[コラム,ビアバー]2019.4.2

NYビールツアーその3/アメリカンクラフトビールシーンの今

NYOther HalfThe Owl FarmThrees Brewingアメリカビールツアー

この記事はNYレポートの続きです。その2はこちら。
今回扱う店舗は以下の3店舗。
・Threes Brewing
・The Owl Farm
・Other Half Brewing
いよいよアメリカでクラフトビールの最前線にいるブリューパブを濃密にご紹介します!

ところで、NY入りするまで思い違いしていたことがあります。
ヨーロッパでは大多数の国で飲食店の水、トイレは有料です。
そのためここでも有料だと思い込んでいました。
なので必要か尋ねられても要らないと答えたことも。
ホテルのレストランならともかくNYでは水、トイレは基本無料です。危なくなる前に利用してください。
隣の青年が席に座るなり水を注文していて初めて気づきました(笑)

さて2月のNY。昼は勿論夜はまだ雪が降ることもあるほどの寒さ。
冬期に向かうならコートは絶対に必要なのでご注意を。私も厚着で出発しました。

ブルックリンでIPAと言えば!:Threes Brewing

気づかず通り過ぎてしまうような、初見殺しな外観なので注意

今回からはNYでも南側の地域、通称ダウンタウンとも呼ばれるブルックリン中心にお送りします。
スリーズは、NYのビールで検索をかけて上位に出てくるブリューパブの内の一つ。
しかし実際に行った人だけが感じるNYの小さな障害が一つあります。

日本と違って、およそビールの店がありそうな雰囲気の場所にない

のです。どういうこと?

ビールタンクを設置する問題などにより、ブリューパブは繁華街から少し離れた位置にあることが多いです。
しかもNYは、写真の通り大きな看板か門構えがあるわけでなく、シンプルな扉があるだけのケースがほとんどでした。
周りは材木屋さんだったり、シャッターが閉まりまくっていたり、荒涼としていて
「本当にここで合ってるの…???」と絶対に心細くなるでしょう。

そんな状況に陥らないために私がオススメするのは、Google Mapsのアプリ!

中に入ればウェルカム感はあるんですけどね

グーグルマップで店を検索していて、日本人の私が「アメリカってすごいな」と思ったのは、

営業時間、写真、自店の詳細(もしくはレビューへの返信率)がほぼどの店も正確に記載されていること。
さらにイベントカレンダーや予約、デリバリー(!)もそのページから出来るように設定している店舗が多いこと。
です。

日本でビアバーに行くときに、地図アプリを見ても店の詳細がいまいち載っていなくて行ってみたら閉まっている時間or定休日だったってことありませんか?
それが滞在中一度もありませんでした。
地図アプリのページが充実していればHPをいちいち見る必要がない。
(そもそもHPがなかったり、見ても記載がないケースも。海外なら電話をかけるわけにもいかないし…)
客目線で言えばストレスが圧倒的に少なかった!
これは些細なようですごく大きな差です。日本の飲食店も徹底してほしい点でした。

というわけでNYでは地図アプリの信頼性は高いので、うら寂れた通り周辺もこれで攻略できますのでご参考までに。

カジュアルに楽しめるカウンターゾーンと地元民御用達の庭ゾーンが併設!

話を戻してスリーズへいざ!

フード、団体用の席が左側に。入口すぐ右にはコーヒー&カフェ利用向けの部屋

海外ではどんな小さな店でも入店時に店員さんに「Hi!」と明るく声をかけておくと良いです!
見当たらなければ無理する必要はないですが、物取りなんじゃないかと訝しまれることあるので…
さて店内。入ってすぐの通路を進むと奥に…

土曜の昼はすでに賑わっていた

ビールのオーダー中心の人用の部屋に辿り着きます。
カウンターには椅子がありますがその隙間にスタンディングの人がおり、
アバウトですがビールスペースは40人は収納できそうです。
さらに奥の光っている扉の向こうは庭のようなテラス的なスペースも完備。
夏場は大盛況のようですが、寒いこの日も大入りでした!笑

グラフィティアートのようで見ていて楽しい気分に

ゲストビールをフレンズって呼ぶユーモアがいいですよね

タップ数は24。
カウンターの奥に醸造タンクがあります。
私の一番のオススメはLogical Conclusion(ロジカルコンクルージョン)なのですが後述。

初めは軽そうなTable Beerをチョイス。

スリーズ/テーブルビール

レモンのような後味が特徴的な、素直なセゾン。リフレッシュにも最適!

スリーズ/アイヘイトマイセルフ

I Hate MyselfというIPAを次にオーダー。
メロンの皮やジャックフルーツに揶揄される変わった苦みが支配的なIPAでした。
アマリロ、シムコーホップからアーシーなアロマをここまで引き出せるのか?
そして乳酸系というか発酵食品のような酸味が日本では感じたことがない味わい。

スリーズは幅広いIPAを哲学的なネーミングで作り出す、NYの代表的なブルワリーの一つ。
NYのビールコンペティションで最優秀賞を獲ったこともある実力派。
実店舗では様々なレストランのフードメニューを入れ替えて用意しているのも好評な理由のようです。

特に繁盛店MEAT HOOKのメニューが人気

テラスゾーンでBBQを満喫するのが地元民の楽しみ方だとか。
しかし夕方に近づくにつれどんどん混んでくるのでオーダーのタイミングが重要。

  

デザインセンスが良いだけでなく興味深いイベントも目白押し。

ビアバーのお会計あれこれ

ときに、日本から来ると戸惑うのがお金の払い方だと思いますので言及しますと、
ビールをカウンターで飲んでいるときは都度払うキャッシュオンが一般的。
アメリカはカード社会とよく言いますが、実際一杯だけでもクレジットカードをガンガン使っていました。
承認に若干の時間がかかるものですが嫌な顔は全くされませんし、
小銭を探して渋滞を作るよりはスマートだと捉えられているようです。
まとまった金額にならなければ大抵サインレスですしね!

ただ小銭が全然要らないかと言えばそうでもなく、チップのために用意しておく必要があります。
払う額は10%前後が一般的。つまりビール三杯で25ドルだったとしたら、
3ドル(細かいのがなければ2ドル。持ち合わせがなければ両替か、正直に伝えた方が誠実です)
直接渡すか、渡す暇がなさそうならテーブルに置いて行ってもOK
このニュアンスが日本人には難しいのですが、どんな店もチップが必要かと言えば、
そうでもないのです。
チップは「サービスに対して払う心付け」という概念なので、
日本のコンビニにあたる小さなグローサリーなどでは会計時に毎回毎回数ドル渡さなくても平気です。
大荷物を袋に詰めるのを一生懸命手伝ってくれるような、
忙しそうな中でビールの説明や好みを長々丁寧に話してくれたり水を注いでくれるような、
自分が気持ちよく感じた接客に対して払えばいいのです。
逆に気分を害したらサービスを受けても払わなくても問題ありません。
カウンターでは基本払う必要があるほどの接客を受けることもないので、
短時間滞在のカウンター客で払ってる人は見かけませんでした。
※少しややこしいのはカードでチップを払うケース。
請求額のすぐ下によく見るとチップ金額を任意で記入する空欄があるので記入してサインしてフィニッシュ。
そこに上乗せした額をカードで切られます(先にカードを返されますがしっかり引き落とされます)

因みにアメリカは物価が高い国だと言われていますが、
確かに料理は値が張るケースはありつつも、量を鑑みるとクラフトビール単体は日本より若干安いかと。
チップがあれば同じくらいでしょうか。

これでまたひとつNYに行きやすくなりましたね?笑
お次はフクロウがトレードマークの店舗をご紹介!

No.1 ニューヨークビアバー:The Owl Farm

Craftbeer.comという、アメリカ本国のクラフトビールサイトがこの冬読者7000人以上に行った投票によると、
オウルファームはニューヨーク州を代表するビール店(ブリューパブ以外)に選ばれたようです!

ゆるやかな坂道の途中にあります

No.1の秘訣は…快適さ?

ユルいフクロウがかわいい店内。細く長いカウンターが中心のレイアウト。
こちらはビールだけでなくリキュール、ジン、ウィスキーなどの取り扱いも非常に充実しています。
奥にはピンボールも設置。
何を隠そう、滞在中最もリラックスできたのはこちらの店舗でした。
カウンターで何をするでもなく皆思い思いの時間を過ごすことが出来る空間…
象徴的だったのが、

わん!

と音の先に視線をやると、なんと犬連れの方が入店していたこと。
そう、ここは犬OKのお店。
さすがに入口寄りの広い席にグループで過ごされていたのと犬がおとなしかったので全く気になりませんでしたが、
動物と一緒もOK、小説を読んでもOK、多様なお酒がOKと、、嫌いになる理由が見つかりません!
フードの取り扱いはありませんが、リラックスして過ごすことが出来ました。

 

木内酒造の商品を積極的に扱っているのも日本人としては嬉しいところ

フォンタフローラ/ウィッパーウィル

最初はノースキャロライナ州のFonta Floraという醸造所のアールグレイを使った小麦ビールをオーダー。
オレンジとコリアンダーも使用されており花が目の前にあるかのような華やかさ!
口当たりもとっても薄口。恐ろしいほど緻密な繊細さ。
後半グラスに溜まった紅茶の香りが芳しくて飲み干すのが惜しかったです。

ハーヴィストン/シュハリオン クラフトラガー

レアの文字に惹かれスコットランドですがSchiehallionという醸造所のビールをチョイス。
ラガーと書いてありますがやや香ばしく酸味があり、
フィニッシュが日本酒ぽくスッキリしたあと温度変化でサワーへと変わっていく面白いビールでした。

ここで周りが存在に気づいたのか立て続けにオーダーが入ったので便乗して自分もこちらを…

スリーズ/ロジカルコンクリュージョン

先ほど頼まなかったスリーズの別のIPAです。見逃すところだった…笑
「アイヘイトマイセルフ」は渋みがあり万人ウケするタイプではなかったのですが、
こちらはトロピカルでトロッとした舌触りがマッタリしたIPA。
酵母とビネガー系の酸味が特長となり唾液が止まりません!
後々判明しましたが限定品だったようです。なるほど人気なわけだ…

さて、IPAで有名になったブルックリン地区のブリュワリーと言えば、もうひとつ。
お待たせしました。

ぶっちぎりの人気でひた走るカリスマ:Other Half Brewing

ブロッコリーはアメリカではマリファナのスラング

突然ですが、ブロッコリー柄のラベルがインパクト大のブリュワリーがあります。
その名はOther Half Brewing(アザーハーフブリューイング)
2014年設立直後から魔性的な魅力のラインナップと一風変わったデザインでオカルト的な人気を獲得し、
その2でも言及したビールレビューサイト、
ratebeerでもレビュー数スコア数ともにぶっちぎりの数値でNY1位のブリュワリーに君臨しています。
強みはリリーススピードが速く、IPAやダブルドライホップド系を軸にしたビールの種類の多さで、
土曜日の新作発売日には3時間待ちの長蛇の列ができるほど。
(過去にはグッズのために前日深夜12時から待ち続けた強者もいるとか…)
世界中からファンが訪れる醸造所です。

 
instagramに載せたくなるビジュアル訴求力、カラフルでポップながら同じデザインを二度は使わない。
しかしアザーハーフと見て一度で分かる個性を大切にしているそう。
確かに誰かにプレゼントしたり見てもらいたくなる造形ですよね。

辺鄙な場所に突如として現れるビールの要塞

近づくとホップの匂いが漂っていた

そんなNYを代表する人気醸造所アザーハーフ、
最寄り駅Smith-9th Street駅からは歩いてすぐですが、降りてすぐその異常さに我々は困惑するでしょう。
およそ人気ブリュワリーがある景観ではなく、倉庫、車、材木場、小さな川しかない、
街の外れにあるからです。
しかし…

 

超ゲキ混み。

夕方5時くらいに私は到着したのですが、あっという間に満員電車みたいになりました。
上着を脱がなければ…
しかし店内はビールのいい匂いがします!

メニューもやはりポップで遠目でも見やすかった

身動きがあまり取れずカウンターにも近寄れないので写真はこれが精一杯…

前述の「DDHブロッコリー」は他のバージョンが元になっているのですが、
ダブルドライホップドインペリアルIPAで7.9%と強力なヘイジーIPA。
アメリカ産のモザイク、シムコーだけでなくドイツ産のハラタウホップを使用しているのが興味深いですね。
一杯だけでも大満足なスゥイート&トロピカル。
さらにオーダーしたのは、

アザーハーフ/スーパーファン!

エルドラド、シムコー、ギャラクシーホップを使用したセッションペールエールという珍しいスタイル。
アメリカなどではホップを強めた既存のスタイルを「セッション〜」として売り出す傾向が最近あります。
日本のみかんのような甘い香りが面白く、酵母のクセ強めで酸味がありますがやはりトロピカル&スッキリ!

アザーハーフ/ドリームパワー

8%ながらハイアルコール感が全く抜けてこないのが怖い、ジューシーフルーティな一杯。
インペリアルオートクリームIPAというスタイルで同社の「グリーンパワー」をベースに作られています。
当然複雑でフィニッシュがスパイシーでドライ。そこでかろうじて苦みを感知。

アザーハーフ/ドロッピンミリバールズ

バニラ、カカオニブ、シナモン、チョコレート、コーヒーと
大量の副原料でトロッとかすかにオイリーな熟成インペリアルスタウト
泡も焦げ茶色で、まるでバーボンをストレートで飲んでいるような強力な存在感。
どれも飲んだら脳裏から離れない濃ゆいスペックのビールばかり…
そんな原料のせいか値段設定が高めですが、
一口で美味しい!と思える直感的で圧倒的な説得力がありました。

奥にフード用のスペースがありそちらは比較的好いてるので避難所としてオススメ。
その奥に醸造タンクがあります(交渉次第では近くで見せてくれる模様)
フードメニューも調査すべく一番上のナスサンドを頼んでみました。
これがまた変わっていて、食べ応えのあるナスと、トロトロの赤パプリカ、
ミントとザクロ(!)を挟んでいるのですがクリーミーで爽やかで甘酸っぱくてこれが調和してるんです!!
思い出しても口の中が幸せぇ…
おそらくよく作るビールとの味わいを意識しているはず。
ここも人気の秘訣でしょう。
この後、グッズと持ち帰りビールコーナーも寄ってみました。

 

二カ所ある入口の奥側だと目の前の位置。やはりここでも少し並びます。
Tシャツ、帽子、栓抜き、パーカーや限定ビールがありましたが大量購入される方の多いこと…笑
缶ビールは最低6缶からのパックの取り扱いとなるのですが、
24缶の箱で皆さんどんどん買われていきました。すごい迫力笑

アザーハーフは他の醸造所とのコラボも積極的ですが、
どれも基本的に一度しか仕込まないのでレアなのです。
おまけに日本にはなかなか入ってこない…
NYまで来たら、行かない手はありませんよ!!

ダウンタウンのビールツアーを終えて

今回ご紹介した3店舗は寄りやすさを考慮し、それぞれが歩いて行ける距離のものを選びました!
どれも人通り自体は少ない道に位置していますが、
この記事を参考にしていただければさほど苦労せず楽しめるはずです。

 

〜今回の総評〜

・NYのクラフトビール店ではIPAは勿論ヘイジーIPAもサワーも一、二種類は最低でも用意されていて、
ピルスナーとペールエールが逆に少ないこと。
・逆に言えば一部のブリュワリーを除き、全体では目新しいスタイルがなく日本にも似た閉塞状況にあること。
・迷っていると試飲するか相手から勧めてくれること。
・気に入ったブリュワリーはグッズも集めたくなる人が多いのでアパレル面も強く豊富なこと。
・ビール店の店員さんは話してみれば気さくな方が多いが、
会話したくなければ放っておいてもくれるので怖がる必要はないこと。
・飲みにくる人自体も気さくだったり親切な人が多いこと。
・色んな味を試すよりは、同じ銘柄か近いテイストのビールを続けて飲む人が多かったこと。
・カロリーレスビールが一般的なこと。

今回はこれで以上です。
行ってみたいお店はありましたか?
次回は最終回!その4へ続く

 

Threes Brewing
【住所】333 Douglass St, Brooklyn, NY 11217, USA
【HP】https://www.threesbrewing.com/
【OPEN】
月〜水 17:00〜24:00
木 17:00〜2:00
金 15:00〜2:00
土 12:00〜2:00
日 12:00〜24:00

The Owl Farm
【住所】297 9th Street, Brooklyn, NY 11215, USA
【HP】http://www.theowlfarm.com/
【OPEN】
月〜金 14:00〜4:00
土日 12:30〜4:00

Other Half Brewing
【住所】191 Centre ST Brooklyn, NY 11231, USA
【HP】https://otherhalfbrewing.com/
【OPEN】
月〜水 12:00〜22:00
木金 12:00〜24:00
土 10:00〜24:00
日 11:00〜22:00

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1 Dozen(わんだーす)

この記事を書いたひと

1 Dozen(わんだーす)

ビアジャーナリスト/ビアジャッジ/ミュージックコーディネーター

皆様初めまして。1 Dozen(わんだーす)です。
一本のビールとの出会いから人生が狂い、世界中のビールを飲み比べるようになる。
ビール嫌いを克服できた自分と同じように、
ビールが苦手な人をこの世界から救うために活動を決意。
麦とホップと酵母と音楽と狂気を武器に独自の視点で執筆することを誓う。

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