新ジャンルがビールへ 金麦・本麒麟・麦とホップに見る2026年10月酒税改正
ビールに愛された皆さまへ。
2026年10月1日、ビール類の酒税が改正されます。
長く段階的に進められてきた酒税改正が、いよいよ大きな節目を迎えます。
その前に、各社の動きが目立ってきました。
サントリーは『金麦』をビール化すると発表しています。
キリンも『本麒麟』をビール化する方針を示しています。
そしてサッポロビールは2026年6月17日、『サッポロ GOLD STAR』と『サッポロ 麦とホップ』を、新ジャンル(発泡酒②)からビールへ品目変更すると発表しました。
アサヒについても、『クリアアサヒ』のビール化を検討していると報じられています。公式発表を待つ必要はありますが、大手各社が酒税改正後のビール類市場を見据えて動き始めていることは間違いありません。
「この流れがここまで来たか」
このニュースを見て、そんな感想を持った方も多いのではないでしょうか。
※本稿では、飲み手になじみのある呼称として「新ジャンル」と表記しています。酒税法上の分類は改正時期により異なります。

2026年10月の酒税改正を前に、主力新ジャンルブランドがビールへ向かっている。画像は各社公表素材より構成。
新ジャンルはなぜ生まれたのか
ビールの歴史を調べていると、不思議なほど酒税に行き当たります。
明治期のビール産業の発展。
戦時中の原料不足。
戦後の統制。
発泡酒の誕生。
新ジャンルの登場。
ビールの歴史を見ているつもりが、いつの間にか酒税の歴史を見ている。
そんな感覚になることがあります。
ビール、発泡酒、新ジャンル。
これらのカテゴリーは、味わいの違いだけで分かれてきたわけではありません。
酒税の違いがあり、価格の違いがあり、その中でメーカー各社が商品を磨いてきました。
飲み手は、おいしいかどうかだけでなく、日々の暮らしの中で手に取りやすい価格かどうかでもビールを選びます。
だからこそ、発泡酒や新ジャンルは多くの飲み手に支持されてきました。
それは単なる「ビールの代わり」ではありません。
限られた条件の中で、どうすれば満足感を出せるのか。
どうすれば麦のうまみやホップの香り、飲みごたえを表現できるのか。
各社が技術と知恵を積み重ねてきたカテゴリーです。
350ml缶で見る酒税の変化
酒税の話は、1kLあたりの税額で示されることが多く、少し距離を感じてしまうかもしれません。
そこで、私たちが普段手に取りやすい350ml缶に換算して見てみます。
| 時期 | ビール | 発泡酒① | 発泡酒②/新ジャンル |
|---|---|---|---|
| 改正前 | 77.00円 | 62.34円 | 28.00円 |
| 2020年10月 | 70.00円 | 58.49円 | 37.80円 |
| 2023年10月 | 63.35円 | 54.25円 | 46.99円相当 |
| 2026年10月 | 54.25円 | 54.25円 | 54.25円 |
※国税庁資料をもとに350ml換算で整理。
※本稿では、飲み手になじみのある呼称として「新ジャンル」と表記しています。
こうして見ると、ビールの税率は段階的に下がり、新ジャンルは段階的に上がってきたことが分かります。
そして2026年10月には、ビール類の税率が350ml缶あたり54.25円へと、ついに一本化される日がやってきます。
発泡酒や新ジャンルは、ビールとの税率差がある中で生まれ、育ってきたカテゴリーでした。
その差が縮まり、同じ税率へ向かう中で、各社が主力ブランドをビールへ移行させていく。
『金麦』『本麒麟』『麦とホップ』『GOLD STAR』の動きは、この数字の流れと重ねて見ると、より理解しやすくなります。
「ビールになる」は格上げなのか
『麦とホップ』は2008年の発売以来、18年にわたって新ジャンルとして愛されてきました。
そのブランドが2026年にビールへ移行する。
このニュースは、酒税がビールの歴史に与えてきた影響の大きさを改めて感じさせます。
ただし、ここで気をつけたいのは、「ビールになる」ことを単純な格上げとして語らないことです。
新ジャンルが下で、ビールが上。
そういう話ではありません。
新ジャンルには、新ジャンルとして培われてきた味わいと技術があります。
『GOLD STAR』もまた、税法上は新ジャンルでありながら、ビール好きから味わいを評価されてきたブランドです。
今回のビール化は、「格上げ」ではなく、これまで積み重ねてきた商品力を新しい酒税環境の中でどう生かすのかという動きとして見たいのです。
サッポロが示した「エコノミー」カテゴリー
サッポロビールは今回の発表で、酒税改正後のビールカテゴリーにおいて、「プレミアム」「メインストリーム」「エコノミー」といった複数の価格帯をそろえるポートフォリオへ移行するとしています。
この中で『GOLD STAR』と『麦とホップ』は、「エコノミー」カテゴリーの中心となる商品です。
ここに、今回の大きなポイントがあります。
酒税改正後にビールの税率が下がる一方、新ジャンルは増税となります。
その中で、これまで新ジャンルとして支持されてきたブランドが、ビールとして新たな価格帯を担っていく。
つまり、これまで新ジャンルが果たしてきた「手に取りやすさ」の役割を、今度はビールカテゴリーの中で引き受けようとしているのです。
『GOLD STAR』は「新うまいどこまでも製法」を刷新し、キレのある飲み口と雑味のない研ぎ澄まされた後味を目指したとされています。
『麦とホップ』は麦芽比率を上げ、「うまみ麦汁製法」に磨きをかけることで、ビールらしい飲みごたえと芳醇なコクを追求したといいます。
単に品目名を変えるだけではなく、酒税改正後の市場に向けて中味も設計し直していることが分かります。
秋の売り場で、何を選ぶのか
2026年10月以降、店頭での見え方は少し変わるかもしれません。
これまで飲み手は、「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」というカテゴリーを、価格や気分の目安として使ってきました。
今日はビールにしよう。
今日は少し価格を抑えて新ジャンルにしよう。
そんな選び方をしてきた人も多いはずです。
しかし、主力ブランドがビールへ移行していくと、その目安も変わっていきます。
価格で選ぶのか。
ブランドで選ぶのか。
味わいで選ぶのか。
それとも、毎日の食卓に合うかどうかで選ぶのか。
帰れば家にあった『金麦』。
うまさで明日を明るくしてきた『本麒麟』。
「私にはビール」と言い切った『麦とホップ』。
ヱビスと黒ラベルのいいとこどりとして生まれた『GOLD STAR』。
それぞれのブランドには、それぞれの言葉がありました。
価格の手に取りやすさ。日常の食卓に合う飲みやすさ。そして、ビールらしい満足感。
そうした価値を磨いてきたブランドたちが、2026年10月を前に、今度はビールとして売り場に並ぼうとしています。
それは「新ジャンルが終わる」というだけの話ではありません。
これまでの技術やブランドの記憶が、ビールというカテゴリーの中へ入ってくるということでもあります。
そう考えると、2026年10月以降のビール売り場は、これまでとは違った面白さを持つはずです。
ビールは、特別な日の一杯でもあり、毎日の食卓に寄り添う飲み物でもあります。
だからこそ、酒税改正後に各社がどのようなビールを出してくるのか。
そして飲み手が、どの一杯を選ぶのか。
2026年10月1日。
新ジャンルで育った主力ブランドたちが、ビールへ向かいます。
この秋、いつもの売り場で缶を手に取るとき、私たちはこれまでとは少し違う気持ちで、その一杯を選ぶことになるのかもしれません。
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