[コラム,ブルワー]2019.5.17

コアファンもライトファンも楽しんでもらえるビールをつくりたい! 【ブルワリーレポート NAMACHAん Brewing1周年記念インタビュー編】

2018年6月1日にオリジナルビールの販売を開始した「NAMACHAん Brewing」。4月には1周年祭を開催し、大いに盛り上がったという。1年という節目もあり、代表である山崎氏と醸造責任者である米澤氏(通称:なまちゃん)にお話を聞くため「Smoke Beer Factory大塚店」を訪れることにした。

自分たちの目指すビールをつくり続けた1年間

−:1周年おめでとうございます。まずはこの1年間を通しての感想をお2人にお聞きしたいと思います。

なまちゃん::1年前は経験も浅く、醸造レシピの設計や作業工程で設備に慣れることで精一杯でした。慣れてくることで、少しずつ余裕が出来てきて「もっとこうしたい」「こんなビールをつくりたい」という思いを実現させるための時間が増やせました。

−:やはり慣れるまでが大変なのですね。

なまちゃん:そうですね。最近は、普段何気ない物を見たり、聞いたり、食べたりするなかでつくりたい! というひらめきが生まれるようになりました。

−:少し余裕が生まれて、アイデアも普段の生活のなかで考えられるようになったと。山崎代表はいかがでしょうか?

山崎代表:自分たちのコンセプトである「クラフトビールと燻製料理」のペアリングに力を入れてやってきていますが、自分たちの料理に合うように醸造に使う燻製麦芽も自分たちでつくっています。完成するビールの味を想像しながら、麦芽を燻製しています。

−:燻製料理とのペアリングを常に意識してビールを醸造するのは大変だと思います。

山崎代表:1年つくってきて、「ホップの要素を強くするとこういう料理に合うよね」とペアリングがしっかりできるようになったことは良かったです。

-:1年でお店のコンセプトに合わせられるようなってきたのはすごいです。

山崎代表:コンセプトに合うビールを醸造するうえで、それにあった燻製麦芽をつくることがすごく重要です。「どういう味にするにはどんな方法で燻製する必要があるか」「どんなチップを使うか」と、ビールをつくる前に1回ずつ試食して確認しています。

−:つくるビールによっても使う麦芽や燻製時間、チップの種類と方法を変えていかなければいけませんよね?

山崎代表:はい。燻製を担当するスタッフも苦労しながらも対応してくれました。各担当スタッフの思いが一体化して美味しいビールができるということが重要でした。

−:燻製は奥が深そうです。

山崎代表:本当にそうです。使うチップによって味もですが、温度の上がり方、煙の立ち方が全然違います。燻製する時間でも変化しますから自分たちが思うような燻製具合に調整するのがとても難しいです。醸造に適した状態で燻製する必要があるので、麦芽に適度な甘みを残した状態で燻製香をつけなくてはいけない。作業は、つきっきりで行うので、人手も時間もかかります。数えきれない試作を試食しているので、スタッフは口が痺れていたんじゃないかなと思いますよ(笑)。

−:それは大変ですが「NAMACHAん Brewing」の強みでもあると思います。1年経験してみて「やってきて良かったなぁ」と思うことはどんなことがありますか?

なまちゃん:ここはブリューパブなので、お客様の反応が直に分かるところですね! 最近は、飲んだ反応がより分かるようになってきました。最初の頃は「美味しい」というよりも「頑張ったね〜」みたいな感情の反応もあって(笑)。今は「○○のところが変わったね」とか「コクが出たね」と具体的な反応を返してくれるようになりました。クラフトビールをあまり飲んだことのないお客様も多いので、ライトユーザーの方たちの反応は良い刺激になります。

1年を振り返る山崎代表(左)と醸造責任者のなまちゃん(右)

NAMACHAん Brewingから生まれるラオホの新しい世界をつくる

−:この1年で醸造したビールは、どのくらいになりましたか?

なまちゃん:スタイルとしては20種を超えています。同じビールでレシピをブラッシュアップしたものも含めると月3回の仕込みスケジュールですから醸造回数でいうと約36種類になりますね。

−:そのなかで思い入れのあるビールはありますか?

なまちゃん:1番最初につくった「優しいラオホ」ですかね。最初だったから分からないことも多くて大変だった……。それとクラウドファンディングでつくったラオホかな。たくさんの支援をいただき、その支援いただいた方への特別なビールだったので思い出深いです。

左が最初に醸造した「優しいラオホ」。【2018年5月撮影】

−:山崎代表は何かありますか?

山崎代表:私もラホオですね。レシピも毎回変えるにあたり、麦芽の燻製を一緒にやってきましたので。「この麦芽をどういう風に使ったら、どんな風になるんだろう」と、大変でしたけど楽しみながらやれました。

−:先程からお話に出てきているラオホ。他にはどんなビールをつくられましたか?

なまちゃん:「アンプリファイドラオホ」ですね。“ラオホ”と言っても、スタイルとしては、Smoked Imperial IPLです。ラオホは燻製香とモルトの甘みが特徴で、ホップの香りや苦みは弱いです。ラオホの特徴にホップの要素をプラスしたこのビールは、一味違った面白いビールとなりました。

−:それは面白いですね。お客様の反応はいかがでしたか?

なまちゃん:良かったです。

−:IPAからニューイングランドIPAが誕生したように既存のスタイルをアレンジすることでオリジナルスタイルも生まれますね。

なまちゃん:あまりラオホを飲まない方も興味を持ってくれて好評でした。コアユーザーの方に対してもオリジナリティのあるビールを提供していきたいです!

−:ラオホというとライトユーザーのお客様は馴染みがないと思います。反応はいかがでしたか?

なまちゃん:「スモークビールを初めて飲んだけど、美味しい!」、「濃色ビールはあまり好まなかったけど、これは飲める」という方が多かったです。ラオホって独特なイメージをもっていた部分もありましたが、飲んだことがない人にとっては飲みやすいという感じがあるんだなぁと。

ラオホへの思いを話すなまちゃん。

SNSにアップされたデザインから関心をもって来店した人も

-:昨年の醸造開始の取材では、「同世代に惹かれるビールをつくりたい」と仰っていました。若い世代の反応はいかがでしたか?

なまちゃん:少しずつですが、同世代や、普段ビールを飲まない方の来店が増えてきました。ビールに馴染みがない方に対しては、ホワイトビールなどを提案してみると「これなら飲める」と喜んでくれました。そういう姿を見たときは私も嬉しかったです。ここからビールを好きになってくれたらいいなと思っています。

-:そこから常連になってくれるお客様もいらっしゃいましたか?

なまちゃん:そうですね。近所の若いお客様で、毎回違うビールを提供すると「面白いね」とハマってくれる方もいました。あと、デザインにも力を入れているので、Instagramを見て来店してくれる方もいらっしゃいました。

-:ビジュアルで興味をもってもらうという点も「NAMACHAん Brewing」の長所ですね。自社を通じてビールに関心を持ってくださる方が増えている実感はありますか?

なまちゃん:はい。1年経って少しずつ感じています。

NAMACHAん Brewingのアートワークを手掛けるMAD BARBARIANSがデザインした作品。デザインがきっかけとなり、若い世代にビールに興味をもってもらえるという。

コンペティションに参加し、レベルアップしていきたい!

-:1年ビールづくりをしてきて、感じる課題は何かありますか?

なまちゃん:やっぱり経験ですね。今後考えているのは、自分のレベルを第3者に見極めてもらうということです。

-:それはどんなことでしょうか?

なまちゃん:コンペティションの出品を検討しています。受賞を目指すことで、勉強になることもたくさんあると思います。あとは、ビールイベントに参加することで、他のブルワリーさんのビールを飲んで刺激を受けたり、お客様とお話しすることで流行りを捉えていきたいと考えています。

左から「アンプリファイドラオホ」「特別なラオホ」「ゆきんこヴァイツェン」「1周年Anniversary IPA Fanfare」。バラエティ豊かなラインナップが揃っている。

-:なるほど。山崎代表はいかがですか?

山崎代表:同じく経験を積むということはあります。なまちゃんには、これからも国内外含めて、いろんなブルワリー、ブルワーと話す機会を作って、知識などを吸収して欲しいです。周囲から学んだことを私たちのオリジナルに変換していけるようにしていきたいですね。私自身もお店に立ったときにお客様の意見を聞いて、今よりもいいものを提供していけるようにしていきたいです。

-:山崎代表は、他の2店舗(※1)も周られていますから色々な意見を聞けるのも強みですね。

※1 Smoke Beer Factory要町店・東長崎店

山崎代表:そうですね。お客様からいただけるヒントを活かしていきたいです。あとは、先ほどもお話した麦芽の燻製に関することを充実させていきたいとも思っています。

-:それは工場設備でしょうか。

山崎代表:はい。今は実験しながらやっているので、そういったところを強化していきたいです。

-:ビールの販売方法ですが、現在は外販をされていない?

山崎代表:自社の3店舗のみでの販売ですね。

-:気が早い話かもしれませんが、醸造所を拡大する計画はありますか?

山崎代表:現時点ではありません。より品質を上げつつ、今まで通り3店舗とイベントでの提供のみで展開していきます。ビール単体もですが、料理とのマリアージュをぜひ楽しんでいただきたいです。

なまちゃん:コアユーザーの方にもライトユーザーの方にも楽しんでもらえるビールをここでつくっていきたいです。それとデザインの部分でも魅せていきたいので楽しみにしていてほしいです。

-:たしかにあのイラストで、すぐに「NAMACHAん Brewing」ってわかります。Tシャツかわいいなと思って、購入しました。

なまちゃん:ありがとうございます! 日本の方にも好評ですが、海外の方に想像以上に好評で驚いています。SNSなどに上がっているのを見つけると嬉しくなります。

-:それは嬉しいですね。これからも楽しみにしています。今日はありがとうございました。

★Smoke Beer Factoryからのお知らせ
2019年6月に大塚店が2周年、7月に東長崎店が3周年、そして8月に要町店が4周年を迎えます。現在、3店舗の周年イベントを企画中。詳細はホームページやFacebookで告知されますので、みなさんチェックしてください。「イベントは5月28日(火)~、大塚店からスタートします。3店舗の周年イベント全てにご来店いただくと、新たな周年グッズをプレゼントしますのでみなさん、遊びに来てください」と、なまちゃん。(昨年はこのパイントグラスをプレゼントしました!)

◆NAMACHAん Brewing<Smoke Beer Factory大塚店> Data

住所:〒170-0005 東京都豊島区南大塚1-60-19 パルムハウス南大塚103

電話:03-3942-0180

Homepage:https://smokebeerfactory.com/otsuka/

Facebook:https://www.facebook.com/Namachanbrewing-smokebeerfactory%E5%A4%A7%E5%A1%9A%E5%BA%97-181124159153277/

NAMACHAん BrewingSmoke Beer Factory大塚店ブルワリーレポート

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

●音声配信アプリstand.fmで、ビールに恋するRadioを配信中
PodcastSpotifyでも聞けます。

【メディア出演】
<TV>
●テレビ朝日「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」
●テレビ神奈川「News Link」
<ラジオ>
●TBSラジオ「鈴木聖奈LIFE LAB~○○のおじ様たち~」
●JAPAN FM NETWORK系列「OH!HAPPY MORNING」
<雑誌>
●週刊プレイボーイ(2019年2月11日号、2020年12月28日号、2022年12月12日号、2023年10月9日号) ●DIME(2019年4月号)●GetNavi(2020年2月号) ●週刊朝日(2020年6月12日増大号)●食楽(2020 SUMMER No,116)●週刊大衆(2021年4月19日号、2021年7月12日号、2022年6月20日号)●BRUTUS(944号 2021年8月15日号)●東京人(no.463 2023年3月号)●BRUTUS特別編集 増補改訂版 クラフトビールを語らおう!
<Web>
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