[ブルワー]2022.7.4

女性ブルワー 連載取材「彼女がビールを造る理由」vol.1

「ビール業界は男性が多いなぁ。」
これはクラフトビールに関わる仕事を少しづつ始めた当初それまで化粧品メーカーに16年勤めていた私の率直な感想でした。

徐々にクラフトビールファンや、ビアバーで勤務する女性も増えてきていますが、中でも実際にビールを造る“女性ブルワー”はまだまだ稀な存在。私自身同じ女性として彼女たちの実態に興味があり取材を決意。

取材から伝わって来るのは彼女たちの逞しさや想いの深さ。
女性ブルワーへのリスペクトと愛と応援の気持ちを込めてこの取材を続けていきたいと思います。

BRIGHT BLUE BREWING 菊地望さん

菊地さんは私のJBJAの同期でもあります。出会った時からパワフルな彼女。
まずは平日フルタイムのお仕事をしながら激務をこなす彼女の毎日について聞いていきます。

「ぼーっとする時間もないです(笑)」

平日は9時から5時までのフルタイム勤務。金曜の夜、もしくは土曜の朝一で富士吉田に移動し、ビールの仕込み、スタッフとの打ち合わせ、発注や納品作業などを行います。
ブルワリーは製氷工場だった建物をリノベーションしていて、醸造所内にタップバーがあり、敷地内で飲むこともできます。屋外広場では週末に定期的にキッチンカーを呼んだり、マルシェも開催。地元の人達と連携しながら、訪れる人達がどう楽しく過ごせるか考えています。

場所柄キャンプ利用客や車での来店も多くグラウラーの量り売りも好評。

これに関わる企画・運営・接客も全て彼女が行っています。
平日の就業後もスケジュールはぎっしり。お友達と会う予定があるときは、約束時間よりも早めに現地について、付近のバーを一軒でも多く訪れ、リサーチ、営業活動も抜かりありません。

自身のメンテナンス時間は死守!

これだけ忙しいのに、いつも綺麗に身なりを整えている彼女。いったいいつお洋服を買いに行ったり美容院に行ったりしているのでしょうか。
(美容院は)「6週間あたりでそろそろやばくなるので(笑)、絶対に6週間から8週間で行けるようにしてます。あと夕方は買い物に行ったりもしますよ。」女時間もしっかり確保している菊地さんです。

趣味でしか生きていない

ービールに関わる時間がほとんどのようですが、、、ビール以外の趣味ってありますか?
「もう、趣味でしか生きてないですからね〜。」
とちょっと困ったように話す菊地さんは、アルコール全般が好きで、ソムリエの資格を持ち、日本酒、テキーラにも造詣が深い。さらに着物・浴衣が好きで、茶道も嗜むという華やかで多彩な趣味の持ち主。自分が「無になれる」時間を作るために陶芸も好む。
彼女のすごいところは浴衣とビールのイベントを企画したり、マナー講師をしたりと趣味で終わらせることなく好きなことを原動力に仕事に転換していく行動力です。

さて、そんな彼女がなぜブルワリーを立ち上げることになったのでしょうか。

ビールと街が一体となっていた

菊地さんは2017年10月バンクーバーを訪れました。
「ブルワリーが街ごとにあるんです。例えば原宿に1軒、渋谷にも1軒みたいなイメージ。そういうのが良いな、と思ったのと、とにかくどこのビールも美味しかった!」そしてそれが“自分達の街のビール”という存在になっていて、人々にとってクラフトビールが日常的な楽しみになっていた。その様子に感激し、帰国後から周囲に「私、ブルワリー作るから。」と宣言したのです。

ーご家族の反応はいかがでしたか?
「事後報告だったので、特に何も反対とかはされなかったけど「あなたって欲張りね。」って言われました。」でも先日ご実家に行った際、菊地さんのブルワリーのボトルがお部屋に並んでいたそうです。

 

今までと違う人がやると、違う人たちが入ってくる

ー女性ならではの大変なことってありますか?
「強いて言えば力仕事ですかね・・・」先ほど仕込みで26kgの麦芽袋を何袋も持ち上げ、投入し、タンク内を攪拌している時は確かに汗が滲んでいました。


「でも、どんな仕事も一人ではできないですよね。」
と彼女は言います。「チームで補えば良いワケだから、男性しかできない仕事ではない。だからといって、“女性だから良いこと”というのもないかもしれない。ただ、今までこんな人いなかったよね、という人が業界に入ることで、新しい人々に興味を持ってもらうことができる。そうすることでビール業界全体を活気づけることができると思うんです。」

クラフトビールは飲み方に厳格な作法は無く、味のバリエーションも無限大。一人一人の光の当て方次第で多彩な魅力を放ちます。そしてそれに魅了された人がまた新しいファンになっていくのです。

 

撮影:Phantom Zebra 「新しいクラフトビールの楽しみ方や、カルチャーを作っていきたい。」

菊地さんが新しく提案するのは、おしゃれに、優雅に飲む、というスタイル。
そのツールとして考案されたのがクリアな桝(ます)。
桝だと一気に飲もうとすると溢れてしまうので、自然に少しずつ、ゆっくり、杯を傾けます。そうしていると、不思議と背筋も伸びて姿勢が良くなっている事に気づきます。

 

ここにあるものを全部使って造る

様々な植物を育ててきたベテラン農家の長田さん。ちなみにお酒は飲まないのでできたビールはご友人へのプレゼントにしているそうです。


取材の際、契約農家さんで造っているホップの圃場へ連れて行ってもらいました。
この日はホップの発育のチェックと、圃場のすぐ脇に生い茂る山椒の木の実の収穫。

ー今後造っていきたいビールを教えてください。
「今、地元のコラボに力を入れています。」
河口湖のフレンチレストラントヨシマさんからご実家の甘夏をビールに使えないかというお話があったそうです。そこで30kgを譲り受けひたすら皮向き作業(100個以上!)。これから仕込みで、摘んだ山椒の実は風味づけに使うそうです。
その他、富士急とのビール列車企画、キャンプ用品店とのコラボなども進行中。



「春になれば大葉が茂る、梅がなる、夏は桃が熟す。そういったその土地ならではの恵みをビールに取り入れていくことで自然と日本らしいクラフトビールになると思うんです。」
海外の原料で海外のスタイルを造る理由が彼女にはないと言います。
何もないけどあるものを使う。
ボトルのラベルデザインをする人も、せっかくその土地にできる人がいるのだからお願いする。そうすれば、ビールを通してこの富士吉田の魅力を世界中の人に発信することだってできる!東京と行き来しているからこそ見える富士吉田の魅力。彼女ならではの着眼点で造られるユニークなビールがこれからも楽しみです。

ー最後に。多忙を極める菊地さん。もう全てが嫌になってしまう時などないですか?そしてそういう時はどうやって気持ちを持ち直してますか?

「週の前半は朝起きるのが本当に辛くて。。。」と苦笑い。
そして嫌なことは「飲んで忘れる。」(これは共感される方も多いのでは?!)
近所にあるクラフトビールと和食のお店「Ryuda」に行くのが”癒し”とのこと。
(以前私が取材したRyudaさんの記事はこちら
「立ち上げ当初は想定外のこともあるし、店長には話をよく聞いてもらっていて、、、。そして疲れてる時はただ放っておいてくれて。美味しいご飯をいただける。そこから少しずつ元気を取り戻して、”さぁ明日もやるかぁ”って気持ちになるんです。」

山梨県産甘夏と山椒の実を使用した「エレガントハンター」は7/10に笛吹川フルーツ公園で開催するBEERBBQで初お披露目予定です。お楽しみに!

 

  • BRIGHT BLUE BREWING(ブライトブルーブルーイング)
    醸造所 / タップルーム
    所在地 :〒403-0009 山梨県富士吉田市冨士見1丁目1-5  1階
    TEL : 0555-25-7347
    富士急行線「下吉田」駅より徒歩5分
    営業時間:毎週土日 10:00 – 17:00
    Instagram / Facebook

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

この記事を書いたひと

五十嵐 糸

ビアジャーナリスト

化粧品会社で16年間にわたり、営業・宣伝・PR業務等を経験。
楽しい時も辛い時も毎日ビールを飲んでサラリーマン時代を駆け抜ける。
大好きなビールについて勉強するうちにどんどんその魅力にはまり、PR経験を活かしてフリーに転身。ビールの美味しい飲み方や魅力を日々SNSや協会HPで発信。ビールを通したローカルコミュニティの活性化や、街の復興を目指し、渋谷の街のオリジナルビール「渋生」をプロデュース。

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