一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

北海道の注ぎ手4人が集結!スイングカラン注ぎフェス2026

すっかり秋となった北海道。秋ならではのおいしい食材も次々と旬を迎え、おいしい食べ物とビールを楽しむ機会が、ますます増えていきそうだ。
仲間や家族と訪れる飲食店で提供されるビールは、自宅で注ぐものとはまた違い、きめ細かな泡立ちや適切な温度管理、冷やされたグラスなど、さまざまな工夫によっておいしく感じられることも多いだろう。
そんな、何気なく注がれてテーブルに運ばれてくる一杯のビールだが、実はビールを注ぐためのビアサーバーや、その注ぎ方にはさまざまな種類がある。なかでも、昔ながらのビールの注ぎ方として知られているのが、「スイングカラン」と呼ばれるものだ。
今回は、そんなスイングカランに注目し、9月に開催されたイベントの様子を紹介したい。

奥がスイングカラン。4人の注ぎ手により注いでもらったビール

スイングカランとは

スイングカランは、昭和初期から大阪万博の頃までに使用されていたビールサーバーの注ぎ口のこと。ビールの注ぎ手にとって憧れの存在でもある。これを使いこなし、注ぎ方だけでビールの味わいを変化させるのは、まさに極みの技だ。
スイングカランについては、ビアジャーナリストのくっくショーヘイ(佐藤翔平)さんが、とても分かりやすくまとめた記事を公開している。スイングカランはもちろん、ビアサーバーについても理解が深まり、スイングカランで注いだビールを飲みたくなる内容だ。ぜひ参考にしてみてほしい。

くっくショーヘイBJの記事(2026年4月23日掲載)
樽生ビール設備の変遷から見るスイングカラン【ボクソン工業株式会社インタビュー】
[記事を読む] https://www.jbja.jp/archives/60528

北海道のスイングカラン注ぎ手が集結!

2026年9月6日、Maltheadsの坂巻紀久雄さんが主催する「スイングカラン注ぎフェス2026」が、札幌のビアバー、Hey.today!Beer standで開催された。

主催者の坂巻さん(左)と同じサッポロビール園で働く上野さん

会場:Hey.today!Beer stand
札幌市中央区南3条西1丁目9-22 フロンティア札幌ビル地下1階
代表:吉田恭平さん
「ビールで北海道を『HOT』海道に」をビジョンに掲げ、店内では北海道産クラフトビールを10タップ提供している。ブルワリーとのイベントも頻繁に開催され、週末にはビールファンが集まる、エネルギッシュなビアバー。
Instagram:https://www.instagram.com/hey.today_beerstand/

今回のイベントには、道内のビール注ぎ手4人が集結した。これまでにない、豪華な顔ぶれである。

・谷 明郭さん(富良野たにじん)

富良野市にある、老舗の味付ジンギスカン専門店である。サッポロビール園以外では、道内で初めてスイングカランを導入した。ドーム型鍋の周囲の溝に特製ダレを注ぎ、野菜を煮込みながらいただく、独自の「すき焼き風ジンギスカン」が名物として知られている。
HP:https://www.tanijin.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/furanotanijin/

・高野 洋平さん(タカノビールスタンド)

帯広市で、サッポロ生ビール黒ラベルの「注ぎ方」に徹底的にこだわる人気のビアスタンドである。昭和初期の復刻版である「円筒氷冷式スイングカランサーバー」を十勝地区で初めて導入。注ぎ手の熟練した技術によって、新たな味わいや喉越しを表現している。
HP:https://www.instagram.com/takanobeerstand/

・上野 正陽さん(サッポロビール園)

札幌市苗穂にある、北海道屈指のビアホールで、伝統の「一度注ぎ」を体現する若手のホープである。華麗で流れるような注ぎ方は多くの人を魅了し、飲む前から楽しませてくれる。
HP:https://sapporo-bier-garten.jp/

・坂巻 紀久雄さん(Maltheads)

ビール業界歴は四半世紀。「地ビール」の時代からクラフトビールに携わり、「サッポロ・クラフトビア・フォレスト」など多くのイベントに関わってきた。Maltheadsの店舗は現在休止中だが、坂巻さんは現在、サッポロビール園で注ぎ手として奮闘している。
HP:https://maltheads.net/
Facebook:https://www.facebook.com/Maltheads

開催のきっかけ

坂巻さんが経営していたビアバー、Maltheads(2026年1月末に閉店)では、これまで何度か谷さんを招いてスイングカランのイベントを開催していた。今回も札幌市内での開催を目指して会場を探していたところ、Hey.today!Beer standを使わせてもらえることになった。
開催が決まると、谷さんが以前から付き合いのあった高野さんを、坂巻さんが同じ職場でビールを注いでいる上野さんを誘い、4人が集まった。富良野、帯広、札幌と、道内各地にいる注ぎ手が札幌に集結するのは、とても貴重な機会であった。

開催にあたっては、以前からスイングカランの出張イベントを実施してきた谷さんの強い想いもあった。
「北海道においてスイングカランの認知度はかなり低い現状です。私が富良野から札幌へ行き、ビールイベントをする際は、毎回『スイングカランとは』をテーマにしています。その中で、ビール通が集まるMaltheadsでは、スイングカランの認知度を上げるため、注ぎ手としてイベントを続けてきました。今回のHey.today!Beer standの吉田さんはとても協力的で、店舗も広いので、たくさんの人にスイングカランを知ってもらえる機会だと思いました」

「実は今回のイベントには、認知度を上げること以外にも裏ミッションがありました。注ぎ手の勉強会や、今後現れるであろう新たな注ぎ手のフォロー体制づくり、そしてスイングカランを所有するサッポロビール株式会社を知っていただくことです」
谷さんは、「ビール王国北海道」への道づくりのため、地道な普及活動を続けていた。

4人の注ぎ手が生み出す味わい

イベントは13時にスタート。開始早々から、多くのビールファンが集まっていた。

14時頃にはビールを待つお客さんでいっぱいの店内。注目度の高いイベントとなった。スイングカランは写真の右側に設置していた。

会場で使われたスイングカランは1台。谷さんが持参したボクソン社製の口径9ミリのものである。
ビールは、会計時にお客さんが注ぎ手を選び、指名するシステムで提供された。用意されたのは、サッポロ生ビール黒ラベル160リットルとサッポロクラシック10リットル。黒ラベルを選んだのは、4人に希望を聞いたところ、全員一致したためである。注ぎ方によって味わいの違いを出しやすいことも、理由のひとつだという。

スイングカランは谷さんが富良野から持参したもの。カウンタの台に設置していた。

 

4人の注ぎ手から選んでオーダーする。

4人が注いだビールをいただいたき質問に答えていただきました。
(※以下、提供していただいた順)

●上野 正陽さん【サッポロビール園】
ビールの勢いがよく、タップを閉める動作が素早い。4人の中では、注ぐ時間が最も短かったと感じた。注がれたビールには炭酸ガスが最も多く残り、喉越しも楽しめる。

なぜビール注ぎを?
「以前は札幌の銀座ライオンに勤めて、ビールを注いでいました。その後、転職して整骨院で働いていましたが、現在はまたビール注ぎに戻ってきた形です」
飲んだ感想を伝えると
「注いだビールに炭酸ガスが残るよう、素早く注ぐことを心掛けています。おいしく飲んでいただけてうれしいです」

●高野 洋平さん【タカノビールスタンド】
注ぎ口を見る目線は低めで、一杯にかける思いが伝わってくるような雰囲気があった。注がれたビールは最もまろやかで、麦芽の甘みをよく感じた。

札幌で注いだ印象は?
「札幌でも当店のお客さまが予想以上に多く、手応えを感じました。Hey.today!Beer standは、地下でありながら雰囲気がよく、ベストな会場でした」
ほかの注ぎ手と一緒に注ぐ機会いかがでしたか?
「注ぎ手によって個性が出るので、営業中もずっとほかの注ぎ手を観察し、勉強させていただきました」

●谷 明郭さん【富良野たにじん】
何気なく注ぐ姿からベテランらしさを感じた。炭酸ガスの残り方は、4人を比べると中間くらい。麦芽の甘み、ホップの香り、ガス感のバランスが取れたビールであった。

普段のご自身のお店との違いはありますか?
「団体のお客さまには松尾注ぎ、一杯の場合は一度注ぎです。なので、注ぎのスタイルが決まっておらず、味にばらつきがあります」と笑う。
師匠はいらっしゃいますか?
「師匠はビアライゼ’98の松尾光平さんで、お世話になったのはビールスタンド重富の重富寛さんです。好きな味のスタイルは、福岡県北九州市にある老舗ビアバー、DAIMARU(ダイマル)さんですね」

●坂巻 紀久雄さん【Maltheads】
スイングカランで注ぎ始めてまだ半年だというが、迷いのない手つきで、手慣れた様子に見えた。炭酸ガスの残り方は中間くらいで、飲むとホップの香りをよく感じた。

普段のスイングカランと違いはありますか?
「サッポロビール園ではホースが5ミリ径なので、今回使用した9ミリ径のものは、普段よりビールが出るスピードが少し速かったです。最初は注げるか心配でしたが、問題ありませんでした。器具が変わっても使用方法はそれほど変わりません。こういった場では、個人の注ぎの技術が試されると思います」

左から、上野注ぎ、高野注ぎ、谷注ぎ、坂巻注ぎ。特別に一気に4人に注いでいただいた。

それぞれの環境による注ぎ方

イベントは、終始お客さんが訪れ、店内では行列が出来るほどの大盛況であった。
複数で来店されたお客さんはお互いのビールを飲み比べ、カウンタで1人じっくり味わう方もいた。夫婦で来られてたお客さんを見ているとお互いのビールを飲み比べ「おっ!意外と違うもんだな。どう?オレはこっちが好きかな」という会話も聞けたり、スイングカランの魅力が広まっていく場面も見受けられた。
予定の終了時刻17時を前に完売となった。

イベントが終わり、主催者の坂巻さんに、理想の注ぎ手や注ぎ方について改めて尋ねると
「同じサッポロビール園で勤務している上野さんをはじめ、いろいろな先輩たちが積極的に教えてくれました。みなさん、良い意味で少しずつ流儀が異なります。その中から共通する部分を見つけながら、吸収しているところです。『自分らしいビール』はまだまだ先の話で、今はとにかく安定したビールを注ぐことに集中しています。『泡切り3年、注ぎ8年』の意味を実感し始めているところです」

谷さんからは、注ぎ手を指名制にした理由も聞けた。
「今回、注ぎ手の指名制にしたのは、注ぎ手のみなさんが普段注ぐ環境によって、目指す味や姿勢が違うからです。サッポロビール園は大量にビールを注ぎ続ける『連続注ぎ』が中心で上野くんの連続注ぎは圧巻です。一方、タカノビールスタンドは『一球入魂スタイル』です。私は、ほかの液種やソフトドリンクも並行して扱うので、『ながら注ぎ』でしょうか(笑)。スタイルが決まっている注ぎ手を見ると『いいなぁ』と思ってしまいます」

同じスイングカランを使っていても、注ぎ方は店の営業スタイルでも変わる。
そういった違いも知ることで、ビールの注ぎ方をさまざまな角度から楽しみ、そしてスイングカランの奥深さを実感できたイベントであった。
「ビール王国北海道」への道づくりに向けて、今後も継続して開催されることを期待しつつ、引き続き応援していきたい。

左から、Hey.today!代表の吉田さん、坂巻さん、谷さん、上野さん、高野さん

参考文献
・maltheadsホームページ https://maltheads.net/info/6875587
・日本ビアジャーナリスト協会 くっくショーヘイBJ記事
樽生ビール設備の変遷から見るスイングカラン【ボクソン工業株式会社インタビュー】 https://www.jbja.jp/archives/60528

スイングカランイベント第2弾の開催が決定!

スイングカラン注ぎフェス vol.2
開催日:2026年11月13日(金)
時間:15:00~21:00(売切れ次第終了の場合あり)
会場:カネキ小飼商店 北海道札幌市中央区北2条東11丁目23(JR苗穂駅前)
参加料:最低1オーダー
ビール1杯:650円

サッポロビール園ジンギスカンスイングカランビールスタンド富良野帯広注ぎ手

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

こばやしのり

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ
1983年北海道生まれ 札幌市近郊に在住
ビール好きになったのは、2014年に日本ビール検定のテキストを書店で見たのがきっかけ。
いまはビールを通じて、様々な方と繋がることが楽しいです。
普段は、ビールや野菜とは関係のない社会インフラに関わる仕事をしています。
野菜ソムリエの資格も活かし、ビールと農家さんが関わるシーンや野菜・果物など、北海道らしい記事を発信していきたいです。

■日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエ
■北海道フードマイスター
■ジャパンビアソムリエ
■ベルギービール・アドバイザー
■日本ビール検定 びあけん2級