[コラム,ビアバー,ブルワー]2024.3.22

【ビールを通して感じる韓国⑱】~古都の郊外のリゾート地で飲むクラフトビール~ WHASOO BREWERY@慶州

韓国の東南に位置する慶州(경주・Gyeongju・キョンジュ)は、紀元前1世紀から10世紀まで1000年にわたって新羅の都があった場所。貴重な遺跡や文化財が数多く残り、古墳群が独特の景観をつくり出している観光地です。
人口は約25万人。日本でたとえると奈良のイメージに近いと思います。
観光地には最近あまり行かない私ですが、そんな慶州でなければ飲めないクラフトビールがあると知り、先月釜山から日帰りで訪問してきました。

慶州へ

行き方

慶州は、ソウルからKTX(韓国高速鉄道・Korea Train Express)で約2時間、釜山からは約30分ほどの場所です。ただし、KTXの駅は、慶州の中心から車で約20分ほどかかる外れに位置しています。
その後の行動が楽なので、今回私は釜山から高速バスに乗って慶州の中心部にあるバスターミナルへ向かいました。バスは1時間に何本もあり、KTXより時間がかかるとはいえ1時間かからずに到着します。

慶州歴史地域

慶州歴史地域とは慶州周辺の古墳や史跡の総称で、2000年に世界遺産に登録されています。今回訪問したところをいくつかご紹介します。

・大陵苑
慶州は古墳の中に町があるといっても過言ではありません。中でも大陵苑(대릉원・テヌンウォン)は新羅時代の古墳群で、約13万㎡の敷地内に23基の古墳があります。貴重な埋葬品も多く発掘されていて、国立慶州博物館に収蔵されています。街の中にある公園なので、散策するのにもぴったりの場所です。

・瞻星台
瞻星台(첨성대・チョムソンデ)は、7世紀頃に建造され星の動きや月の満ち欠けの観察に使われた天文台です。約1400年間、建てられた当時のままの姿を残していて、東洋最古の天文台とも言われています。使われている石は全部で362個で、これは1年を陰曆で計算してでる日数を象徴しています。

・月精橋
月精橋(월정교・ウォルジョンギョ)は760年に建てられたと言われる韓国で最大規模の木造橋で、三国史記にもその名が記されています。現在の橋は2018年に復元されたものです。

今回は時間切れで行けませんでしたが、この地域にはほかにも新羅時代に建てられた離宮跡の東宮と月池(雁鴨池)、国立慶州博物館など有名な観光地があります。

石窟庵・仏国寺

1995年に韓国初の世界遺産として登録されたのが、石窟庵(석굴암・Seokguram・ソックラム)と仏国寺(불국사・Bulguksa・プルグクサ)です。中心部からは、バスに乗ると30分程度で行くことができます。

・仏国寺
新羅時代の朝鮮の仏教文化を代表する仏教寺院です。751年、新羅時代に建立が始まった説が有力です。
境内には美しい石塔の多宝塔など新羅仏教芸術の傑作と称えられる7つの国宝が現存しており、貴重な文化財をたっぷりと味わうことができます


仏国寺から7キロほど離れているので今回は行くことができませんでしたが、石窟庵は774年に完成した寺で人工的に造られた岩穴の中に円形の部屋があり、そこに高さ約3.4メートルの巨大な仏像があります。
慶州には有名な観光地が多くバスや徒歩で巡ることができますが、とても1日では回り切れません。釜山から日帰り圏内ですが、じっくりと回りたい方は慶州に宿泊することをお勧めします。

WHASOO BREWERYへ

普門観光団地

さて、今回慶州へ行った私の一番の目的は、やはりクラフトビールです。
目的のWHASOO BREWERYがあるのは、慶州郊外の普門観光団地(보문관광단지・ボムンガァンガァンダンチ)。人口湖の普門湖の周りに国際的なホテルや家族連れ向きのコンドミニアムホテルがズラリと立ち並び、国際会議場や遊園地、博物館、ゴルフ場などのレジャー施設もあります。湖水周辺には散策路も整備されており、特に桜の時期にはとても美しい光景が広がるそうです。

市の中心部や仏国寺からバスで行くことができます。仏国寺からは20分程度で着きます。

WHASOO BREWERY

WHASOO BREWERYは、もとは2003年に慶州の隣の市である蔚山(울산・Ulsan・ウルサン)にできたブルワリーです。現在は、慶州にも独自の醸造設備を構えています。


醸造設備の隣は広いレストランになっています。


店内からも醸造タンクを見ることができます。

タッチパネルで決済まで…

注文はタッチパネルで。何度経験しても、外国語でのタッチパネルはいつも以上に緊張してしまいます。

注文を決定すると支払い画面になります。このタイプは初めてでした。左側のカード決済を選択して、カードを差し込むと無事に決済終了しました。

最初に選んだのは、ここで造られている경주맥주(慶州麦酒)のヴァイツェン。500mlで8000ウォン(約880円)でした。
ちょっと焦りつつ一杯目を頼んだあとで気がついたのですが、同じビールをそれぞれ390ml、500ml、1000mlから選べるようになっていました。しかも選んだビールはアルコール分7.5%となっていたので、ヴァイツェンボックだったようです。最後に頼むべきでした…

料理は配膳ロボットが…

昼食抜きできたので、ボリュームがあるのは承知でピザも注文。19500ウォン(約2150円)でした。
ビールは普通に店員さんが持ってきてくれましたが、ピザを運んできたのは日本のファミリーレストランなどでも見かけるようになった配膳ロボット。韓国で見たのは初めてです。


ビールは、ケルシュとアルトを追加しました。どちらも390mlで6500ウォン(約720円)でした。
ケルシュは、微かにフルーティな香りがありすっきりとした味わい。アルトはホップの苦みがほどよく感じられる、やや飲みごたえのあるビールでした。


この日は釜山に戻らなければならなかったので、1時間半ほど滞在して、ここで醸造している缶ビールの4本セットを買ってお店を後にしました。

韓国の他のブルワリーのお店とはひと味違った雰囲気だった慶州のWHASOO BREWERY。冬でシーズンオフだったため普門観光団地は全体的に静かな印象でしたが、シーズン中はかなり賑わうのだと思います。近くにホテルも多いので、泊まった方々が夕方から大人数でワイワイと飲むことを想定しているという印象を受けました。

◎WHASOO BREWERY(慶州)
所在地:465-67 Bomun-ro, Gyeongju-si, Gyeongsangbuk-do
営業時間:16:30~24:00

今のところ、慶州でクラフトビールを造っているのはここだけ。次の機会があれば、普門観光団地で宿泊して、ビールをもっとゆっくり楽しんでみたいと思います。

*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK 2020)」BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています
*写真はすべて2024年2月に撮影しています

WHASOO BREWERY慶州韓国クラフトビール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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