【スペシャルトーク】前編 〜ザーツホップを愛するキーパーソン〜 Bohemia Hop代表ズデニェク・ロサ氏 × ハーヴェスト・ムーン マスターブルワー園田智子氏
2026年5月某日、来日中のチェコ産ホップを世界に届けるBohemia Hop代表のZdeněk Rosa(ズデニェク・ロサ)氏と、千葉・舞浜イクスピアリⓇ「舞浜地ビール工房 ハーヴェスト・ムーン」マスターブルワーの園田智子氏とのトークセッションが実現した。世界中のブルワーに愛され続ける「ザーツ」を中心にビールの魂“ホップ”を世界中に届ける協会代表ロサ氏と、2022年、ビールのオリンピックと称される「ワールドビアカップⓇ」でザーツホップを使ったビールで見事金賞を受賞した園田氏が、ハーヴェスト・ムーン ブルワリーの地”舞浜”で語りあうーーーチェコ、ホップ、ビールの「今」と「これから」とは?
(進行:ビアジャーナリスト/ライター 宮原佐研子)
人物紹介
Bohemia Hop代表/Chmelařství(フメラシュストヴィー)代表/Hop Growers Union of the Czech Republic(チェコホップ生産者組合)副代表 Zdeněk Rosa(ズデニェク・ロサ)氏
ホップ農家の出身で、過去30年近くにわたりチェコおよび世界のホップ産業に携わる。2009年以降、チェコ最大のホップ貿易会社であるBohemia Hop, a.s.と、チェコのホップ生産者協会Chmelařstvíの会長を務め、国際ホップ生産者会議では副会長および経済委員会の委員長として活躍。ホップ生産者組合の副会長として、世界各地の醸造会議でチェコのホップ産業の最新情報や研究プロジェクトについて定期的に発表を行う。趣味は、チームに所属もするサッカー、バスケットボールやウインタースポーツなど。一番の楽しみは、家族との旅行。
Bohemia Hop, a.s.
CHMELAŘSTVÍ, družstvo Žatec
Hop Growers Union of the Czech Republic(Svaz pestitelú chmele Ceské republiky)「舞浜地ビール工房 ハーヴェスト・ムーン」マスターブルワー 園田智子氏
1998年にビアテイスターの最高位資格「マスター・ビアジャッジ」を取得。ビール製造業務の傍ら、国内外でのビアコンペティションの審査員なども務める。2022年「ワールドビアカップⓇ2022」において、ドルトムンダー/エクスポートまたはジャーマンスタイルオクトーバーフェスト部門の金賞を受賞。書籍「世界一になったクラフトビール醸造家 園田智子のテッパンおつまみ」(ワイン王国)では得意の料理とビールのペアリングも紹介。
ハーヴェスト・ムーン ブルワリー
出会いから活躍が広がる
―――お二人の出会いはいつになるのでしょうか?
ロサ氏:2022年に在日チェコ大使館とチェコ農業省が主催した日本のブルワー向けチェコツアーに園田さんが参加してくれたことからじゃないでしょうか。
園田氏:たぶん初めてお会いしたのは、アメリカの Brewers Association(醸造者協会)が毎年主催するCraft Brewers Conference(世界最大級のブルワー向け国際会議&展示会)だったと思います。当初は遠くからロサさんのお顔を拝見するくらいでしたが、おっしゃるように、2022年のツアーに参加して以降は、色々な場所でお会いする機会が増えました。
―――ここ、ハーヴェスト・ムーン ブルワリーには、Bohemia Hopから寄贈のサインが飾られていますが、どんなことで贈られたのでしょうか?
ロサ氏:園田さんが造る「ピルスナー」が「ワールド・ビアカップⓇ」で金賞受賞したことへのお祝いです。私たちのザーツホップを使った「ピルスナー」が世界一に輝いたことは大変名誉なことであり、私たちからの表彰状として贈りました。これからも私たちとハーヴェスト・ムーン ブルワリーとの関係が続いていく思いも込めたプレゼントです。
―――ブルワリーの印象はいかがでしょうか?
ロサ氏:ここのブルワリーの素晴らしさとして、まず言いたいことは、ラガービールをきれいに造り続けていることだと思います。ラガービールは、醸造過程で何か失敗があった時、他のビアスタイルと違ってごまかしが効かない場合が多く、それだけに高い技術力が求められます。ここでは早くから高品質な「ピルスナー」を醸造し続けていて、それがラガービールの魅力を周囲の人たちへ伝えるきっかけとなっていると感じています。設備に銅製のタンクを導入していることもビール醸造にとって大変有意義で、それを丁寧に長く使い続けていることもとても素晴らしいと思います。
チェコビールの現在地
―――チェコといえばピルスナーの故郷であり、一人当たりのビール消費量が2024年まで32年間世界一(※1)という国と聞いています。世界では、現在160種以上のビアスタイルが生まれていて、日本でも、ビール=ラガービールという時代から、現在は多種多様なビールが醸造され、多様に楽しむ時代に変化していますが、最新のチェコのビール市場はどのような状況なのでしょうか?
※1 2024年 世界主要国のビール消費量(キリンビール株式会社ニュースリリース2025年12月22日)
ロサ氏:まずは、1842年、チェコ共和国でピルスナーが誕生したことは私たちにとって本当に誇らしく幸せなことです。その歴史を紡ぐ「Plzeňský Prazdroj(プルゼニュスキー・プラズドロイ社、ピルスナー・ウルケルを製造)」、そして、「Budějovický Budvar(ブディェヨヴィツキー・ブドヴァル社、ブドヴァイゼル・ブドヴァルを製造)」の2大ブルワリーを代表として、チェコ国内には、約40カ所の大規模ブルワリー、そして約520カ所の小規模(マイクロ)ブルワリーが存在していて、マイクロブルワリーの数は2025年ではほとんど増減していません。ビールの一人当たりの消費量は、現在も引き続き世界最高水準ですが、かつては一人当たり年間160リットル以上、2009年時点でも153リットルの実績でしたが、2025年は一人当たり127リットル(※2)と、チェコも減少傾向にあります。そして過去20年間でチェコ共和国におけるノンアルコールビールの消費量は着実に増加しています。醸造するビアスタイルは、依然としてピルスナーが主流ではありますが、多くのマイクロブルワリーがIPA、NEIPA、各種のエールなど、あらゆるスタイルのビール醸造に取り組んでいます。
※2 チェコ国内機関が算出したデータ。参考までに、2024年実績の日本の一人当たりのビール消費量は、33.7ℓ(※1データ(表3)2024 年 国別一人当たりビール消費量より)
―――新たなビアスタイルのチェコ産ビールの評判はいかがでしょうか?
ロサ氏:たとえば、コンテストなどで成功を収めているブルワリーは、Pivovar Volt、Pivovar Ládví Cobolis、Nachmelená Opice、Sibeeria、Zlatá Kráva、Zichovec、Pivovar Matuškaなどがあり、ぜひ味わってみてほしいです。彼らはIPAやペールエールなど多様なビアスタイルを造っていますが、原料にザーツなどチェコ産ホップをドライホップして使うなどで、海外で誕生したビアスタイルをチェコスタイルとして発展させています。また、チェコ産ホップを使ったノンアルコールビールもとても評判が良く、新規ファンの開拓となっていることは、とても喜ばしいことだと思っています。もちろん、チェコのスタンダードなビールは、ライトラガー(10°Plato ※3)やダークラガー、セミダークラガー、ストロングラガーもありますので、それぞれのライフスタイルの合わせたビールの楽しみ方が多様に広がっている状況です。
※3 チェコではアルコール度数ではなく、麦汁の濃度を示すプラート度(°Plato)を表記。一般的に、10°が約4%、12°が約5%のアルコール度数に相当し、10°、11°、12°が主流。10°はすっきり喉ごしが良いタイプが多い
★日本でも飲める!チェコのクラフトビール紹介
ロサ氏から紹介のクラフトブルワリーの中で、以下の2社は日本でも飲める機会があるので、ぜひチェックしたい。
Sibeeria
https://www.sibeeria.jp/(日本代理店)
https://www.japanbrewerscup.jp/sibeeria.html⭐︎
Pivovar Matuška
https://www.japanbrewerscup.jp/post_54.html⭐︎⭐︎ジャパンブルワーズカップ
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また、上述以外のチェコのクラフトビールブランドも、定期的に提供している。WHY BEER?(東京・代々木上原)https://whybeer.storeinfo.jp
https://www.instagram.com/whybeer.05/?hl=ja
チェコホップ最新情報
―――ザーツをはじめとするチェコ産ホップは、現在、何種類登録されているのでしょうか。また、最新開発品種の傾向や今後の開発のポイントはいかがでしょうか?
ロサ氏:現在登録されているのは31品種になります。登録品種の検索はこのサイトから確認いただけます。
https://ido.ukzuz.cz/ido/?lang=en#plant-variety-database
⭐︎Czech National Listを選択→Crop/Species欄に「Hop」と入力→Searchボタンを押す
世界の流れは、ビールスタイルの多様化、コスト削減圧力の高まり、持続可能性への要求の高まりなどが挙げられます。私たちの育種は、数年前から乾燥と高温ストレスへの耐性に重点を置いていて、ザーツに近い品種開発を中心に行なっています。チェコ産ホップのほとんどは、ラガーやピルスナータイプのビールに大いに適したアロマホップで、中でも最高級の品種となるザーツ・ファインアロマホップは、高貴でマイルドな苦味、アルファ酸とベータ酸の優れた比率、そしてホップオイルとポリフェノールの独特な組成が特徴です。これらの特性は、飲みやすさに優れたプレミアム品質のラガービールを醸造する上で非常に重要です。
ロサ氏:Saazから派生した新品種、Saaz Late(ザーツ・レイト)、Saaz Brilliant(ザーツ・ブリリアント)、そして最新のSaaz Shine(ザーツ・シャイン)やSaaz Comfort(ザーツ・コンフォート)は乾燥や高温ストレスに強い品種となっています。その他、Sládek(スラーデク)やPremiant(プレミアント)など、収量が高く安定していてアルファ酸含有量が高いアロマホップも数多く生み出しています。また、ビター種であるAgnus(アグヌス)や、Cascade(カスケード)に近い柑橘系の香りを持つフレーバーホップのKazbek(カズベク)もあります。また、チェコのジャテツにあるホップ研究所の育種からは、Saturn(サターン)、Ceres(セレス)、Eris(エリス)、Pluto(プルート)、Uran(ウラーン)などの惑星シリーズという、新しいチェコ産のフレーバー品種も誕生しています。
―――惑星シリーズのネーミングには何か意味があるのでしょうか?
ロサ氏:ザーツホップの系統は、まさにチェコの伝統から生まれたシリーズですが、惑星シリーズのホップは、外国産のホップをルーツに持つ品種です。そこで、チェコを”地球”として、それ以外を“宇宙”と称して名前をつけています。
―――園田さんは、チェコ産ホップについてどんな思いを持っていらっしゃいますか?
園田氏:私のザーツホップとの出会いは、もう30年くらい前となりますが、ブルワリーの開業準備の頃に初めて訪れたチェコで様々なビールを飲んだ時、ビールから香りたつノーブルでフローラルなホップのアロマに感動し、すっかり魅了されました。それをきっかけに、私たちは開業の時からザーツホップを使ってビールを醸造することになったのです。そして、ブルワリーの定番ビール「ピルスナー」が世界一に選ばれたことは、本当に心の底から嬉しい出来事でした。2025年夏には、スワンレイクビールさんの28周年記念としてコラボさせていただいた「Classy Pilsener」に、ザーツ・シャインをたっぷりと使って醸造しましたし、今年3月にリリースした「T LAGER」は、私自身のブルワーとしての想いを表現するために、ザーツ・コンフォートを選び、ビールを造り上げました。
ザーツ・コンフォートをたっぷり使った記念ビール「T LAGER」
園田氏:ぜひ、「T LAGER」を味わってください!それでは、乾杯!!
ロサ氏:Na zdraví!(乾杯!)
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スペシャルトークの続きは、<後編>ご覧ください。(2026年7月3日6:00am公開予定)
後編では、「T LAGER」を味わったロサ氏の感想、そして、ロサ氏がおすすめするチェコで訪れたい現地情報、ロサ氏と園田氏がお互いに「今」聞いてみたいことなど、の話題が続きます!
※文中に登場する限定醸造ビールは、記事公開時点では販売終了となっております。
Photo:忽滑谷なつみ(フォトグラファー)
会場協力:ハーヴェスト・ムーン ブルワリー隣設レストラン ロティズ・ハウス(イクスピアリ4F)
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。


















