一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

北海道ブルワリー探訪vol.5_前編【ノースアイランドビール/江別市】

〈画像提供:SOCブルーイング〉

お盆が終わると、北海道の各地ではホップの収穫が行われる頃になる。今年も8月中旬から下旬にかけて、SNSで収穫ボランティア募集の情報を見かけるたび、自分のスケジュールを眺めながら、体が一つしかないことを恨めしく思う。
ホップ収穫は、大抵ビール好きが集まる場だ。収穫しながら初対面の人や顔なじみと交わす何気ない会話も、ブルワーとの会話も、自然とビールの話題が多くなる。昼間からビール談議に花が咲くのも、ホップ収穫の醍醐味の一つである。
そんなビール好きが集まるホップ収穫の場へ、今年も足を運んだ。
札幌周辺でもホップ栽培を行っているところはいくつかあり、今回は隣町の江別市でノースアイランドビール(会社名:SOCブルーイング株式会社)が行っていたホップ収穫にお邪魔した。
今回、特別にホップ収穫からフレッシュホップビールの仕込みまで同行させていただき、お話もたくさん伺った。そこで、ノースアイランドビールの取り組みを前編・後編に分けて紹介したい。

 

北海道を代表するブルワリー「ノースアイランドビール」

ノースアイランドビールでお馴染みのSOCブルーイング株式会社は、2009年から江別市で醸造を行っている、北海道では歴史のあるブルワリーだ。
創業は2002年。2003年から札幌市東区で「体験工房 手づくり麦酒」として醸造を開始した。当時はとても小規模な工場だったため、次第に手狭になっていき、醸造設備を大きくすることをきっかけに、現在の江別市内へ移転した。

素通りしてしまうような場所にある醸造所。土日はここで直売も実施。

現在の工場には、1kLの仕込み装置と2kLタンクが6本(発酵タンク3本、貯酒タンク3本)、1kLタンクが14本(発酵タンク8本、貯酒タンク6本)ある。仕込みは平均すると週2回程度行っている。北海道のクラフトビール醸造所としては、比較的大きな規模である。最近は缶充填機も導入し、さらなる品質向上や販路拡大を目指している。

左:1kLタンク、右:2kLタンク

仕込み装置

煮沸用タンクとお湯タンク(手前)

煮沸用タンクの向かいにある2kLタンク

定番ビールは現在5種類。ピルスナー、ブラウンエール、ヴァイツェン、I.P.A、コリアンダーブラックをラインナップする。なかでも印象的なのが「コリアンダーブラック」だ。爽やかなコリアンダーの香りが効いた、飲みやすくクセになる黒ビールである。定番以外にも限定商品を続々と発売しており、多彩なビアスタイルでファンをワクワクさせ、飽きさせないことも人気の理由の一つだろう。

定番ビール5種。缶バージョン〈画像提供:SOCブルーイング〉

コリンアンダーの香りが効いた黒ビール

ノースアイランドビールを支える若きブルワー

工場は、工場長の多賀谷壮さん、副工場長の荒川耕将さんという経験豊富な二人を中心に稼働している。そのなかで現在、主に仕込み担当しているのが松森皇士郎さんだ。

醸造スタッフ:左から荒川副工場長、営業担当の芳賀さん、多賀谷工場長、スタッフの佐藤さん、松森ブルワー、鈴木ブルワー〈画像提供:SOCブルーイング〉

松森さんは長崎県出身で、2024年2月に入社。学生時代まで九州で育ち、その後は札幌でチーズの研究開発に携わっていた経歴を持つ。みんなからは「ジロー」の愛称で呼ばれ、好きなビアスタイルはウエストコーストIPAだ。
松森さんが入社するきっかけとなったのは、
「人生で後悔しないためにも、やりたいことをやる!」と転職を決心したタイミングで、ちょうどノースアイランドビールの求人広告を見つけたことだった。もともと好きで飲んでいたこともあり、まさに絶好のタイミングだった。
ビール造りを選んだのは、
札幌で暮らし始め、さまざまな種類のビールを飲むうちに、ブルワーという仕事に興味を持つようになったからだ。そんな中「なんだこれは!」と思うほど、これまでで一番おいしいと感じた海外ビールに出会った。その一杯をきっかけに、「ブルワーになりたい」という思いは、さらに強くなっていった。
また、自身の結婚式用にOEM(委託醸造)ビールを造った経験もあり、その時にレシピ設計から仕込み工程まで携わったことがあった。そのビールをゲストが笑顔で「おいしい」と言って飲んでくれた光景に、強く感動し、この体験もビール造りの道へ進む大きな後押しとなった。
醸造担当として約1年が経った現在では、一人で仕込みを任せられるようになり、ノースアイランドビールの醸造を支える存在として、着実に経験を積んでいる。

醸造担当の松森さん

ノースアイランドビールのこれまでの歩みや近況については、先月(2026年8月)、ビールコンシェルジュ、ビールブロガー、ポッドキャスターとして活動する「こぐねえ」こと小暮亮さんが、工場長の多賀谷さんにインタビューした動画・音声が公開されているので是非ご視聴いただきたい。海外ブルワリーとのコラボレーションの苦労や裏話なども聞くことができるので必見!
《「ビールに恋するYouTube」によるノースアイランドビールのインタビュー動画》
https://youtu.be/VwjjmYKQKvs?si=h8XzYs-uqCcbLM05
《音声バージョン》
https://stand.fm/episodes/6a7b0243d2f54052c3a4f21a

地域に根付き、人をつなぐイベント

ノースアイランドビールの特徴の一つが、地域との距離の近さだ。その姿は、年間を通して参加・開催しているイベントからも感じることができる。
自社・他社を問わず地域のイベントへの出展には積極的で、同日に複数のイベントへ出店するケースも珍しくない。スタッフ総出でイベントをこなす姿を見かけることも多い。

市内市外、道内外問わずイベント出展も頻繁におこなっている。〈画像提供:SOCブルーイング〉

一方、自社で開催するイベントも、他のブルワリーにはなかなか真似できない規模感で実施している。
特に印象的なのが、二つのイベントだ。

まず一つ目は、例年5月下旬に江別市内の公園で行われる花見会である。今年はあいにくの雨で6月開催となったが、自社ビール10種類の樽を公園に持ち込み、飲み放題で提供していた。
スタッフたちが焼きそばや焼き鳥を焼いて提供するほか、地元のピザ店「PIZZERIA DEL CAPITANO」も招き、本格的なピザも楽しめる。
これだけのフードが付き、今年の参加費は大人4,500円、子ども1,000円。まさに感謝祭のような内容である。造り手との交流はもちろん、子どもも一緒に楽しめるブースが用意されており、家族参加も多い。
ビール好きな親にとって、開放感のある場所でおいしいビールを飲みながら、家族で参加できるイベントは大変ありがたいものだ。参加者は、江別や札幌からの方が多く、例年約100人となっている。

今年は6月開催だった、恒例のお花見会。参加者は約100名。〈画像提供:SOCブルーイング〉

もう一つは、毎年8月中旬に開催される周年祭だ。
周年祭を実施しているブルワリーは多いが、このイベントは自社だけで完結するものではない。地元の企業を巻き込み、一緒に盛り上げているのが特徴だ。
今年は10社の出店と5組の出演者が集まった。出店は、キッチンカーや屋内での飲食提供のほか、野菜販売やクラフト製品の販売などが行われ、出演者については、市内の中学校の吹奏楽部や江別観光特使や、江別出身の方など江別にゆかりのある方々だ。
そして、当日に提供されたビールは全27種類!無くなり次第次々と銘柄を変えて繋いでいく。開催場所も商業施設ということもあり、とても賑やかな感謝祭となっていた。来場者は約500人だった。

ライブを聞きながら盛り上がる周年祭〈画像提供:SOCブルーイング〉

出展者や出演者が集まった記念撮影。携わっている方がたくさん。〈画像提供:SOCブルーイング〉

このタイミングに合わせて周年ビールも醸造しており、これがまた好評だ。今年は、江別市の農業生産法人「アンビシャスファーム」で栽培されたレモングラスと、江別製粉で加工されたコーングリッツを使用したビールを造った。爽やかなレモングラスの香りが楽しめるメキシカンラガーで、フェスの屋外で飲むのにぴったりなビールだった。

大人気の周年ビール。ラベルのキャラクター達もかわいい。

北海道ではすでに名前の知れたブルワリーではあるが、このような地道な活動の積み重ねが、現在の知名度につながっているのだろう。
そして、地域とのつながりを大切にしてきたノースアイランドビールだからこそ、次に紹介するホップ栽培や収穫への取り組みにもつながっているのかもしれない。
次回は、いよいよホップ栽培の取り組みと、フレッシュホップビール造りについて紹介したい。

次回お届けするホップ収穫

コリアンダーノースアイランドビール周年祭地域密着江別市

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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こばやしのり

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ

ビアジャーナリスト/野菜ソムリエ
1983年北海道生まれ 札幌市近郊に在住
ビール好きになったのは、2014年に日本ビール検定のテキストを書店で見たのがきっかけ。
いまはビールを通じて、様々な方と繋がることが楽しいです。
普段は、ビールや野菜とは関係のない社会インフラに関わる仕事をしています。
野菜ソムリエの資格も活かし、ビールと農家さんが関わるシーンや野菜・果物など、北海道らしい記事を発信していきたいです。

■日本野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエ
■北海道フードマイスター
■ジャパンビアソムリエ
■ベルギービール・アドバイザー
■日本ビール検定 びあけん2級