[コラム]2023.2.1

2023年各ビール会社事業方針を見てみましょう【JBJAChannel】

ビールに愛された皆さまへ!

今日公開のJBJAChannelでは、1月に出そろった大手ビールメーカーの2023年事業方針についての考察となります。

※ビア川柳・ビア短歌2023の発表は2月8日(水)・15日(水)の予定です。

各社ニュースリリースより、注目ポイントを絞って解説していきます。

2023年ビール会社の事業方針での注目ポイント

・コロナ禍による売り上げ低迷からの脱却具合

・酒税法改正スケジュールの中間点は2023年!今年!

・2023年はどんなことするつもりでしょう?

という3点に注目してみましょう。

コロナの影響からの回復傾向

こちらは販売数量の発表がそれぞれ出ているので、グラフにしてみました。

2023年の数値は各社の目標値

ビール需要がゆるやかな右肩下がりであったにもかかわらず、業界的には「攻め」というかイケイケドンドンな雰囲気をかもしていた2017~2018年。株主への「余剰金配布のお知らせ」なんてニュースリリースが出ていた過去情報を見るにつけても、順調に行っているように感じられました。

そんな中、世界的な経済危機が新型コロナによって引き起こされた2019年~2020年。ここでアサヒビールがガクリと数字を落とします。ただ、こちらの数値は「アサヒスーパードライ出荷量」だけを見ているので、数値というよりカーブの形にご注目ください。

2021-2022年においては、泡のでる珍しい缶で多くの新しがり屋の日本人を魅了したアサヒスーパードライ生ジョッキ缶が2021年4月に発売、同年9月に救世主のように現れたアサヒ生ビール(通称マルエフ)の数量は入っていません。ゆるやかに見えてグッと上昇しているこの2021-2022の上向きカーブは、アサヒスーパードライの36年目にしての初めてのリニューアル(2022年1月)も後押ししていたことでしょう。

コロナの影響が全くなかった2018年の出荷量には、各社まだ復帰は難しいようですが、以前から言われていた「若者のビール離れ」による下り坂を考えても、努力と工夫で善戦しながら回復させていると思えます。

酒税法改正に向けての各社の思い

財務省HPよりお借りしてきました

まずは、こちらのスケジュールから。「2020年10月から新ジャンルが値上げ!」と日本中の新ジャンル好きの方々が一斉にまとめ買いをした、あの頃のことを覚えていらっしゃいますか?
私も、直前の9月末頃に贔屓にしていた「サッポロホワイトベルグ」を3本ぐらい買って帰ったような気がします。

今年2023年10月1日より、ビールの酒税が値下がり・新ジャンルの税金が上がるという、ビール系飲料の酒税一本化までの道のり・第二弾がやってきます。
しかし、ただでさえ、戦争や半導体の奪い合い、コロナによる経済停滞や温暖化の影響(?)などですべてのものが値上がりをしているというのに、値下げが本当に行われるのでしょうか?
ふたを開けてみれば原材料等による商品の値上げと税率の引き下げによる値下げが同時に来て、実際の値段は変わらないということが起こるかもしれないという予感すらします。

そんな中、しっかりとした財務会計を行う、われらが大手ビール会社の方々は、しっかりとした経済的指針をもって出荷量の予定を立てていらっしゃいます。

こちらのグラフは新ジャンルの売り上げ量のまとめです。2023年の数値は各社の目標値=これからどうしていきたいかという意思表示の数値でもあります。

やはり、今年10月の酒税法改正による新ジャンルの税率の引き上げによる売り上げ減をかんがみて、少しずつ生産数も抑えていく方向というのが分かりますね。

2020年10月の新ジャンルの値上げ・ビールの値下げで、アサヒ・サッポロ・サントリーは数量を落としているのに、キリンだけなぜか2020年がピークになっています。出荷量も多いということは、それだけキリンビールの新ジャンルには熱烈なファンがついているということですから、駆け込み需要がすごいことになっていたのでしょうか。

2023年各社がしていきたいこと

まずは、4社のキャッチコピー(よくロゴマークと一緒にでている言葉)を並べてみます。(五十音順です)

・アサヒビール
すべてのお客さまに、最高の明日を。

・キリンビール
よろこびがつなぐ世界へ

・サッポロビール
乾杯をもっとおいしく。

・サントリー
水と生きるSuntory

これらを踏まえたうえで、2023年のそれぞれの事業方針を発表します。

アサヒビール

ビールの魅力向上と新たな価値の創造で
”すべてのお客さまに、最高の明日を。”お届けする

・拡大が見込まれるビール市場において「スーパードライ」と「アサヒ生ビール」の 2 つのブランドに注力
・「ラグビーワールドカップ 2023フランス大会」のオフィシャルビール
・「うまい!樽生ビール」を提供する飲食店の認定制度を活用し、2022 年 11 月時点で約 2,900 店ある認定店のさらなる拡大

これからビールの税率が下がり、新ジャンルからの鞍替え(カテゴリとしての発泡酒はもはや風前のともしび)を狙って、アサヒスーパードライとアサヒ生ビールに重点をおいて、資本投入をしていくというのは分かります。ラグビーワールドカップも盛り上がるといいですね!

キリンビール

ブランドと人財を磨きあげる

・強固なブランド体系の構築
フラッグシップブランド「一番搾り」を2年ぶりにリニューアル
・新たな成長エンジンの育成
「SPRING VALLEY(スプリングバレー)」ブランドを中心にクラフトビール市場活性化に向けた広告展開とリニューアル、「Tap Marché(タップ・マルシェ)」を活用

キリンビールがこれまで取り組んできたビールのブランド作りが、きっと数年後に集大成というものが出来上がるのだろうな、という雰囲気が感じられます。
SPRING VALLEY BREWERYという、キリンビールからクラフトビールへの挑戦が始まってから、大手のビールメーカーという立ち位置からクラフトビールへのアプローチを必死に模索している姿勢が常に感じられます。
それこそ、小規模醸造の事業者から、ニッチでギークなビアファンに寄り添うように、細心の注意を払っているように見えます。

壮大な大聖堂は完成するのか?しないかもしれませんね。その過程に起こるいろいろなことを見守りながら、一番搾りのリニューアルをチェックしたり、タップマルシェの銘柄が増えることを楽しんだりしていきましょう。

サッポロビール

ビールの魅力化推進と新市場創造で「お酒」の新しい魅力を提案

・個性と物語によるビールの魅力化で日本のビール市場を牽引
「Color Your Time!」のコンセプトを具現化するアクションとして、新コミュニケーション、新リアル体験、新・商品ラインが一体となった独自の戦略
「YEBISU BREWERY TOKYO」を開業するとともに、同所でのビール醸造にも携わる若手醸造家が生み出す独創的な新・商品ライン「CREATIVE BREW」を始動
・新しい「お酒」の選択肢の提供と新市場創造による成長
「サッポロ GOLD STAR」をリニューアル
微アルコールビールテイスト「サッポロ The DRAFTY」は商品リニューアルと新コミュニケーションの展開

YEBISU BREWERY TOKYOが2023年の末頃にオープン予定です。若手醸造家が生み出す独創的な新・商品ライン「CREATIVE BREW」というのも売りの一つです。若い世代には親近感、上の世代には応援したくなるような可愛らしさを感じさせる、狙いとしてはとても良い取り組みだと思います。

ここ2年ぐらいの間は、コロナ禍でしばらく閉館していたミュージアムや工場見学の場など、いわゆる箱モノのリニューアルをしてきた各社ですが、サッポロビールのYEBISU BREWERY TOKYOは、まっさらな新しい場所でファンの心を引き付けることができるでしょうか。

サントリー

マーケティング投資を集中させビールカテゴリーの活動を強化
”新プレミアム創造”を目指し、「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドを大幅にリニューアル

・マーケティング投資を集中させビールカテゴリーの活動を強化
既存の銘柄、各ブランドのバリューアップ、「ビアボール」の定着化
・ビールカテゴリーにマーケティング投資を集中させ活動を強化
「ザ・プレミアム・モルツ」の中味・パッケージを刷新、香るエールは個性を楽しめる“ジャパニーズエール”の独自価値の訴求

サントリーといえば、ウイスキーの名門ですが、2023年は「ビールに注力」を声高に宣言しておられました。プレモルの展開(オリジナル銘柄からの発展形が多すぎるけど、キャッチー)の成功を受けて、ますますユーザーの取り込みにいそしむということでしょうか。

そして、ビアボールのポテンシャルはかなり高いので、もっともっと、後押しして定着するように頑張っていただきたいです。

 

さて、1月中旬には出そろっていたのに、諸事情がありまして2月に入ってしまいましたが。でも、来年1月にまた覗いていただいても、「こんなこと言っていたね」と思い出すことができていいかもしれませんよ。

 

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

MJ

ビアジャーナリスト/Youtube JBJA Channelプロデューサー

ビールと昆虫とリコーダーと天然石が大好きです。JBJAではイベントサポートやBJAチューターも楽しんで取り組んでおります。人に寄り添う記事作成を心がけ、JBJA公式動画サイトJBJAchannelではMCを担当しております。
JBJA公式動画サイト:YouTube JBJAチャンネル

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