再生ホップで新たなビールの可能性を
4月、大手町3×3 Lab Futureにて株式会社ユーグレナ、ASTRA FOOD PLAN株式会社、VERTEREによる、
再生ホップ「ホップぐるりこ」を使用した合同開発ビール3種の発表会が行われました。

3社が携わる一大プロジェクトとなったこちらの商品はMakuakeによるクラウドファンディングのバックアップを受け、商品化されています。
(クラウドファンディングは終了)
参考リンク:https://www.makuake.com/project/vertere_upcyclinghop/


右からASTRA FOOD PLAN株式会社 岩渕さん、
VERTERE 鈴木さん、
株式会社ユーグレナ 渡辺さん
◆ASTRA FOOD PLAN株式会社
2020年設立。今回商品開発のキーとなった過熱蒸煎(じょうせん)機を開発。
「かくれフードロス」をアップサイクルの力で削減することを標榜。
◆VERTERE
2014年設立。「飲んだ人の価値観を変えるビール」をモットーに、奥多摩の古民家を改修しビール事業を開始。
「バテレ」という社名は「universe」の単語の「to turn」という意味を持つ後半部分、「verse」のラテン語読みに由来しています。
◆株式会社ユーグレナ
https://www.euglena.jp/companyinfo/company/
2005年設立。同年、世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功。
現在、食品やバイオ燃料をはじめサステナブルな原料開発全般に力を入れている企業。
ビール産業にはロスはつきもの
ビールの構成比率の9割は水分なので、残りの1割で豊かな表現をしているわけですが、
醸造後には麦芽やホップの残渣(使用後の粕)が生じます。
これらは通常、醸造所が産業廃棄物として廃棄しています。
ホップ残滓には栄養が全くないかというとそういうわけではなく、フルーツや野菜と同じく、絞り粕を二次利用することは可能です。
しかしビール事業においては以下の問題がありました。
畑に撒く肥料や家畜の飼料に再利用するケースが多いです。
しかし周りにそういった環境がない醸造所は廃棄にお金を払っています。
また、使用後のホップの二次利用においては、
人間が苦いと感じるものは動物もなかなか食べないため家畜向けにも利用が難しいのが現状でした。

①Food(食料)
②Fiber(繊維)
③Feed(飼料)
④Fertilizer(肥料)
⑤Fuel(燃料)
過熱蒸煎機の登場

過熱蒸煎機により加工されたたまねぎを使った「たまねぎぐるりこ」

実は、ASTRA FOOD PLANのルーツはフルーツピューレ加工会社にあります。
品質の高いピューレを生み出す技術を持っていても、理解され、使ってもらえなければ広めることが難しいという過去の気付きから、
「まずは人にとって付加価値が高い食品で成功モデルを提示する」ことにビジネスをシフト。
そこから過熱蒸煎機自体の販売よりもまず、企業向けのリース事業を展開していくアイディアが誕生しました。
現在では某牛丼チェーン店にリースで機器を貸し出し、
加工された端材を買い取り主力商品である「たまねぎぐるりこ」として販売。
またそれを別のパンメーカーに卸すというシナジーを生んでいます。
今後は飼料などへのアップサイクルも目指しているんだとか。

レモンピールとの出会いがホップの二次利用へ
その中で出会った、あるレモンピール製品に関心を持ちます。

そして意外と知られていないことですが、
ユーグレナにはファンの方が集うコミュニティがあり、なんと数千人以上が所属。
それぞれが語り部になることで相乗効果が起きているといいます。
さらにユーグレナの拠点は石垣島にあり、その小さな離島にHISとのコラボツアーで 20人が来島するほどの熱量。
アップサイクル商品販売やファンづくりの知見があるユーグレナがサポートするという運びとなりました。
今回使われたホップ残渣の品種は数種が混ざっているため、どの単一ホップ品種の特徴なのかを述べることは出来ませんが、
香気成分であるエステル香も残ったので「また一時利用時とは違う特性がとれたのでは」と鈴木さんは話しています。
会場のサンプルビールのテイスティング

とてもドライでドリンカブルな一杯。
軽いフローラルさとホップビタネスのコントラストが光るビール。
印象としてはどれもがアメリカ産の品種が持つような、ホップフォワードな造りではないなというのを直感で感じましたが、特に①のセゾンは確かにトロピカルというよりはウィートビールの特徴に通じます。
課題とポテンシャル
VERTERE側では、ホップぐるりこはホップだけど副原料のように活用できるのでは、
あるいは樽熟成時に添付する手法はどうだろうかというアイディアも出ているそうです。
もちろん素晴らしい取り組みである一方、個人的に気になったポイントもあります。
・アロマリングホップとしての効果は従来の使われ方と同等と言うことはできず、まだ過度な期待をできる段階ではない。
・一番の課題は、「素晴らしい取り組みである再生ホップを使っている」という理由で消費者の購買意欲を掻き立てることが出来るかどうかはまた別というところです。
「おいしい、なのに再生ホップ」のようにプラスアルファの理由があれば、より価値を伝えていけるかもしれません、と仰っていました。
まだ始まったばかりの取り組みで課題もありますが、しかしこれは大いなる一歩であることは間違いありません。
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