[コラム]2019.11.9

ビールが苦手だったベルギービール名誉騎士。「垣根を取り払い、もっと身近に楽しんでもらえる存在にしたい」【Beerに惹かれたものたち 16人目 BRUSSELS 藤田孝一氏】

Beerに惹かれたものたちBrusselsベルギービール藤田孝一氏

ベルギービール専門店を都内に5店舗と仙台に1店舗展開し、輸入・販売事業も手掛けている「BRUSSELS」。ブラッセルズと英語のスペル、読み方なのは、「ベルギービールの美味しさと楽しみ方を伝える場所は、開かれていたほうがよい」とのメッセージを込めて創業者である芳賀詔八郎(はがしょうはちろう)氏が名付けた。現在、ディレクターとして活躍する藤田孝一氏は2016年にベルギービール醸造所組合から「ベルギービール名誉騎士」を授与され、長く日本で普及に努めている。彼はなぜベルギービールの世界に惹かれたのか? これからどんなことを考えているのか? 話を聞いてきた。

異文化と人のつながりを楽しみ、飲み手の「美味しい」の一言にやりがいを感じる

「輸入をするときに意識していることは『人と会う』ことですね。取引をする以上、責任がありますから現地でビールを飲んで、可能な限りブルワリーを訪問して話をして決めています。インターネットのやり取りだけで、取引したところは大体失敗していますね(苦笑)。流行りものを入れて、「はい、終わり」という形ではなく、人とのつながりを大事にして、継続的に皆さんにビールを届けることを意識しています」。

輸入するビールを決めるときに意識していることを藤田氏はこう答える。

「新しい醸造所は、オープンな性格な人たちが多いですけど、昔からのところは文化的に閉鎖的な面や個性的なブルワリーもあります。ビールの取引や国内に入れる業務も心を開いてくれるまでは大変です。でも、そうしたところもやりがいに感じていますし、楽しいですよ」。

インポーターは、異文化や人間関係を楽しめる人が向いていると常々感じているが、藤田氏もその1人だ。

そして、自分が責任を持って仕入れたビールを大切にしている「BRUSSELS」各店舗に来てくれるお客さんが飲んで「美味しい」といってもらえることが、最もやりがいを感じるという。

ベルギービールとの出会いを振り返る藤田孝一氏

「でも、最近は若いスタッフも成長して邪魔になっちゃうから、イベント以外ではお店に出られてないんですけど……」と、直に接客できないことにちょっと寂しさもあるようだ。

ビールは好きじゃなかった。「BRUSSELS」との出会いでベルギービールの世界へ

そんな藤田氏がベルギービールに惹き込まれたのは今から20年ほど前にさかのぼる。以前、勤務していたアフリカ料理店で働いていた先輩が「カフェヒューガルデン(現 BRUSSELS BEER PROJECT SHINJUKU)」へ転職。「夏の繁忙期だけ手伝ってくれないか」と、アルバイトをすることになった。

「それまではビールは最初の1杯で、その後はワインやほかのお酒を飲んでいて、それほど好きではなかったんです。そのころは地ビールという言葉はありましたが、今ほど流通していなくて、専門店も少なく大手メーカーしか選択肢がありませんでした。当時の『カフェヒューガルデン』の店長さんがベルギービールに精通されている方で、飲みながらいろいろ教えてもらいました。飲んでいるうちに味や色合い、グラスの形、そしてビールの裏側にある文化的な物語がすごく興味深くてハマっていきましたね」。

最初はグラスの種類やフルーツビールの色合いに驚いたといい、「セゾン・デュポン」「オルヴァル」「カンティヨン・グース」など多種多様なベルギービールに衝撃を受け、その世界に魅了されていった。

藤田氏自身も思い入れのある「オルヴァル」。「BRUSSELS」各店舗では彼が目利きした素晴らしいビールが揃っている。

その後、「BRUSSELS神谷町店」がオープンする際に「マネージャーをやってみないか」と声をかけられる。「ベルギービールに興味をもっていましたし、お店の立ち上げも挑戦してみたい気持ちがありました」と入社。他店舗の担当や自社輸入の担当を経て、現在はディレクターとして活躍している。

ベルギービールという括りを外し、ビールという大きな輪にしたい

独創的で魅力的なビールが多くある一方、ビギナーには複雑さも感じさせるベルギービール。そんなとき藤田氏はどのように勧めているのだろうか。

「ベルギービールらしさが良くわかるビールですね。お客様の好みに合わせて様々なビールを揃えていますが、『BRUSSELS』でしたらベルジャン・ホワイトを勧めています。それ以外でしたら、セゾンやフルーツビールでしょうか。ランビックは、いきなりだと驚かれちゃうかもしれないので、少し後ですかね」。

ほかには瓶内2次熟成をさせるビールが多いので、熟成度で変化する味わいを体験してほしいという。「樽もありますが、この変化を楽しめるのがベルギービールの魅力でしょう。ブルワーも品質はボトルの方が高くなるといっています」。

熟成させて飲むのもベルギービールの楽しみ方の1つ。大瓶を複数人でシェアしながら飲む楽しさもある。

この奥深さからビールに興味をもつ人も多いベルギービール。ビールカテゴリーにおいて1つのジャンルとして確立している。しかし、ここに藤田氏は課題があるという。

「1個のジャンルとして括られ過ぎている印象があるんです。私自身、国内外のクラフトビールもよく飲みますが、それぞれの良さがあります。国とかで分けるのではなく、多くの方にクラフトビールという大きな輪で、もっと自由に飲めるようにしたいです」。

さらに「裾野を広げていけるように業界の人たちと連携して盛り上げていきたい」と、海外ビールを取り扱う会社や人が増えたにもかかわらず、飲めるお店が増えていない現状を変えていきたいと語る。

店舗の拡大、ボトルショップの展開、人材育成。やりたいことはたくさんある

ベルギービールを広めるものとして。「BRUSSELS」のディレクターとして。これからどんな構想をもっているのだろうか。

「ベルギーもクラフトビールのムーブメントが起きています。輸出が伸びていますし、委託醸造を含めて新しいブルワリーも増えて盛り上がりをみせています。アメリカの影響もあり、10年前はなかったIPAが目立つようになりました。伝統的なものや新しいものが入り混じっていて、外から見ていると面白いです。今のベルギービールシーンを伝えることも自分の役割だと思います」。

『BRUSSELS神楽坂店』では『サンフーヤン醸造所』でつくっているハウスエール(ブロンドエール)を飲むことができる。「ほかのブルワリーにも日本向けの商品を醸造してもらっています」。どんなビールかは実際にお店に行って確かめてほしい。

「新たなお店を展開してベルギービールを飲んでもらう機会を増やすことや外へ飲みに行けない方向けに自宅でゆっくり楽しめるようボトルショップも考えてみたいです。それとスタッフの教育も。自分が培ってきた知識を下の子たちに伝えていきたいですね。研修でベルギーにも連れていってあげたいんですよ」と、話してくれた。

話を聞くまで、まさかビールが苦手だったとは思わなかった。だからこそ身をもって魅力を伝えられるのだろう。「BRUSSELS」をはじめ、ビアバーや酒販店には彼が私たちに届けたいビールがたくさんある。興味をもった人は、ぜひ飲んでみてほしいし、「BRUSSELS」ではスタッフやアルバイトも募集しているので働きながら学んでみてはいかがだろうか。

これからも藤田氏がどんなビールで私たちを楽しませてくれるのか? 楽しみにしたい。

今回、お話を聞いたのは「BRUSSELS 神楽坂店」。カウンター席のほか、テーブル席もあり、1人でも大人数でも楽しめるお店だ。ボトルのストックは「BRUSSELS」随一とのこと。

◆藤田孝一氏が勤めるBRUSSELS株式会社

住所:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町20-1 渋谷インフォスタワー5階

TEL:代表03-5457-3400 輸入部03-5457-3410 (輸入部)

FAX:03-5457-3411

Homepage:https://www.brussels.co.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/brussels.jp/

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この記事を書いたひと

木暮 亮

ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは2000種類以上。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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●TBSラジオ「鈴木聖奈LIFE LAB~○○のおじ様たち~」
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●週刊プレイボーイ ●DIME
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●SUUMOジャーナル(https://suumo.jp/journal/2019/08/29/166678/)

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