[イベント,ビアバー,ブルワー]2025.10.4

【日本産ホップがつなぐ「地域」と「人」メディア向け説明会】リポート

日本産ホップ
メディア向け説明会の様子 【画像提供 スプリングバレーブルワリー株式会社】

2025年9月30日(火)にスプリングバレーブルワリー東京にて行われた【日本産ホップがつなぐ「地域」と「人」 メディア向け説明会】を取材してきました。日本産ホップの現状や問題点、さらに新しい取り組みなど、多岐にわたる充実した説明会でした。その内容についてお知らせしたいと思います。

日本産ホップ推進委員会の10年間

最初に、日本ビアジャーナリスト協会代表の藤原ヒロユキ氏による、「日本産ホップ推進委員会 10年間の取り組み成果と課題」による発表がありました。藤原ヒロユキ氏は2015年より京都府与謝野町にてホップ栽培に従事しており、京都与謝野ホップ生産者組合副組合長も務めています。

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日本ビアジャーナリスト協会 藤原ヒロユキ氏 【画像提供 スプリングバレーブルワリー株式会社】

藤原氏「かつてビールの国際的なコンペティションで審査員として海外のブルワーの人たちと話をしていたとき、日本のビールはとても優秀だけど、「日本らしい」ビールはあるのか?と問われたとき、無いことに気づいた。それは日本産の原料が無いためでないかと思い、日本でもビールの原料から生産する必要性を感じた。また、国産のホップもほとんどが大手ビールメーカーとの契約で生産されたものだったので、クラフトビールメーカーが使えるような独立系のホップ生産者が必要だと思い、京都府与謝野町でホップ生産を始めた。」

「また、日本産ホップの魅力化、日本オリジナルのビアスタイルを作っていく、日本産のフレッシュホップを楽しもうというイベントとして、2015年に「フレッシュホップフェスト」を始めた。初回は6社のブルワリーが参加、そして現在は賛同ブルワリー203社にまで発展した。現在はホップ生産者やブルワーの勉強会として「ホップセミナー」、出来上がったビールを楽しむ場である「ジャパンホップフェスト」、ビールの出来を互いに評価しあう「官能評価会」など、年間を通じた活動へ拡大・進化している。」

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2022年の官能評価会の模様 【筆者撮影】

「また、ホップ農家の形態についても、与謝野のような独立系、ブルワリーが地元農家に栽培を依頼する形、ブルワリー自身が栽培する形、地域のコミュニティや大学など教育機関が栽培する形など、多様化が進んできている。」

(日本産ホップ推進委員会Webサイトはこちら

宮崎ひでじビール「栽培と醸造の二刀流」

続いて、宮崎ひでじビール株式会社代表取締役の永野時彦氏より、ホップ栽培への挑戦についての話がありました。

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宮崎ひでじビール 永野時彦氏 【筆者撮影】

永野氏「醸造を開始したのは1996年だが、親会社から独立して現在の体制になったのが2010年。その際に「オール宮崎の原料」でビールを造ることを目標にした。なぜなら、日本酒の「地酒」は地元産の原料や水を使っているのに、「地ビール」がそうではなかったから。」

「大麦の製麦に成功した後、ホップの生産に着手。ドイツのバイエルン地方や岩手県の遠野市などへ勉強に行ったが、温かい九州ではホップの生産は難しいと口をそろえて言われた。しかし、そのように言われるほど、自分で納得できるまで失敗したいと思ったところから始めた。台風が多い地域でもあるので、ホップが強い風に耐えられるかという点もあった。」

「現時点でも他の地域に比べると収量が少ないので、本当の意味での成功とは言い切れない。そこで、「ホップオーナー制度」として全国からオーナーを募り、生育状況をSNSで共有し、出来上がったビールでお返しするという取り組みを行っている。年ごとに様々な問題があったが、今年は豊作で収穫祭も大いに盛り上がった。今後も収量を上げていく研究をしながら、地元の皆さまに喜んでもらえるクラフトビール文化を作っていきたい。」

「ホップオーナー制度」について詳しくはこちら

神奈川大学「ホップ栽培プロジェクト」

続いて神奈川大学「ホップ栽培プロジェクト」について、神奈川大学社会連携部部長の市川洋行氏より話がありました。

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神奈川大学 市川洋行氏 【画像提供 スプリングバレーブルワリー株式会社】 

市川氏「2021年に、みなとみらいキャンパスが新しくできたことをきっかけに、学生に新しい学びを創出したいという想いがあり、屋上テラスの緑化や農業体験を目的に、ホップ栽培を始めた。様々なプロジェクトの中でも、ビールが飲めるという点から学生にも人気のプロジェクトとなっている。地域の企業や自治体、マンションの自治会などからの反響も大きい。」

「教育活動として、ホップの栽培からビールのフレーバーを決め、ラベルの作成など、地域の方々と一緒になって取り組んでいる。ビールの醸造は地元のブルワリーに依頼しているが、出来上がったビールのマーケティングまでを行うことで、学生たちに学びの体験を提供している。」

「始めてから5年を経過し、飲料メーカーに就職を考える学生が参加したり、地域の企業にもホップ栽培をしてみたいという広がりも見せるなど、様々な出会いにもつながっている。将来は、みなとみらい地区全体育てたホップを集めてビールを造ってみたいという夢も広がってきている。」

「ホップ栽培プロジェクト」について詳しくはこちら

スプリングバレーブルワリーの日本産ホップ推進活動

最後に、スプリングバレーブルワリー株式会社代表取締役社長の井本亜香氏より、スプリングバレーブルワリー株式会社における日本産ホップ推進活動の発表がありました。

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スプリングバレーブルワリー株式会社 井本亜香氏 【画像提供 スプリングバレーブルワリー株式会社】

井本氏「日本産ホップ推進のためのスプリングバレーブルワリーの役割としては主に4つ。日本産ホップを使用したビールの開発、官能評価会の開催など業界への貢献、店舗でのホップ関連のフードの提供とペアリングの提案、イベントの開催によるお客様への体験の場づくり。」

「日本産ホップのビールの醸造については、今年もフレッシュホップを使用したビールを東京・京都それぞれで限定醸造し販売。官能評価会は今年も11月28日に開催予定。フードの開発については、東京・京都それぞれで、ホップ味噌やホップパウダーを使用した肉料理を提供中。」

「イベントについては、今年は10周年特別企画として様々なイベントを開催してきているが、第5弾として「ENJOY! CRAFT 恵みJAPAN 2025」と題して、クラフトビールと日本の食文化の新たな魅力を体験できるを企画を展開中。その最後のイベントとして、10月25日・26日に「クラフトビールジャパンホップフェスト2025 feat.秋刀魚 in SVB東京」を開催予定。」

「今回の初めての試みとして、食連動の企画として秋を代表する魚である「秋刀魚の一本焼き」とのペアリングを提案。また、体験企画として複数種類のホップの香りのかぎ比べができる「利きホップ」体験を予定。他にもブルワーやホップ生産者によるトークセッションや、シンガーソングライターによる生歌披露など、様々なイベントを予定。」

「利きホップ」を実際に体験!

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「利きホップ」を実際に体験 【筆者撮影】

説明会の最後には、参加者全員で実際に「利きホップ」を体験する時間がありました。資料として3種類のホップの香りの特徴が書かれた用紙が配られており、3種類のホップを嗅ぎ分けるというものです。それぞれのホップを使用したビールは飲んだことがありましたが、このように複数の品種のホップを同時に嗅いでみるのは初めての体験でした。私も挑戦してみましたが、カスケードは当たったものの、他の2つは逆になってしまいました。

「利きホップ」は10月25日・26日のイベントでも体験できるとのことなので、ぜひ皆さま、イベントに参加して挑戦してみてはいかがでしょうか。

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【筆者撮影】

「クラフトビール ジャパンホップ フェスト 2025 feat. 秋刀魚 in SVB東京」について詳しくはこちら

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはケルシュ。趣味は乗り鉄。

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