一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

【東北で出会うビールの世界㉑】 ~続・東日本大震災伝承施設とビール~ 沿岸を車で走る(前編・福島県双葉町から宮城県塩竃市へ)

2011年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源とした東北地方太平洋沖地震が発生しました。この地震はマグニチュード9.0、最大震度7と日本観測史上最大規模で、地震による大津波が東日本の沿岸部を襲い、福島では東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下「福島原発事故」)が起きています。
今月11日で、この地震による東日本大震災の発生から15年が経過しました。

昨年のこの時期に、東京から岩手まで車移動する機会を利用して、3月に常磐自動車道(以下「常磐道」)経由で、東北地方の太平洋沿岸を走りました。

【東北で出会うビールの世界⑰】 ~東日本大震災伝承施設とビール~ 沿岸を車で走る(福島県いわき市編)(2025.3.25)
【東北で出会うビールの世界⑱】 ~東日本大震災伝承施設とビール~ 沿岸を車で走る(宮城県東松島市編)(2025.3.27)
【東北で出会うビールの世界⑲】 ~東日本大震災伝承施設とビール~ 沿岸を車で走る(宮城県石巻市・気仙沼市編)(2025.4.3)

その際、気になりながらも時間の関係で寄れなかった場所があったので、今年も東京から岩手まで車移動する機会を利用して、3月に常磐道からスタートして東北地方の太平洋沿岸を走ってきました。

東日本大震災・原子力災害伝承館へ

福島県双葉町へ

昨年の行程で一番心残りだったのは、いわき市における震災の記憶や教訓を伝える施設のいわき震災伝承みらい館で福島原発事故に関連する展示を時間をかけてみてきたものの、現在も一部に帰還困難区域が設定されている7市町村(南相馬市、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)を、ほぼ素通りしてしまっていたことでした。

帰還困難区域とは…
2011年3月の原発事故で広範囲に拡散された放射性物質から住民の命や健康を守る手立てとして、国が設けた放射線量が特に高い地域(放射線の年間積算線量が50ミリシーベルトを超えており5年が経過しても年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域)に立ち入りを制限する区域です。想定より線量が自然に下がったこともあり、かつての中心街などは復興拠点としての位置づけから2022年と23年に解除されていますが、現在も300㎢あまりで指定が続いています。
帰還困難区域内への立ち入りは制限されており、ゲートで通行証と身分証明書を提示しなければ立ち入ることはできません。無断での立ち入りや危険個所への立ち入りを防止するため、バリケードや通行止めの表示を設定している箇所も多くあります。

常磐道を北上し、東日本大震災・原子力災害伝承館に一番近い常磐双葉ICで高速道路を降りる計画で出発しましたが、この日(3月9日)は関東や南東北地方が午前中を中心に小雪が舞う悪天候。雪に強いと言われる常磐道でも、内陸側に入るいわき勿来ICから先のいわき市内にはタイヤチェーン規制がかかっていました。そこで、いわき勿来ICで常磐道を降り、国道6号線で北上を続けました。
50㎞あまりを一般道で走ることになり予定より1時間ほど到着は遅れましたが、いわき市の北から広野町に入ると長期滞在者向けのホテルが目立つようになり、今なおこの地域で復旧工事が行われていることを感じることができました。また、富岡町から先、大熊町から双葉町に入ると帰還困難区域のバリケードや看板があちらこちらに立ってました。

東日本大震災・原子力災害伝承館は、そんな状況の双葉町にあります。

福島県双葉町とは

福島県双葉町は浜通り(福島県の東部の太平洋側沿岸の地域)にある町で、町の南北に国道6号、常磐道、JR常磐線が縦貫しています。東北地方にありながら、冬でも降雪日数が少なく比較的温暖な気候です。
2011年の東日本大震災に伴い発生した福島原発事故で全町避難を強いられ、2022年8月になってようやく一部区域(特定復興再生拠点区域)での住民の帰還が始まりました。しかし、住民票を町に置いたままで遠方に避難している住民が多い状態が続いています。

東日本大震災・原子力災害伝承館

東日本大震災・原子力災害伝承館は、東日本大震災と津波に伴う福島原発事故をを後世に伝えることを目的として、2020年9月2に開館した施設です。福島第一原子力発電所から北に約3㎞の位置にあります。

展示室は6つに分かれており、まず円形ホールの多面スクリーンでの約4分間の事故発生当時の映像から始まります。これは、震災のこと、事故のこと、復興のこと、これからの未来のことについて考える入口となっています。
映像を見たあとは、災害の始まり、原子力発電所事故直後の対応、県民の想い、長期化する原子力災害の影響、復興への挑戦という展示室を順番に回っていきます。


1日に4回、個人の来館者向けに40分の語り部講話もあります。私が聴いた回は双葉町の防災担当だった方が語り部で、当時の緊迫した状況を語ってもらえました。また、双葉町は住民登録上の人口の減少(約7000人→5000人)だけでなく、実際には200人ほどしか住んでいないという現状を知り、いろいろと考えさせられました。

地震と津波に関してはほかに学べる施設はあっても福島原発事故に関してはほぼないので、原子力発電に対してどんな考え方であってもこの伝承館に行く価値はあると思います。合わせて、周囲の双葉町の状況も自分の目で見ることができることも、知識を増やすのに役立つのではないでしょうか。

◎東日本大震災・原子力災害伝承館
住所:福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39
開館時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入館料:大人600円 小中高300円
アクセス:常磐道常盤双葉ICから車で約10分
JR常磐線双葉駅から徒歩約25分(約2㎞)

宮城県塩竃市へ

この日の宿泊地は、双葉町から約110㎞北の宮城県塩竃市。当初は国道6号線を走る予定でしたが、東日本大震災・原子力災害伝承館までと館内で思ったよりも時間を取ったので、ここからは常磐道から仙台東部道路という高速道路を走りました。

宮城県塩竃市とは

塩竈市は、宮城県のほぼ中央、仙台市と松島市の中間に位置する市で、人口は約50000人。鹽竈神社(塩竈神社)の門前町および水産港湾都市として発展してきました。

宮城県の4大漁港のひとつの塩釜港があり、水産業が盛ん。生マグロの水揚げ、蒲鉾など魚肉練り製品の生産、人口あたりの寿司屋店舗数は日本一多いとされています。

「しおがま」という地名は「塩竈」「塩釜」「鹽竈」と様々に表記されてきましたが、市は1941年の市制施行より表記を「塩竈」に統一し、公用文では「塩竃」を用いることになっています。これは、鹽竈神社に市名が由来することから「竈」を使い、さらに「鹽」を常用漢字の字体に置き換えて「塩竈」を市名としたものです。
しかし「塩竈」と「塩釜」の両方を使用することが認められており、組織や団体の名称にも両方の表記が混在しています。市内の施設でも塩釜駅や塩釜郵便局、塩釜高等学校などに「塩釜」の表記が見られ、県や国の機関も多くが「塩釜」の表記を使用しています。

Argon Brewingで飲むはずが…

塩竃市に入って本塩釜駅近くのホテルに車を停めたのは午後5時半。
塩竃市に宿泊することにしたのは、昨年末に行ったArgon Brewing(アルゴンブリューイング)のタップルームでゆっくりと飲むことを考えたからです。
Argon Brewingは、本塩釜駅から徒歩数分のところに醸造所があり、タップルームも併設されています。タップルームでは常時5種類程度の自家製ビールを提供しており、ビールに合うおつまみやつまみも楽しめます。
ところが今回はホテルに到着してすぐに向かってみたのですが、残念ながら火曜日で普段の定休日ではなかったもののお店が開いていませんでした。
関係あるかどうかはわかりませんが、東北の太平洋側沿岸では、3月11日及びそれに近い日はお休みが普段と違う施設があります。途中で寄ってきた東日本大震災・原子力災害伝承館も、火曜は本来休館日ですが臨時開館をしていました。逆に小さなお店では、都合により営業を短縮やお休みするという張り紙も見かけることがあります。
残念でしたが、また別の機会に訪問したいと思います。

以前訪問した時のArgon Brewing(2025年12月撮影)

◎Argon Brewing
所在地: 宮城県塩竈市海岸通10-8
営業時間:火~金 17:00-24:00・土日 15:00-24:00 (月曜定休)
アクセス 本塩釜駅から徒歩約3分

本塩釜駅から仙台駅までは電車で約30分ほど。決して遠くはありませんが、この日は長距離運転をしてきたこともあり飲みにいくことは断念。塩釜のホテルでビールを飲むことにしました。

塩竃ビール

塩竃には限定のSHIOGAMA BEERもあります。こちらは、塩竃市で揚げかまぼこやおでんセットの製造販売を行っている阿部善商店が販売しているビールで、岩手県一関市の世嬉の一酒造で造られています。塩釜産の塩を醸造過程で加え、ホップと麦芽をふんだんに使用し、ビター感とコクを追求しています。
ラベルは塩釜の港をイメージしたブルーを基調にして、毎年開催される塩竈みなと祭で神輿をのせて海上を巡幸する御座船「鳳凰丸」があしらわれています。

アルコール分6%。「塩釜の名産である海の幸や寿司、かまぼこに合うエールタイプのビール」とのことですが、ラベルの味の特徴にあるとおり、苦味がかなり強く感じられました。コクもあるので、スパイシーな料理や味の濃い料理に合わせても面白いビールだと思います。

翌日は午後に岩手県入りを目指して、さらに北上していきます。

*日付の記載がない写真は、全て2026年3月に撮影しています

Argon Brewing双葉町塩竃ビール塩竃市東日本大震災・原子力災害伝承館

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事も経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。