[イベント,コラム]2019.9.8

共感を得る仕掛けでファンを呼び込むイベント。遠野ホップ収穫祭で見えたこと【遠野ホップ収穫祭2019レポート】

岩手県遠野市田村淳一氏遠野ホップ収穫祭

今年で5回目となる「遠野ホップ収穫祭」。8月24日(土)と25日(日)の2日間、「蔵の道ひろば」で開催された。実行委員の積極的な活動により、注目度が年々高まり来場者の数が増加している。今回は昨年の1.6倍となる12,000人が訪れた。人口が約27,000人の地にこれだけの人が集まるのは凄いことだ。交通アクセスも決して良いとはいえない遠野へ足を運ばせる魅力とは何なのか。実際に現地で体験し、感じたことをレポートする。

原料は知っていても実物を見たことがないことへの期待感

最近では、クラフトビールへの関心が高まったこと、都市部でもホップの栽培をするところもあり、昔と比べると実物を目にしたり、触れたりする機会は増えてきた。しかし、遠野のような一大産地のホップ栽培を見る機会は日常的にはない。収穫祭では、ホップ畑を見学できるツアーが組まれており、ホームページにあるようなホップカーテンに覆われたまだ見ぬ景色を身近に感じられるという心理が「現地にいってみたい」と思わせたのではないだろうか。

筆者は25日のみ参加したが、会場に着くなり関係者に挨拶をすると「ホップ畑ツアーに参加するなら初回がいい」と言われた。今回は、各日3回ずつ(各回定員15名 参加費500円)でスケジュールが組まれていて、前日の24日はツアー参加希望者が多数となり、整理券配布1時間前以上から券を求める列ができたという。そのため、初回の配布1時間前から配布場所に並んだが、配布時間ごろには第2回目のツアーの定員に達するくらいの人が集まっていた。

ホップ畑ツアーに参加するため整理券を求める人たち。

1時間前から並ぶのだからホップがどのように生育されているのか関心を強くもつ人はやはり多いのだろう。5月に遠野に取材に訪れた際に「BEER EXPERIENCE株式会社」のツアー担当である美浦純子氏(通称:MJ)にお客さんがホップ畑のどんなところに惹かれるのかを聞くと、男性は「ホップ畑の中でビールを飲むのが楽しかった」という感想が多かったが、ビールをそれほど好まない女性からは「植物好きの方もいて、グリーンカーテンのなかに入るだけで癒される」と、非現実的な体験が思い出に残ったという感想があったことを教えてくれた。

ホップ畑の様子。列はかなり長く奥の方がわからないくらい。これが何列もあり圧巻の光景だった。

ツアー時に他の参加者を観察していると子供のようにホップを摘んで香りを楽しむ人や生態について担当者に熱心に質問する人と各々がもつ関心を満たしている光景があちらこちらにあった。

ホップについて説明を受けるツアー参加者。

参加してみて、ホップ畑を見て、触れ、嗅ぐことができる非日常空間の体験は「遠野まで来てよかった」と思わせるものがあった。

消費するだけではなく、環境に意識した取り組みも

会場では名物のジンギスカンや新たな名産品として売り出している遠野パドロンをはじめとした地元食材をつかったフードや「遠野麦酒ZUMONA」「遠野醸造」の地元ブルワリーやホップの契約先である「キリンビール」のビールが販売され、使用する容器やプラカップを再利用する環境に対する取り組みが行われていた(※1)。ビールイベントではプラカップをはじめとするプラスチック容器によるゴミが大量に出てしまっている。すでに対応を始めているイベントもあるが、環境保全への対策はこれから必須となる。「今後も遠野の魅力発信の1つとして収穫祭を継続していくために、社会から応援していただけるイベントになることが必要」と実行委員は考えている。

収穫祭で使われているエコカップ。会場では、昨年のカップを使っている人もいた。来年も行くことを検討している人は持っていくようにしよう。

※1 リユース食器は実行委員所属の店舗のみ使用

今はまだ、あまり注目されていないかもしれないが、つくって消費するだけではない姿勢は来場者や支援者へ「誇れる」ポイントになると思う。

お客さんの共感がイベントを成長させ続ける

冒頭に記したが、今年は昨年の1.6倍となる12,000人が来場した。なぜ、今年はこれほどまでに増えたのか。

「例年よりも宣伝する時期を前倒しにして、ホームページやSNSでイベントを開催している背景や魅力をアピールできたこと。そして、クラウドファンディングにより認知度が高まったことで多くの方が来てくれたと考えています」と実行委員長の田村淳一氏は分析する。

その効果もあり初日の日中は、想定以上の人が会場を訪れた。これだけをみれば喜ばしいことと思えるが、実行委員長を務める田村淳一氏はトラブルが発生しないか気を張っていたため「胃が痛くなりました」と話してくれた。

実行委員長の田村淳一氏(左:株式会社BrewGood)と実行委員の浅井隆平氏(右:BEER EXPERIENCE株式会社)。準備期間を含めて無事に終えられた安堵感とやりきった充足感が混じりあった表情が伺えた。

イベントを継続的に行っていくために利益は重要であるが、そのためにはお客さんに来てもらわなければならない。近年、都市部では数多くのビールイベントが開催されるようになり、同時期に重なることも珍しくなくなってきた。注目度が高くなっているという良い面もあるが、ファンの分散化を起こし、集客を難しくしている面もあると感じている。

そこで重要なのが「共感」である。彼らはクラウドファンディングページやSNSで熱心に「なぜイベントを開催するのか」「なぜこの場所に来てほしいのか」を伝え続けてきた。そうした熱量がお客さんに伝わり共感を得たことが、来場者数を大幅に増加させたと考えている。胃が痛くなるのは、開催中も自分たちを支援してくれる人たちへの感謝の気持ちがあるからだ。

夜になっても多くの人が楽しんでいた。実行委員たちが連携し合い、周囲への気配りをこまめにしている姿が印象的だった。

今後への課題も。しかし、それを伸びしろにしてしまう実行委員の凄さ

もちろん改善していく必要があるところもある。会場に1つしかなかったトイレや1回の参加人数が少なかったホップ畑ツアーに2日目の昼過ぎから目立ち始めた品切れのメニュー、駅から会場までの仕掛け。細かいことを言えば、水道水で洗える場はあったが、最高のビールを注いでもらうためにエコカップをしっかり洗うリンサーもあるとありがたい。

「ホップの里」から「ビールの里」になるにはまだ乗り越える壁は多くあるが、開催期間中、会場を歩き回りお客さんの動向を気にかけていた彼らのことだから、すでに課題に対して「来年はこうしよう」と糧にして構想を練り始めているはずだ。参加する側としては今から来年の開催が楽しみである。

これを読んで遠野に興味が湧いた人、また遠野に行きたくなってしまった人、収穫祭は来夏まで待たないといけないが、遠野には魅力を体感できる「遠野ビアツーリズム」があるので参加してみてはいかがだろうか。ホップ畑の様子やブルワリー見学にお土産タイムと遠野を満喫できる内容になっている(時期により内容は変更となる可能性がある。他に夜にツアーするプランもある)。

普通にホップに触れ、ビールを味わいに行くだけでも楽しいが、地域の活性化に取り組む彼らに会って応援できる喜びも感じられるのが「遠野ホップ収穫祭」。素晴らしい時間を与えてくれたことに感謝したい。

また来年、このホップカーテンに癒されにいきたい。

◆遠野ホップ収穫祭 Data

日時:2019年8月24日(土)・25日(日)両日11:00~21:00

場所:蔵の道ひろば

入場料:無料(別途、飲食代、ツアー参加費がかかります)

主催:2019遠野ホップ収穫祭実行委員会

Homepage:https://www.lets-hopping.com

Facebook:https://www.facebook.com/tonohopharvestfes/

Twitter:https://twitter.com/Lets_Hopping

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05007木暮 亮

この記事を書いたひと

木暮 亮

ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

【メディア出演】
<TV>
●テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
<雑誌>
●週刊プレイボーイ ●DIME
<Web>
●SUUMOジャーナル

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