[イベント]2018.9.15

醸造家さんの隣から見た、岩手のアツい夏

岩手の夏がこんなにアツいなんて。

8/24(金)~26(日)の3日間、「第21回全国地ビールフェスティバルin一関」が岩手県・一関市にて開催されました。私は前半の2日間、ビールサービングを行うボランティアスタッフとして参加し、熱くて暑い東北の夏を経験。その様子をお届けします。

24(金)-15:00 ボランティアスタッフの受付とミーティングが始まりました。諸注意などを受け、各自、渡されたマニュアルでブースの配置を確認。私は、24(金)は銀河高原ビール、25(土)はFar Yeast Brewingの担当でした。どちらも普段から愛飲している醸造所だったので、否応なくテンションが上がります。
支給された鮮やかなグリーンのスタッフポロシャツに着替えたら、銀河高原ビールのブースへと向かい、まずは挨拶。にこやかで明るい声の岡秀憲代表取締役と、醸造担当の中村哲郎さんが、穏やかな笑顔で出迎えてくださいました。銀河高原ビールでは、スタッフ同士をあだ名で呼び合うようにしているとのこと。岡さんはおかぽん、中村さんはメーテル(!)だと教えてくださり、楽しい時間を過ごせるなと確信しました。

左からメーテルこと醸造担当の中村さん、隣のブースに出店していたさくらブルワリーのスティーブン・マイケル・バットランドさん、おかぽんこと岡さん。終始こんな雰囲気で販売を行い、この賑やかさに惹かれて買いに来たお客様も。

この日の銀河高原ビールのラインナップは、「ヴァイツェン」、「ヴァイツェンボック」、そして発売前の「デュンケルヴァイツェン」の3種類。「デュンケルヴァイツェン」は、この日が初お披露目となるため、一般のお客様から感想を聞きたくて持ってきたとのこと。私も、提供時間前に繋ぎたてをテイスティングさせて頂きました!香ばしい香りとコクを感じます。液色は濃いブラウンですが見た目の印象と違ってすっきりとした飲み口でした。ヴァイツェンが好きなら間違いなく好まれる味わいだと確信したので、「本日の一押し」という事でお客様にどんどんお薦めしました。

銀河高原ビールは、地元岩手の醸造所ということもあり、「このイベントに来たら、銀河高原を飲まなきゃだよね!」とか、「このイベントの度に毎年飲んでいる」といった声をよく聞きます。中でも印象的だったのは、岩手大学ビール部の皆さん。日々、部活動でビールの研究をしているそうです!最初に買いに来てくださった時、岡さんから「ヴァイツェンボックの“ボック”とはどういう意味でしょう?」、というクイズを出された彼ら。最後の締めの一杯を買いに来てくださった際、調べた結果を答え合わせしていました。なんと勉強熱心な学生さんたち!わからない事はすぐ調べる姿勢、私も見習います。彼らは翌日、遠野のホップ収穫祭に参加するとのこと。今後の更なる研究活動にエールを送る意味で、一人一人と握手をしてお別れしました。

岩手大学ビール部の皆さんと、彼らの隙間から顔を出す岡さん。たくさん飲んでたくさん研究して頂きたいです。

普段から銀河高原ビールを飲んでくださっている方と直接交流する機会を持つ事ができ、「こちらがお礼を言う側なのに、お客様から『ありがとう』って言われるのは本当に嬉しいなあ」という岡さんの言葉もまた、強く記憶に残りました。
また、このイベントでは、ご高齢の方でもビールをスタイルで呼ぶ方が多いことに驚かされました。どちらかというとお客様の年齢層が高いビールイベントですが、「ヴァイツェンボック」と「デュンケルヴァイツェン」で悩んだ70代くらいの男性が、しっかりとスタッフの説明を聞いたうえで、「ではこっち」と選んで買って行く姿には感動を覚えました。
地元の方々がこのイベントを一つのお祭りとして純粋に楽しみにしていて、なおかつクラフトビールが生活に近い所にあることがわかります。回数を重ねていく過程で、クラフトビールが文化として地域に根付いていったのだろうと思います。

2日目の25(土)にお手伝いをしたのはFar Yeast Brewingでした。山梨からいらしていたのは醸造担当の細貝洋一郎さん。29歳の若手醸造家さんです。岩手におけるFar Yeast Brewingの知名度はそれほど高くなく、また、屋号も英語の為、こういったイベントでは客足が伸びにくいと仰る細貝さん。それでも、蓋を開けてみれば、最高気温35度まで上がった暑い日だったこともあり、飲みやすい「馨和 KAGUA Saison(セゾン)」や、チェリー果汁を使用し、酸味があってすっきりと飲める「Kriek in the flesh(クリーク インザフレッシュ)」を求める方も多く、列ができる時間帯も。

醸造担当の細貝さん。しっかりお客様の目を見ながらビールを手渡す姿が印象的です。

Far Yeast Brewingのブースでは、樽が打ち抜かれると、それまで繋いでいなかった新たな銘柄を繋ぐため、来場する時間帯によって異なるビールが楽しめるようになっていました。前日にもいらしていたという男女2人組のお客様は、「馨和 KAGUA Rouge(ルージュ)」が繋がるのを待っていると言います。このお2人、Far Yeast Brewingの「馨和 KAGUA Rouge(ルージュ)」(山椒と柚子を使用)と、いわて蔵ビールの「ジャパニーススパイスエール山椒」を飲み比べてみたい!という素敵な楽しみ方を計画していたのでした。何度も買いに来てくだる方には、先ほどとは別の銘柄をおすすめし、「こっちも美味しいね」と気に入って頂けるとこちらも嬉しくなります。イベント特有の楽しみ方をお客様の姿から教えてもらいました。

25(土)の朝一のラインナップ。「Kriek in the flesh(クリーク インザフレッシュ)」はアメリカ・オレゴン州ポートランドにある醸造所、「Culmination Brewing(カルミネーションブルワリー)」とのコラボレーション商品のため、「限定」という言葉に惹かれて購入される方も多くいらっしゃいました。

25(土)のイベント終了後には、ボランティアスタッフと出店している醸造家さん、そして実行委員会の皆さんが参加する懇親会が開かれました。場所は、会場そばに立地する「世嬉の一酒造」の敷地内にあるイベントスペース、石蔵クランストンです。2日間終了時点での売上量ベスト10の発表もあり、1位は城端麦酒で600リットルを越える売上でした。「グレートブルー」「トロピカルピンク」といった見た目にも楽しく華やかなビールや、紅茶を使用した「アールグレイ」など個性あふれるラインナップが、クラフトビール初心者やビールを飲みなれない方には新鮮だったようで行列が絶えませんでした。納得の1位です。
2日目のこの日は朝からうだるような暑さで、皆さん疲労困憊でもおかしくはないのですが、醸造家さん同士の交流はもちろんの事、多くのボランティアスタッフ同士も健闘をたたえ合うような楽しげな乾杯が、そこここで幾度となくなされていました。イベントの成功という一つの目的に向かって2日間を共にした仲間達と飲む仕事の後の一杯は、格別の美味しさでした。よく晴れたこの日、夜になっても雲は少なく、帰路に就く私達に大きな月がお疲れさまを伝えてくれているようでした。

高い天井に響く「乾杯!」働いた後の一杯をみんなで堪能しました。

ボランティアスタッフとしてビールサービングをした2日間を通して、醸造家さんの素顔を垣間見、造り手側の気持ちを共有出来たことは大きな収穫でした。お渡ししたビールをその場で一口飲み、目を見開きながら、「美味しい!」と一言。そしてにこにこしながら席に戻っていくお客様の笑顔は、私のことも笑顔にしてくれました。これが、もし自分の造ったビールだったなら尚更嬉しいだろうなと思い、隣に立つ醸造家さんの顔を見ると、お客様以上に嬉しそうな笑顔だったことも印象に残りました。いとも簡単に笑顔の連鎖をつくるビールの熱量に圧倒され、この連鎖にもっとより多くの人々が巻き込まれていくように願います。

Far Yeast Brewingビアフェスボランティア一関市全国地ビールフェスティバルin一関岩手銀河高原ビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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