アンドレに飲ませたいビールは何ですか? 名作漫画から妄想する3本のビール【JBJAChannel】
ビールに愛された皆さまへ。
「この人にビールを1本渡せるとしたら、何を選ぶ?」
ビール好きが集まれば、そんな妄想だけでも結構な時間、飲めてしまいます。
今回、MC川端ジェーンとプロデューサーMJがビールを選んだ相手は、なんと日本少女漫画界の名作中の名作、池田理代子氏の『ベルサイユのばら』に登場するアンドレ・グランディエ。
フランス革命前夜の18世紀フランスを舞台に、貴族の娘として生まれながら男性として育てられたオスカル、王妃マリー・アントワネット、フェルゼン、そして平民のアンドレたちの人生を描いた作品です。1972年に「週刊マーガレット」で連載が始まり、その後は宝塚歌劇、テレビアニメなどにも展開。2025年には新作劇場アニメも公開されました。
そんなアンドレに、
「これを飲ませたい!」
と二人が持ち寄ったビールは3本。
そこから始まったのは、ビールの話なのか、歴史の話なのか、それともただの妄想なのか。
今回は少々、いや、かなり想像の翼を広げてみましょう。

目次
川端ジェーンが夢見る「もうひとつのアンドレの人生」
まず、MC川端ジェーンが選んだのは、ベルギーのトラピストビール「シメイ レッド」。
シメイ レッドはアルコール度数7%。現在のシメイのラインナップの中でも、その歴史の出発点となったビールです。
もちろん、『ベルサイユのばら』の時代にシメイを飲むことはできません。
スクールモン修道院が建設されたのは1850年、シメイで最初のビールが醸造されたのは1862年。アンドレたちの生きた時代より、ずっと後のことです。
ですから、ここから先は完全なる妄想。
もし、時空を超えてアンドレに現代のビールを届けられたら――。
多くのアンドレファンが、一度くらい夢見たことがあるのではないでしょうか。
もし彼が、叶わぬ恋に身を焦がすことなく、身分の近い女性と恋をして結婚し、田舎で静かな家庭を築いていたら。
もちろん、そんなアンドレでは『ベルサイユのばら』の物語は成立しません。
それでも、「男として」というより、ひとりの人間として、穏やかな生を全うする彼を見てみたかった。
そんな願いを胸のどこかに持っているファンもいるのではないでしょうか。
今夜はウサギのシチュー。シメイ レッドを食卓へ
想像するのは、森に囲まれた農村です。
農作業のかたわら、森へ狩りに出る日もあるでしょう。

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ある夕方、アンドレが丸々としたウサギを手に帰ってきます。
「お父さん、おかえり!」
子どもたちが駆け寄ります。今日はごちそうです。
妻はそのウサギを煮込み料理にします。そして、そこへ使いたいのがシメイ レッド。
これは史実の再現でも、実在する郷土料理の紹介でもありません。あくまで私たちが思い描く「アンドレのもうひとつの食卓」です。
赤褐色のシメイ レッドを煮込みに加えたウサギのシチュー。大きな鍋を家族で囲み、子どもたちと老いた両親も一緒に食べる。
「今日はウサギのお肉だね!」
そんな声が聞こえてきそうです。
豪華な晩餐ではありません。

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けれど、暖炉には火があり、食卓には温かい料理があり、そこには家族がいる。
アンドレにそんな夜があったなら――。
それだけで、ちょっと泣けてきませんか。
みんなが寝たあとに開ける、シメイ ブルー
食事が終わり、子どもたちも両親もベッドへ。
暖炉の火だけが残った静かな部屋で、アンドレがもう1本開けます。
ここで2本目。
シメイ ブルーです。
アルコール度数9%。濃い色合いを持つ、じっくりと時間をかけて味わいたいビールです。
一口含んで、ゆっくり味わっていると、妻が台所から戻ってきます。

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「あなた、お酒ばっかりじゃなくて。チーズも残っているから、これも食べてね」
「お前も一緒に飲むか?」
「うふふ。じゃあ、少しだけいただくわ」
二人で1本を分ける。
子どもたちの成長のこと。親戚の結婚。近所の農家が新しく手に入れた道具のこと。明日は何をしようか。
そんな、歴史書には絶対に残らない話をしながら夜が更けていきます。

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英雄にならなくてもいい。歴史に名前が残らなくてもいい。
こんな人生も、彼にはあってよかったんじゃないかな。
そんなことを考えながら飲むシメイ ブルーです。
MJがアンドレに渡したいのは、宮崎ひでじビール「栗黒」
さて、一方。
プロデューサーMJが選んだのは、日本のビールです。
宮崎ひでじビールの
「栗黒 KURI KURO Dark Chestnut Ale」。

宮崎県産の栗を副原料に使い、ローストバーレイと栗ペーストから、コーヒーを思わせる香ばしさ、栗の上品な香り、重厚なコクを生み出したフレーバードスタウト。アルコール度数は9%、IBU15。醸造所では10~18℃前後を飲み頃として案内しています。
日々のおつとめに疲れたアンドレも、これをゆっくり口に含めば、少し肩の力を抜くことができるでしょう。
もちろん、愛するオスカルと一緒に召し上がっていただいても。
9%ありますからね。二人でゆっくりどうぞ。きっと甘い夜になることでしょう。
なぜ「栗黒」なのか。栗は庶民の命を支えた
しかし、MJが栗黒を選んだ理由は、味わいだけではありません。
ここから少し、18世紀フランスの食文化へ寄り道します。
フランス南東部のアルデシュやセヴェンヌのような山岳地域では、急斜面や厳しい土地の条件から、平地のように十分な穀物を生産することが難しい地域がありました。
そこで人々の命を支えたもののひとつが、栗――フランス語で châtaigne(シャテーニュ) です。
セヴェンヌでは栗の木が「arbre à pain」、つまり「パンの木」と呼ばれてきました。栗はそのまま食べるだけでなく、乾燥させ、保存し、粉にして利用することもできます。現在もこの地方には、栗を乾燥させる「clède(クレード)」などと呼ばれる石造りの乾燥小屋の文化が残っています。
栗は、単なる秋の味覚ではありませんでした。
山で暮らす人たちにとっての重要な栄養素・炭水化物だったのです。
栗で「税金」を払っていた?

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さらに驚くのは、栗が現物による支払いにも使われていたことです。
アルデシュの歴史資料には、1313年のレ・ヴァンで商品の登録に関する権利が小麦、塩、栗で支払われていたこと、1336年のテュエでは乾燥栗が領主への cens、つまり土地にかかわる賦課の支払いに使われていたことが記されています。
1338年のグラヴィエールでは、教会への十分の一税が生栗または乾燥栗で納められていたという記録まで残っています。
つまり、「栗がお金だった」と言ってしまうと少し乱暴ですが、
栗には、税や地代を現物で支払えるほど明確な経済的価値があった。
これは間違いありません。
17~18世紀にはアルデシュの栗林がさらに拡大し、山地で作った栗と、そこで生産しにくい穀物などを交換する交易も発達していきました。
一粒の栗には、その土地で生きる庶民の暮らしそのものが詰まっていたのです。
ちなみに日本でも、縄文時代の三内丸山遺跡から大量のクリが出土しており、DNA分析から人為的な栽培の可能性が指摘されています。
遠く離れた日本とヨーロッパで、人々が栗という高エネルギーの木の実を利用してきたことを考えると、なんとも興味深いものがあります。
そして貴族の栗は「食べる宝石」へ
ところが同じ栗でも、宮廷の世界へ目を向けると、見える景色はまるで違います。
ここで登場するのがマロングラッセ。
大粒の栗を壊さないように扱いながら、時間をかけて糖蜜を染み込ませ、表面を美しく糖衣で覆う。
まさに「食べる宝石」です。
マロングラッセの発祥についてはフランス説、イタリア説などがあり、「ルイ14世の宮廷で発明された」と単純に断定することはできません。
ただ、ルイ14世の時代には砂糖菓子や果実の糖漬けなど高度な菓子文化が発達し、後世の資料でもマロングラッセとルイ14世を結びつける逸話が伝えられています。

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ここが面白いところです。
山の農民にとっては、冬を越すための食糧であり、地代にもなる栗。
一方で、洗練された菓子文化の中では、手間と砂糖を惜しみなく使った贅沢品になる栗。
同じ栗なのです。
一粒の栗をアンドレに渡したら
そう考えると、栗黒をアンドレに飲ませてみたくなります。
『ベルサイユのばら』の公式な紹介でも、アンドレはオスカルの「従者で幼なじみの平民」とされています。
庶民の出自でありながら、暮らす場所は貴族の屋敷。

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愛した人もまた、貴族。
すぐそばにいるのに、そこには生まれによって決められた境界線がある。
そんな彼の手のひらに、一粒の栗を置いてみます。
庶民の命を支えた栗。
領主への支払いにも使われた栗。
砂糖と手間を惜しみなく使えば、宮廷文化を象徴するような菓子にもなる栗。
そして二百年以上の時を越えた日本で、その栗が今度はアルコール度数9%の黒いビールになっている。
アンドレが栗黒を口にしたら、どんな顔をするでしょう。
香ばしいロースト感。栗の柔らかな香り。重厚な甘みとコク。
一口、もう一口。少し酔ってきたところで、隣にいるオスカルにもグラスを差し出すのでしょうか。
……まあ、最後には二人の想いは――。
おっと。これ以上はやめておきましょう。
ビールは「妄想」で飲んでも面白い
シメイ レッド。
シメイ ブルー。
そして、宮崎ひでじビールの栗黒。
時代も国も異なる3本です。
もちろん、18世紀のアンドレに実際にこれらを飲ませることなどできません。
でも、ビールの楽しみ方は、正しいテイスティングコメントを並べることだけではないと思うのです。
この香りなら、あの料理と合わせたい。
このビールなら、あの場所で飲みたい。
そして、この1本を、あの人に飲ませてみたい。
そこからビールの原料や土地、歴史を調べていくと、思いもよらなかった世界につながることがあります。
今回、栗黒からたどり着いた先には、中世から近世フランスの山村で人々の命を支えた栗がありました。
たかが妄想、されど妄想。
一本のビールから、時代も国境も、現実とフィクションの境界さえも飛び越えてみる。そんな飲み方があってもいいでしょう。
皆さまなら、アンドレにどんなビールを用意しますか?
そして、次はどんな作品の、どんな登場人物にビールを捧げましょうか。
ビールを片手に、ぜひ一緒に妄想してみてください。
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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









