[ブルワー]2019.2.23

さらなる飛躍を求めてNEXT STAGEへ【ブルワリーレポート さかづきBrewing 3周年記念インタビュー編】

来週、3月1日(金)にオープンから丸3年となる「さかづきBrewing」。大衆居酒屋で賑わう北千住の街にブリューパブという新しい形態を持ち込んだのがオーナーブルワーの金山尚子氏だ。オープンから常に人が絶えない人気店として走り続けてきた彼女に、この3年と未来について語ってもらった。

ビール、料理、雰囲気が揃ったブリューパブを目指した3年間

―:3年間を振り返るといかがですか?

金山:ようやくやりたいことができるようになってきたかなと思います。

―:具体的にいいますと。

金山:いつもスタッフに伝えていることですが、ビールだけではダメで、ビールと料理。それとお客様に楽しんでもらえる空間。この3つをきちんとやろうと心がけています。ビールは私、料理はアキラ(料理長)。空間はスタッフ全員。それが3年経って、ようやく揃ってきたと感じています。ビールも「この醸造設備だったらこうすればいい」という感覚がつかめてきましたし、料理もビールに合うメニューをどんどん考案してくれます。

オーナーブルワーの金山尚子氏。今ではブリューパブにも多くの女性ブルワーがいるが、オープン当時まだ珍しい存在だった。

―:この3年どんなことが大変でしたか?

金山:う~ん。スタッフとの人間関係かな。「こうやって欲しい」と思っても、自分の考えとスタッフの考えは違いますから。ビールに関することよりも、みんなが働きやすい職場をつくる、という社長としての仕事の方が大変でしたね。

―:問題があったときはどのように指導しているのですか?

金山:アキラが第三者として客観的な視点で見てくれるので、彼の意見を聞きながら対応しています。

―:アキラさんはお母さん的な存在だ。

金山:(笑)。

―:スタッフの方も言われていることが理解できるから、店内が柔らかい雰囲気になっているのだと感じます。飲食業は人の出入りが激しいといいますが、「さかづきBrewing」はスタッフの在籍期間がみんな長いのは信頼関係がしっかりできているからなのでしょうね。

金山:やってほしいことはストレートに伝えるけど、押さえつけにならないように気を付けています。みんながリラックスして働けるように意識しています。なかなか思うようにいきませんが……。

―:お店としては、今は描いていた形に近いですか?

金山:週末は子供連れのご家族やご高齢の方も来てくれて、色々な年齢層の方がカジュアルに食事やビールを楽しんでくれているこの明るい雰囲気は理想に近いですね。でも、ビールづくりはまだまだ理想から遠いですね。

ビールづくりはいよいよ次のステップへ

―:どんなところが遠いのですか?

金山:現在の醸造設備でできることしかできないので、できる範囲のことでビールをつくっています。

―:できないことというと……。

金山:一言でいうと長期熟成を必要とするスタイルのビール。あとは熟成の後に濁りをとる工程。寸胴型のタンクでの構造上の問題と時間的な問題から清澄化の時間は最低限しか取れず、味が完成したら提供を開始しています。

―:やはりその辺りは理想としている形ではない。

金山:そうですね。ピルスナーとかつくりたい。

現在の醸造設備。

―:でも、そうなると醸造設備を変えるしかない。拡張の予定は?

金山:お店の方も任せられるようになってきたので、少しずつ拡張についても目を向けていこうかなと考えています。

―:場所は?

金山:ここはもう拡張ができないので、他の場所で。そんなに離れていないところがいいかな。設備も同じ規模の大きさでは意味がないので、今よりも大きな設備を入れてつくりたいですね。とはいえ自分の考えるビールがつくることができる小規模設備の範囲です。

―:実際はどのくらいの規模を考えていますか?

金山:最初は500Lと考えていましたが…。今は500Lか1000Lのどちらかで迷っています。

―:あとはある程度の数の貯蔵タンクを設置できるスペースを確保できる広さが必要。

金山:おっしゃる通り。ある程度の広さがある物件も探していかないといけないです。既存のビールも熟成期間をもっと設けられれば、さらに美味しくなる自信はあります。

―:醸造設備については、今後が楽しみです。そのほかでは今後の課題はありますか?

金山:料理の面ですかね。いま、アキラが1人で頑張ってくれています。メニューにしても彼がもっと満足できる料理を提供できるようにスタッフを増員してきたいです。私はビールを料理と一緒に楽しみたいので。「さかづきBrewing」は、ビールと料理が楽しめるからお客さんが来てくださっていると思います。

イベントには滅多に出展しないので、さかづきBrewingで使っているケグをみる機会は少ない。ちなみにビールイベントには今後も積極的に参加することはないそうだ。飲みたい方は北千住に足を運んでみよう。

理想の味に近づいたフラッグシップビール

―:さかづきBrewingというと様々なビールをつくってきましたが、3年間でビールのレシピは何種類くらいになりましたか?

金山:マイナーチェンジを含めると200は超えました。

―:定番的ビールというと「風月ペールエール(以下、風月)」「月の杯ヴァイツェン」「焦香ブラウン」でしょうか?

金山:「風月」がフラッグシップで、「月の杯ヴァイツェン」「焦香ブラウン」が準定番という感じです。

―:「風月」は3年間でレシピはかなり変わりましたか?

金山:今で8回変えています。仕込みは40回近くしました。

―:3年間で8回だから約4ヶ月に1度のペース。季節ごとにリニューアルしていた計算になりますね。世間的にはアメリカン・ペールエールが主流のなかで「風月」は、イングリッシュ・ペールエールです。このビールをつくり続けてきたことが個人的に興味深いです。これには何か理由があったのですか?

金山:1番はビールが「麦のお酒」ということだからです。麦の感じがあって、重すぎないビールをつくりたかったからです。実は、始めたころは流行りに疎くて、アメリカン・ペールエールが人気だったこと知らなかったんですけどね(笑)。

―:そうでしたか……。レシピを変えるときは何かきっかけがありますか?

金山:「風月」に関しては明確です。1番は麦の豊かなコク感を出したかった。最初の頃はドライな仕上がりで、「どうしたら麦の甘味を増せるかな」と仕込み条件や麦芽を変更して試しました。マリスオッター麦芽の独特な穀物香とボディ感とホップのみかんを思わせる軽いアロマとのバランスが整い、理想の形になってきました。

「風月ペールエール」。マリスオッター麦芽に出会えたことで、理想の味を実現することができたという。

―:確かにマリスオッター麦芽を使っていなかった最初の頃は、「イメージよりもキレた仕上がり」とおっしゃっていました。

金山:「風月」については今の感じが気にいっています。準定番の「月の杯ヴァイツェン」「焦香ブラウン」は、まだこれからですね。

―:お客様の「風月」への反応もいいですよね。

金山:そうですね。おかわりされる方は多いですね。

取材時「風月ペールエール」はVer.8.3。小数点第一位の3というのはVer.8の3回目の仕込みという意味。余談であるが、筆者はこの3年間その意味を知らなかった。

3月1日(金)は周年祭! 記念ビールに料理、恒例のくじ引きで記念グッズを当てよう!

―:来週は3周年を迎えます。周年イベントについて教えてください。

金山:2周年と同様に周年ビール、特別メニュー、くじによる抽選会です。ビールは、周年特別醸造ビールが2種類。それとは別に数ヶ月熟成させたインペリアルスタウトとウィートワインを用意しています。さらに2年熟成させた木樽のバーレーワインを2種類予定しています。バーレーワインは熟成具合をまだ味見していないので、状態が悪ければ提供はないかもしれません……。料理はアキラが考え中です。当日、楽しみにしていてください。抽選会の景品は、1位が「オリジナルビール醸造権」で、その他に3周年特別デザインの「コースター」「ブランケット」「ポーチ」「トートバック」のいずれかが当たります。

―:周年イベントは3月1日だけですか?

金山:はい、1日限定。皆さんのご来店をお待ちしています。あ~、バーレーワインが提供できるかドキドキする~。

―:楽しみにしています(笑)

周年イベントを確認する金山尚子氏。昨年はオリジナルビール醸造権がいきなり当たるハプニング? も。

◆さかづきBrewing Data

住所:東京都足立区千住旭町11-10

電話:03-5284-9432

FAX:03-5284-9439

E-mail:shoko178_ilbeer@yahoo.co.jp

Facebook:https://www.facebook.com/sakaduki

営業時間:平日16:00~22:30(L.O. 22:00)土13:00~22:30(L.O. 22:00)日13:00~21:30(L.O. 21:00)

定休日:月曜日・火曜日

さかづきBrewingブルワリーレポート北千住金山尚子氏

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

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