[コラム]2019.8.28

《Go!Go!飲み鉄》第11回 JR四国「夕焼けビールトロッコ列車」の 自然とまみれる列車ビア旅

【トロッコ列車にはドナドナVer.と露天風呂Ver.があると思います】サケコこと宮原佐研子です。

全国のビール列車の多くは私鉄などの運行ですが、JRの開催でほぼ毎年実施している一つがJR四国が運行する「夕焼けビールトロッコ列車」です。JR松山駅から出発し、折り返して戻るこの人気列車に「乗りたい!」と思ったのは、何しろ大好きなビール列車なことはもちろん、私の両親が四国・愛媛に一時仕事の関係で住んでいたことで、学生時代に何度か訪れた場所であり、そんな思い出の地に母をふたたび連れて行きたい、ということがきっかけでした。

その思いを込めて往復はがきで応募したのが2018年の4月。抽選の結果、2018年7月7日の七夕の日の回に当選した私は、直前の仕事をなんとか片付け、母を連れて前日の7月6日に飛行機に飛び乗ります。その日は梅雨前線が西日本から東日本へと停滞し、南から北上する台風や低気圧が前線を刺激。夕方6時前には、大雨特別警報が、福岡、佐賀、長崎に、夜8時前に広島、岡山、鳥取、夜11時前に兵庫、京都に発表。1時間雨量は高知県、佐賀県、長崎県などで70ミリから100ミリになり、土砂災害警戒情報も多数。そして起きてしまったのが「平成30年7月豪雨」。四国の高知や愛媛、そして広島などが多大な豪雨被害に見舞われたあの日だったのでした…

[CONTENTS]

□ 道という道が通行止めに!こりゃビール列車どころじゃなかった…
□ 松山ですが、坂本龍馬がババーンとお出迎え
□ 復路はもちろん、よなよなエール!
□  今回のお気に入り♪
□  アフタービール列車。松山のビールスポットもますます大充実!
□ JR四国「夕焼けビールトロッコ列車」乗車情報

都合で高知龍馬空港往復のエアチケットを買い、高知からレンタカーで愛媛に移動するスケジュールを組んでいた私たちは、天気がちょっと気になりつつも羽田を出発し飛行機は無事高知空港に着陸。安心したのもつかの間、滑走路を移動する間に乗客の全員の携帯から災害警報のアラートが鳴り響きます。空港近くの物部川が氾濫したとのアナウンスがあり、乗客同士思わず顔を見合わせます。

予約のレンタカーの受付に向かうと、高速道路も国道も全て通行止めで愛媛まで向かうルートがないとのこと。レンタカーの担当者はただただお手上げでしたが、地元に住む親戚に「この道なら大丈夫かも」と教えられたのが、四国のほぼ中央を走る194号線。「何かあったら連絡してね」と言われつつ、いざ出発! 道すがら、ルートに並行して流れる谷川の激しい濁流、斜面からは所々に滝のように溢れ落ちる泥水が続き、ワイパーを全開で動かしても視界の悪い豪雨の中を気を引き締めて北上します。途中、道の駅633美の里に立ち寄りひと息ついているところにJR四国松山駅から電話があり、翌日のビール列車は中止だと告げられます…。

ビール列車に乗れぬまま帰路に着いた飛行機から見た、川という川の河口から海に流れ出る濁流


「せっかく来たのにな〜」と思いつつ、気を取り直して再び出発すると、そんなサバイバル状態ながら、助手席には、大雨で山全体が濡れそぼつ光景に「緑がきれいね」と楽しんでいる大物?な母。そんな様子にどこか安心しながらなんとか愛媛県に到着。少し落ち着いてきた天気の中、懐かしい場所に立ち寄りつつ、無事ホテルにチェックイン。その翌日の松山の夜は穏やかな天気に回復していたのが心残りとなり、リベンジだ!と、今年2019年に再度申し込み、念願の乗車をしてまいりました!

CONTENTSへ戻る

松山ですが、坂本龍馬がババーンとお出迎え

いよいよやってきました!JR松山駅です。苦節1年(?)この時をどれだけ待ちわびたことか…!今回も母と一緒にこの地にやってきましたが、旅の疲れが出た母はホテルで休むことになったので、私一人での参戦です。

さりげないレトロ感漂う松山駅


受付を済ませ列車が入線したホームに向かうと、坂本龍馬がペイントされた列車が待っておりました! この凛々しい列車は「志国高知 幕末維新号」。通常は高知県の高知~窪川間を走っており、このビール列車に使われたあとは、高知で2019年9月14日(土)~11月30日(土)に運行してラストランを迎える予定です。

坂本龍馬のペインティングが勇ましい「志国高知幕末維新号」


ホームの電光掲示板に列車名の表示

2両連結の列車は、1両は普通車両、もう1両がトロッコ車両です。

開放感のあるトロッコ車両


まずは普通車両に席順に乗り込み、ごく普通に松山駅を出発します。

普通車両の車内


伊予市駅に到着し、いよいよトロッコ車両に移動しトロッコビール列車のスタート!!
座席表通りに座ると、お弁当はすでにスタンバイ!

割り当てられた席へ移動


パッケージはシンプルなお弁当


そこへ早速ビールが配られます。ちなみにジョッキには座席番号が付いていて、自分のジョッキが迷子にならずにおかわりが頼めます。

グラスの足元に座席番号が貼られている

お弁当の中身はこちら!海の幸も山の幸も盛りたくさんのおつまみ満載な中身です!!

彩り豊かな「夕焼けビールトロッコ列車特製弁当2019」


愛媛県のブランド産品である「宇和島健康真鯛の鯛めし」、愛媛県産きびなごくぎ煮、同じく愛媛県産釜揚げしらすなど、愛媛県産食材もタップリ使った特製弁当です。

ちなみに、伊予長浜駅で折り返した復路では、夕焼けビールトロッコオリジナル、愛媛県産の河内晩柑を手絞りして楽しむ「河内晩柑サワー」と、今年からなんと「よなよなエール」も選べるとのこと!

ボックス席でご一緒したのは広島から来たというお二人。是非乗りたいと友人総出で申し込んだけれど、当たったのは1枚だけだったそう。この列車の人気を改めて知り、2年連続で当選できたラッキーにも感謝です。

伊予市駅から伊予長浜駅はおよそ28km。1時間半弱をかけて瀬戸内海に面した線路を西に向かって走ります。当日は残念ながら曇りだったのですが、19:17の日の入り時刻に向けて、暮れなずむ雄大な景色を眺めつつ、ビールの杯がすすみます。

曇りながら美しい夕景が車窓に広がる


ちなみに私の席は進行方向左の山側の席。トロッコ列車の開放感ある車両なので雄大な海側の景色はそちら側からでも十分楽しむことができますが、伊予長浜駅方面に進んでいくと、山側の樹木をかなりすれすれにすり抜け、葉っぱや虫がどんどん車両に飛び込んできます。

山側の緑すれすれ走行は豊かな自然を体感できる


乗る前は勝手に優雅な列車旅をイメージしていましたが、意外やディズニーランドのジャングルクルーズばりに自然を体感するちょっとスリリングさが面白いこの列車。昨年の中止の決断はやはりやむなしだったなぁ〜と、そこも大納得いたしました。

CONTENTSへ戻る

復路はもちろん、よなよなエール!

折り返し地点の伊予長浜駅には45分ほどの停車。駅では坂本龍馬について説明する龍馬に扮したボランティアの方が駅で出迎えしてくれて、地元のパン屋さんの出張販売も。

坂本龍馬の語り部さん


改札の外にも出られるので、ちょっと周辺を散策してみました。駅から出てすぐに小さな漁港があり美しい日の入りを心静かに眺められます。

どこかヴェネチアを思わせるような美しい港の夕景


地元の方の姿はほとんど見られず、トロッコ列車に乗ってきたグループの声だけが周辺に響いていたのが印象的でした。

夜のトロッコ列車も雰囲気抜群


さあ、出発!もちろんオーダーするのは「よなよなエール」です! 車内にはよなよなエールのポスターや、「よなよなエールはじめました」のサインも飾られています。

むむっ?何かどこかで見たような‥


が、少し残念だったのは「よなよなエール」についてはほぼ説明がなく、おかわりを運ぶスタッフの方々は選べる種類を説明するときに、単に「クラフトビールもありますよ」とだけ伝えていました。私よりもハイペースでビールをお代わりし続けていた広島から来たビール好きカップルさんは、 ”クラフトビール” という文字を見ただけで「クラフトビールはそんなに好きじゃないな〜」とのご発言…。でも、私が嬉しそうに頼むのを見て試しに飲んでみたりしていたので、もう少し説明があれば、オーダーする人はもっといたのではないかと…。

和製グレープフルーツとも言われ、愛媛が生産量日本一の河内晩柑。。サワー用の用意でしたが、ビールに絞ってもおいしかった


ビンゴゲームも開催!景品のTシャツやビールなどをゲットしようと、番号が発表になるたびに歓声やため息が漏れます。そんな車内の熱気と列車の明かりに惹かれた?虫たちも大集合!

ビンゴゲームに一喜一憂盛り上がる広島のカップルさん

熱気に?飛び込んでくる虫、虫、虫!


私はラッキーにも、キリン一番搾りTシャツをゲットいたしました〜

CONTENTSへ戻る

今回のお気に入り♪

松山といえば、路面電車が走る街。JR松山駅前、松山市駅、大街道、道後温泉をつなぎ、市内電車で回遊することができます。中で観光客にも大人気なのが「坊ちゃん列車」

道後温泉駅に入線する坊ちゃん列車


街中を走る姿を写真に撮りたくなるのは鉄板としか言いようがありません。
ちなみに車内に冷房がないため、夏場はうちわ持参で是非!

今回は時間の都合で立ち寄れなかったのですが、松山市駅前には入場無料の「坊ちゃん列車ミュージアム」があり、初代機関車のレプリカ展示なども楽しめます。

そんな坊ちゃん列車も走るこの市内電車には日本全国でも珍しいポイントが!それは、大手町駅前そばの交差点で見られる「ダイヤモンドクロッシング(DC)」です。

垂直方向が鉄道路線、水平方向が一般道と路面電車の線路が走り、段差がない


これは、鉄道や軌道の路線が平面交叉する路面構造で、さりげなく鉄道ファン注目の場所なのです。

CONTENTSへ戻る

アフタービール列車。松山のビールスポットもますます大充実!

松山城お堀近くの角にある「BOKKE」、経営は松山BEERフェスタの実行委員長の「BAR 宝樹 takaragi」、道後温泉出て目の前にある道後麦酒館…。注目は、カンピオンエールでの修行の後、Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchenでブルワーを務めた山之内圭太さんによるブルワリー併設のアパレルショップ「DD4D」、などなど。
松山の夜、いいですよ〜!

CONTENTSへ戻る

=======================================

JR四国「夕焼けビールトロッコ列車」乗車情報

◯鉄道会社:JR四国
◯行  程:松山駅18:00発 → 市坪駅18:04着/18:05発 → 北伊予駅18:08着/18:11発 → 伊予市駅18:17着/(★)18:28発 → 伊予上灘駅18:46着/18:54発 → 伊予長浜駅19:21着/20:06発 → 伊予上灘駅20:36着/20:43発 → 伊予市駅20:04着/(⭐︎)21:07発 → 北伊予駅21:13着/21:16発 → → 市坪駅21:20着/21:21発 → 松山駅21:25着
※トロッコ列車の乗車区間は伊予市駅~伊予長浜駅間(ビールなどの提供区間も同様)
★トロッコ列車に移動 ⭐︎普通車両に移動

◯飲んだビール:『キリン一番搾り』『よなよなエール』
◯料  金:
 大人 5,800円・小人 3,000円(税込)
<料金に含まれるもの>
1.往復乗車券
2.特製弁当
3.飲み物
4. 消費税
各開催日:56名
夕焼けビールトロッコ列車詳細(PDF)
◯問合せ:JR四国 松山駅鉄道案内所
=======================================

夜の風 トロッコビールに 内緒旅

アーカイブの記事はこちら
《Go!Go!飲み鉄》第10回 一畑電車「酔電」の 体験運転して飲み放題のスペシャル列車ビア旅

CONTENTSへ戻る
TOPへ戻る

JR四国よなよなエールキリン一番搾り夕焼けビールトロッコ列車

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

アバター画像

この記事を書いたひと

宮原 佐研子

ビアジャーナリスト/ライター

ビアLover 宮原佐研子です。 ビールの大好きなトコロは、がぶがぶ飲める、喉ごし最高、大人の苦味、世界中でも昼間でも飲める、 果てしなくいろんな味わいがある、そしてぷはぁ〜っとなれる、コトです。
ライターとして、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)/『じゃらん酒旅BOOK 2023』(リクルート)/『うまいビールの教科書』(宝島社)/『クラフトビールの図鑑』(マイナビ)、ぐるなびグルメサイト ippin キュレーター など

ストップ!20歳未満者の飲酒・飲酒運転。お酒は楽しく適量で。
妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう。