[テイスティング,ブルワー]2025.8.28

【東北で出会うビールの世界⑳】大曲駅からすぐ! 居心地のいい空間でビールが飲めるあきたブリューイングカンパニー

秋田県大仙市の中心部にあたる大曲と聞くと、何が思い浮かぶでしょうか?

大仙市と大曲

大仙市は秋田県南東部に位置する市で、2005年に、大曲仙北地域の8市町村が合併し誕生した市です。人口は約71000人で秋田県内では秋田市、横手市についで第3位の人口規模。市名の「大仙」の由来は、大曲市と仙北郡のそれぞれの頭文字を取ったものです。
広範囲にわたって位置しているため、1つの市ですがさまざまな文化や自然を見せています。大曲地域は市の中心部で大仙市役所の本庁や国・県の各行政出先機関が置かれています。その他の地域には広い穀倉地帯、原生自然、なだらかな丘陵と森などが広がっています。

大曲の花火

大曲で最も有名なのは「大曲の花火」として知られる全国花火競技大会です。

全国花火競技大会は、秋田県大仙市の雄物川河川敷運動公園において例年8月最終土曜日に開催される花火大会。開催地である大仙市がかつて大曲市であったことから、一般に「大曲の花火」として知られています。今年は、明後日8月30日の開催です。
1910年に諏訪神社の祭典の余興として開催された「奥羽六県煙火共進会」から始まり、1915年によりレベルの高いものを目指し全国花火競技大会と名前を変え規模を全国に広げた、100年以上の歴史を誇る日本最高峰の花火競技大会で「日本三大花火大会」かつ「日本三大競技花火大会」のひとつです。
選抜された各社が3部門での総合評価によって総合優勝を競うという、花火師としての総合力を問う大会になっています。また、、会場対岸にある山に反射する音と花火観覧の邪魔になる光がないことも、この大会の自慢のひとつです。
また、4月には「春の章」を10月には「秋の章」も開催。季節ごとに異なるテーマで花火の魅力を堪能できるような花火大会を展開しています。

新幹線が方向転換する大曲駅

有名な花火大会ですが、私自身は大曲の花火は現地で見たことがないので、大曲と聞くと花火よりも大曲駅の秋田新幹線の折り返し運転のほうが具体的にイメージがわきます。
盛岡⇔秋田を結ぶ秋田新幹線は、盛岡駅から大曲駅までは田沢湖線、大曲駅から秋田駅までは奥羽本線を走行し、構造上、大曲駅で折り返しが必要になるため列車の進行方向が前後逆になります。

新幹線が方向転換を行うのは、全国でここだけです。この新幹線が逆向きで走る秋田⇔大曲の区間、何度載っても少し苦手です。

あきたブリューイングカンパニー

そんな大曲駅のホームからも見える建物で今年醸造を開始したのが「あきたブリューイングカンパニー(Akita Brewing Company・略称ABC)」。大仙市では初のクラフトビール醸造所です。

あきたブリューイングカンパニーへ向かう

大曲駅の東口を出て左手方向に歩くと、徒歩3分ほどでクラフトビールののぼりも見えてきます。「八嶋木材店」の表記がある建物が、現在はあきたブリューイングカンパニーになっています。


ビールとおつまみを提供予定のタップルームはまだ準備中ですが、金~日曜と祝日限定で量り売りを今年の5月から行っています。

ビールを飲む

醸造設備が見える手前でビールを注文します。

この日提供されていたビールは4種類、サイズはプラカップでもS(350ml)、M(470ml)、メガ(700ml)と3種類用意されていました。

ビールはタップルームを造っている場所にあるテーブルで飲むことができます。

私が最初に選んだのはヘバエール。アルコール分4%のブロンドエールで、気軽に味わえる1杯として「ヘバエール」と名付けたとのことです。豊かな風味が感じられますが、飲み口は爽やかなビールです。

次に頼んだのは、せせらぎサマーエール。アルコール分5.5%のスマッシュペールエールです。スマッシュ(SMaSH)とは、1種類のモルトと 1種類のホップで造られたビールのことを表す用語で、Single Malt and Single Hop」の略になります。
柑橘風味のある爽やかなペールエールで、暑い夏には特にピッタリ合う一杯でした。

最後に頼んだのはアンカーズチーム。アメリカの伝統的登山家で夢を追う姿が多くの人に夢と希望を与えているコンラッドアンカーに敬意を表して造られたビールです。アルコール分は5.1%。通常低温で発酵するラガー酵母をエール酵母並みの温度で発酵させて造るカリフォルニアコモンのアンバーエールです。
モルトの香ばしさがチョコレートを思わせる、ややどっしりとした味わいの〆にふさわしいビールでした。

地元の方が飲むクラフトビールに

訪問するまではタップルームがまだできていないと聞いていたので場所の確認を兼ねて1杯だけ飲んでみて次へ移動するつもりでしたが、あきたブリューイングカンパニーの森田さんからビールや大曲のエピソードなどを聞きながら、結局ゆったりと3杯飲んでしまいました。タップルームはまだできていませんが、つまめるようにおかきなどが置いてあり、手造り感あふれるとても居心地のいい空間でした。

車で来てテイクアウトしていく方だけでなく、近くの住宅街からふらっと夕食後にくる方もいらっしゃるそうです。クラフトビールに興味はあるけれどあえて遠くまでは飲みに行っていなかった地元の方がけっこういらっしゃるという話が、特に印象に残りました。身近にクラフトビールの醸造所があり美味しいビールが飲めれば、クラフトビール全体のファンを増やすことにつながっていくと私は常々思っていますが、早くもあきたブリューイングカンパニーは地域でそんな役割を果たしつつあるようです。
ちょうど向かいがレンタカー屋さんなので、車を返却した旅行者がその足で立ち寄ることもあるとのこと。秋田旅行でレンタカーを借りるビール好きな方は、週末ならば秋田駅周辺ではなく大曲駅で返却を考えてみたらいかがでしょうか。
タップルームの完成はまだ未定とのことですが、完成したらまた雰囲気も少し変わると思います、タップルーム完成も待ち遠しいですが、今ならではの雰囲気もぜひ感じに行ってみてくださいね。

◎あきたブリューイングカンパニー
所在地:秋田県大仙市大花町15-43F
営業時間(量り売り):金 17:00~20:00 土 13:00~20:00 日・祝 13:00~18:00
*営業時間は変わることがありますので、おでかけの際はInstagram(@akitabrewingcompany)の営業カレンダーをご確認ください

あきたブリューイング大仙市大曲秋田

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

アバター画像

この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

ストップ!20歳未満者の飲酒・飲酒運転。お酒は楽しく適量で。
妊娠中・授乳期の飲酒はやめましょう。