甲子園でビールを造る!ブリュワーまでの道のりとこれから
甲子園といえば、誰もが思い浮かぶのは、「高校野球」と「阪神タイガース」でしょう。
2025年4月、そんな野球の街、甲子園に念願のブリューパブが誕生しました。
その名も甲子園アウトフィールドブリュワリー(KOSHIEN OUTFIELD BREWERY)!
この街に、新たに「おいしいクラフトビールが飲める!」という特徴が加わりました。
甲子園アウトフィールドブリュワリーとは?
甲子園アウトフィールドブリュワリーは2025年4月に甲子園球場近くに誕生したブリューパブ(醸造所が併設された店舗)です。
ガラス張りの正面からは店舗の中の様子が見えて、オープンで入りやすい雰囲気です。

店舗正面

店内カウンターとスタンディング席

店内テーブル席
まずはビアバーとして4月に開店し、6月に醸造免許を取得して醸造を開始しました。
Instagramで情報発信をしており、6月26日には醸造免許を取得したことを報告。
その投稿への「いいね」とコメントの数は、いかにたくさんの人たちが待ち望んでいたのか伺えます。
そして、8月6日には、ついに初めてこの醸造所で造ったビール「PLAY BALL」がお披露目され、待ちに待ったファンが集まり盛り上がりました!
PLAY BALLはどんなビール?
初の自社醸造ビール「PLAY BALL」のスタイルはセッションIPA。
アメリカンIPAらしい爽やかな柑橘のフレーバー。
しっかりとした苦味(IBU 63)がありながら、アルコール度数が4.8%と少し低めで爽快な飲み心地。
加えて、あとからふくよかな麦芽感も感じられる一杯に仕上がっています。

初の自社醸造ビール PLAY BALL
シトラホップの芯のある苦味に、グレープフルーツやライムの爽快な香り。軽快なのに印象に残る、しっかりキマる一杯。
(紹介文より)
ブリュワーになるまでの道のりとこれから
初の自社醸造ビールを祝して、ブリュワーの高木 康之さんにお話を伺いました。

ブリュワー高木さん
古川(以下、古):初の自社醸造ビールの開栓、おめでとうございます。初めて造ったビールの感想を教えてください。
高木(以下、高):「まずはちゃんとビールになってくれてよかった」というのが正直な感想です(笑)。
甲子園の醸造所での初仕込みは7月、リリースはちょうど夏真っ盛りの8月になるので「夏らしいビールを作ろう」と考えました。
大好きなホップを存分に味わいたくて、あえてシトラのシングルホップ(1種類のホップのみを使用)に挑戦。
できあがったのは、しっかりとした苦味と柑橘系の爽やかさがあり、ドリンカブルな一杯。
まだまだ改善点はありますが、自分にできることは出し切れたと思います。

古:この暑い夏にピッタリの飲みやすさと、クラフトビールらしさを兼ね備えた、おいしいビールだと思います。
ところでクラフトビールに興味を持ったきっかけは何でしたか?
高:もともとお酒が好きで、飲む空間の雰囲気も大好きでした。
ある時、小規模醸造所で飲んだクラフトビールに衝撃を受けたんです。
味にも感動しましたが、それ以上に「こんな小さな場所でビールが造れるんだ」というのが驚きでした。
そこで、ビールに関する本をいろいろ読み、ビールの作り方や素材(麦芽・ホップ・イースト)について学びました。
また海外には多くのホームブルワーがいることや、国内外にたくさんの醸造所があることを知りました。
それからは、旅行先では必ずビアバーや醸造所を訪ねたり、瓶や缶のクラフトビールを買って飲んだりする機会がどんどん増えていきました。
古:ビールの沼にハマったわけですね(笑)
高:はい(笑)
次第に醸造そのものに興味を持ち、最初は、和歌山ブルワリーの体験醸造を行いました。
次に訪ねたのは、岡山の吉備土手下麦酒の永原さん。
醸造に興味があることを伝えたところ、さまざまな醸造所の立ち上げに同行させてもらい、仕込みの現場で体験をさせてもらったりしました。
しかし、その後、コロナ禍に突入してしまい、自分の醸造所を持つ夢は一度立ち消えたのですが、コロナが明ける頃、「やっぱり開業したい」という思いが再燃。
東京のベクターブルーイングで本格的に修行し、ついに自分の醸造所を立ち上げる決心に至りました。
古:決心されてから醸造所を立ち上げるまでについて教えてください。
高:お店を持つまでの時間は、本当にバタバタであっという間でした。
最初に取りかかったのはテナント探し。西宮の物件に詳しい不動産店舗を訪ね、
「醸造所を探している」と伝えると、代表の方がとても興味を持ってくださり、熱心に物件探しをしてくれました。
そこからは、税務署とのやり取り、設備の選定と搬入、店舗デザインなど、さまざまなことを一気に進めていきました。
正直、細かいことはあまり覚えていないほど慌ただしかったです。
あと、飲食店での接客経験がなかったので、アルバイトとして知人のお店で立たせてもらって練習しました。
古:「PLAY BALL」の前に、姫路のフリースピリッツブリューイングさんとのコラボとして「甲子園スピリッツ」を造られていましたね。こちらは柑橘感がありつつも、カラメル感の強いモルトが特徴的なイングリッシュペールエールでした。
イングリッシュペールエールは高木さんの希望と伺いましたが、なぜこのスタイルを選ばれたのでしょうか?
高:最近の流行を見るとアメリカンIPAが順当だとは思うのですが、あえて逆を行こうと考えました。
クラフトビールブームの火付け役はホップであることは間違いないと思います。
一方で、イギリスのパブ文化に根ざしたペールエールはモルトが土台になっており、しっかりした土台があるから長く愛されて飲み継がれているんだろうな、と感じていました。
そこで、モルトのキャラクターを生かすためにイングリッシュペールエールを選びました。
実は「PLAY BALL」も、もう少しモルト感を出したかったのですが。次回の醸造で調整したいと思います。
古:これからどんなビールを試していきたいですか
高:一番の気持ちは「いろんなビールに挑戦したい」ということです。
「自分が造りたいビール」と「お客さんが飲みたいビール」をどちらも造っていきたいと思っています。
まだまだ未熟ですが、試行錯誤を重ねる中で、「アウトフィールドといえばこのビール」と言ってもらえるような看板の一杯を育てていきたいです。
古:どんなお店にしていきたいですか
高:居心地のいい店をつくっていきたいと思っています。
私は福岡出身ですが、甲子園に住んで十数年。家も構え、子どもにとってはここが故郷です。
この甲子園という土地に何か貢献したいという思いがあります。
もちろん甲子園球場に来られた方にも足を運んでもらいたいですが、一番は地元の人たちが集まる場所でありたい。
いろんな人が集まって自然と会話が弾む、そんな空間にしたいのです。
そのためにも、おいしいビールをできるだけ手頃な価格で提供したいと考えています。
お酒を飲む人が減っていると言われますが、私はお酒は人をつなぐ素晴らしいコミュニケーションツールだと思っています。
飲みすぎるのではなく、ほどよく飲んで盛り上がる、そんな飲みの場をここ甲子園で提供していきたいです。
古:本日はありがとうございました。これからも楽しみにしています。
「看板の一杯」への旅の始まり
これから本格的にビールの醸造が始まります。
インタビューでは、モルト(麦芽)に注目しているというお話でしたが、もちろん新しいホップや珍しい酵母についても色々と勉強中。
持ち前の好奇心とチャレンジ精神で、地元の人たちと甲子園を訪れる人たちを共に楽しませてくれることでしょう。
「PLAY BALL」の次のビールの仕込みも終わっており、8月末にリリース予定。
次はどんなスタイルのビールになるのでしょうか。
「甲子園スピリッツ」は残りわずかなのでお早めに。
店舗情報
- 店舗名:甲子園アウトフィールドブリュワリー(KOSHIEN OUTFIELD BREWERY)
- 住所:兵庫県西宮市甲子園八番町2-1 LS甲子園ビル102(阪神甲子園駅より徒歩約5分)
- 開店時間 ※以下は2025年8月の予定です。9月以降はInstagramでご確認ください
- 水〜日:12〜21時
- 定休日:月、火
- フード持ち込みOK
- テイクアウト、量り売りあり
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。







