[コラム,ビアバー]2022.1.30

「時短要請」でも、あえて「休業」を選択する、飲食店の苦悩

まん延防止等重点措置

全国的に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、多くの地域でまん延防止等重点措置が適用されています。

東京都では飲食店に対して、「感染防止徹底点検済証」を交付を受けている店舗に関しては、酒類の提供は20時まで、営業時間を21時までとの要請を出しています。

参照:東京都ホームページ「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置について」

この要請に従った場合、店舗ごとの規模に応じて協力金が支給されるとのことです。

参照:東京都ホームページ「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金について」

飲食店にとっては、時短営業しながら協力金を受け取るのが一番の得策のように思えますが、実際は休業している店舗も多くみかけます。休業した場合でも受け取れる協力金の額は変わりません。

参照:東京都産業労働局ホームページ「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金について」内の「よくあるお問合せ」

私は過去にチェーンの飲食店に15年間勤務し、その後は独立して居酒屋を7年間経営していました。その経験から、あえて今「休業」する店の事情を考えてみたいと思います。

効率が悪くなる

以前に私が書いた記事で飲食店の経費構造について簡単に説明しましたが、飲食店は来客数に関わらず一定の固定費が必要です。家賃は営業していなくてもかかってしまいますが、人件費や水道光熱費については、休業すれば削ることができます。時短営業で売上が減少する分を勘案すると、休業した方が収支的に得策の場合もあります。このような状況下でも来てもらえるお客さんの期待を裏切ることになり、申し訳ない気持ちもあろうかと思いますが、商売上は仕方のないことです。

売上予測が難しい

売上が減少するにしても、例えば普段の7割くらいになるとか、きっちりと予測ができれば対策も立てられます。食材や飲み物の仕入れをコントロールし、人員の配置もギリギリで組めば、効率的に縮小営業をしながら一定の利益は見込めるかもしれません。しかしながら現状では、そのような予測を立てるのは極めて困難です。長引くコロナ禍で人々の動きの予測は非常に難しくなっています。
飲食店の営業の準備は売上の予測から始まります。大きな企業では膨大な過去データをもとにシステムが計算し、小さな個人店では店主の経験と勘でといった違いがありますが、日ごとの来客数の予測を元に食材の仕入れや人員の配置を準備します。もし来客数が予測を下回れば食材のロスにつながりますし、大きく上回ってしまうと品切れやサービスの低下といったお客様の不満につながります。
そのようなリスクを回避するためには、あえて休業するもの選択肢になると思います。

従業員の感染リスク

今やマスクの着用が常識の世の中で、飲食店はマスクを外すことができる数少ない公共の場所です。そこで働く従業員は1日中、マスクをしていない人たちに囲まれて仕事をしているわけです。いくら換気や消毒を徹底しても、そのような環境で1日中過ごさなくてはならないのは感染リスクが高いでしょうし、ストレスにもなることでしょう。不安を感じる個人店の店主や従業員の健康を案じる経営者が、感染拡大防止を第一に考えて休業することもあるでしょう。

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コロナ禍も2年経過し、いまだ先の見えない状況です。私たちの健康を支えてくれる医療従事者や、日常生活を支えてくれるエッセンシャルワーカーと呼ばれる方々に対しては、敬意と感謝の声を多く耳にしますが、飲食業の従事者についてはどうでしょうか。外食がどれだけ私たちに心の安らぎを与えてくれているか、この状況で気付いた人も多いと思います。休業する飲食店、営業を続ける飲食店。そのすべての判断を尊重すると同時に、私たちの「心」を支えてくれている飲食店に関わる方々へ、今こそ最大の敬意と感謝を持ちたいと思います。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはスタウト。趣味は乗り鉄。

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