「金麦はビールへ」 酒税改正を転機に、サントリーが提案する「デイリービール」とは
ビールに愛されたみなさまへ。
サントリーは、2026年10月の酒税改正に合わせ、「金麦」をビールへ移行します。

移行期間のデザイン。画像提供:サントリーホールディング(株)
対象となるのは「金麦」と「金麦〈糖質75%オフ〉」です。さらに、麦のコクと飲みごたえを打ち出した新商品「金麦〈豊潤〉」を加え、3商品で展開します。
いずれも麦芽比率50%以上、スピリッツ無添加のビールです。缶商品は「ビール」として発売されます。
サントリーが今回掲げるのは、「金麦は、ビールへ。」というメッセージです。
ただし、今回の変更は、酒税区分を発泡酒からビールへ移すだけではありません。物価高が続くなかで、日常的に購入しやすく、食卓で飲み続けられるビールをどうつくるか。サントリーはその答えとして、「デイリービール」という新たなカテゴリーを提案しています。
2007年の発売以来、「金麦」は家庭で飲まれるブランドとして成長してきました。そのブランドが生ビールになることで、味、価格、商品構成、既存ファンとの関係はどう変わるのでしょうか。
発表内容をもとに、今回の狙いと今後の注目点を整理します。
目次
2026年10月、ビール類の酒税が一本化
日本では長く、ビール、発泡酒、新ジャンルで異なる酒税が課されてきました。
原料や麦芽使用率による区分の違いが税率差につながり、店頭価格にも反映されてきました。発泡酒や新ジャンルは、ビールより酒税が低いことを背景に市場を広げてきた経緯があります。
段階的に進められてきた酒税改正により、2026年10月にはビール、発泡酒、新ジャンルの税率が一本化されます。
これによって、発泡酒や新ジャンルを維持する税制上の利点は小さくなります。
サントリーはこの制度変更に合わせ、「金麦」をビールへ移行する今回の変更を、税制への対応だけで説明してはいません。
これまで「金麦」が担ってきた日常の家飲みという役割を維持しながら、ビールとして麦のうまみを高める。そのうえで、スタンダードビールとは異なる価格と価値の領域をつくろうとしています。
「デイリービール」という提案
サントリーが新たに提案するのが、「デイリービール」です。
同社はビール市場を、プレミアムビール、スタンダードビール、デイリービールという価格と飲用場面の違いで捉えています。

画像提供:サントリーホールディングス(株)
デイリービールは、単なる低価格ビールを意味するものではありません。
家庭で継続して購入しやすい価格であること。食事に合わせやすいこと。麦のうまみがあること。日常的に飲んでも飽きにくいこと。
サントリーは、これらを一体の価値として示そうとしています。
ここで問われるのは、価格の安さだけではありません。生活者にとって、日々の食卓で選ぶ理由があるかどうかです。
「安いからビールの代わりに飲む」のではなく、一つのビールとして積極的に選ばれる商品になるか。今回の「金麦」のビール化は、その点が試される取り組みでもあります。
酒税が下がっても、生活者にとってビールは高い
サントリーの発表資料では、酒税改正だけでなく、物価高と生活者の節約意識が大きな背景として示されています。
同社の資料によると、2007年から2025年にかけて、食料の消費者物価指数は46.1%上昇しました。一方、名目賃金指数の上昇は7.4%にとどまっています。

資料提供:サントリーホールディングス(株)
また、サントリーが実施した生活者調査では、物価高を実感している人が91.3%、今後の生活費上昇に不安を感じている人が85.9%でした。節約を意識している層は約8割に達しています。
ビール類についても、選び方や飲み方に変化があったとする人は72.0%でした。
さらに、酒税改正後に想定されるビール価格について、83.9%が「高い」または「やや高い」と回答しています。

資料提供:サントリーホールディングス(株)
酒税が下がることと、生活者がビールを日常的に買いやすくなることは同義ではありません。
原材料費、物流費、エネルギー費、人件費など、メーカーや流通を取り巻くコストも上昇しています。酒税改正による減税効果があっても、店頭価格をどこまで抑えられるかは別の問題です。
サントリーがデイリービールを提案する背景には、こうした市場環境があります。
「金麦」は何を変え、何を残すのか
「金麦」のビール化では、麦芽比率が50%以上になります。
「金麦」と「金麦〈糖質75%オフ〉」はいずれもスピリッツを使用しません。「金麦〈糖質75%オフ〉」では、食物繊維も不使用となります。
原料構成を見れば、発泡酒からビールへの変更は明確です。
「金麦」が従来重視してきたのは、麦の味だけではありません。
食事に合わせやすいこと。飲み進めても重く感じにくいこと。後味がすっきりしていること。家庭で繰り返し飲めること。
今回の開発では、麦芽比率を高めながら、こうした特徴をどこまで維持できるかが課題になりました。

資料提供:サントリーホールディングス(株)
サントリーは、麦芽の配合や仕込、発酵条件を見直し、「麦のうまみ」と「澄んだ後味」の両立を目指したと説明しています。
ビールになったことで、麦の存在感はどう変わるのか。それでも従来の「金麦らしさ」は残るのか。発売後の評価で最も注目される点の一つです。
ビール規格で再構成される「ていねい製法」

画像提供:サントリーホールディングス(株)
サントリーは、「金麦」の製法を「ていねい製法」と表現しています。
今回の会見では、その要素として「贅沢麦芽」「うまみ三段仕立て」「天然水仕込」「季節ごとの味の調整」が示されました。
国産麦芽と、同社が「旨味麦芽」と呼ぶ麦芽にこだわりの国産麦芽を一部ブレンドし、、麦
贅沢麦芽
芽同社が「旨味麦芽」と呼ぶ麦芽にこだわりの国産麦芽を一部ブレンドし、、麦のうまみを引き出します。
麦芽は、種類や産地、たんぱく質量、酵素力などによって、甘味、香ばしさ、ボディ、発酵性が変わります。
今回のビール化では、麦芽比率が高くなる一方、後味を重くしすぎない設計が必要です。どのような麦芽を、どの比率で組み合わせるかが味の骨格を左右します。
うまみ三段仕立て
「うまみ三段仕立て」は、複数の温度帯で仕込を行う製法です。
仕込温度を段階的に調整することで、発酵しやすい糖と、ボディや口当たりに関わる成分の比率を整えます。
飲みごたえを高めようとして非発酵性の成分を多く残せば、後味が重くなる可能性があります。一方、発酵を進めすぎれば、味わいが軽くなりすぎます。
「金麦」が目指す麦のうまみと軽快な後味の両立には、仕込工程の調整が重要になります。
天然水仕込
サントリーが長く訴求してきた天然水仕込も継続します。
水のミネラル組成は、糖化、酵母の発酵、苦味の出方、口当たりに影響します。
特に淡色で軽快なラガーでは、水質の違いが全体の印象に表れやすくなります。
季節ごとの味の調整
「春の金麦、できました」「 夏の金麦、できました」といった言葉が売り場に並び始めると、季節が一つ進んだことを感じる人も多いのではないでしょうか。
いまや金麦の季節展開は、ビール売り場の風物詩の一つになっています。それがビール化後も続くことは、長年のユーザーにとって歓迎できる点です。
夏と冬では、飲用温度や合わせる料理も異なります。季節による調整がどの程度香味に表れるのかは、継続して飲む人ほど気づきやすい部分かもしれません。
「金麦〈糖質75%オフ〉」は機能性と味をどう両立するか

従来の発泡酒②からビールになるまでの移行期間の特別デザイン 画像提供:サントリーホールディングス(株) 広報部
「金麦〈糖質75%オフ〉」も、2026年10月からビールになります。
糖質オフ商品では、糖質を抑えるために発酵度を高めるなどの設計を行うと、ボディや甘味が弱くなりやすい傾向があります。
その結果、軽快さはあっても、ビールとしての飲みごたえが不足する場合があります。
今回の「金麦〈糖質75%オフ〉」では、糖質を抑えながら、麦のうまみと適度な苦味を感じられる味を目指しています。
サントリーが掲げるのは、「糖質オフと感じさせない飲みごたえ」と「すっきりした後味」の両立です。
通常の「金麦」と比べて、麦芽感、苦味、ボディ、後味にどのような差が出るのか。機能性を重視する人だけでなく、ビールの味を重視する人にどこまで受け入れられるかが注目されます。
新商品「金麦〈豊潤〉」が担う、もう一つの飲用場面

画像提供:サントリーホールディングス(株) 広報部
新たに加わる「金麦〈豊潤〉」は、麦のコクと飲みごたえを重視したラガービールです。
通常の「金麦」が食事への合わせやすさとすっきりした後味を軸にするのに対し、「豊潤」は麦芽由来の厚みを明確に打ち出します。
資料では、ダイヤモンド麦芽、ダブルデコクション、銅炊き仕込を採用すると説明しています。
ダイヤモンド麦芽
ダイヤモンド麦芽は、サントリーがプレミアムビールでも使用してきた欧州産麦芽です。
麦芽由来のうまみやコクを加える役割を担います。
「豊潤」では、日常的な価格帯を維持しながら、通常の「金麦」よりも厚みのある味をつくるための要素として使われます。
ダブルデコクション
デコクションは、マッシュの一部を取り出して煮沸し、主槽へ戻す伝統的な仕込方法です。
ダブルデコクションでは、この工程を2回行います。
加熱によって麦芽由来のコクや香ばしさを引き出しやすくなる一方、条件によっては味が重くなります。
「豊潤」では、デコクションによる厚みを、日常的に飲める範囲にどう収めるかがポイントになります。
銅炊き仕込
銅炊き仕込について、サントリーは熱伝導性の高い銅を用い、厚みのある味わいを引き出すと説明しています。
具体的にどの工程で、どのように用いられるのかは、今後さらに確認したいところです。
製法名だけでなく、完成したビールの香味にどのような違いとして表れるかが重要です。
3つの「金麦」が捉えるオケージョン
2026年の「金麦」ブランドは、「金麦」「金麦〈糖質75%オフ〉」「金麦〈豊潤〉」の3商品で構成されます。

画像提供:サントリーホールディングス(株) 広報部
この3商品は、単純な上位・下位の関係ではありません。
サントリーは、説明のなかで「オケージョン」という言葉を用いました。ここでいうオケージョンとは、飲む場所や時間だけでなく、その日の食事、気分、健康意識、求める飲みごたえまでを含む飲用場面です。
中心商品となる「金麦」は、日常の食事に合わせるオケージョンを担います。
麦のうまみを感じさせながら、後味をすっきりとまとめ、幅広い家庭料理に合わせる設計です。平日の夕食や普段の晩酌など、最も頻度の高い場面を想定しています。
「金麦〈糖質75%オフ〉」は、糖質を意識しながらも、ビールらしい味を楽しみたい場面に対応します。
健康や食生活に配慮したい日でも、飲みごたえを大きく諦めたくないという需要を捉える商品です。
「金麦〈豊潤〉」は、普段よりも麦のコクや飲みごたえを求める場面を担います。
食事に合わせるというブランドの基本線は維持しながら、その日の気分や料理に応じて、もう少し厚みのある味を選びたいときの選択肢です。
つまり、3商品は「軽い、標準、濃い」という直線的な構成ではありません。
普段の食事に合わせたい。糖質を意識したい。今日は麦のコクを感じたい。
デイリービールが市場に定着するには、単にスタンダードビールより安いだけでは不十分です。飲み手が「どのような日に、どの商品を選ぶのか」を理解できなければ、新しいカテゴリーにはなりません。
実際の店頭価格がスタンダードビールとどの程度異なるのか。3商品の味の違いが分かりやすく伝わるのか。売り場でオケージョンごとの選択肢として認識されるのか。
カテゴリーを定着させるためには、価格帯だけでなく、具体的な飲用場面をつくる必要があります。
「安いから」ではなく、「金麦が好きだから」
「金麦」の成長を、価格だけで説明することはできません。
2007年の発売以来、「金麦」は家飲みに合う味、食事との相性、購入しやすい価格を提案し、飲み手を増やしてきました。
一方で、長く飲み続けてきた人たちの評価や期待も、商品改良やブランドの方向性に影響を与えてきました。
「金麦」がファンを捉え、育ててきた。同時に、ファンもまた「金麦」を選び続けることで、ブランドを育ててきたといえます。
その相互作用が、発売から約20年にわたって続いてきました。
「安いから金麦を飲む」のではなく、「金麦が好きだから飲む」という根強いファン層がいます。
支持の理由は一つではありません。
食事への合わせやすさ、飲み慣れた味、後味の軽快さ、缶のデザイン、広告によって形成されたブランドイメージ、日常の食卓で繰り返し飲んできた経験。
これらが重なり、「いつもの金麦」という選択につながっています。
今回のビール化では、酒税区分だけでなく、麦芽比率や原料構成も変わります。
ビールとしての麦のうまみを加えながら、長年のファンが評価してきた味を残せるか。既存ファンにとって、新しい「金麦」がこれまでの延長線上にある商品として受け止められるか。
ブランド側が「進化」と説明しても、飲み手が「別の味になった」と感じれば、評価は分かれます。
新しい「金麦」が、既存ファンの期待にどう応えるのか。さらに、ビール化をきっかけに新たなファンを獲得できるのか。
発売後も、ブランドとファンの相互作用を見続ける必要があります。
新ジャンルで培った技術を、ビールでどう生かすか
発泡酒や新ジャンルは、酒税制度への対応商品として語られることが多くありました。
しかし、その開発過程で、大手メーカーは多くの技術を蓄積してきました。
限られた麦芽量で飲みごたえをつくる技術。雑味を抑える技術。後味を軽快にする技術。糖質を抑えながら味を維持する技術。
これらは、税制への対応だけで生まれた副産物ではありません。現在の日本のビール類を支える香味設計の一部です。
今回の「金麦」のビール化は、その技術をビール規格のなかで再構成する取り組みと見ることができます。
麦芽量を増やすだけでは、従来の飲みやすさは維持できません。
発泡酒や新ジャンルで培った軽快な酒質設計を、ビールの原料条件に合わせてどう組み直すか。
ビールになったことで何を足し、従来の「金麦」から何を残したのか。技術的には、そこが重要です。
家飲みを主軸に、樽生も展開
「金麦」は、缶を中心に展開してきたブランドです。

画像提供:サントリーホールディングス(株) 広報部
サントリーが掲げてきたのは、「金麦のある豊かな家時間」です。家庭の食卓や自宅での晩酌を、主な飲用場面としてきました。
そのため、「ザ・プレミアム・モルツ」や「サントリー生ビール」のように、料飲店での樽生展開を積極的に進めてきたわけではありません。
ただし、これまでにも料飲店から要望があった場合には、業務用の樽商品を提供してきました。
比較的手頃な宴会コースなどで、樽から注がれる「金麦」を見かけたことがある人もいるでしょう。
一方、「金麦」の瓶商品を見かけることはほとんどありません。容器展開を見ても、家庭用の缶を中心に育ってきたブランドであることが分かります。
ビールとなる新しい「金麦」についても、要望のある料飲店へ樽生で提供する予定です。展開開始は2026年10月末ごろを見込んでいます。
発泡酒ではなく生ビールになることで、料飲店側の受け止め方が変わる可能性はあります。
手頃な宴会コースや大衆的な飲食店で採用が広がるのか。それとも、これまで通り家飲みを中心とするブランドであり続けるのか。
家庭用として提案されるデイリービールが、外食の場でどのように扱われるかも、今後の確認点です。
発売後に確認したいこと
今回の発表では、ビール化の狙いや製法、3商品の位置づけが説明されました。
ただし、商品の評価は、実際に飲んだときの香味と価格によって決まります。
中心商品の「金麦」では、麦芽比率を高めたことで麦の香りや味がどこまで増したのか。その一方で、従来のすっきりした後味が維持されているかを確認したいところです。
「金麦〈糖質75%オフ〉」では、軽快さだけでなく、味の不足感がないかがポイントになります。麦芽由来のうまみや苦味が、糖質オフ商品としてどこまで残されているかが注目されます。
「金麦〈豊潤〉」では、ダブルデコクションや麦芽設計によるコクが、単なる重さではなく、飲みごたえとして表現されているかを見たいところです。
また、冷蔵庫から出した直後だけでなく、温度が少し上がったときに、甘味や香ばしさ、苦味、後味がどう変化するかも比較材料になります。
そして、最も重要なのは、長く「金麦」を飲んできたファンがどう評価するかです。
メーカーが示す技術的な説明と、飲み手が感じる味の変化が一致するか。発売後の反応を含めて検証する必要があります。
「金麦は、ビールへ。」の先にあるもの
「金麦」のビール化は、2026年の酒税改正に対応した商品区分の変更です。
同時に、物価高と節約意識が続くなかで、日常的に購入できるビールをどうつくるかという市場提案でもあります。
サントリーは「デイリービール」という言葉で、価格、麦のうまみ、食事との相性、飲み飽きにくさを一つの価値として示しました。
さらに、「金麦」「金麦〈糖質75%オフ〉」「金麦〈豊潤〉」の3商品を、異なるオケージョンに対応する選択肢として展開します。
ただし、その成否は、ビールになったという事実だけでは判断できません。
スタンダードビールとの価格差がどの程度になるのか。麦芽比率を高めても「金麦らしさ」を維持できるのか。3商品がそれぞれ異なるオケージョンで選ばれるのか。そして、「安いから」ではなく「金麦が好きだから」というファンが、引き続き手に取るのか。
「金麦」は、ブランドが飲み手を育て、飲み手もブランドを育ててきた商品です。
2026年のビール化は、その関係にとって大きな転換点になります。
新しい「金麦」が、これまでのファンの期待にどう応え、新しい飲み手にどのように受け入れられるのか。デイリービールという提案が一時的な呼称に終わるのか、それとも市場に定着するのか。
発売後も継続して見ていきたいと思います。
商品概要
金麦
2026年10月6日発売予定です。麦芽比率50%以上、スピリッツ無添加の生ビールとして展開します。
金麦〈糖質75%オフ〉
2026年10月6日発売予定です。麦芽比率50%以上で、スピリッツと食物繊維を使用しない生ビールです。
金麦〈豊潤〉
2026年10月13日発売予定です。麦のコクと飲みごたえを重視したラガービールです。
業務用樽生「金麦」
要望のある料飲店に向け、2026年10月末ごろからの展開を予定しています。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









