海風にふかれ、ホップに酔う 三浦半島に泊まれるブルワリー誕生 -Miura brewery-
三浦半島に、「泊まれるブルワリー」ができる
それも滞在中はクラフトビールが飲み放題らしい
この話題で、我が家は今、持ちきりだ。
思い返せば2022年、West Coast Brewingが宿泊施設をオープンしたときも、行きたくてたまらなかった。でも当時、子はまだ小さかったし、静岡県の掛川市という立地から、なかなか足を運ぶことができなかった。
それが今度は、横浜から電車でわずか40分の三浦半島で、夢のようなビール旅が実現するというのだ。
部屋のタップから、好きなだけビールを注いで楽しめる。夜風に吹かれながらゆっくり読書をしたり、友人とワイワイ語り合ったり。時間を気にせず過ごせる、まさにビールづくしの旅……
その舞台となるのは、京急三崎口にある「Miura brewery」。三浦半島最南端にあるブルワリーだ。

画像提供:Miura brewery
海と自然と食。魅力の三浦半島
Miura breweryについて書く前に、まずは三浦半島について紹介したいと思う。なぜならば、Miura breweryのビールは三浦半島の魅力をビールで表現したものだからだ。

都内からほど近いリゾート地として知られるこの半島は、「海好き」「アウトドア好き」そして「食いしん坊」というキーワードが当てはまる人には、どストライクな場所だ。
4年ほど前、わたしは沖縄から三浦半島へと引っ越してきた。海をこよなく愛していて、沖縄では毎週末のようにビーチへ行っていたから、当然のようにここへ来ても、あちこち海を巡った。
でも正直、三浦の海に期待はしていなかった。「沖縄の海と比べちゃったら、そりゃあねぇ……」という気持ちだったのだ。しかし予想に反して、三浦半島の海は素晴らしかった。

三浦半島のビーチ
ダイナミックな地形で、雄大。思わず「すごい」っと声が出てしまうような、力強い海だった。そして思った以上に水質はよく、透明度も良好。シュノーケリングをすればカラフルな魚たちにたくさん出会えた。沖縄とはまた違った魅力が、そこにはあったのだ。
そこからわたしは三浦半島にハマった。海だけではなく、土地の力も素晴らしかった。木々は伸びやかに茂り、その上をトンビが我が物顔で飛び交う。週末になれば三浦半島を南下し、夕方は直売所で地元の魚を買って帰った。相模湾と東京湾に挟まれたこの半島は、潮の流れが複雑。それゆえに栄養豊富で、様々な魚が水揚げされるのだ。

マグロはもちろんのこと、アジ、イナダ、カマス。アワビやサザエ、そしてタコもよく獲れる。時にはスーパーでほら貝なんかを見かけることもあった。

三崎産ホラ貝
自然と遊び、その地のものを食べていると、だんだんとその場所の個性がわかってくるものだ。力強くて、生命感にあふれていて、でも肩の力を抜いていられる場所。
そして、わたしがこの地にすっかり魅了された頃。「三浦半島の魅力を伝える」というコンセプトを掲げたブルワリーが、誕生したのだ(2023年)
三浦半島の味を求めて、ブルワリー初訪問
Miura breweryが出来てすぐ。わたしは意気揚々と飲みに出かけた。場所はマグロ料理で有名な「くろば亭」近く。醸造所兼タップルームはおしゃれで、大きなタンクがどーんと並んでいた。

Miura brewery
店内は居心地がよく、大きな窓からは光が柔らかに差し込む。定番ビールは4種類。わたしはまず「MISAKI Maguro Amber」なるビールをいただいた。マグロ?マグロが入ってるの?最寄り駅が、マグロで有名な三崎口駅だけに?!きっと名前を読んで、皆が抱くであろう疑問を浮かべたまま、グラスに口をつける。

めちゃくちゃおいしかった。モルトの存在感がすごいのだ。厚みあるカラメル感と、しっかりとした飲みごたえ。でもそれらはすうっと流れ、心地よい余韻だけが残る。食欲を刺激するような、イングリッシュブラウンエールだった。
聞けば「MISAKI Maguro Amber」の名前は、 マグロ料理にあうアンバーエールだからだという。「そりゃあ、マグロは入れないか!」と一人突っ込みしながら、マグロ料理をオーダー。確かにこのビールとマグロ料理の相性は抜群だった。マグロの脂のあまさ深さ、そして赤みの濃さ。火を通すとぐっと引き締まるそれらを、アンバーエールが盛り上げ、幸せの余韻だけを置いて、お腹の中へと連れ去るのだ。口の中では間違いなく、結婚式が行われていた。

画像提供:Miura brewery
三崎口で食べるマグロ、そしてそれに合わせたクラフトビール……しみじみと土地の味を噛みしめていると、「うちのビールは、すべて三浦半島をモチーフに造っているんですよ」と代表の小松哲也さんが教えてくれた。

代表の小松さん
「このビールは三浦海岸をイメージしたIPAで、このゴールデンエールは油壷の夕陽を表現していて……」
自分の好きな地名と、目の前のビールが結び付く。それは目の前で光がパチパチと弾ける様な衝撃だった。
「すごい!全部ください!」
Miura breweryが描く三浦半島の風景
注文したのは、ビアフライト。定番ビールを飲み比べすることができる、なんとも最高なセットだ。提供されたグラスひとつひとつには、たしかに三浦半島の物語が詰まっていた。

三浦半島はわたしの遊び場だ。それを一体どのように表現しているのか……わくわくしながらグラスに口をつける。
最初は城ケ島を表現した「MIURA Island Wheat」にした。なぜならわたしは城ケ島が大好きだからだ。車で行ける離島で、広場と海を両方楽しめる公園がある。とにかく広くて、開放的で、風が島全体を守っているような島。

城ケ島からの海
「美しく壮大な城ケ島、そして打ち寄せる白波をイメージしています」小松さんのその言葉通り、透明な輝きの中に、ふわりと小麦の香りが広がるウィートエールだった。身体の表面を包み込んでくれるような、そんな柔らかさに癒される。

MIURA Island Wheatの缶と城ケ島
画像提供:Miura Brewery
続いては三浦海岸をテーマに醸造した「MIURA Coast IPA」を。「三浦海岸はウィンドサーフィンやカイトサーフィンなどマリンスポーツが盛んな場所。海で遊んだ後に飲みたくなるのは、やっぱりIPAかなと」と、自身もマリンスポーツをやるという小松さんが醸造したIPAは確かに海に似合う味がした。なんというか、ぐわっと、そしてすうっと身体に馴染むのだ。ホップの香りが、そして苦みがくっきりと広がりつつもドリンカブル。「あ、おいしい」と思った次の瞬間には、グラスが空いてしまう。このビールをもっと美味しく飲めるのなら、カイトサーフィンにチャレンジしてみようかな(泳げないくせに)そう思わせる力のある一杯だった。

MIURA Coast IPAと三浦海岸
画像提供:Miura Brewery
最後は油壷からの夕陽をイメージした「MIURA Golden Ale」。もうこの言葉だけでいい。痺れる。油壷は夕陽のメッカだ。あたりをオレンジに染め上げ、富士山にかかるように、夕陽はゆっくりと沈んでいく。幻想的で神秘的。多少の悩みくらいなら、「ま、どうでもいいか。世界はこんなにも広くて美しいんだもんなぁ」ってなってしまう。

MIURA Golden Aleと油壷の夕陽
画像提供:Miura Brewery
「MIURA Golden Ale」も実に美しかった。爽やかで軽やか。でもゴールデンエールの優しいコクと存在感がゆっくりと身体の中を満たしていく。あぁ、このビールを飲みながら夕陽を見たら、どんなに幸せだろう。身体の中から、外から光で満たされたら、どんな人にも優しく出来る気がする……飲み終わってふぅっと息をつく。その瞬間が本当に心地よかった。
ビアフライトを飲み終わり、気に入った一杯をさらにグラスでいただく。三浦半島の食材を使ったおつまみも最高においしかった。気づけば、あっという間に時間は過ぎていて、心地よい酔いは全身に巡っていた。
「ごちそうさまでした~」
少し散歩でもしよう、そう思って歩いていると港にぶつかった。海のにおいに目を閉じると、潮風が実に心地いい。ひとりなので澄ました顔をキープしていたが、心の中は「たのしい!」「なんか幸せ!」「きゃっはー」と大盛り上がりだった。

ブルワリーに泊まれる日がもうすぐやってくる
長くなったが、そんな三浦半島にあるMiura breweryに泊まれるようになるのだ。工事は現在進行中。12月中旬にはオープン予定。楽しみすぎる。
この「泊まれるブルワリー」は、神奈川県の観光推進事業に採択されたプロジェクト。地域の飲食店や企業と連携し、街全体で観光客を楽しませるモデルを作っていくという。

釣りをして、夜は釣った魚を食べながらクラフトビールを飲む。朝は早起きして朝市を覗き、シュノーケリングをして帰る、なんてことを全力で提案&サポートしてくれるのだ。
なかなかスポットライトが当たりにくい場所だけれど、訪れやすく、楽しいことがぎっしり詰まった三浦半島。これからその魅力がさらに広まると思うと、最高にわくわくする。
まずは宿泊施設ができたら、がっつり飲んだくれてこようと思う。
■詳細情報■
Miura brewery
住所:神奈川県三浦市三崎1-10-12
電話:046-876-8095
HP:https://miura-brewery.com/
現在、記事内でご紹介した「泊まれるホテル」スタートのため、現在クラファン実施中です!
https://camp-fire.jp/projects/834856/view

画像提供:Miura Brewery
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。







