[イベント,コラム]2025.8.14

【ビールを通して感じる韓国㊱】~チキンとビールの祭典~ 大邱チメクフェスティバルに行ってきました!

韓国の大邱(대구・Daegu・テグ)は、1年を通してイベントが盛りだくさんの街です。
その中でも特に注目されているのがチメクフェスティバル(치맥페스티벌)。フライドチキンとビール(멕추・メクチュ)という韓国の飲食文化とも言える組み合わせを楽しむ「チメク(チキン+メクチュ)」のお祭りです。
毎年の来場者が100万人を超えるというチメクフェスティバルに行くことは私にとってここ何年かの課題のひとつでしたが、今年ようやく2日間にわたって行くことができました。

大邱とチメクフェスティバル

改めて大邱とは…

大邱は、過去に養鶏場が多く存在し、韓国のフライドチキンフランチャイズの多くがこの街から始まったという背景があるため、「チメクの聖地」とも言われています。

韓国東南部の内陸に位置し、人口約240万人とソウル、釜山、仁川に次ぎ韓国の都市で4番目に人口が多い広域市の大邱。ソウルから約240km、釜山からは約90kmの距離に位置しており、ソウルから大邱の玄関口の東大邱駅まではKTX(Korea Train Express・韓国高速鉄道)に乗れば2時間弱で行くことができます。
山に囲まれている盆地で夏は韓国で1番暑い都市としても有名で、大邱とアフリカとの合成語「テフリカ」というあだ名で呼ばれるほどです。日本に例えると名古屋に似ていると言われています。
豊かな歴史的背景があり、韓国の伝統と現代が調和した魅力的な街として観光地としても注目を集めています。さらに最近では、医療事業、自動車産業、水産業、エネルギー産業、ロボット産業、情報通信技術(ICT)産業などに力を入れていて、付加価値の高い雇用の創出や大邱の経済の活性化なども期待されています。

大邱については以前の記事
【ビールを通して感じる韓国⑰】~旧マッコリ醸造所で味わうクラフトビール~ DAEDO BREWING@大邱(テグ)(2024.3.24)
でも紹介しています

チメクフェスティバル2025概要

日時:2025年7月2日(水)〜7月6日(日) 17:00~23:00
*昨年も7月第1週の開催でしたが、7月第2週や8月末に開催した年もあります
会場:頭流(두류・Duryu・ドゥリュ)公園一帯
会場所在地:대구광역시 달서구 공원순환로36(36 Gongwonsunhwan-ro, Dalseo District, Daegu・大邱広域市達西区公園循環路36)

頭流公園と行き方

会場の頭流公園は、1977年に造られた豊かな自然と幅広い多彩なレジャーが楽しめる広大な公園で、普段から市民の憩いの場になっています。

敷地内には文化芸術会館や図書館といった文化施設や多目的運動場や野球場などのスポーツ施設だけでなく、野外音楽広場、ウォーターパーク、庭園、お寺などもあります。
さらには、大通りを挟んだ北東部分には遊園地E-Worldと大邱タワーもあります。

頭流公園の端へは、地下鉄2号線頭流駅の14番出口から徒歩5分ほど。東大邱駅から行くにはまず地下鉄1号線に乗り、5つめの半月堂駅で2号線に乗り換えることになります。乗り換え時間を入れても、東大邱駅から30分みておけば着きます。

公園の端からさらに数分歩くと、チメクフェスティバル会場入口の門があります。

チメクフェスティバル2025会場内

メイン会場の2.28自由広場

門をくぐると、左手に普段は野球場としても使われている2.28自由広場があります。

広場全体にテーブルが並べられて、周囲にはチキンのお店がずらっと並んでいます。


奥のほうにはステージ。ステージの近くの席は有料となっていました。

無料の席で人気があったのは、ステージにもまずまず近い屋根付きの場所。早い時間からほぼ満席になっていました。
大きく目立つのは韓国の定番ビールCASSの文字。この広場のビールはほぼCASSが仕切っているようでした。


暑さを和らげる工夫として、テーブルに座り冷たい水に足を浸しながらチメクを味わう場所も作られていました。その近くには噴水やウォータートンネルなどもあります。


写真を撮りながらブラブラしていて、特に気になったのがこちらのお店。チキンだけでなく、樽生は1種類でしたがクラフトビールも取り扱っていました。


チキンは10本でコーラが付いて10000ウォン(約1100円)で、つけるソースが醤油、ハニー、唐辛子の3種類から選べました。ビールは3000ウォン(330円)と格安です。
そしてこのチキンが想像以上に美味しかったです。買ったときは多すぎかなと思いましたが、あっという間に食べてしまいました。

翌日に再度行ったときには、このお店でお土産用に缶ビールのセットも買ってきました。250mlの缶が4本で8000ウォン(約880円)でした。

この会場で意外だったのは、早めの時間に行ったこともあってか、年齢が高めの方々もけっこう来ていたことです。韓国のビールシーンは、お店でもイベントでも20~30代の方々がほとんどなので、とても珍しく感じました。さらに、ステージが始まると若者だけでなく、ノリノリで踊っている年配者も。今まで行った韓国のビールフェスティバルでは見られなかった光景です。
私もこの会場でビールのお代わりをしながらしばらくステージの雰囲気を楽しんでいましたが、知っているブルワリーがチメクフェスティバルに出店すると聞いていたことを思い出し、見つけられなかったここをいったん離れることにしました。

クラフトビールが並ぶ2.28記念塔駐車場

公園内の地図を確認すると私がいたのはA地点と判明。まだまだ奥がありそうです。
今までに私が見たチメクフェスティバルの紹介画像や映像はすべてメイン会場のもので、いくつか会場があることは現地に足を運んでみて初めて知りました。

B地点の2.28記念塔駐車場へ向かう公園内の道沿いには、地域のプロモーションや無料抽選会のテントも並んでいました。

大邱にとって「2.28」の意味は…
公園内の案内で目立っていた「2.28」という日付が意味するものは、1960年2月28日のデモのことです。
韓国大統領の李承晩(이승만・イ スンマン)政権の独裁が続いていた1960年2月28日、高校生たちの独裁に反対するデモが行われたのが大邱でした。このデモは、朝鮮戦争後に民主的な改革を要求したという最初のデモであったという点で重要で、その後の四月革命(大規模な不正選挙に反発した学生や市民によるデモにより李承晩が下野することになった出来事)の導火線となりました。
頭流公園内だけでなく、別の場所には2.28記念中央公園(2.28기념중앙공원)や資料館もあったりと、大邱にとっては大事な日付なのです。

2.28記念塔駐車場にはテントが張られていて、奥にDJブースがあり盛り上げていました。


そしてこのテントの左右に、合わせて7つのブルワリーの出店を発見! ソウルのブルワリーもひとつありましたが、多くは大邱や比較的距離の近い釜山からの出店というのも新鮮な感じがしました。

ここで初回に行ったときに飲んだのは、DAE GYEONG Breweryのヴァイツェン。


DAE GYEONG Breweryは、かつて大邱の野球場サムソンライオンズパークでクラフトビールを提供していたブルワリー。野球場のお店がなくなってしまい、もう飲めないものだとばかり思っていたので、ここでまた飲めたのが本当に嬉しかったです。

大邱の野球場のビールについては
【ビールを通して感じる韓国⑧】野球観戦でビールを飲む@大邱サムソンライオンズパーク(2023.6.16)
でも触れています

翌日は、釜山のカルメギブルーイングのアンバー(7000ウォン・約770円)

地元であり訪問したこともある大邱のDAEDO BREWINGのペールエール(7500ウォン・約830円)

そしてお初のDAECHONG(대전・大田) BREWINGのエールビール(6500ウォン・約720円)と飲んできました。

どのブルワリーも4種類以上のビールがつながっていて、クラフトビールを味わうことが主目的ならばここだけでも十分楽しめます。

芝生が広がる野外音楽堂など

一番奥のC地点の野外音楽堂へ向かう途中にも、小さなステージのあるスペース(もちろんここでもチキンやビールは売られています)や手作りクラフトのお店が並ぶ道などがあり、歩き続けても飽きません。


そして到着した野外音楽堂には広い芝生が広がっていました。のんびりした雰囲気があり、舞台で演奏されている音楽もいくぶんか落ち着いたものでした。


チキンにちなんでか、ここには大きな卵のエアドームも出来ていました。

芝生に座ってステージの音楽を楽しんだあと、ようやく日が暮れてきたのでまた最初のメイン会場の2.28自由広場に戻ってみました。

日が落ちたあとの2.28自由広場

2.28自由広場に戻ってみると、2時間前の明るい時間とはまた違った雰囲気になり、さらに盛り上がっていました。先ほどはほとんど人がいなかったステージに近い有料席にもどんどん人が入ってきています。仕事帰りの人やお目当てのアーティストの時間を目がけてくる人が多いのかもしれません。


先ほどはガラガラだったグローバルゾーン(国外からのツアー客用スペース)もかなり賑わっていました。

大邱チメクフェスティバルの魅力とは…

フェスティバルは夕方からの開催なので、2日目の昼に頭流公園の一部にある大邱タワーに上ってきました。
遊園地E-Worldの奥にありますが、入場しなくても左側から回るとタワーへ向かう上り坂に出ます。無料送迎バスもあり、11時から21時まで30分おきに出ています。

大邱タワーは大邱を代表するランドマーク展望台。83階まであることから「83タワー」とも呼ばれ、77階の展望フロアからは標高260mの高さからの大邱市内の街並みを楽しむことができます。入場料金はアイスコーヒー付きのお得なチケットで15900ウォン(約1750円)でした。
展望フロアからはチメクフェスティバルの会場の全体がよく見えました。

もちろんチキンとビールが美味しいチメクフェスティバルですが、その一番の魅力は、何といってもまずこの会場の広さと、それぞれの会場がバラエティに富んでいていろいろな楽しみ方ができることだと思います。
メインの会場はテーブルが多く、ステージの音楽を楽しみながら飲食するにもテーブルの場所を選ぶことができます。クラフトビールを楽しみたいならば別の会場へ行けば楽しめますし、静かめの音楽を聴きながらのんびりしたいなら野外音楽の芝生がお勧め。さらに喧騒から離れたくなったら、それぞれの会場ではなくて公園に常設されたベンチでのんびりすることもできます。
それぞれのスペースが余裕を持って設営されていて公園内の道路も広いので、来場者が多くても混雑でどうしようもない感じはまったくありません。車いすで来ている方も何名か見かけましたし、ベビーカーを押した家族連れも多かったです。

ビールがとても好きで普段から飲んでいる人々だけでなく、それほど飲まない人でも美味しいチキンを食べながら一緒に楽しめるこんなイベントが、やがてはビール好きの底辺を広げていくことにもなるのではないか…そんなことも感じたチメクフェスティバルでした。

*韓国の法律上、19歳未満の者に酒類を販売することは禁じられています
*100ウォンを約11円として換算しています

CASSチメクフェスティバル大邱韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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