[コラム,ビアバー]2019.4.4

NYビールツアーその4/IPAだけじゃない、アメリカの魅力

この記事はNYレポートの続きです。その3はこちら。
今回扱う店舗は以下の3店舗。
・Grimm Artisanal Ales
・Beer&Smoke Shop
・Interboro Spirits&Ales
最終回もアメリカのクラフトビールのブリューパブを中心にお伝えします!
このシリーズを読み終えたとき、自力でNYへビールを飲みに行けることと思いますよ!笑

NYは様々な人種の方が混在しているので料理のタイプは自由に選べますが、
ベルギー、ドイツビールの専門店並びにヨーロッパのビールはほぼ見かけませんでした。とはいえ写真のように店舗や扱いが全くないわけではありません。
ここから透けて見えるのは、
アメリカに住む人たちは気に入った味や店が見つかると、あまり他に乗り換えないという性質なのではないか…
そう私は考えています。
(実際、日本に訪れた外国人の友人は3日連続で同じ店に通っていたため)

ともすれば、気に入られたお店は手厚く普段使いしてくれるとも言い換えられます。
最初に登場するのは、まさにそんな場所。

スポーツ後でも犬と一緒でもOK:Grimm Artisanal Ales

グラフィティアートと住宅が並ぶ簡素な通りにあるグリム

今回1軒目はグリムアーティザナルエールズです。
こちらはなんとアメリカで暮らしていた経験がある、
とあるビールインポーターさんに教えていただいたので期待が高まります!
2013年にオープンし、開放的な併設パブと、積み上げられた樽が大変印象的です。
地元民にも大変愛されているようで、
この日は大きな犬連れの人や、
ジョギングクラブ帰りのマダムたちが朝から団体で訪れ賑わっていました。
生活に密着した場所でなければ訪れないであろうこの客層が、
彼らにとって本当に安心感がある場所なのだろうと理解でき、感動した一幕。

  

本領発揮!樽は飾りじゃありません

まるでワイナリーかと驚く量。醸造スペース自体はこのさらに奥

早速ビールと参りましょう!
この日は友人が一緒だったのでシードルを含む複数を用意。

ビールが気軽なお酒なせいか、コースターにきちんと置かれること自体がそういえば新鮮でした笑

左から4番目のシードルを飛ばしてすべてグリムのビール。

左から順に、100%NYペールエール。(Today’s Special)
こちらは完全にNYで採れた材料だけで作った地産地消アメリカンペールエール
しかしながらIPAのようなパインのニュアンスがあり、チヌーク&センテニアルで土着感も。

カモフラワー
大変な変化球セゾンで、今まで飲んだことがない味わいに目が覚めます。
カモミールのようなスパイシーなフィニッシュはブリュット且つドイツのサファイアホップ、
ブナという大変珍しい組み合わせだから。

シャドーワーク
バレルエイジド&ダークサワーなのですが、アイリッシュレッドエールをミックスさせた冒険作。
しかし赤ぶどうのようにフルーティでボディがライトなためスルスルと喉に入っていきます。
皆こちらが満場一致で一番おいしかったという感想でした!

ブルーベリーポップ!
乳糖とブルーベリーを使用したサワー。酸味が鮮烈。

パープルプロウズ
一言で言うなれば甘くないリンデマンスクリーク。木樽発酵でブラックカラントとラズベリーを仕込んだサワー

樽熟成がこちらの特色でもあり、IPA以上にサワーが増える事実。
スリーズなどがあったブルックリンからは車で10分ほどなのですが、
明らかに支持されるスタイルが違っており私自身興味深い事例となりました。
因みに生シードルはBlack Duckというブランドの木樽発酵させたシロモノらしく、
さっぱりなのにコクがあり文句なしに美味しかったです。
次にフードも頼みました。

ピタパンは見た目よりずっとボソボソではなく、じわんと甘みが

友人たちには朝食だったので軽めで。
スパイシーカリフラワーはチリビーンズのようなソースがかかっており、
赤い見た目より辛くなく食べやすいのに結構なボリューム感があります。
ライ麦ピタパンとディップ…これがアイディア商品で、
ピタパンは中東のポケット型をしたパンなのですが小麦ではなくライ麦なのがアメリカらしいし、
ムハンマラという辛いディップと合わせるとお互いのコクと香ばしさ、甘さが際立つのです。
また全てベジタリアン用に考えられているのも驚嘆の念しか浮かびません!

 

余談ですが、見ているとサワービール自体がアメリカ全土で人気が高まったまま安定期に入った模様です。
ところがサワーはサワー用のイーストから作るため、他のスタイルに混入しないように
手間をかける必要があります

リスクがあっても需要が高まっている背景にあるのは、高カロリーなアメリカの食生活でしょう。
適度な酸味は口の中をさっぱりさせてくれるので、意外に食事と合わせやすいのです。
サワービール、苦手なままではもったいないですよ〜?

「パイロットコンブチャ」が商品名

また、友人はコンブチャも頼んでいました。
日本でも置いてあるお店が増えてきましたね!昆布粉末のお茶ではありませんよ?笑
紅茶キノコ(これもキノコではなく実態は酵母)から作られる軽い酸味がある発酵飲料です。
日本でも70年代に流行した健康食品なのですが、ダイエットに良いと現在全米で大ブーム中。
管理が大変らしく高価なことが多いながら、
一応1%前後にアルコールを含むのでクラフトビアバーを中心によく見かけました。
ビールと同じようにフルーツ入りの製品もあり、こちらはブルーベリー入り。
ブルーベリーを乳酸菌で少し薄めたジュースのようで思いのほかクセもなかったです。

ブルックリン北部でクラフトビールを買うならここ:Beer&Smoke Shop

知らない店でもショーウィンドウに並ぶ缶で一気に親しみを感じるのは私だけではないはず

小腹も満たされた後はTop Hopsになかったビールを探しにこちらに寄らせてもらいました。
友人がいるので滞在時間は短かったのですがこちらも大型冷蔵庫が所狭しと並び、尋常ではない品揃え。
この二店舗でボトルビールはほぼ網羅できるでしょう!
加えて多様なタバコを扱っているので地元民も足しげく通っているようです。
いくら調べてもHPにあたるサイトが見つからなかったのですが、
まとめサイト的なものにはしょっちゅう掲載されている有名店。
ひょっとすると他にも系列店があるのかもしれません。

さて土産鞄も満たしたところで最後の店舗です!

ビールだけじゃない:Interboro Spirits&Ales

オセロのような外観と矢印のマークが目印

今までで一番分かりやすい見た目かな?笑
今回ご紹介している店舗もすべて近隣にあります!

 

インターボロも木樽を持ち、熟成ビールだけなくウィスキー、ジン、ブランデーも仕込んでいる醸造所です。
訪れた中でも最も天井が高く先ほどとはまた違った開放感があります。
ここから差し込む太陽光を浴びながら飲むビールはまた格別…

間近のタンクで出来立てビール!

奥に巨大なビールタンクがあるのですが、普通に歩いて触れる距離まで近づいて見ることが出来ます。
一人ではなかったので今回は申し出ませんでしたが、周りの人もビール片手に気軽に見て回っていましたし、
スタッフに声をかければ説明もしてくれるようでした。
醸造自体に興味がある人にはとても貴重な場所かもしれません!

そういえばメニュー表をさらし続けてますが、
僕が回ったお店はどこも「欲しい」と言えばくれるスタンスのところばかりでした。
旅行者には嬉しいですね!

頼んだのは…

うすはりグラス採用でした!

左から順に2番目のサイダーを飛ばしてすべてインターボロのビール。

カウントザクラウズIPA
デンマークの醸造所とのコラボビールで、はっさくやオレンジのニュアンスと、
フィニッシュのキレが早いIPA

プレミア DDH IPA
6%ながらダブルドライホップド製法で甘い香りが強く、IPAですが長く飲めるタイプ。
アーシーでアメリカン過ぎもせず落ち着いた仕上がり。

ウェンザイーストイズインザハウス
NYで行われていたビールウィーク記念品。スムースでクリーンですがダンクなダブルIPA
大変シャープで、細やかな酸味はシャンパンを想起させます。

やはり樽仕込みビールは絶品

マウスフルオブゴールドティース
ロングアイランド地区のブリュワリーとのコラボ品で、サクランボ、チョコ、グラハムクラッカーを使用したインペリアルベルジャンスタウト
樽の香りと、ザクロ、イチジク、バニラ、バルサミコ酢を撹拌したかのような甘く濃厚なテイスト。
バニラアイスと一緒に飲みたいと全員に大好評!

十八番の樽熟成ものは案の定素晴らしかったです…
シードルはなんと桃を使ったもので、梅のように強烈な酸味がありましたが嫌なエグ味もなく
気づけば飲み干していました。

世界2位と言われる収穫量を誇るアメリカのリンゴから作られるシードルは、
サワーと同じくアメリカ人にはおなじみのドリンクで多種多様なテイストを見かけました。
ビールで飲み疲れた時のリフレッシュに欠かせない存在なんですね。

回れなかったオススメ店舗とビール紹介

チェックしていたもののタイムアップで行けなかった店舗も参考までに列挙しておきます。

Big aLICe Brewing
Rockaway Brewing Company
Brooklyn Brewery
TØRST
KCBC(Kings County Brewers Collective)
Evil Twin
Heartland Brewery(日本でKIRINが発売しているビールとは同名異醸造所)

代わりにいくつか缶で押さえました。

ブルーポイント/トーステッドラガー

老舗醸造所の看板商品。ラガーと言いつつアメリカンアンバースタイル。その中にホップと鉄を感じさせる名作。

ケルソー/ピルスナー

2006年創業と若いながら安く入手しやすいポジションで人気に。
ピルスナーですがハーバルアロマとかすかなモルトがとても飲みやすい!

シックスポイント/ベンガリ

IBUが66もある辛口でホッピーなアメリカンIPA。ネーブルオレンジのような香りが印象的。

グリーンポイント/ブリュットインディアペールエール

NYを代表する醸造所のブリュットIPAで、
ブリュット特有のドライな酵母の味わいとヘイジーIPAの両方が強いレベルで共存できている
恐ろしい作品。

KCBC/モービッドアワー

作られるほぼ全ての銘柄が一度きりの限定品ばかりの醸造所。こちらもとあるメタルライブとのコラボダークラガー

シングルカットビアスミス/18ワットIPA

ラベルがかわいいヘイジーセッションIPA
ジャムのように濃厚なのに5%に抑えた度数でおかわりが止まらない逸品!

ベルズ/トゥーハッテッドエール

No.1アメリカンビールに輝いた実績もある人気の醸造所のIPA
初めてIPAを飲んだときの興奮を呼び覚ます秀逸な出来です。
この商品がすごいのは街で普通に手に入り、しかも安いこと。
アメリカへ行った際には絶対に飲んでください!!

 

〜NYビールツアーの総評〜

・フードメニューの中で意外だったのは、ケールサラダの普及率と、和食材では豆腐、わさび、しいたけ、えだまめの人気が高かったこと。
・ピクルスがどこへ行っても置いてあること笑
・フムスやサモサなどベジタリアン対応メニューが大変充実しているのと、
何が入っているのかが全て明記されているのは日本も見習いたいところ。
・女性一人や家族連れのランチも多く、ペット連れOKな店が多いこと。
・ブリュットIPAはブームを過ぎていたのか思ったより見かけなかったこと。
・リアルエール、ヤッホーは見かけなかったけどコンブチャ、常陸野NEST(木内酒造)が置いてある店はあったこと。
・意外にも店舗には客用のフリーwi-fiがあるとは限らなかったこと。ただしカフェには大抵あるのでそこまで困らない。
・一般的なレストランでもハッピーアワーを行っていること。

さて。
クラフトビールとフードを手探りで調べていたわけですが、大変勉強になった旅でした。
アメリカはIPAと爽快なビールだけを好むイメージがありましたが、
サワーの豊富さ、シードルとコンブチャも同時に飲むくらいポピュラーな存在。
根幹は健康問題なのでしょうが、さらに驚いたのは寿司レストランの多さです。
それも握りではなくカリフォルニアロールのようなフォトジェニックなメニューが多かったのですが、
これはもはや完全に日本生まれのアメリカ料理だと感じました。
しかしビールは日本の大手を置いてあったりと徹底してあり、日本食への関心の高さが伺えます。

最後に。
純粋に評価が高いビールが飲みたければ、今の時代ネットでいくらでも調べられます。
しかしその土地の空気感は実際に行ってみなければ分からないもの。
続けて他の店舗も回るなら、歩ける距離かどうかも大切ですから、
そのような順番で掲載することに努めました。
ビールを知れば知るほど、ビールならどれでも新鮮な衝撃があったところから、
徐々に銘柄を選ぶようになる段階に入ると思います。
ご紹介したのはすべて、わざわざ飲みにいく価値があるビールとそのお店であり、
実際に飲んだので品質は保証します。
このシリーズを通じてNYに興味を持っていただければ幸いです。
それでは、充実したビールライフを!

 

Grimm Artisanal Ales
【住所】990 Metropolitan Ave Brooklyn, NY 11211, USA
【HP】https://grimmales.com/
【OPEN】
月〜水 17:00〜22:00
木金 12:00〜24:00
土 12:00〜1:00
日 12:00〜22:00

Beer&Smoke Shop
【住所】779 Grand Street, Brooklyn, NY 11211, USA
【OPEN】
月〜木 11:00〜23:00
金土 11:00〜24:00
日 11:00〜23:00

Interboro Spirits&Ale
【住所】942 Grand St, Brooklyn, NY 11211, USA
【HP】http://interboro.nyc/
【OPEN】
月〜金 17:00〜23:00
土 11:00〜23:00
日 13:00〜20:00

Craftbeer&Smoke ShopGrimm Artisanal AlesInterboro Spirits&AlesNYアメリカビールツアー

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

1 Dozen(わんだーす)

ビアジャーナリスト/ビアジャッジ/ミュージックコーディネーター

一本のビールとの出会いから人生が狂い、世界中のビールを飲み比べるようになる。
ビール嫌いを克服できた自分と同じように、
ビールが苦手な人をこの世界から救うために活動を決意。
麦とホップと酵母と音楽と狂気を武器に独自の視点で執筆することを誓う。

■JGBA参加ビアジャッジ、びあけん2級所持。ビールセミナー開催、ビールメーカー官能チェック案件経験あり
■調理師免許所持
■年間レビュー400銘柄以上継続
海外生活、旅行経験から国内クラフトビールだけでなく世界のビール事情にも知識あり
様々な音楽、世界の料理にも広く触れており、
過去には飲食店へのBGMプレイリスト提供やビールのペアリングイベントも実施
知識を活かしビールと音楽や料理をペアリングするシリーズをjbja公式X(旧twitter)などにて定期連載中

ストップ!20歳未満者の飲酒・飲酒運転。お酒は楽しく適量で。
妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう。