一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

ビール好きの本棚【第1回】「世界のビールMAPS」後編 監修・長谷川小二郎さんに聞く

前編では、『世界のビールMAPS』の魅力や読みどころを紹介しました。
(記事はこちら URL: https://www.jbja.jp/archives/62082)
今回は、本書の監修を務めた長谷川小二郎さんに、監修を引き受けた経緯や、本書の見どころについて貴重なお話を伺うことができました。

長谷川小二郎さんのプロフィール

〈画像提供:長谷川小二郎〉

ビール情報/著述家、軽出版者/メディア4社で編集記者/ビール書籍の執筆・翻訳・監修等8冊/4種のビール資格講座講師/ワールドビアカップなど12種の国内外審査会での審査経験18年/ビア検1級最多(9回)合格、首席2回、3級満点1回/最頻・独立ビール専門誌「ビールの放課後」発行。
X:https://x.com/hasegawashojiro
Instagram:https://www.instagram.com/hasegawashojiro/
note:https://note.com/hasegawashojiro

監修を引き受けたご縁


今回の監修は、本書の編集を担当したワダヨシさんからの推薦があって引き受けました。そして元々は、奥様である翻訳家・和田侑子さんとのご縁があったと長谷川さんは振り返ります。

「和田さんが翻訳して2015年に出版された『クラフトビール革命 地域を変えたアメリカの小さな地ビール起業』を読んで大きな感銘を受けました。その後、和田さん夫妻とFar Yeast Brewing(山梨県)社長の山田司朗さんも交えて主要都市で半ば勝手に本の販促になるセミナーなどを開催し、ご縁が生まれました」

その後、私が訳書を手掛ける際に助言をいただいたり、本の即売会で一緒になったりと、親交を深めていきました。
しかし、2025年12月に和田侑子さんが逝去された連絡が届きます。
「知らせを受けた時は本当に驚き、深い悲しみを覚えました」
それから数カ月経ってから届いたワダヨシさんからの監修の依頼。
「侑子さんとのご縁も思い返し、そのお気持ちに応えたいという思いでお引き受けしました」。本書には、ブルックリンブルワリーも掲載されており、長谷川さんにとって、この仕事は単なる1本の監修ではなく、人とのご縁をあらためて感じる機会でもありました。

原稿は一語一句を確認する


監修という仕事について尋ねると、長谷川さんは「出版における監修には明確な定義はありません」と前置きした上で、今回の役割をこう説明してくださいました。

「フランス語から翻訳された原稿を、ビールの常識や論理と照らし合わせながら確認し、読者に違和感なく伝わる表現へと整えていくこと。それが今回の監修としての依頼でした」
こうした依頼を受けるたびに思い出すのは、「原稿に『軽く見る』『しっかり見る』という違いはない」ことだという。

「確認はもちろん、一語一句、全文を確認しています。この本でも、ビールの内容だけではなく、日本語として表現や使い方が正しいかも目を通しました。原稿確認は、持てる知識やセンスを総動員して臨む営みです。力の出し惜しみはできないというか、どうやって出し惜しんだらいいのか分かりません(笑)」
もちろん、編集上の判断もあるため、すべてが提案どおりに修正されるわけではありません。それでも、「本書は監修に携わった者として、自信を持っておすすめできる一冊になっています」と語ります。

読者に伝わる言葉を選ぶ


本書のテイスティング表現のところでは、
もともとの翻訳原稿には、arômeに対する訳語として「アロマ」という言葉が使われていましたが、日本で一般的に使われるビールのテイスティング用語とは少し意味が異なっていました。
「日本だけでなく海外でも、ビールのテイスティングをする際に『アロマ』といったらビールを口に含む前に鼻感じる香り、いわゆる上立ち香を指します。一方で、フランス語arômeは口に含むかどうかに関係なく香りを指します。そこで訳語としては香りが採用されました。」

本書で見える世界のビールの現在地


本書で特に印象に残っているブランドについて尋ねると、長谷川さんは「ブリュードッグ」と「ミッケラー」の名前を挙げました。
「どちらもほぼ同じ時期に創業し、世界のクラフトビールシーンへ大きな影響を与えてきたブルワリーです。しかし現在は、それぞれ異なる歩みを進んでいます。」
今回は、原作には記述がないブリュードッグに関する近年の動向も反映しています。
「本書を読むことで、これまでの歩みだけではなく、現在の立ち位置まで理解できると思います。」
一冊を通して読むことで、ブランドの歴史や変化まで見えてくるのも、本書ならではの魅力と言えるでしょう。

まだ知らないビールに出会う楽しみ


最後に、原作がフランスということでフランスのビールについて伺いました。
「フランスはワインのイメージが強いですが、例えばベルギーに隣接する北部は古くからビール文化が根付いています。全体の醸造所数も現在2500ほどあると見られ、1人当たりの醸造所数でいえば日本より数倍多い」
一方で、長谷川さん自身も、本書に掲載されているフランスのビールは「1種類しか飲んだことがありません。まだまだ知らないブルワリーやブランドはたくさんあります」と長谷川さんでさえ、新しい発見がある。

『世界のビールMAPS』は、そんな世界の広さと、ビールの奥深さを感じさせてくれる一冊である。
本を読む前よりも、読み終えた後の方が、この一冊を手にしてじっくりビールを飲みたくなるだろう。

お知らせ:出版イベント


長谷川小二郎氏による各地の出版記念のイベントでは、本書の内容の深堀やビールを飲みながら学べる貴重な機会になっております。詳細は以下の各SNSでご確認ください。
・8月 1日(土) 17:00~19:30
大阪 酒のレパード(大阪市北区大深町3-1グランフロント大阪 北館2階)
https://peatix.com/event/5075151
・8月 2日(日) 18:00~19:00
岐阜 BEER&CRAFT(岐阜市住ノ江町1-11)
https://peatix.com/event/5075924

クラフトビール革命ビア本ビール本フランスビール世界のビール長谷川小二郎

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

お問い合わせはこちら

この記事を書いたひと
アバター画像

この記事を書いたひと

こばやしのり

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ
1983年北海道生まれ 札幌市近郊に在住
ビール好きになったのは、2014年に日本ビール検定のテキストを書店で見たのがきっかけ。
いまはビールを通じて、様々な方と繋がることが楽しいです。
普段は、ビールや野菜とは関係のない社会インフラに関わる仕事をしています。
野菜ソムリエの資格も活かし、ビールと農家さんが関わるシーンや野菜・果物など、北海道らしい記事を発信していきたいです。

■日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエ
■北海道フードマイスター
■ジャパンビアソムリエ
■ベルギービール・アドバイザー
■日本ビール検定 びあけん2級