Beer&Life Style Fashion編
【ビールとアロハシャツのペアリング】<前編>
ビールは、環境=【いつ、どこで、誰と飲むか】によって、美味しさも変わる。
夕焼けを見ながら飲んだビール、野球場で飲んだビール、久しぶりに会う旧友と飲んだビール……。
特別な一杯だったのではないだろうか?
人間は味覚分析器ではない。感情の生き物だ。
テイスティングによって、ビールを客観的に評価することも大切だが、人間は【環境による情緒】も加味して【ビールを楽しむ】生き物である。
そして、ファッションも【情緒】のひとつに他ならない。
人は身に付けるもので気分が変わる。
【どんな装い】で【どんなビール】を飲むと【気分が上がる】のか?
それが【ビールとファッションのペアリング】である。
2022年、2023年の2度にわたり連載され、その一部は2025年4月に出版された【BEER LOVER’S BOOK:リトルモア社】にも掲載された【Beer & Life Style〜Fashion編〜】。
その第3章が今、始まる。
第3章 第1回
【ビールとアロハシャツのペアリング】<前編>
目次
日本の初秋は暑くて当たり前?
2025年の夏は暑かった。
真夏日と熱帯夜が続き、天気予報の「今日も異常な暑さ」や「熱中症アラートが出ています」という言葉も聞き飽きた。
異常な暑さの日が多いということは、もはやそれが正常であり、今後日本の夏は『この暑さが当たり前』になる覚悟が必要なのかもしれない。
さらにもまして、気になるのが春と秋の暑さである。
夏の季節が春と秋を侵食し、日本の四季は二季になってしまうのではないか? と憂慮する。
暑さ対策の第一歩は、薄着!
環境問題について本気で考える時期に来ていると思うが、市井の民としてはまずは個人的に対策を練らなければならない。
エアコンを「適切に使用して」と言われるが、ネットで「エアコン 普及 温暖化」と検索してみたところ「冷媒として使われるフロンガス、室外機からの放熱、電力消費によるCO2排出などから温暖化を助長しています」と出た。
たまに「この店、寒すぎない?」なんて思ったり、公共交通機関や公共施設で上着やひざ掛けが必要だと感じることもある。
これは「エアコンの適切な使用」ではなく「エアコンの行きすぎた使用」ではないだろうか?
暑い時はまずは【薄着】になり、それでもダメならエアコンを使用するという順番にするべきではないだろうか。
エアコンのスイッチを押す前にまず薄着を! を推奨したい。
前開きのアロハシャツは着たり脱いだりするのが楽
薄着ファッションといえば、タンクトップ、Tシャツなどもあるが、今回はアロハシャツに焦点を当てたい。
なぜならば、アロハシャツは前開きだからだ。
Tシャツやタンクトップのような被り物より、前開きのアロハシャツは、【着たり脱いだりするのが楽】なのだ。
汗で服が肌にへばりつく季節には、重要である。
アロハシャツのパターンとは?
アロハシャツを選ぶ時、最も気になるのは【柄】である。
アロハシャツの柄は大きく6つのパターンに分けられる。
【オールオーバー・パターン(一定の柄が繰り返される柄)】
【ジャパニーズ・パターン(和柄)】
【ボーダー・パターン(柄が縦方向に描かれている)】
【バックパネル・パターン(背中だけが1枚の絵画のような柄)】
【ホリゾンタル・パターン(前面も背面も、1枚の絵画のような柄)】
【ピクチャー・プリント(写真を転写したような柄)】

一定の柄が繰り返されるオールオーバー・パターン。

和柄とも呼ばれるジャパニーズ・パターン。

柄が縦方向に描かれているボーダー・パターン。

背中が絵画のようなバックパネル・パターンの背面。

バックパネル・パターンの表面。シンプルである。

前面も背面も1枚の絵画のようなホリゾンタル・パターン。

写真を転写したような柄が並ぶピクチャー・プリント。
それぞれ魅力があるので、好みに合わせて選びたい。
落ち着いた【裏使い】のアロハシャツから
アロハシャツに抵抗のある人が一定数いる。
その理由は『派手すぎる』『下品』というものだ。
この刷り込みは、昭和の映画でアウトロー達が派手なアロハを着ていて、”アロハ=不良”と記号化されたことにある。
しかし、ハワイではアロハシャツは正式な場にも着ていける【正装】だと聞いたことはないだろうか?
この件に関しては、諸説あるが、1960年代のハワイで「カジュアルフライデーにアロハシャツを着よう」というキャンペーンがあり、それをきっかけにオフィスやオフィシャルな場にも広まったと言われている。
もちろん、どんなアロハシャツでも【正装】となるわけでもなく、落ち着いた柄や色調であることが望ましい。
【裏使い(リバースプリント。生地の裏が表になる使い方)】のアロハシャツは色調が落ち着き、ビビッドなアロハシャツに抵抗のある人でも着こなすことができる。

裏使いアロハシャツの王道はレインスプーナー社製。

生地の裏が表に現れるように使われると、かすれたような落ち着いた色味になる。

裏を返すと鮮やか。絵柄も反転しているのがわかる。
【裏使い】は1960年代にレイン・スプーナー社が始めたと言われていて、現在もレイン・スプーナー社の物が人気である。
アロハシャツに抵抗のある人も、【裏使い】のアロハシャツなら良いのではないだろうか?

レイン・スプーナー社のアロハシャツは台襟のあるボタンダウンシャツや長袖などもあり、ネクタイも結びやすい。ジャケットに合わせれば、カジュアルなパーティーにも行ける。
アロハシャツの王道【オールオーバー・パターン】を
少し着慣れている人は、”これぞアロハシャツの着こなし!”を勧めたい。
ファッションで大切なことは【なりきり】である。【すっかりその気】と言い換えても良い。
NGは【照れ】であり、【気恥ずかしさ】を感じさせてしまうことだ。
本人が堂々としていれば似合ってくるし、そわそわしていると似合わなくなる。
アロハシャツの王道は【オールオーバー・パターン(一定の柄が繰り返される柄)】である。
なかでも、【デュークス・パイナップル】柄は、必ず持っておくべき1枚だ。
水泳の五輪金メダリストで近代サーフィンの父と呼ばれたハワイのスーパースター、デューク・カハナモク の名を冠した2トーン柄だ。

デュークス・パイナップルと呼ばれる柄のアロハシャツは、必ず持っておきたい1枚である。
アロハシャツの原点は【和柄】
アロハシャツの起源は日本人移民がハワイに持ち込んだ”和服生地”で作られた。
アロハシャツの原点は【和柄】なのである。
日本人がハワイに移住し始めたのは1868年(明治元年)。
さとうきび農園で働くことが多かった日本人は【パラカ】と呼ばれる開襟の作業服を和服生地で作り始め、これがアロハシャツの起源と言われている。
1885年以降になると農業従事者以外の日本人移民も増え、仕立て職人だった宮本長太郎と息子の孝一郎によって営まれていた「ムサシヤ」が、1935年に「アロハシャツ」という名で新聞広告を出したのがアロハシャツという言葉の初出と言われている。
しかし、翌1936年には洋品店「キング・スミス」を経営する中国系移民のエラリー・チャンが「アロハシャツ」を商標登録したため、その後は他店のシャツは「ハワイアンシャツ」と呼ばれ、ハワイ土産として世界へと広まっていった。
【和柄】を着こなす時に注意したいのが、反社っぽくならないようにすることだ。
”お土産に買ったアロハシャツを大切に着ている米兵”といった感じに着こなすとハマる。

和柄がアメカジのアイテムになるという矛盾が面白い。このような着こなしは、女性のほうが上手いのではないか? と思う。
アロハシャツにはハワイのビール
さて、それではアロハシャツには、どのようなビールをペアリングするべきか?
それはやはり、【ハワイのビール】である。
それベタやなぁ〜〜〜。長々とアロハシャツの話を引っ張ってきて結局は、ハワイのビールかいな!
と突っ込まれるだろうが、ここはやっぱり【ハワイのビール】なのである。
アロハシャツの別名はハワイアンシャツなのだし、こればっかりは譲れないところだ。
アロハシャツの持つ【南国ムード】や【リゾート感】は、Hawaiian Beerの味わいはもちろん、パッケージデザインにもシンクロし、気分が爆上がりすること間違いなしである。
マウイビール ・パウハナ ピルスナー
マウイブルーイングの創業は2005年である。
サンディエゴ出身のサーファー、ギャレット・マレローは観光で訪れたマウイ島で「ハワイにはハワイのビールが必要だ」と感じ、移住してビール造りを始めた。
マウイブルーイングは、ハワイの文化を大切にすることを主眼にしていて、パッケージデザインには伝統的なタトゥー文様が使われている。
ポリネシア出身のタトゥーアーティスト、オーリー氏の描く作品は、パウハナピルスナーにはホップと大麦、ココナッツヒワポーターにはヤシの木といった独自性も加味されており、【伝統と創造性】という【クラフトビールの本質】を表現している秀作である。
*クラフトビールの本質が【伝統と創造性】だという件は、私の新刊【BEER LOVER’S BOOK 一生ものの趣味になるビール入門】のP42〜43をご覧いただきたい。
また、環境問題にも力を注いでおり、ブルワリーの屋根一面に貼られたソーラーパネルによる発電や、ビール粕を飼料や堆肥にするというアップサイクル活動も行なっている。
そのうえ、私が最も感銘を受けたのは、瓶ビールではなく缶ビールで提供する理由のひとつに「割れた瓶のカケラで海洋動物や野生動物怪我をさせたくないという思い」ということである。

銘柄:パウハナ ピルスナー
ビアスタイル:ジャーマンスタイル・ピルスナー
醸造所:マウイブルーイング
アルコール度数:5.2%
藤原ヒロユキテイスティングレポート
マウイビール・パウハナ ピルスナー
ホップの香りはスパイシーな魅力と若草を思わせる清涼感がある。
モルトのキャラクターも感じるが、甘ったるさは全く無く、クリスピーで喉通りがスムーズだ。後口には上品な苦味が残り印象的である。
モルトとホップのバランスがよく、北ドイツのジャーマン・ピルスナーを彷彿とさせる。
すいすい飲めるが味わあいがしっかりしているので、高い満足感を得ることができる。
ピザ、ポテト、ソーセージ、ザワークラウト、チキンソテー、ゴーヤチャンプル、スパイシーフードに合う。
コナビール・ビッグウェーブ ゴールデンエール
コナビールは、ハワイにサーフィン旅行に訪れたキャメロン・ヒーリーとその息子スプーン・カルサによって1994年創業され、1995年からビールを販売し始めた。
今年2025年はちょうど30周年を迎える。
コナビールも、ハワイを愛する気持ちが強く、ボトルや缶に「Liquid Aloha=ハワイの液体=ハワイが詰まったビール」という文字が書かれている。
そしてまた、環境問題にも配慮していて、ソーラーパネルの設置、ボトルの軽量化による輸送時のCo2排出軽減、ビール粕を直営パブのピザ生地に利用するなどの取り組みをしている。

銘柄:ビッグウェーブ ゴールデンエール
ビアスタイル:アメリカンスタイル・ゴールデンエール
醸造所:コナブルーイング
アルコール度数:4.5%
藤原ヒロユキテイスティングレポート
フローラルなアロマと、カラメルライクなモルトの甘味を程よく感じ心地よい。
口に含むとほのかな苦味が訪れ、その苦味は後口にも上品に残る。
ライトな口当たりで、軽やかに喉を通り抜けてゆき、フローラルな残り香が広がっていく。昼下がりや夕暮れのビーチで飲みたいビールだ。
ハンバーガー、フライドチキン、シーフードサラダ、とんかつ、エビフライ、サンラータン、スパイシーフードに合う。
音楽はカラパナ
合わせて聴きたいのは、古典的なハワイアンミュージックも良いが、ハワイ出身のサーフロック・グループ「カラパナ」はいかがだろうか。リラックスしたサウンドは浜辺にもぴったりだ。
Full Moon Tonight – Kalapana
Moon and Stars-Kalapana
ハワイのシャツを着て、ハワイのビールを飲んで、ハワイのサウンドを聴けば気分上々。
ゆっくりお楽しみください。
それでは、また後編で。
Cheers !
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。







