[コラム]2023.11.20

宝塚歌劇作品とビールのペアリング〜「フリューゲル-君がくれた翼ー」〜

※最初に断っておくが、今、世間でいろいろと取り沙汰されている宝塚歌劇団の、作品を取り扱う。まずは、亡くなられた劇団員生徒の方のご冥福をお祈りしたい。

 

この記事を書こうか、非常に、迷った、が、純粋に、演劇としての作品の話歴史の話ビールの話なのでご容赦いただきたい。

 

先日、東京宝塚劇場で月組公演「フリューゲル-君がくれた翼-」と「万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)」を観劇した。(今回は本拠地でも●回観たうえでの遠征だった。)

宝塚は基本お芝居とショーの2本立てで上演されるのだが、ビールの話で触れたいのは、お芝居の方の「フリューゲル-君がくれた翼-」の方だ。

 

作品内容とハイライト

「フリューゲル〜」は東西ドイツに分かれていた時代のベルリンの話だ。

メチャクチャざっくりと書くと

東ベルリンで西ドイツのスター歌手ナディアがコンサートをやることになって、それの責任者に東側の軍人、主人公であるヨナスが任命されて…で、まあ、コンサートを成功に導けるかと言うストーリーが中心で、その中に西側への亡命劇や、ベルリンの壁の崩壊、母親との再会といったエピソードが散りばめられている感じだ。

ざっくり過ぎるほどざっくりなので詳しくは公式ホームページなどをぜひ確認していただきたいが、コメディチックに作られていて、軽く観れながらも、笑って泣いてと忙しい作品になっている。

この作中、一番のハイライトは、1989年と記憶に新しい歴史の(といっても、筆者は生まれた直後くらいなので記憶にない!)、ベルリンの壁の崩壊だ。

舞台の盆(回転機構)を駆使しながら、壁を挟んだ東西のベルリンが交互に描かれていて、その時の歴史を体感できる。

物語の中とはいえ、まさしく体感、つまりその場に一緒にいる感覚になれるのがナマモノの演劇の素晴らしいところなのだ!

 

と、前置きが長くなってしまいましたが、

ようやくビールの話に入っていきます!

ビールに関しての主人公は物語の語り部として出てくる東ドイツの物理学者の役のアンジー

このアンジー、公式には言及されてないが、明らかにモデルとなっている人物がいる!

それは!

東ドイツで当時物理学者だった、元ドイツ首相

アンゲラ・メルケル

アンゲラ・メルケルが飲んだ、最高だったであろうビール

そのアンジーは作中で、壁崩壊によってベルリン市民が歓喜する中、西側の人からビールを受け取り、飲み、こう言う!

「私はこの日、生まれて初めて西側のビールを飲んだ」

そう、実は、この言葉、メルケル自身が、壁が崩壊したその日のことを振り返り語った言葉に由来しているのだ!

実はメルケルは実際、ベルリンの壁崩壊のその時、まさしくその場にいて西側に行った一人なのだ(といっても、週一度の楽しみと決めていたサウナの帰りに人の流れについていったら、西側にでた、ということらしい(笑))!

ここで考えてみてほしい

壁で隔てられた東ベルリンから解き放たれ、西ベルリンで飲んだビールの味を!

さらに付け加え考えてみてほしい、サウナ帰りという条件を!

その味たるや想像を絶するに違いない(ちなみにその前に東側でビールをすでに飲んでいたらしいが…)!!!

 

劇中に登場するビール

ちなみに、この「フリューゲル〜」の劇中、西ドイツを代表するビールとして「Beck’sビール」がセリフにも、小道具としても出てくる。

アンジーが初めて飲むのもBeck’sビール(実際メルケルが飲んだビールは何だったのかはわからないが)!

映画でも演劇でも目の前でビールが飲まれていると飲みたくなるのがここのサイトにアクセスしてる人ではないだろうか??(決めつけは良くないが!)

(そうだとして)そんなビアラバーのワタクシは観ている最中、こう叫びたくなった。

「Beck’sビールが飲みたーい!」

が、もちろん東京宝塚劇場、宝塚大劇場含め、おそらく日本の劇場のほとんどは観劇しながらの飲食は禁止されている(まあ、飲んでいいとしても、お手洗いに困ることになるのだが…!)。

で、なら終演後に、と作品への感動と「Beck’sビールが飲みたーい」という想いと共に幕間休憩後にショー「万華鏡百景色」を観る。するとそんな想いも作品の圧倒的な力に頭の中で花火が打ち上がり、ビールへの想いすら吹っ飛んでしまう

のだが…そんなのはショーの間のひととき。

終演後、思うはやはりBeck’sビールへの想い。

しかし調べて衝撃…

日本ではBeck’sビールはもう売ってないのだ!

(ちなみにドイツ在住の友人に確認したところ、ドイツではどこのスーパーでも売っているとのことだ)

 

作品とのペアリング

Beck’sビールを飲むのがいちばんの相性とは言うものの日本では手に入らないので、別のビールでこの作品にあうビールを考えてみた。いわゆる作品とのペアリングだ。

結論にいたったのは、若干のこじつけと思われるかもしれないが、これ。

Darguner PILSNER

Darguner PILSNERは東西ドイツ時代、東ドイツ側だったダルグンと言う街で造られている。しかし、創立は1991年と壁崩壊後なのだが、東西ドイツ統一後、旧東ドイツに初めてデンマークの会社として、できたブリュワリーなのだ。

ってことは、つまり

ベルリンの壁が崩壊しなければ、生まれなかったビールということになる!

一つのドイツとして新しい道を歩んでいく過程で生まれたビール、舞台の観客として疑似体験できた壁の崩壊があったからこそ生まれたビール。そんなことを思いながら、トップスター月城かなとを初めとする月組の出演者の熱演と舞台の感動をつまみに飲むとまた普通に飲むのとは違った味わいとなる気がするのだ。

そしてサウナ帰りに飲むとより一層いいのかもしれない。

最後に

ベルリンの壁を実際訪れたことがある。

ベルリンの壁に描かれたレオニード・ブレジネフとエーリッヒ・ホーネッカー

横から見たベルリンの壁

実際見てみると非常に薄い壁ということにびっくりした。

しかし当時の人からすると、非常に厚い壁だったのだろうな、と思う。

ここからはとても真面目な話。

ベルリンの壁は実質的に崩壊したが、この現代において、様々な壁がある。「フリューゲル」とは、翼、の意味だが、ビールが翼となり全人類仲良く飲める日が来ればいいのに、と願う(もちろん、飲める人、飲める年齢の人たちだけで)。真面目ではない様に思えるが大真面目に。

補足だが、残念ながら、11/19に千秋楽を迎えてしまったこの舞台、生の感動はもう味わうことができない。しかし!映像として販売されている。そして意外と近くを探せば宝塚ファンというのはいるもので「それ映像持ってるよ!」なんて人に「ビール飲みながら見ようよ」などと声をかけたらその人との小さい壁が一つ崩れるかも、しれない。

そんなことでもビールは翼となる、のかもしれない。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

西條伊里也

ビアジャーナリスト

ビールは元々好きだったが、イギリス滞在中に、新型コロナの影響でロックダウン生活を送ることになり、意気消沈している時に近くのブリューパブが寄付という形で一週間に一度、販売していた持ち帰り用の4パイントのビールに救われた気がして、ビールとの関係性が、友達以上恋人未満の関係から恋人に昇格。ただ、それ以外にも宝塚歌劇、ミュージカル、演劇、音楽も愛していたりする。シャンソン、ドラム、パーカッション、その他色々もやってる時もあればやっていない時もあったり。

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