[テイスティング]2014.5.27

ビアポエム(9)デュベル・トリペルホップ2014

3という数は安定や調和を表すモチーフとしてしばしば登場する。キリスト教の三位一体、仏教では三昧(ざんまい)や三宝(さんぽう)、体操では三点倒立、そしてビールの王冠のギザギザは3の倍数である21個だ。そんなありがたい数字を担ぎだしてくるためだったのかはともかく、3種のホップを使ったベルギービールが今年もやってきた。

Duvel Tripel Hop 2014

Duvel Tripel Hop 2014

デュベル(Duvel)はご存知、デュベル・モルトガット社の看板ビールであり、非常に美しい色をしたベルジャン・ストロング・ゴールデンエールである。アルコール度数も高く、舌にガツンとくる味わいが印象的な魔性のビールだ。
このデュベルは、2007年からトリペルホップというシリーズを醸造している(2007、2010、2012、2013、2014の5年)。トリペルホップとは、通常のデュベルで使用する2種のホップ(ザーツ、スティリアン・ゴールディング)に、もう1種ホップを追加して、よりホッピーに仕立てたものである。また、ホップの投入タイミングも、煮沸工程で投入するものから、ドライ・ホップ(煮沸終了後にホップを投入。アロマの成分が揮発しにくく、香りづけの効果が高い)まで、段階的に行われており、ホップのいいところを余すところなくビールに移している。

昨年(2013)は第3のホップとして日本原産のソラチエースが使われた(2007年と2010年はアマリロ、2012年はシトラ)こともあり、国内でも話題となった記憶がある。そして今年(2014)はモザイクというアメリカのホップが第3のホップに選ばれた。ソラチエースを用いた2012はレモングラスのような風味が爽やかだったが、今年はいかに?

・・・tasting
モザイクホップをドライ・ホップした2014年のトリプルホップ。
モヒートのような清涼感のある香り。よく見るとボディの色も黄金にグリーンが入っている。飲んでまず感じるのはレモンとミントの風味。集中力が高まりそうだ。そのあとを追いかける2つのホップはザーツとスティリアン・ゴールディング。けれどもさらに後方からは、モザイクホップの柑橘の香りがハイスピードで追いついて瞬く間に抜き去る。味の移り変わりが素早く、爽快。オリジナルのデュベルが持つスパイシーな味わいも感じられる。舌の上でシュワシュワと音を立てて現れ、余韻になってまた再会できる。味わいにはインパクトがあるが、アルコール9.5%を感じさせない軽さはデュベルの技術の高さの証拠だろう。温度が上がるとマンゴーのようなフルーティさも強くなる。黄緑色の悪魔を五感で感じてほしい。

2014年版には独特の酸味も感じられ、これまでのトリペルホップともまた違う雰囲気。気温が高くなるこの季節にとてもマッチする春の贈り物だ。

ベルギービール

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

ニシバヤシ タツマ

ビアジャーナリスト/びあけん1級(2013,2015)

大学時代に自転車旅行でビールのうまさを知る。ほどなくしてベルギービールにカルチャーショックを受け、 世界のビールの虜に。ビールは大人の趣味の1つ。その一期一会を記事やビアポエムとして伝えていきたい。

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