小説のビールが現実になるまで――「飲むエンドロール」タイムスリップビール誕生秘話
黒船来航に揺れる江戸時代へタイムスリップしたブルワー直。ひょんなことから酒造りを諦めた喜兵寿とともに、この時代にはまだ存在しない「ビール」造りに挑む小説「タイムスリップビール ~黒船来航、ビールで対抗~」。
――ビールを造らなければ、殺される
モルトもホップも酵母もない幕末を舞台に、現代のビール知識と日本酒醸造技術を掛け合わせてビール造りに挑む、歴史×クラフトビール小説です。
▶改稿版「タイムスリップビール~黒船来航、ビールで対抗」第一話
構想5年、執筆開始から3年。ついに完結したこの小説。その作中で出来上がったビールが物語を飛び出し、実際に飲むことができるようになりました!

その名も「タイムスリップビール」。江戸で出来上がったビールが、時を越え、次元を超えて、現代にやってきたのです。
飲むエンドロール―小説を「飲む」という体験
「江戸でビールを醸造したら」
その前提で醸造しているので、タイムスリップビールには麦を一切使用していません。原材料は、米、麹、ホップ、そして蔵付き酵母。麹の力を最大限に引き出したこのビールは、シャンパンや白ワインを思わせる、透明感ある美しい味わいのワイルドエールです。
ラベルにあるQRコードは、小説「タイムスリップビール ~黒船来航、ビールで対抗~」への入り口。そこから物語の世界へ入り、主人公たちの旅とビール醸造を見届け、最後にその一杯を現実の世界で味わう。いわば、このビールが「飲むエンドロール」となっているのです。

このビールのもう一つの大きな特徴は、「熟成させるほど美味しくなる」ということ。瓶の中で刻一刻と味わいは変化していき、寝かせるほどそのポテンシャルを発揮します。なので、急いで小説を読み終わる必要はありません。ゆっくりと時間をかけて。読み進めるうちに、ビールの味わいも深まっていくのです。
かつてない難産 失敗を重ねながらも、小説と並走し続けたビール
しかしこのビール、出来上がるまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。失敗、複数回の仕込みなおし、そして何か月にも渡る熟成期間……物語の中と同じように、「タイムスリップビール」もまた、試行錯誤の末に生まれたビールなのです。
このビールを醸造した、和歌山県にあるORYZAE BREWING木下伸之さん(以下、木下さん)にお話を伺いました。

ORYZAE BREWING木下伸之さん
――タイムスリップビール誕生までのお話を聞かせてください
木下さん:最初に仕込んだのは、2025年3月のことでした。ルッぱらかなえさんからコラボのお話をいただいたてから、2年後くらいのことですね。小説と連携する形で進めたかったので。タイミングを見計らって醸造に着手しました。
最初は酵母無添加、蔵付き酵母が醸す自然発酵ビール。オリゼーモルト(ORYZAE BREWINGが開発した、世界初の技術、麹の技術を用いたライスモルト)発芽させた籾米、3年熟成のホールホップ、自然栽培米を原材料に、クールシップで仕込みました。

しかしこれが、なかなかうまくいかずで……発酵は順調にいったのですが、オリゼーモルトと蔵付き酵母の相性が悪く、オフフレーバーが出てしまったんです。発酵によってそれがなくなることを祈り、半年ほど待ちましたが、どうにもならずにお蔵入りになってしまいました。
そこで2025年12月、今度はオリゼーモルトを辞め、米麹とホールホップ、蔵付き酵母で新たに仕込みを行いました。最初のビールもそうですが、蔵付き酵母を使い、クールシップで仕込む方法は、寒い時期しかできないんですよ。一度うまくいかなかったからといって、すぐに次を仕込めるわけではない。なので小説の進行に間に合わせられるか、正直ハラハラしていました。
――すごく考えてくださっていたのですね……ありがとうございます!
木下さん:でもこのビール、どうやらおいしくなるまでにはしばらく熟成が必要そうだ、ということが見えてきたんです。
そこで、もうひとつ別のビールを仕込むことにしました。一番最初に仕込んだビールの「命」を、次のビールへ引き継いでみたんです。今まで試したことのない、まったく新しい方法での挑戦でした。
――命を引き継ぐ?!どういうことですか?
木下さん:お蔵入りになったビールから酵母だけを救出し、それを使ったんです。遺伝子を引き継ぐイメージですね。
酵母はとろみがあり、少し糸を引いている状態でした。それを添加したら、乳酸発酵が始まったんです。通常、乳酸発酵がはじまるとNGなブルワリーさんが多いのですが、うちの醸造経験上「乳酸発酵がはじまると劇的においしくなる」ということがわかっていたので、すごく嬉しかったです!
しかしその後なかなか通常の発酵が始まらずで……すごくやきもきしました。だいぶ時間が経ってから発酵は始まったのですが、終了するまでにも時間がかかって、結局発酵が完了するまでに3か月かかりました。
――通常とはかなり異なる流れだったのですね……
木下さん:そうですね。その後瓶詰を行い、瓶内二次発酵を行いました。その後テイスティングをしたのですが、この時点では、まだオフフレーバーがあって……でも「きっと酵母がいい仕事をしてくれる」と祈って、ひたすら待ちました。
自然発酵って、いい材料を使って時間をかければ、絶対に美味しくなるんですよ。でもいつ整うかは、お酒のみぞ知ること。長ければ数年かかることもあるので、正直ドキドキでした。
そこから3週間寝かせ、「これなら飲んでもらえる」というタイミングで、ルッぱらかなえさんにお送りしました。

――サンプルビールが到着した日の翌日が、ちょうど出来上がったビールをペリーに飲ませるシーン執筆の日だったんですよ!ものすごいシンクロタイミングで、びっくりしました。おかげでリアルなシーンが書けました!
これが2026年6月9日。ビールの味わいはとても印象的だったのを覚えています。最初果物のような酸味があるのですが、それがつぎの瞬間にはスモーキーさに変わって。でも全体透明感がありするすると日本酒のように身体に馴染む。そして気づけば酔いが心地よく回っている、そんなジェットコースターのようなビールでした。
それが、2026年7月13日に飲んだ時には、味わいがガラッと変化していたんです!シャンパンのような白ワインのような……とにかくまったく違うビールになっていて、心の底からびっくりしました。
木下さん:酵母の力ですね!こんな感じで、これからどんどん美味しくなっていきます。これが自然発酵の面白さでもあり、魅力ですね。
2026年10月1日 超限定販売
「タイムスリップビール」は、2026年10月1日発売となります。販売可能本数は300本。同じものはもう2度と造れないので、今しか出会えない超限定ビールとなります。
「小説のエンドロールを飲む」。かつてない、クラフトビールの体験をぜひ味わってみてください。

商品詳細
商品名:タイムスリップビール
ビアスタイル:ワイルドエール
原材料:米麹、米、糖類、ホップ(糖類は瓶内二次発酵時に使用)
アルコール度数:7.5%
容量:330ml
特徴:瓶内二次発酵・グルテンフリー
醸造:ORYZAE BREWING(和歌山県)
発売日:2026年10月1日(木)
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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









