[コラム]2024.2.29

【ビールを通して感じる韓国⑯】韓国のタップルームで無料で出てくるおつまみを味わう

今月、半年ぶりに釜山に滞在しました。
空港からホテルに向かい荷物を置くと、向かったのはお気に入りのひとつになっているタップルーム。久しぶりに韓国語のメニューと格闘しながら、最初に飲むビールをどれにしようとメニューを眺めつつ、食べるものはどうしようかも悩みました。数時間前に機内食を食べてきたので、何かほんの少しだけつまみたい気分。でも韓国ではもともと一人飲食の習慣がないためか、タップルームで頼める食べ物はグループでシェアすることが前提のピザなど、ボリュームのあるものが中心です。
それでもメニューの中から一番ボリュームの少なそうなフレンチフライを頼んでみたのですが、やや後悔することになります。ビールと一緒に無料でおつまみのえびせんが出てきたからです。
「この店は出してくれるんだった。様子見してから頼めばよかった…」と。

韓国のタップルームでは、こんなふうに無料で簡単なおつまみを出してくれることがしばしばあります。これはパンチャン(반찬)という食文化の影響があると私は考えています。

韓国のパンチャン(반찬)文化

韓国では料理を注文するとキムチやナムルなどの小皿料理が出てきます。これはパンチャン(반찬)と呼ばれ、料理を頼んだらもれなく付いてくる無料のサービスです。卵焼きやチヂミが出てくるところもあり、ビールなど酒類も頼んだときにはいいおつまみになります。

パンチャンを日本語に訳すと「おかず」で、おかわりもできるものも多いです。
パンチャンが無料でおかわりもできる理由としては、かつて韓国経済が困難だった時代に白米がとても高価だったため、お腹いっぱいに食べてほしいという店側の思いから、白米のおかわりは難しくてもバンチャンのおかわりを快く提供したことにあるようです。
お店によっては、セルフサービスでおかわりができるコーナーがあります。

最近は料理の食べ残しや大量廃棄などの点でバンチャンが疑問視されることもあるようですが、この「無料でふるまう」という文化があることが、タップルームでも無料のおつまみが提供されることがあることにつながっているのだと思います。

韓国のタップルームで出てくるもの

では、韓国のタップルームではどんなおつまみが無料で提供されるのでしょうか?
残念ながらクラフトビールのお店では韓国料理が出てくることがほぼないので、パンチャンが提供されたことは私の経験上はありません。ほとんどが乾き物になります。(キムチはともかく、ナムルならクラフトビールにも合わせやすいと私は思っているのですが…)

・クラッカー
一番多いのはクラッカー。塩味が多いですが、3枚目の写真のものはピリ辛味で、ビールがどんどんすすみました。

CRAFT ROO@ソウル(益善洞)


CALMEGI BREWING@釜山(広安里)


DAEDO BREWING@大邱

・えびせん
クラッカー同様、軽めのおつまみです。

WILDCAT BREWING@釜山(西面)

・ポップコーン
ポップコーンが一袋出てきたお店も。人数が少ないとこれだけでお腹いっぱいになるかもしれません。

THREE NONKEYS BREWING@釜山(西浦洞)

・バナナのココナッツフレークかけ
出てきて今までで一番びっくりしたのはこれ。スライスしたバナナにココナッツフレークがかかっていました。韓国で無料のおつまみが出てくることには慣れていましたが、さすがに「これ頼んだっけ?」と思ってしまいました。
初めての組み合わせでしたが、意外とビールにも合い美味しかったです。

OSHIGE CRAFTBEER@釜山(東莱温泉)

ビールを飲む場の文化を楽しもう

日本にも、居酒屋や一部飲食店で最初に出てくる少量の料理「お通し」という独自の食文化があります。こちらも注文をしていなくても提供されますが、ほとんどの場合がサービスではなく有料です。席料の意味を持つこともあり、多くのお店では300~500円前後という価格で設定されています。
頼んでいないものが有料で提供されるということに疑問の声もあるようですが、注文してから料理が出るまでの間、先に提供されるお酒と一緒につまめるものが欲しいだろうという店側の心遣いから始まったという話があります。
韓国のパンチャンと日本のお通し…内容に違いはあっても、もともとはどちらもお店の思いやりから生まれたもののようです。

韓国のタップルームで提供される無料のおつまみも、必ず提供されるものではありません。今回の釜山周辺の旅で出てきた割合は5割強。首都ソウルよりもそれ以外の都市、大型店よりも小さなお店で提供されることが多いように感じます。
韓国のタップルームに行く機会があったら期待し過ぎずに、でももし頼んでいないおつまみが出てきたら、ビールを飲みながら「無料でふるまう」という文化をありがたく楽しみましょう。

おつまみお通しパンチャン韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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