一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

【スペシャルトーク】後編 〜ザーツホップを愛するキーパーソン〜 Bohemia Hop代表ズデニェク・ロサ氏 × ハーヴェスト・ムーン マスターブルワー園田智子氏

2026年5月某日に開催した、チェコ産ホップを世界に届けるBohemia Hop代表のZdeněk Rosa(ズデニェク・ロサ)氏と、千葉・舞浜イクスピアリⓇ「舞浜地ビール工房 ハーヴェスト・ムーン」マスターブルワーの園田智子氏とのスペシャルトークの後編をお届けする。前編では、2022年の「ワールドビアカップⓇ」で金賞を受賞した「ピルスナー」での乾杯に始まり、二人のつながりから、チェコビールの現在の動向やチェコ産ホップの開発なども紹介。そして、新たな品種、ザーツ・コンフォートをたっぷりと使って仕込んだ園田さんの記念ビール「T LAGER」での乾杯までをお届けしたーーー更なる、チェコ、ホップ、ビールの「今」と「これから」は?
(進行:ビアジャーナリスト/ライター 宮原佐研子)

スペシャルトークの前編は以下よりご覧いただけます。
【スペシャルトーク】前編 〜ザーツホップを愛するキーパーソン〜 Bohemia Hop代表ズデニェク・ロサ氏 × ハーヴェスト・ムーン マスターブルワー園田智子氏

ザーツ・コンフォートをたっぷり使った記念ビール「T LAGER」

(前編からの続き)
園田氏:ぜひ、「T LAGER」を味わってください!それでは、乾杯!!
ロサ氏:Na zdraví!(ナ・ズドラヴィー!/乾杯!)

T LAGERで乾杯!右はBohemia Hop Commercial DirectorのVladimír Šeretka氏


―――ロサさん、お飲みになられた感想はいかがでしょうか?
ロサ氏:ひと口目は柔らかい甘さを感じますが、次第に程よい苦味も現れて、まさにパーフェクトな味わいですね。
園田氏:ありがとうございます!ザーツ・コンフォートの魅力を、ホップティーのように楽しんでもらいつつ、何杯も何杯も、ドリンカブルに飲んでもらえるビールに、と仕上げました。

「T LAGER」
リリース:2026.3
ABV 4.5%
あの日みたチェコのホップ畑で、そよ風に優しく揺れるホップ。時は流れ、さまざまな積み重ねを経てきたけれど、穏やかに、いつの時代でも色褪せない“想い”を、冠した「T」に込めた、園田さんにとっての節目のビール。

〔ラベルデザイン〕
ラベルデザインは、園田さんがイメージをデザイン担当者に伝え出来上がったもの。ライトブルーの色は、ジャテツを訪れた時に見上げた青空、その下のブルーのラインは舞浜にあるブルワリーのそばの海をイメージし、ライトグリーンはホップの色、そしてオレンジはジャテツの大地の赤土を表現している。「T」は、Thank you(ありがとう)、Try(挑戦)、Tommorow(明日)…など、前向きな気持ちを表現する英単語の頭文字。みなさんのなかにある「T」を探してほしいという意味を込めている。

ラベルデザインに込められた園田さんの想いも聞き、思わず笑顔に

ロサ氏推薦!チェコで訪れたいローカル情報

―――日本のビールファンにぜひ訪れてほしい、ロサさんのおすすめスポットをぜひ教えてください。

和やかなトークセッションは、2杯目のT LAGERでさらに話も弾む


ロサ氏:ぜひとも、Žatec(ジャテツ)にいらしてください。プラハの西にあるジャテツは、2023年に「ジャテツとザーツ・ホップの景観」でユネスコ世界遺産に登録され、5〜7月ならその雄大なホップ畑の景観を楽しむことができます。そして、一番のおすすめは毎年9月に開催される、ホップ収穫祭「ドチェスナー(Dočesná)」です。このイベントには50以上の醸造所が自慢のビールを提供し、素晴らしい音楽なども楽しむことができます。もちろん、それ以外の時期でも、Hop Museum(ホップ博物館)や、Temple of Beer and Hops(ビールとホップの殿堂)、地元醸造所の博物館MUZEUM PIVOVARNICTVÍ ŽATECKAなどを訪れれば、いつでもホップとビールの豊かな歴史について学ぶことができます。

園田氏が着用しているTシャツは「BOHEMIA HOP」のもので、ロサ氏からのプレゼント


園田氏:私も4年前のツアーに参加したときに、Hop Museumに行きましたが、想像以上に大規模で、展示内容もとても面白かったので、もう一度訪問したいと思っています。
ロサ氏:私がジャテツでお気に入りのクラフトビール醸造所はPioneer Beerです。チェコ産のホップ品種(ザーツ、スラデク、ザーツ・シャイン、ザーツ・コンフォート)をベースにしたチェコ産ラガービールや、その他多くの新しいスタイルのビールを提供しています。他にも、Minipivovar U Orloje ŽatecŽatecký pivovarの2つの醸造所があり、おいしいチェコ料理も提供するレストラン「Restaurace & pivovar U Orloje」 ※4でこれらのビールを味わうことができます。
※4 提供ビールの最新情報はレストラン公式HP他でご確認ください。

ジャテツにはこの他にも、パブ兼宿泊施設のOblouk ※5というパブもありますよ、とロサ氏


※5 h Oblouk
ロサ氏:そして、ビールファンなら外せないのは、チェコ西部のピルスナー発祥の地、Plzeň(プルゼニュ(ピルゼン))です。Plzeňský Prazdrojのほか、Velkopopovický Kozel(ヴェルコポポヴィツキー・コゼル)Bernard(ベルナルド)などの醸造所でもツアーも実施していますし、素晴らしいビール体験ができます。また、南部の都市České Budějovice(チェスケー・ブディェヨヴィツェ)にある国営のBudějovický Budvarではザーツホップをペレットではなくホールのリーフで使って醸造しているので、ぜひ現地で味わってみてほしいです。また、首都Praha(プラハ)には、U Pinkasů(ウ・ピンカス)U Zlatého Tygra(ウ・ズラテーホ・ティグラ/黄金の虎)といった有名なパブや、U Fleků(ウ・フレク)Strahovský Klášter(ストラホフスキー・クラシュテル)Břevnovský Klášter(ブレヴノフスキー・クラシュテル)などの醸造所もあります。
園田氏:4年前にピルゼンを訪れたときは、ウルケルの訪問に合わせて、その奥にあるPivovar Elektrárna(ピヴォヴァ・エレクトラルナ)というクラフトビールの醸造所にも行きました。
ロサ氏:そこはブルワリー名にもなっていますが、元々発電所だった場所を改装してできたブルワリーで、ちょうどあの頃できたばかりでしたね。

チェコ訪問時の記憶も蘇り、改めてチェコ訪問を計画中の園田さん

今、聞きたい!園田氏からロサ氏、ロサ氏から園田氏へ

―――この機会にお互いに聞いてみたいことを、直接質問いただいてもよろしいでしょうか?まずは、園田さんからお願いします。
園田氏:まずは、ザーツホップの持つフローラルなアロマは本当に素晴らしく、そんなホップを私たちに届けてくださるロサさんやチェコの皆さんをリスペクトしていることを、感謝と共にお伝えします。そして、そのアロマをよりもっと最大限に生かしたいと考えているのですが、できればドライホッピング以外の方法で、たとえば酵母の選び方とか工程での温度など、アドバイスいただけたら嬉しいです。

ビールの品質管理を厳格にしつつ、ホップの魅力をより活かす方法を模索する努力は続ける園田氏


ロサ氏:まずは2つの方法があると思います。1つ目は煮沸後、80°Cくらいまで温度が下がった段階でホップの追加投入する、または冷却後にドライホッピングすることも効果的です。チェコ国内では以前はドライホッピングはしていませんでしたが、最近は実施しているところも増えています。また、酵母に関しては、チェコの大手のブルワリーではそれぞれ独自培養した酵母を使い、スタイルごとに適した酵母を選んで醸造しているので、ザーツホップのアロマを生かしているビールに使われる酵母を入手する、というのも1つの方法かもしれません。ちなみに、チェコのブルワリーは、酵母を何度も再利用するところはほとんどなく、そんな方法も効果があるかもしれません。また、ザーツをベースにして、そのザーツをルーツとして品種開発したホップ、例えばザーツ・シャイン ※6をアロマホップに使うなどすることで、求めるアロマの効果が現れるかもしれません。
園田氏:ありがとうございます。色々と研究、挑戦したいと思います。
※6 ザーツ・シャインは豊かで繊細なホップの香りを持ち、際立ったフルーティーで柑橘系の香りに続き、バランスの取れたハーブ、フローラル、スパイシーな香りが後味に残るホップ

―――それではロサさんから園田さんへのご質問はいかがでしょうか?
ロサ氏:園田さんは、自分が経験してきた知見を周りへ惜しみなく伝え導く活動も続けていて、まさに“マスターブルワー”としての役割を担っている方だと思っています。そんな園田さんは、なぜチェコスタイルのピルスナー造りを続けているのでしょうか?

”チェコのビール文化”はチェコの無形文化遺産として登録 ※7されており、今後ユネスコ世界遺産リストへの登録申請も目指しています、と話すROSA氏


※7 チェコ文化省HP「Nemateriální kulturní dědictví České republiky(チェコ共和国の無形文化遺産)

園田氏:私たちのブルワリーでは設備的にダブルデコクションはできないので、伝統的なチェコスタイルのピルスナーは造れないのですが、ハーヴェスト・ムーンのピルスナーを造るきっかけになったのは、開業前に訪れたチェコで飲んだ中でも、無濾過のウルケルに感動したことだったと思います。私は基本的には、苦味がさほど強くない、優しい味わいのビールが好きで、チェコスタイルのラガーは全体的に私のイメージにぴったりで、その印象を生かしつつ、私たちのピルスナーを誕生させました。そして改めて、4年前にチェコを再訪したときにチェコスタイルのラガーのおいしさを再認識したことで、もっとザーツや、新たなザーツの品種を使ったビールを造りたいという思いがつのり、この記念のビール「T LAGER」を造ることとなりました。その後も、クラフトビアマーケット大手町店の10周年記念「ザ・ピルスナー」でもザーツ・コンフォートを使ったホップの香りを軽やかに楽しめるビールを造らせていただきましたし、今後もいろんなバリエーションでザーツホップの魅力を活かすビールを造っていこうと思っています。

ザーツホップの近未来は始まっている

またの再会を約束して、笑顔の握手


「チェコはアロマホップが育てやすい土壌なのです」とロサ氏。ヨーロッパの伝統的なホップ品種の一つであるザーツホップは、ハラタウ(ドイツ・バイエルン州)、テトナング(ドイツ・ヴュルテンベルク州)、ルベルスキ(ポーランド・ルブリン)などと並び、その名が原産地や地域に由来することから「在来種」と呼ばれるホップだ。
「ザーツホップはどんなビアスタイルにも使うことができる」とBrewer’s Associationを創設したCharlie Papazian(チャーリー・パパジアン)氏も評価したザーツホップのアロマは、ハーブやスパイス、フローラルの香りが複雑に絡み合い、時にフルーティやシトラス、ウッディな香りが顔をのぞかせる…それはチェコの大地だからこそ生まれる“テロワール”なのだ。そのアロマが、日本で数えるほどしかいないマスター・ビアジャッジであり国内トップクラスのブルワー園田智子氏の心を掴み、ときめかせ続けている。
ファインアロマホップとして産声をあげるザーツの新品種もこれからさらに開発される予定で、今回は紹介しきれないが、園田氏の次のザーツホップを使うビール構想もすでに進みつつあるそうだ。

それぞれのキーパーソンが込めるザーツホップへの愛が、この先のどんなホップやビールとなり、私たちの前に現れるのだろうかーーーその時を楽しみに待ちたい。

ザーツホップ愛の未来に向けて記念撮影@イクスピアリ「ロティズ・ハウス」エントランス

※文中に登場する限定醸造ビールは、記事公開時点では販売終了となっております。

Photo:忽滑谷なつみ(フォトグラファー)
会場協力:ハーヴェスト・ムーン ブルワリー隣設レストラン ロティズ・ハウス(イクスピアリ4F)

Bohemia Hopザーツホップチェコハーヴェスト・ムーン

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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宮原 佐研子

ビアジャーナリスト/ライター

ビアLover 宮原佐研子です。 ビールの大好きなトコロは、がぶがぶ飲める、喉ごし最高、大人の苦味、世界中でも昼間でも飲める、 果てしなくいろんな味わいがある、そしてぷはぁ〜っとなれる、コトです。
ライターとして、書籍『全国203ブルワリー集合!ビアEXPO公式本 日本のクラフトビール巡り』/書籍『園田智子のテッパンおつまみ』/雑誌『ビール王国』(ワイン王国)/『じゃらん酒旅BOOK』(リクルート)/『うまいビールの教科書』(宝島社)/『クラフトビールの図鑑』(マイナビ) など