北海道の農家が挑戦した委託醸造というビールづくり~続編~

(画像提供:(左)寺内農園、(右)澄川麦酒)
前回の続編としての記事となる。前回の記事はこちらから↓
北海道の農家が挑戦した委託醸造というビールづくり (2026.1.28)
初回打ち合わせ後、早々にビール造りを決断。実際のビール造りが始まり、いよいよ挑戦がスタート。
ビールの味わいを決定
副原料のブロッコリーについては、打ち合わせの段階で話が進んでいたため迷わず決定。次に検討したのがビールの味わいだった。
澄川麦酒の齋藤さんから、ビールの味わいや仕上がりイメージについてヒアリングがあり、苦味の度合いや、どのようなシチュエーションで飲むビールなのかなど、仕上がりの方向性を二人でやり取りをしたという。
寺内さんは、キッチンカーで提供しているフライドブロッコリーやフライドポテトといった揚げ物に合うビールをイメージ。また、ビールが苦手な人でも飲みやすいものをコンセプトに依頼した。
その理由として、キッチンカーの利用者には女性が多く、普段から足を運んでくれる女性にも気軽に飲んでもらいたいという狙いがあった。
あえてビアスタイルを固定せず、コンセプトを重視したビール造りをお願いする形となった。
ラベルデザイン作成
ラベルの作成は非常に早かった。一般的にはビール醸造中に悩みながら作成されることが多いと思うが、打ち合わせからわずか5日後には、ほぼ最終形となるデザインが完成していた。
デザインを手がけたのは、寺内さんの奥様でデザイナーのあいりさん。寺内農園のロゴや野菜に貼るシールのデザインも担当しており、寺内農園のビジュアル全般を担っている。
今回のラベルについてイメージを聞くと、「キッチンカーに合うようなポップでかわいい雰囲気と、農家が作ったブロッコリーをアピールできるデザインにしました」と教えてくれた。そのイメージで描かれた初版がこちら。

完成したビールのラベルと見比べても、ほぼ最終形といえるデザインとなっている。

可愛らしい寺内農園のキッチンカー。
キッチンカーに凄く合た可愛らしいデザインで、思わず手に取ってしまうラベルだ。いわゆる“ジャケ買い”をする人も少なくないだろう。
材料の配送、そして醸造開始!

実際の発送時のブロッコリー
試験醸造は12月中旬からスタート。打ち合わせが11月中旬だったため、初回打ち合わせから約1か月で醸造が始まったことになる。工場のスケジュールのタイミングも良かったのだろう。
北海道の12月、露地栽培で収穫された貴重なブロッコリー約2キロ(10房ほど)を、採れたての生の状態で配送。澄川麦酒さんに到着後、すぐに醸造が開始された。
ビールに使用したブロッコリーは、「ビール」の規定値内ギリギリとなる約1.7キロ。投入の際に家庭用ミキサーで生のままペースト状にしたとのこと。キッチンカーで提供している揚げ物に合うようレモンも使用することにしたため、こちらも合わせてペースト状にしている。ペースト化したものは同じタイミングで投入したようだ。
使用したブロッコリーは、普段食卓でも食べている花蕾と茎の部分。澄川麦酒さんで材料確認をした際、ビール造りに重要となる香りは花蕾も茎も大きな差がなかったため、特に使い分けはせず、両方を混ぜて使用したという。

醸造の様子(こちらは定番IPAの醸造中)
ちなみに、使用したブロッコリーの品種は「ジェットドーム」。野菜売り場で品種名が表記されることは少ないが、ブロッコリーにも多くの品種が存在する。生活者にとって分かりやすい違いとしては、ドーム型と茎の長いステックタイプだが、ドーム型の中でも茎の長さの違いもある。野菜ソムリエ仲間の中には、ドーム型でも茎が長い品種を好む人もいるほどだ。また、ブロッコリー好きの犬は品種によって好みが分かれる、という話を聞いたこともある。食べ比べると、味の違いも意外とあるらしい。生産者側で品種違いを意識するのは、味の好みはもちろんだが、栽培時期や収量といった点が大きい。話をもと戻す。
材料を使用した感想を澄川麦酒さんに聞いたところ、素材自体に強い粘性があるわけではないため、設備の詰まりなどの心配もなく、扱いに苦労はなかったという。発酵も順調だったようだ。ただ、ペースト化の工程は一苦労だったとのこと。
ビール完成
醸造は順調に進み、約40日でビールが完成。
缶詰めとラベル貼りを終え、2月上旬に寺内さんがビールを受け取った。受け取った数量は、24缶入りケース6箱、計192缶。要冷蔵商品のため、2回に分けて受け取ることにし、残りは2月中に受け取る予定としている。これで今回の依頼分は完了となる。
残りのビールは、澄川麦酒さんの直営店で販売されることになった。ラベルや名称も同じものを使用するため、澄川麦酒に通うビールファンにも手軽に飲んでもらえるだろう。

1本ずつ手作業で缶詰めを行っている
ビールのご紹介

商品名:BROCCRAFT BEER
品 目:ビール
原材料:麦芽(ドイツ製造)、ブロッコリー(北海道産)、レモン、ホップ/炭酸ガス
(※ブロッコリーは寺内農園産。食品表示法上でラベルは北海道産と記載)
(※レモンはオーストラリア産を使用)
アルコール分:4%
内容量:350mlIBU(国際苦味単位):16
ビアスタイル:―(スタイルにとらわれず醸造。強いて言えば、ファームハウスエール)
酵 母:爽やかな香りを出すためにベルジャン酵母を使用。
筆者の感想:
アロマはレモンを中心とした柑橘系。色はやや濁りのあるゴールド。口に含むとレモンやグレープフルーツの爽やかな香りが広がり、後味にしっかり苦み(レモンかも)も感じた。アルコール度数が低めでスッキリとしつつも存在感のある味わいだ。
正直、ブロッコリーの香りは感じないが、レモンの香りがしっかりとしており、唐揚げや揚げ物によく合うビールだと感じた。
ビールを飲んだお客さんの感想:
「飲みやすくて美味しい」、「ブロッコリーの青臭さがなくて美味しい」
「爽やかで揚げ物と相性が良い」
販売先
・寺内農園
キッチンカーでイートイン限定の提供をR8/2/11から開始。冬季は、「アルペンスノーランド美唄」にて営業。夏はゴルフ場、冬は敷地一面で雪遊びが楽しむ施設で、外国人観光客を主なターゲットとしている。R8/3/1には道民向けのお得なイベントも予定されている。※ビールを飲むには施設の入場料が必要。
会場詳細は公式HPを参照。【アルペンスノーランド美唄】 公式ホームページ
販売の様子は寺内農園さんのインスタから。【寺内農園】 @terauchifarm

夏はゴルフ場で冬はスノーランド。広々とした施設で小さなお子さんも遊ばせやすそう。

看板メニューのブロッコリーとポテトのフライ。ビールとの相性は最高。
・澄川麦酒株式会社
直営店2か所で缶を販売中。樽についても順次提供予定。直営店の情報は澄川麦酒HPや各店舗のSNSを参照。
【澄川麦酒(株)】公式ホームページ
〈直営店〉ビアパブ・ひらら @beerpub.hirara ・Facebook
〈直営店〉ARTESANO(アルテザーノ)@artesano.inst

ビアパブ・ひららのインスタグラムの投稿
今後について
寺内さんのビール造りは、実は以前から構想があり、別の方とはなかなか話がうまく進まなかった経緯もあった。そのため今回、打ち合わせから製品化までがスムーズに進み、念願だったビール造りを試験醸造という形でスタートできたことは、大変嬉しい出来事だった。実際に醸造を経験したことで課題も見えてきたようで、すでに次回の醸造に向けた準備も進めているという。ビール提供が始まったキッチンカーを取材した際、次回作や今後作ってみたいビールの話を聞きながら、北海道石狩市の畑で自慢の野菜が収穫される頃、収穫した野菜を前に「次は何を使おうか」と思案する姿が自然と浮かんだ。
今後どのような野菜がビールという形で表現されていくのか、引き続き注目していきたい。

この日はちょうど寺内夫婦がキッチンカーにいました! (左:寺内一樹さん、右:あいりさん)
最後に本記事の取材・制作にあたり、快く応じていただいた寺内農園の寺内さんと澄川麦酒株式会社の齋藤さんに、多くの気づきと学びをいただき心より感謝申し上げます。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









