[ビアバー]2019.12.30

オープンから1年 東海道BEER川崎宿工場の仕掛人~主人 岩澤克政氏に聞く

クラフトビールブルーパブ岩田屋川崎市東海道BEER東海道BEER川崎宿工場

岩田屋4代目当主 岩澤克政氏


東海道BEER川崎宿工場の主人は、125年前、明治27年に創業の岩田屋を4代目として引き継いだ岩澤克政氏。岩田屋は川崎の地で、当時はまだ珍しかったガラスという建材に目を付けて起業し、すぐに商売の規模が広がり、一代目の頃は40~50人の職人さんを抱えて栄えていきました。
4代目を引き継ぐ前、建設業界にも吹きすさんだ、バブル時代の終焉期とその後の厳しい風当たりをなんとかしのいでいる状態だった岩田屋を、将来的にも継続可能な業態に変えていこうと、岩澤氏は一級建築士の資格を取得し、施工管理・設計といった仕事を請け負う形で、もとの建具屋からの方向転換をしていくのでした。
「建築士の資格を取ったのも、父を安心させたかったからです」
岩田屋という名前をこの地に残していくこと、それが岩澤家の本懐ともいえるでしょう。横浜の鶴見には岩澤家のお墓があるのですが、立ち並ぶ一族の墓石の中で唯一、この岩田屋を始めた岩澤家のお墓にだけは「岩田屋」と屋号が刻まれているのです。
「ちょっと珍しいと思いますが、それだけ想いが強いのだと思います」
東海道BEERのボトルビールを手に取ってみると、製造者として岩田屋の屋号がラベルに印字されています。「これを見て、岩田屋として新しい事業を展開しているという実感がわきます」

「ビールとは関連性はありませんが、125年続く岩田屋として、ガラス屋としての事業も始めようとしています。旧東海道沿いで切子などのガラス工芸のワークショップなどができるスペースを運営する予定です」
なんともワクワクする展開が待っています。ビールを飲む前に、伝統のガラス工芸に触れ合える場があるのも、ビアファンにとって注目スポットになりそうですね。

川崎の街に、人が集まるフックを作っていく

「旧東海道のこのエリアを盛り上げていきたいですね。なので、六郷橋までの間にもう1軒ぐらいビールの醸造所ができてくれたらいいのに、なんて考えもします。ラーメン屋が多く集まる街道沿いは盛り上がったりしていますよね、そんなイメージです。」

夏に行われた、稲毛神社「新宿こども祭り」。地元を盛り上げる主催側として、焼き鳥を焼いて奉仕活動をする岩澤氏

「このあたりは多摩川があり、すぐそばに海もあります。景色もいいし、本当にいい場所だと思うのです。
でも、土手や大きな公園はホームレスが住み、市民の憩いの場ではなくなっている現実があります。自分も妻と娘たちがいますが、女性だけ、子供たちだけで歩くのは危ないと感じる場所もあります。こういったところをもっとどうにかしていけないか、ということはこれからこの街の大きな課題の一つでしょう。
私も、会社から川崎大師のあたりにかけて、街づくりのグループで実際に歩いて見て回ったり話し合ったりしてきました。多摩川の川崎側の土手などは、もっと結果の出る方法で効果的に仕掛けを作っていけば、ファミリー層や若い人たちが気軽に集まることができる、明るい健康的なイメージのエリアにしていけると考えています。」

わが街・川崎との歩み

中学生の時から稲毛神社のお神輿を担ぎ、20歳から同級生とお神輿の会を始めたことで地元での輪がひろがりました。川崎JC(青年会議所)に入ったのは35歳のとき。自治体ごとにある青年会議所は、若い実業家の奉仕活動を目的とする社団法人で、当然20代・30代の元気でアグレッシブな集団となるわけですが、
「親父も、そんなところに所属したら、遊びを覚えるだけで意味ないだろうって言っていたのですが」
ところが、いざそこに身を置いてみると、大変有能な人材がそろっていて、社会貢献や街づくりといった活動をしていく中で、互いに企画を出したり意見をしたり、切磋琢磨していきます。
「中小企業の代表ともなると、社内では意見されることが少なくなるので、このJCでの活動は本当にいい勉強になりました」
そこで叩き込まれたのは、「目的に沿った行動をとること」
40歳になった年の年度末で卒業するのがJCなのですが、そこで育まれた物の考え方や地域に根差す活動は、川崎RCなどでまだ続いていくのです。

自ら住みやすい街にしていく

「空いている物件をどのように活用していくのか、地域を活性化させるリノベーションスクールとの出会いは、自社の物件について考える機会になりました」
スクールでのビジネスアイディアは実現しなかったものの、この物件にどんな職種のどんな客層の業態が入るのがふさわしいのか、あるいは入ってもらいたいのか、岩澤さんは考えました。
「住んでいる人たちがいやがるようなお店が入るのも困りますし、でも、そうかといって自分が望むような都合のいい人たちが来てくれるとは限りません」
では自分でやるとしたら、何をしようかと考えたときに。

「数年前に、ビール工場の物件を探していた友人のことを思い出しました」

ビール工場としての活用方法

一つの街で商売を続けていると、お互いが顔見知りだったり存在を知っているものですが、同時期にJCに所属していたT.Tブルワリーの寺田哲也氏が自らの醸造所の物件を探していて、実際にこの場所を見に来た時のことです。

天井の高さもあり、道路に面していて物流にも問題ない。ここはビールの醸造所に向いていると言われ、何より川崎宿は麦畑で有名な場所だから麦酒ことビールは面白いのではないかと、この東海道BEER川崎宿工場のイメージが岩澤氏の中で生まれた瞬間だったのかもしれません。
ビール醸造所を開くのに必要な費用などを聞いて、その時はすぐにやってみようという気持ちにならなかったものの、
「ずっと心の片隅で気にはなっていました。寺田君は覚えていないかもしれないけど、すごく軽い感じで『ここでやればいいじゃん』と言われていたのです。」
それから醸造所開設に向けて、いろいろなところに相談したり、実際に許可を求めて免許取得の直前までいったこともあったのですが、様々な条件などでストップしてしまった時期がありました。
「その時思いました。まず、ビール醸造について、醸造所開設について、もっとよく知ろうと」

できすぎたタイミング

同じ川崎市内でビールを作っている人がいる。まずはそういった人たちに話を聞いてみようということになり、醸造所「風上麦酒製造」の田上達史氏に連絡を取ったのが、2017年の冬が始まる頃のことでした。
「たまたま、だったのですが。彼が事故に遭い、自分の醸造所では一人で作っていくのが難しくなっていた時期で。最初はアドバイザー的な立ち位置で相談に乗ってもらうつもりでしたが、こちらの事業に積極的に携わる方向で入って頂き、醸造技師として参加してもらうことが出来ました。」

「本当に運がよかったと思います。オープンしてみれば、彼(田上氏)のファンが全国からも集まるような店になり、もちろん地元の方にも喜ばれています。それに『ずっと気になっていたのですが、ようやく来ることができました』なんて言ってくれるお客様も未だにいるのです。まだまだ、ここに来たいというお客様がいらっしゃるのだと感じています。」
町おこし、イノベーション、ムーブメントとしてのクラフトビール。そんな要素をふんだんに盛り込まれているからでしょうか。タウン誌や新聞、専門誌やテレビ取材などがひっきりなしで、東海道BEER川崎宿工場はメディアからも注目を浴び続けているのです。

味の評価を重視

『東海道BEERは川崎の特産品、お持たせにぴったりな注目の手土産』という形、お土産寄りになることをあえて避けてきました。
もちろん商工会議所などとの長い付き合いもありますので、やり方によっては、駅の売店や大型店舗、市内の酒屋などに置いてもらい、川崎の名物ビールとして持ち上げてもらうことも可能だったかもしれません。

でも、そんな風に自分たちで売り込みをしてお土産ビールとしてアピールせず、「味を評価してもらう」というスタンスをこのビジネスのスタートアップから貫ぬくことにしていました。味での評価が高まれば、おのずと外から声がかかるとおもっていたからです。
事実今後の予定として、川崎という土地・街を押し出したいという団体・企業からのオファーが続いていて、場合によってはスタッフや機材の増強も必要だと考えているほどだとか。

これからの川崎ブランドの発信において、この東海道BEERも大きく関わって広がる予感がします。

オープンから1年。まだまだこれから。そして、今後の発展も限りなく前途は洋々としています。

 

東海道BEER川崎宿工場
公式ホームページ:https://tokaido.beer/
Facebook:https://www.facebook.com/tokaidobeer.kawasaki/
Instagram:https://www.instagram.com/tokaido_beer/

 

東海道BEER川崎宿工場三部作の過去記事はこちら
第一部 東海道BEER川崎宿工場ー美を追求した和の空間。過去・現在・未来の川崎。そして、これからのクラフトビール
第二部 クラフトビール業界のSDGs~東海道BEER川崎宿工場の取り組み~

 

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この記事を書いたひと

松原 順子(MJ)

ビアジャーナリスト/Youtube JBJA Channelプロデューサー

ビールと昆虫と、リコーダーと天然石が大好きです。JBJAではイベントサポートやBJAチューターも楽しんで取り組んでおります。人に寄り添う記事作成を心がけ、JBJA公式動画サイトJBJAchannelではMCを担当しております。
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