ノースアイランドビールが地元農家と歩むフレッシュホップビール~北海道ブルワリー探訪vol.5_後編~
前編では、ノースアイランドビール(会社名:SOCブルーイング株式会社)について紹介した。後編では、いよいよホップ栽培について紹介していく。
【前編はこちら→ https://www.jbja.jp/archives/62912】
6株から始まった、江別のホップ栽培
ノースアイランドビールでは、農業が盛んな江別でもホップを作りたいと考え、地元でのホップ栽培に動き出したのが2018年だった。フレッシュホップビールに関しては2019年から上富良野産のホップを使用して造り始めた。
ホップの苗は、しっかり育つものしたい想いから、商社を通して、ホップで有名なアメリカのYakima Cheif Hops社から購入した。数日すると、人差し指ほどの長さの細いゴボウのようなカスケードの苗が20株届いた。苗の持ち込みには関税もあり、全部で10数万円かかったという。
購入した1年目は、苗がまだ小さかったため露地に植えることはせず、知人に温室で預かってもらった。翌2019年、ご縁があり、アンビシャスファームで栽培することになった。
〈画像提供:アンビシャスファーム〉
【アンビシャスファーム株式会社】
江別市豊幌で年間約100品の野菜を栽培・販売する農業生産法人。代表取締役は柏村章夫さん。栽培にこだわりを持ち、作物には必要以上の肥料を施さないよう、土壌分析も行いながら環境にも配慮した栽培を行っている。
作った野菜を直接お客さんに渡せる出張マルシェ「ふたりのマルシェ」を週末に開催。彩り鮮やかな野菜や西洋野菜が陳列され、見てるだけで元気が出てくるようなマルシェ。地元でも人気となっている。
収穫体験やイベントの開催、学生の受け入れにも協力的で、江別市の基幹産業である農業の普及や魅力の発信を日々行っている。アンビシャスファーム(株)HP https://ambitious-farm.co.jp/
ふたりのマルシェオンライン販売サイト https://ambi.buyshop.jp/
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もともと畑として使用していた土地に、使っていない場所があり、そこをホップ栽培に選んだ。20株購入した苗は、植えられる状態まで育つ頃には6株まで減っており、そこから江別でのホップ栽培が始まった。
栽培を始めて1年目は、毬花が何とか付いた状態で、その量は大人の両手に乗るほどしか収穫できなかった。「ホップは3年目から」とよく聞くが、まさにその通りだった。その3年を待ち、2021年には仕込みに使用できる量の収穫ができた。みんなが待っていたフレッシュホップビールをようやく作ることができるようになった。

栽培初年度は大人の手に収まる程度しか収穫できなかった(アンビシャスファーム(株)代表の柏村章夫さん)〈画像提供:アンビシャスファーム〉
手探りから始まったホップ栽培
アンビシャスファームの周りにはホップ栽培をしている農家もいないため、最初はどう育ててよいのか手探り状態だった。ほぼ自然に任せているような時期もあったという。年々情報を集め、本州のホップ農家に聞いたりしながら、今では5月に剪定し、月に1回施肥の管理を行っている。株分けも春に行い、最初は6株だったものが、この8年間で68株にまで増えた。
北海道では野生のホップも見かけるため、自然に育つイメージのあるホップだが、害虫もいる。そのため、日々見回りをしなければ、収穫に大きな影響が出ることもある。今年は、クジャクチョウの幼虫が大量発生することがあった。たった2日間見回りをしなかっただけで、黒い毛虫が所々で葉っぱを食い荒らしていたため、駆除を行ったこともあった。
江別の豊幌地区は風が強いため、ホップは真っすぐ上に長い支柱を立てるのではなく、ビニールハウスの支柱を使い、ホップのトンネルを作るようなイメージで栽培している。そのため、収穫も鎌が一つあれば可能で、高所での作業もないため安全だ。

収穫前のホップ。ホップのトンネルになっている。

高所の作業がないため、鎌を使って弦を切るだけ。大人であれば誰でも作業場まで運ぶことができる。
収穫は毎年、8月のお盆過ぎから下旬の間に2回行っている。全国どこでも同じではあるが、やはりボランティアの力は必要で、毎年多くのアンビシャスファームファンやノースアイランドビールファンが集まる。ここでは、初めましての方と何気ない会話からビールの話になるのは当たり前で、作業をしながらビール談義ができるのも良いところだ。

募集用のチラシ。2日間にわたって収穫している。〈画像提供:SOCブルーイング〉

収穫開始!もりもりのホップ〈画像提供:SOCブルーイング〉

収穫の様子〈画像提供:SOCブルーイング〉

収穫の様子(8月20日)
今年は、たまたま隣に座っていた方がSOCブルーイングの代表取締役社長の坂口典正さんと聞いて驚いた。普段、工場にもいないため、なかなかお会いすることがない。そこで話を聞いてみると、ブルワリー立ち上げから現在までの話を聞かせてくれた。
坂口さんは醸造現場には携わることなく、経営や営業に尽力している。ブルワリーを立ち上げる際に、ブルワーがカナダへ修業に行ったことはご存じの方も多いだろうが、実は坂口さんも1カ月帯同していたという。一通りのビール製造に関する知識を習得されているが会社立ち上げ当初から製造には基本タッチしないそうだ。それは、それぞれが得意な分野を担当する形でここまでやってきたためで、適材適所を大事にしているという。思いがけず、興味深い話を聞くことができた。

SOCブルーイング(株)代表の坂口典正さんと奥様。2年に1度は収穫に訪れるようにしている。〈画像提供:アンビシャスファーム〉
畑から工場へ。フレッシュホップビールの仕込み
ホップの生育は、今年は豊作で、毬花も大きなものがあり、品質も良好そうだ。今年は1回の収穫で30kgずつ、合計60kgほどとなった。昨年は1日20kgを目指して収穫したが、2日目には小さなホップを集めるほど収量が落ち込んでいた。

昨年に比べて大きなものも多い印象。ホップはすべてカスケード。

収穫したホップ。ちなみに農家がよく使用するコンテナ(写真では、黒色)満載で約2.5kgになる。

計量中。途中ノルマを伝えたりして、ボランティアのやる気をアップ!

収穫終了後にビニールハウスを見ると支柱だけになっていた。
今回のフレッシュホップビールは、1回目の収穫分をラガースタイル、2回目をエールスタイルとして、ともに1kLを仕込む。30kgのホップは、1回の仕込みで使う量となる。
収穫後、特別に工場でフレッシュホップを使った仕込みを見せてもらった。朝から醸造担当の松森皇士郎さんが仕込みを行っていた。
今回、フレッシュホップを使うタイミングはワールプールという、麦汁の煮沸工程の後に行うタンク内で麦汁を渦巻き状に流し込み、不要な固形物の除去を行う工程のときである。ワールプールホッピングと言ったりもする。このタイミングに投入することで、煮沸中に投入するより苦味成分を抑えられ、フレッシュホップらしい瑞々しく爽やかなホップ香をビールに付けることができる。
フレッシュホップは、ハンドミキサーのようなコンクリート練り混ぜ機を使って粉砕した。以前、手で裂いたこともあったが、その作業に4時間(1仕込みあたり)かかったことがあり、今回は機械を使用している。それでも30kgのホップの粉砕には2時間ほどかかった。粉砕しすぎるとホップの毬のエグ味が出るため、注意が必要でもある。
ちなみに、フレッシュホップで仕込む際、ノースアイランドビールではペレットホップの10倍の重量でレシピ作成をしていた。
工場では、ホップを畑からお昼に持ち帰ってから、粉砕する時間も考えて仕込みを行う。私が同行させてもらったラガースタイルの仕込みでは、ホップを投入したのは16時半ごろだった。思っていた以上に手間と時間が掛かると身をもって体験した。

ホップを工場へ搬入

コンクリート用の練り混ぜ機を使って粉砕。散らからないようにアクリル板で押さえている。

粉砕前

粉砕後。ホップをつぶすことなくバラバラになっている。

煮沸工程が完了後にワールプールを行うタンクにホップを投入

30kgの生ホップの量がい意外と多く見えた

麦汁をタンクに移動
みんなで収穫したフレッシュホップを使ったビールの発売は、10月上旬を予定している。畑で収穫したホップが、どのようなビールに仕上がるのか。収穫に参加した人たちにとっても、その味わいを楽しみに待つ時間となりそうだ。

夏休み期間だと子どもも参加〈画像提供:SOCブルーイング〉

ノースアイランドビールメンバーも楽しそうに収穫〈画像提供:SOCブルーイング〉

8月20日収穫後の記念撮影〈画像提供:アンビシャスファーム〉

8月27日収穫の記念撮影〈画像提供:アンビシャスファーム〉

10月上旬に発売予定のフレッシュホップビール(左:エールタイプ、右:ラガータイプ)画像は2025年発売の物〈画像提供:SOCブルーイング〉
ホップ収穫や自宅でのホップ栽培で生ホップが手に入ったものの、どう楽しもうか悩む方も多いのではないだろうか。過去の記事では、BJ坂巻紀久雄さんによるホップのさまざまな活用法を紹介している。ぜひ参考にしながら、旬の農作物として、生ホップを楽しんでいただきたい
坂巻BJのホップの活用法や保存法 https://www.jbja.jp/archives/36825
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。











