインにハマる。帰国後は、翻訳会社、雑誌編集、組紐製造など好奇心のままに仕事を転々とし今に至る。その好奇心はビールにも顕れ「好きなビールは?」と訊かれた際の返事が同じだったことがない。現在は韓国のクラフトビールに興味津々。趣味は着物。だが、茶道や華道といった着物っぽいことには一切通じていないため、結局のところ着物を着てビールを呑みに行くというのが趣味になっている。

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