なぜ酔っぱらうと“ピンクの象”が見えるのか?——水玉のカバへ続く物語【JBJAChannel】
ビールに愛された皆さまへ。
今回はヒューグ醸造所(Huyghe Brewery)のParanoia Original Hoppyをご紹介します。

クラフトビールの世界には、味わいや香りだけでなく、物語や象徴が深く息づいています。
その中でも、ときどき耳にするのが「酔っぱらうとピンクの象が見える」という表現。
まるでヨーロッパの古い伝承のように語られることもありますが、実際はどうなのでしょうか。
目次
◆ ピンクの象は“ヨーロッパ伝承”ではなかった
じつはこの表現の出発点は、英語圏にあります。
19世紀末から20世紀初頭のアメリカでは、酩酊が進んだ状態を比喩的に「奇妙な動物が見える」と描写する文学や風刺画が生まれました。
その後、“to see pink elephants”(ピンクの象が見える)という慣用句が広まり、
やがて、1941年のディズニー映画『ダンボ』の中で視覚的に描かれたことで、
この比喩は 世界共通のイメージとして定着します。
観客がダンボのシーンを見てすぐに「酔っている」と理解できたのは、
すでにこの表現が文化的な“共通言語”になっていたからなのです。

※AIに描いてもらったピンクの象の夢のイメージです
◆ では“水玉のカバ”はどこから?
ここで登場するのが、ベルギー・メレンの ヒューグ醸造所(Huyghe Brewery)です。
そう、あの Delirium Tremens —— ピンクの象のラベルで知られる醸造所です。

ベルギービールJAPAN公式サイトより
ヒューグ醸造所は、この“酔いと幻覚”の象徴性をさらに展開し、
紫に黄色の水玉模様の Paranoia(パラノイア) を生み出しました。

ここで重要なのは、
✅ 水玉のカバはヨーロッパ伝承ではなく
✅ 醸造所が生んだ“現代的な象徴デザイン”であること
つまり、ピンクの象と水玉のカバは
**「酔いの心理を遊び心で可視化したビール文化の産物」**なのです。
◆ ここで、実際に“水玉のカバ”——Paranoia を試飲
今回の動画では、この Paranoia Original Hoppy を実際に味わっています。
- アルコール度数は 5.6%(日本の0.5刻みの表記では 5.5%)
- ベルギービールとしてはやや低めの設定
- 香りの高い IPA でありながら
- さらっと飲みやすく、引っかかりのない喉ごし
つまり、
造形は妄想的でも、味わいは理知的
というギャップが魅力です。
インポートの経緯も興味深く、
つい先日までは 廣島 による 缶での輸入 が行われていましたが、
現在は EVERBREW が 瓶 での輸入を開始。
ラベルの存在感も相まって、より“文化的文脈で飲める”ビールになっています。
この試飲体験は、ブランドが生んだ“現代の幻覚神話”を味わう行為であると言えるでしょう。
※廣島さんはBtoBの企業なので、一般人向けには販売していませんが、
EVERBREWであれば一般人でも購入することができるのがありがたいです。
◆ なぜ“神話のように”語られてしまうのか
理由は三つあります。
① 『ダンボ』による世界的刷り込み
② ベルギービールの象徴的なラベル文化
③ 消費者の連想と物語化の欲求
その結果、
本来は比喩とデザインの組み合わせにすぎないものが、
“酔いの伝説”として語られはじめた
と言えるのです。
◆ ビールを愉しむための、ちょっとした視点
ピンクの象も、水玉のカバも、空飛ぶワニ(と語られることさえあるイメージ)も——
それらは 酔いの危険ではなく、酔いの“文化的表現”。
人とビールの長い歴史が生み出した、遊び心のある象徴です。
グラスを傾けるとき、ふとラベルに描かれた動物を眺めてみてください。
そこには、酔いを“物語る”ための意匠が、静かに潜んでいます。
◆まとめ
✅ ピンクの象:英語圏の比喩+『ダンボ』で世界共通化
✅ 水玉のカバ:ヒューグ醸造所が生んだ“ブランド神話”
✅ ヨーロッパ伝承と思われがちだが、実際は現代的創作
✅ ビール文化は、味だけでなく 象徴と物語でも味わえる
◆動画でも楽しくご紹介しています!
そして、ぜひお伝えしたいのが、
このParanoiaを、楽しく!にぎやかに!テンション高めで!ご紹介している動画の存在です。
香り、喉ごし、度数、ラベル、そして水玉のカバ……。
画面越しに思わず一緒に飲みたくなるような盛り上がりを、ぜひ味わってください。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。







