【ビールを通じて感じる韓国㊼】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(14) Brewery 304@西大門
1392年、李成桂(이성계・イ ソンゲ)によって開かれた朝鮮王朝。その都となったのが今のソウルです。ソウル市内には、朝鮮時代の城壁・城門が今も残っているところがあります。
目次
ソウルの四大門
現在のソウルに首都が移転されたのは、朝鮮王朝初期の1394年。その後、都を守るために城壁が建てられ、東西南北に四大門が設置されました。
有名な東大門と南大門
市内中心部にありとても有名な東大門(동대문・トンデムン)、南大門(남대문・ナムデムン)はこの四大門に当たり、これまで復元工事や修繕がされ今でも門を見ることができます。
東大門地域には、近未来的な流線型のフォルムが目を引く複合文化施設の東大門デザインプラザや、さまざまな商品を取り扱っている東大門市場などがあります。この地域では、特にファッション関連のアイテムに低価格ながら高品質な商品が多く、観光客にも人気となっています。
南大門の近くには韓国最大の総合市場の南大門市場があり、あらゆるジャンルの店が所狭しと建ち並んでいます。路地裏は屋台料理の食べ歩きスポットとしても人気です。
なお、東大門・南大門は一般的な呼称で、正式名称はそれぞれ興仁之門(흥인지문・フンインジムン)、崇礼門(숭례문・スンネムン)です。
北大門と西大門は?
では、あまり知られていない北大門と西大門はどうなっているのでしょうか。
北大門(북때문・プクデムン)は、正式名称を粛靖門(숙정문・スッチョンムン)と言い、ソウル北部にある北岳山(북악산・プガクサン)という山の麓にあります。もともとソウル城郭の東西南北に置かれた四大門に格式を持たせ、かつ非常時に利用する門として造られました。1976年に北岳山一帯の城郭を復元する際に再建され、今では北岳山のハイキングコースとなっています。
正式名称が敦義門(돈의문・トニムン)だった西大門(서대문・ソデムン)は、四大門では唯一現存しない門。1915年に道路の拡張工事にあたり解体撤去されたままになっています。
西大門の門そのものは現存していませんが、ソウルの区名としては西大門区があり、地下鉄5号線の駅には西大門駅があります。
Brewery 304
今回訪問したBrewery 304は、その西大門駅から徒歩圏内にあります。
Brewery 304は、2016年にソウルから南に85kmの牙山(아산・アサン)市で設立されたブルワリーです。ちなみに、牙山市は1995年までは人口15万人程度で推移していた地方都市でしたが、ソウルからの電車が乗り入れたこともあり急速に発展。2026年に人口40万人を突破した市です。
現在の場所に移転したのは2019年です。
西大門駅からBrewery 304へ
西大門駅から地下鉄3号線の独立門駅方面に向かう片側4車線の広い道路の歩道を歩いていきます。道路の反対側は高層マンションが立ち並んでいますが、歩いた側は小さめの商店や飲食店が並んでいて人通りも多く、より生活感を感じることができます。


大通りを10分弱歩き、小学校を過ぎたところで路地に入ります。車が入れないぐらいの道幅で、本当にこの先に醸造所があるのか少し心細くなりました。

少し歩くと、左側の窓ガラスの奥に醸造設備が見えました。(路地が狭いこともあり、反対側のお店の看板がしっかりと映っていましたが…)

そしてその先にはタップルームの入口が。中の様子がうかがえないのがちょっと不安でしたが、前にメニュー表が出ていたので営業中のはず!とドアを開けました。

タップルームでビールを味わう
中に入ると目に入ったのはカウンター。右手にはテーブルが並ぶシンプルでこじんまりとしたスペースがありました。この時は気が付かななかったのですが、入口近くには階段もあり、2階で飲むこともできます。


ビールと料理の紙のメニューはありますが、基本は自分のスマートフォンからの注文です。
ビールは8種類。うちコラボビールが2種類、ゲストビールが2種類でした。
Wi-Fiの入りが悪かったので、まず紙のメニューを見てイングリッシュベストベターというビールをチョイス。するとそれは今はなく、チョコレートを加えたビールなら提供できるとのことだったのでお願いしました。(これに限らず、紙のメニューとスマートフォンで出てくるメニューが若干違っていたのはご愛敬…)
最初に頼むことになったのは、チョコレートオールドワールドブルースというビール。8000ウォン(約880円)でした。アルコール分3.8%は、頼もうとしたイングリッシュベストビターと確かに同じです。
チョコレートと聞いたときはクセの強いビールかも…と思ったのですが、実際には意外とバランスのとれた深みのあるビールでした。
ソウルでは大都会のせいか、無料でつまめるおつまみが提供されることは少ないのですが、ここではスナックが提供されました。

韓国で提供される無料のおつまみについては
【ビールを通して感じる韓国⑯】韓国のタップルームで無料で出てくるおつまみを味わう(2024.2.29)
にまとめてありますので、興味のある方はこちらも読んでみてください
続いて頼んだのは、ラガーアフターオール。アルコール分5%で、7000ウォン(約770円)でした。シンプルな味わいのラガービールですっきりとして美味しかったのですが、こちらをまず最初に頼めばよかったとは感じました。

入店したときにたまたま日本語のできる従業員の方がいて、すべて韓国語で書かれていたフードのメニューを全部日本語で簡単に説明してくれました。
それでも注文しようかどうしようか迷っていたら、さらに日本語の翻訳版を印刷してきてくれました。(折れ目が入っているのは、私が持ち帰ってから撮影したためです。)

無料で出てきたおつまみだけでもビールを飲むには十分かな…とも考えていたのですが、せっかくここまでしてもらったので、メニューの中からソーセージとマッシュドポテト(14000ウォン・約1540円)を注文しました。
皿の半分にソーセージが、残りの半分にマッシュドポテトが載っているものが出てくると思ったら、想像と違ったビジュアルで出てきました。味は良かったです。

Brewery 304には、ビールも料理も普通のものからやや個性的なものまでありました。昔ながらのソウルの路地にあり、繁華街や観光地にあるお店のような派手さはありません。でも、従業員の方々もとにかく親切なのに適度な距離感もあり、とても居心地がよかったです。最初は不安に思いながら歩いた店の前の狭い路地も、帰り道には魅力的に感じていました。
再訪したいブルワリーが、またひとつ増えました。
西大門地域を観光するなら…
西大門地域は他の観光地からも距離は近いですが、観光客は少なめ。その分ゆったりと歩くことができます。
観光の中心になるのは、地下鉄3号線の独立門駅の周辺です。日本統治時代に建てられた刑務所の跡地を保存・公開する西大門刑務所歴史館と独立公園、地元の台所の霊泉市場、ソウルの都心を見渡すことができる仁王山・安山という2つの山への登り口が徒歩圏内にあります。
ちなみに、独立公園の中には、1897年に完成した独立門が現存しています。
西大門刑務所歴史館で当時の様子を垣間見ることができる西大門刑務所は、1908年に京城監獄という名で造られた韓国初の近代的刑務所であり、日本統治時代には独立運動家達を投獄していた場所です。
独立後は韓国政府に移管され、名称の変遷はあったものの1987年に移転するまで利用は続いていました。1992年には元刑務所一帯に独立公園を開園。1998年には西大門刑務所歴史館が開館し、一般公開されています。
実は、Brewery 304が入っている建物は、かつてこの西大門刑務所に収容された人々に差し入れをするために滞在する人々が利用した旅館だったとのことです。
いろいろ考えさせられる歴史的な背景はあるものの、今はその地で美味しいクラフトビールを味わえることに感謝したいと思います。
*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK)」(2020)BEER POST PUBLISHING、「우리 동내 크래프트 맥주」(2025)
*100ウォンを約11円として換算しています
*写真は全て2026年8月に筆者が撮影しています
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









