一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

北海道ブルワリー探訪vol.1【CATHOP/札幌市手稲区】

〈画像提供:CATHOP〉

札幌市内には、現在(2026年2月現在)9つの醸造所がある。その中でも最も新しいブルワリーであるCATHOP(キャットホップ)を訪ねた。場所は札幌市手稲区。2025年8月に醸造を開始した小さな醸造所だ。そこで醸造を務める東大樹さんに、これまでの歩みと現在醸造しているビールについて話を聞いてみた。

ブルワーの東大樹さん 〈画像提供:CATHOP〉

東さんは、ビール業界では少し異色の経歴の持ち主である。学生時代を帯広で過ごし、その後7年間警察官として勤務。退職後、数年ほかの分野で働いたのち、現在のブルワリーを立ち上げた。

ビール造りのきっかけ


ビールに興味を持ったきっかけは、大学時代に飲んだ炭酸の抜けたサッポロクラシックだったという。飲み会の後片付けをしながら瓶に残っていたビールを飲んだところ、その“抜けた”味わいが意外にもおいしく感じられ、ビールの面白さに惹かれたそうだ。これをきっかけにアイリッシュパブでアルバイトを始め、ビールの奥深さを知り、さらにのめり込んでいった。
アルバイト生活をしていた時に、たまたま警察官から勧誘があり、そのまま採用試験を受験し、警察官となる。すすきの交番や機動隊(機動隊の中でも格闘技の練習をする部署)で約7年間勤務した。体育会系気質もあって「少し特殊な配属が多く、いわゆる“ザ・警察官”という仕事はあまりしていなかったですね」と振り返る。退職後すぐにビール業界へ入ったわけではなく、数年の他業種の経験を経て、あるきっかけから醸造の道へ進むことになる。

大学時代にアメリカ横断のビール旅行を1か月間ともにした先輩が、札幌市手稲区に中古住宅を購入した。3階建ての大きな家で、当初は2世帯住宅として住む案もあったがいろいろあり断念。空いた1階スペースが勿体なく、東さんは「ここでビールを造っていいですか?」と先輩に尋ねたところ、快く了承を得たという。アメリカでホームブリュワーの存在を知っていたこともあり、自宅1階でもビール醸造は可能だと考えていた。

石見式で醸造を決意


醸造方法を調べる中で石見式醸造法を知り、「これならできる」と確信。発案者である島根県の石見麦酒の山口さんを訪ね、4日間にわたり仕込みや機材構成などの基礎を学んだ。そこで札幌にも石見式を学べる醸造所があると知り、それが澄川麦酒だったという。

澄川麦酒では2週間、ほぼ毎日の仕込みを通じて、醸造や味わいの設計を徹底的に学んだ。醸造責任者の齋藤さんと、当時勤務していた木村さん(現:permanent/札幌市南区藤野)には大変お世話になったという。現在もお二方には物品の貸し借りや技術相談などで支えられており、日々助けてもらっていると話す。他にも知り合っていくビール業界の方々も温かい人ばかりのようで業界全体の横の繋がりの強さが伺えた。

仕込み場所の様子。160ℓ寸胴鍋とガスコンロが2つずつ。

醸造所は約13畳のコンパクトな空間に、石見式の160ℓ寸胴鍋とコンロ2セット、発酵用チェストフリーザー4基、貯蔵用冷蔵庫2台を備える。直売も行っており、壁の窓越しに接客できる造りだ。取材当日も近隣の常連客が窓から声をかけてビールを購入していった。地域に根ざした一面がうかがえる。

発酵用に使用しているチェストフリーザー〈画像提供:CATHOP〉

定番ビールは3種類


仕込みは月4回ほどで、月500~600ℓ。年間では発泡酒の最低製造数量6kℓをやや上回るペースだ。また醸造開始して半年くらいだが「実は意外と自転車操業なんですよ」と笑って話してくれた。原料の麦芽が欲しいときに購入できないこともあったとか。このバランスの難しさも感じているという。その分、日々おいしいビールを造る努力を重ねている。

部屋の入り口から見た醸造所の風景〈画像提供:CATHOP〉

 

定番ビール紹介

【テイネール】ビアスタイル: Pale Ale / ABV: 5% / IBU: 21
柑橘&トロピカル、充実のボディーからの後味スッキリ。
【テイネイパ】ビアスタイル: American-Belgo-Style Ale / ABV:6% / IBU:16
小麦のクリーミー、フルーティーな飲み口と、爽やかな苦み、さっぱり系HAZY
【ダブルテイネイパ】ビアスタイル: American-Belgo-Style Ale / ABV:8.5%
バーで人気、アルコール分高めなのにバナナ香に誘われゴクゴク飲めちゃう!?
3種のホップとモルトを贅沢に投入。

定番3種類のビール

3種とも発泡酒として副原料にキヌアを使用しているが、本当はマタタビにしたかったんだとか。使用できるものがすぐに見つからなく、キッチンにあったキヌアが採用された。今後、食材を吟味していき猫繋がりでマタタビを使用することもあるかも!?

ネーミングもユニークだ。発泡酒免許のため「ビール」やスタイル名をそのまま使えず、工夫を凝らしている。ビアフェスで他社のビールのネーミングも気になるようだ。
〈定番3種のネーミング由来〉
・手稲+ペールエール → テイネール
・手稲+NEIPA (ビアスタイル)→ テイネイパ(NEIPAのビールではないが)
・テイネイパよりホップを贅沢使用でアルコールも高め → ダブルテイネイパ

ロゴは、手稲区のシンボルの手稲山と、猫好きであることから2つが組み合わさったユニークで可愛らしいデザインになっている。2階に住む家主でもある先輩が手がけ、二人三脚でブルワリーを支えている。

東さんのビール造り


東さんはヘイジー系のビールが好みで、醸造開始当初から濁りのあるビールを造ってきた。当初は定番ビールを「ヘイジー系です」と説明していたが、「これヘイジーではないのでは?」と指摘を受けることもあったという。一般にヘイジーといえば、単に濁りがあるだけでなく、ヘイジーIPAというビアスタイルを想起させるためだろう。それだけ東さんはビアスタイルにとらわれず、自身の好きな味を求めてビール造りをしてきたとも言える。しかし対面で販売する中で、味わいを説明するよりもビアスタイルを明確に伝えた方が造ったビールを理解してもらいやすいと感じるようになり、現在はビアスタイルガイドラインで該当するスタイルを確認するようにしている。ガイドラインは工場内に常備しているが、「開くとつい、あれもこれも作ってみたくなって、本に見入ってしまい作業が止まるんですよ(笑)」とその言葉から、ビール造りを楽しんでいる様子がとても伝わってきた。

レシピの作成についても聞いてみた。レシピ考える際は、自身のイメージに加え、本やインターネットの情報も参考にする。親しいブルワリーに相談するとレシピがそのまま送られてくることもあり、業界の風通しの良さを感じる場面だ。

ちなみに現在の定番は3種類は、毎回の仕込みで必ず一つ変更点を設け、その違いを検証しているようだ。子どもの頃に夢中になったミニ四駆のように、少し変えては走らせる。その感覚が今の醸造に何となく似ているという。そうした試行錯誤の積み重ねが、CATHOPのビールを少しずつ形づくっている。

麦汁の温度を管理しながら仕込み中〈画像提供:CATHOP〉

 

発酵の作業中〈画像提供:CATHOP〉

今後の展望


2025年は道外のビールイベントに、提供側だけでなく一人のビールファンとしても多く参加した。その中で「自分も出展したい」という目標が生まれようだ。イベントは多くのビールファンと出会え、自身のビールを知ってもらえる貴重な機会でもあるため、今年は道内外のイベント出展を増やしていきたいという。

ビール造りでは、手稲区でワイン用ブドウを栽培する農家さんとご縁があり、そのブドウを使ったビールにも挑戦したいと考えているとのこと。また、定番の進化を続けつつ、新たにラガー系スタイルにも取り組み、「ラガーをきれいに仕上げられるよう腕を磨きたい」と意欲を見せていた。

取材の数日後、SNSで学割実施の案内があった。
直売所で学生証を提示すると30%OFF(2026年3月現在)で購入可能とした。近隣に大学があることや自身の学生時代の経験から、価格面で手が届きにくい学生にもクラフトビールを楽しんでほしいという思いがあるという。

地域とのつながりを大切にする小さな醸造所。その今後が楽しみである。

 

醸造所の窓を開ければ直売所。一人作業でもお客さんにすぐに気付くことができる作りになっている。取材の日はここから笑顔で見送ってくれた。

 


【購入やSNSはこちら】
直売所(兼工場):札幌市手稲区前田7条13丁目2-15
ネット販売サイト:https://store.cathop.jp/
インスタ:https://www.instagram.com/cathop_higashi/

インスタで投稿された学割30%

【今後のイベント】
〈大 阪〉令和8年3月18日~30日 阪神梅田本店(催事:春の北海道市場)
     東さんの来場はないが、グラスビール販売
     https://web.hh-online.jp/hanshin/contents/saiji/hokkaido/wine.html
〈北海道〉令和8年3月25日 4PLA 自由市バー(札幌市) トーク&テイスティングイベント
     https://www.instagram.com/hokkaidobeertopia/
     令和8年3月28日~29日 江別EBRI 東さんがビール直接販売
     https://www.ebri-nopporo.com/event/

【参考】
札幌の9醸造所(2026年3月現在)
・札幌開拓使麦酒醸造所(中央区)
・薄野地麦酒(中央区)
・澄川麦酒(豊平区)
・月と太陽BREWING(白石区)
・CATHOP(手稲区)
・Permanent(南区)
・SUSUKINO BREWING(中央区)
・Streetlight Brewing(中央区)
・TRANS BREWING(豊平区)
(五十音、アルファベット順)

CATHOPキャットホップダブルテイネイパテイネイパテイネール手稲猫好き

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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こばやしのり

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ
1983年北海道生まれ 札幌市近郊に在住
ビール好きになったのは、2014年に日本ビール検定のテキストを書店で見たのがきっかけ。
いまはビールを通じて、様々な方と繋がることが楽しいです。
普段は、ビールや野菜とは関係のない社会インフラに関わる仕事をしています。
野菜ソムリエの資格も活かし、ビールと農家さんが関わるシーンや野菜・果物など、北海道らしい記事を発信していきたいです。

■日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエ
■北海道フードマイスター
■ジャパンビアソムリエ
■ベルギービール・アドバイザー
■日本ビール検定 びあけん2級