[イベント,ブルワー]2025.11.13

サッポロクラシック富良野VINTAGE 発売記念! 改めてサッポロクラシックの魅力に迫る

サッポロクラシック」は、北海道限定発売のビールです。1985年に発売され、今年2025年がちょうど40周年となります。北海道民のみならず、北海道観光の際にこのビールを楽しんだ方も多いでしょう。

季節限定のビールが3種類あり、秋の「富良野VINTAGE」は特に人気があります。「クラシック」自体が北海道民には大変人気のあるビールですが、秋のこの時期は、こぞって「緑色のクラシック」を買い求めるほどの人気商品です。

去る10月15日、「富良野VINTAGE」発売を記念した「お披露目イベント」が、初めて開催されました。その模様をお伝えし、道民に愛される「クラシック」の魅力に肉薄します。サッポロクラシックについてはJBJA記事にもたくさんの過去記事がありますが、ここでは改めて詳細に書き綴ります。

 

「今年の”富良野ホップ”を語る会」として開催されたこのイベントは、セミナーの第1部と、実際にビールを味わう第2部との2部制で開催されました。会場は、札幌市内の札幌開拓使醸造所(札幌市中央区北2東4)。解説役は、サッポロビール北海道工場醸造部部長の八巻 勉氏です。
(筆者は当日「ナビゲーター」として司会を担当いたしましたが、この記事では八巻氏の話を中心にまとめます)

 

サッポロクラシックはどのように開発されたか

まず、サッポロクラシックの開発経緯について。

「クラシック」は、北海道限定販売であり、他都府県では原則的に販売されていません。それはなぜなのでしょう?

1980年代当時、各市町村が世界に通じる特産品を生み出し地域経済を活性化させる「一村一品運動」が全国で盛んになっていました。
それを踏まえ、当時の北海道知事・横道孝弘氏は、北海道全体を代表する「一村一品」をサッポロビールに提案します。なんと、北海道知事直々の発案だったのです。1985年6月12日、「北海道の風土に合う、北海道のためのビール」としてサッポロクラシックが誕生しました。北海道民のために造られたビールですから、発売も北海道にあえて限ったわけです。

なお「クラシック」とは、「古典」という意味合いではなく、「一流品、最高峰」という意味合いです。昔の味わいを再現したのではなく、本格的な新しい味を創造したのでした。

それからまもなく、1990年代には各大手ビールメーカーが「ご当地ビール」として地域限定ビールをたくさん生み出しますが、大半はなくなってしまいました。その中でも「オリジナル」と言える「サッポロクラシック」は、今でも人気商品として残っています。
缶ビールの販売は物産展などであるものの、樽商品に関しては厳密に北海道内限定の発売となっています。

サッポロクラシックの製法面の特徴

また、製法面から味の魅力に迫ってみます。

クラシックの香味の特徴は、「北海道の風土や食に合うビール」です。麦芽を100%使用しながらも、ファインアロマホップをふんだんに使用し、上品で華やかな香り爽快な飲み心地を実現しています。

とくに、ドイツ古来のデコクション醸造法である「ホッホクルツ製法」を使っているのが大きな特徴です。仕込の糖化工程を高温&短時間にするのがこの製法で、まろやかな味わいとすっきりした飲みやすさが両立します。ホッホクルツ製法は良質な麦芽を使用しなければ実現できません。また北海道産大麦麦芽「きたのほし」を一部使用しているのが大きな役割を果たしています。麦芽100%使用の飲みごたえと爽快な飲み心地を両立しているのは、この製法のおかげです。

驚くべきことに、発売から30年間、⾹味を変えることはありませんでした。ついに2015年、30周年をめどにリニューアルが施されます。それを担当したのが、今回ゲストの⼋巻⽒でした。

そして、40周年の2025年に「ホッホクルツ製法」にも磨きをかけ、より道⺠の味に即したビールに変化しています。

北海道限定とはいえ、大手メーカーがこれほどまでに地域のためにビールを造っている例は多くありません。サッポロクラシックは限りなく「地ビール」であり、「クラフトビール」に近い存在と言えるでしょう。実際にその愛され方、飲まれ方も、クラフトビールの観点から考えても、とても理想的な形なのではないでしょうか。

フレッシュホップビールの先駆け 「富良野VINTAGE」

2008年、初の季節限定商品として、「クラシック 富良野VINTAGE」が発売されました。以来、毎年10月第2週に発売されます。
このビールの大きな特徴は、生ホップを使用することです。生ホップとは、通常は収穫直後に乾燥させるホップを、未乾燥のままで直接仕込工程に使うこと。つまり「フレッシュホップ」として知られている造り方です。いまでは国産ホップの栽培も各地で盛んとなりフレッシュホップビールは各地で造られていますが、2000年代の後半から、しかも大手メーカーが実現していたのは特筆すべきことです。

生ホップは、サッポロビールと直接契約をしている道北・上富良野町のホップ農家で収穫されます。今年も8月下旬の日に、サッポロビール社員も手伝い、朝7時から17時半まで収穫作業が行われました。
そしてそのまま冷蔵車で道央・恵庭市の工場まで移送。20時に工場で受け入れ、すぐに使用されました。北海道限定ではあるものの、大手メーカーの大掛かりな生産のビールが、実際に「フレッシュホップビール」として製造されています。

収穫期の上富良野町のホップ畑

今年のホップの特徴は、病害が少なく香りも平年並み、球花はやや小さめだったものの外観品質は高かったそうです。

季節限定ビールは他に2種類あります。春限定の「春の薫り」が2016年に発売。同年には夏限定の「夏の爽快」も発売されました。「夏の爽快」は2025年の大通ビアガーデンでも振舞われ、道民の夏の喉を潤しました。
(※他の季節限定ビールはフレッシュホップではありません)

「今年の”富良野ホップ”を語る会」の模様

第2部は、隣の「BREWERY1876」へ移動。1時間ほどでしたが、参加者は「クラシック」と「富良野VINTAGE」の飲み放題を堪能しました。

 

カウンター内には、サッポロビール園で「もっともビールをうまく注ぐ」と言われる新岡充氏が札幌開拓使麦酒をサービングしてくれました。
(新岡氏については、あらためて記事を書くつもりです)

さらに、この日は広島からビール注ぎの名手・重富寛さんも特別参加。二人の競演に参加者のボルテージも最高潮に達しました。

初めて開催された、「富良野VINTAGE」のお披露目イベント。今後ともこのイベントがボジョレ・ヌーヴォーを祝うイベントのように季節の風物詩となることを期待いたします。

 

※写真・記事協力:札幌開拓使醸造所

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

坂巻 紀久雄

ビアジャーナリスト

東京都葛飾区出身。1998年ビアテイスターを取得。2000年に北海道札幌市へ移住。ビール専門店勤務で経験を積み、2013年にビールとモルトウイスキーの専門店「Maltheads(モルトヘッズ)」を開店。
https://maltheads.net/

店は「クラフトビールのお店」でも「世界のビールのお店」でもなく、「ビールの広い世界を実感できる店」をコンセプトとしている。

ビアジャーナリストとしては、北海道の記事を中心に執筆しているが、国内外を問わずビール全般を追っている。

札幌は、日本のビールの発祥地のひとつ。さらに「ビールの都」ドイツ・ミュンヘンと「ビール天国」アメリカ・オレゴン州ポートランドと姉妹都市でもある。そこを「日本のビールの首都」として盛り立てるべく奮闘中。

ビア検(日本ビール検定)1級(2013-14 初の2年連続合格者・2022年3度目の合格)/クラフトビアアソシエーション(CBA)認定ビアテイスター/ウイスキー検定2級

「サッポロ・クラフト・ビア・フォレスト」実行委員
http://www.sapporo-craft-beer-forest.com/

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