[JBJA活動,コラム,ビアバー]2020.5.27

飲食店は、これからが正念場だ

緊急事態宣言の解除を受けて、地域によって差はあるものの、営業を自粛していた飲食店が営業を再開する姿も見られるようになってきた。特に、日々の売上が自分の生活に直結する個人店の経営者にとっては、慣れないテイクアウト営業を続けることや、各種助成金の入金を待つよりも、一日でも早く通常営業に戻してお客さんを迎えたいだろう。私も元飲食店経営者の一人として、早くこの事態の収束を願うばかりである。

ここで、飲食店経営者にとっては、今後の営業にあたって新たに考えなくてはならない大きな問題が二つある。

まず、客席数の減少についてである。先日、厚生労働省から発表された「新しい生活様式」の中では、「人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空ける」、食事に際しては「対面ではなく横並びで座ろう」とある。これらの事項に配慮すると、既存の飲食店は席数を大幅に減らしてレイアウトを変えなくてはならない。

飲食店の「売上」を分解すると「来客数×客単価」であり、さらに「来客数」を分解すると、「客席数×回転数」である(満席と仮定した場合)。客席数が減り、回転数と客単価が変わらないとすると、当然売上は減少してしまう。ただでさえ営業時間にも制限が生じている現状では、これは非常に痛い。

もう一つの大きな問題は、商圏人口の減少についてである。今回の事態でテレワークが広く浸透した結果、私たちのワークスタイルは大きく変化した。都心のビジネス街に立地する店舗では、周辺の昼間人口の減少に直面するのだ。仕事帰りに一杯という需要が失われていくわけである。それ以外の立地においても、わざわざ自宅での仕事を終えてから飲むために外出する人がそれほど多くいるとも思えない。

他にも、パーティションの設置や消毒用アルコールの費用、大皿ではなく小皿で個々に盛り付けて提供する手間など、今後の社会的な要請に応えるためのコストは少なくない。それぞれが少額だとしても、合計すると経営を圧迫する大きな負担になる。

これらの事柄から、今回の事態が収束した際にも、飲食店が以前と同様の売上と利益を上げ続けることは非常に厳しいと思われる。なんとか緊急事態宣言の期間を乗り切れたとしても、長期的には以前の利益を確保できないため、営業を継続していくことが困難な店が多数出てくる可能性も大きい。

しかし、飲食店が営業している限りは、私たちが店の売上に貢献するために、できることはたくさんあるのだ。

先に書いたとおり、売上の構成要素は「来客数×客単価」である。もし月に一度通っていた行きつけの店があれば、少し行く回数を増やしてみよう。月に二度はちょっときついから、二か月に三度くらいがちょうどいいだろう。仮に全てのお客さんがそうすることで、単純計算すれば店の売上は1.5倍になるのである。

しかし、以前より客席数が減っている店内は、すぐに満席になってしまうかもしれない。満席で入れなかったら、曜日や時間をずらして行ってみようではないか。週末は満席の店でも、月曜や火曜なら席が空いていることがある。あるいは、たまには仕事を早く切り上げて、開店直後の店に入ってみよう。清掃されたばかりのピカピカの店に一番乗りするのは気分の良いものである。

料理を注文する際には、いつもより一品多く注文してみよう。あれかこれかで迷ったら、思い切って両方食べてみよう。あるいは、その日のオススメは必ず注文してみよう。ビールも普段は飲まない銘柄を試してみよう。今までは自分好みの料理やビールだけで充分満足していたが、この際に新しいものにチャレンジしてみようではないか。きっと新しい発見があるはずだ。くどいようだが、店の売上は「来客数×客単価」である。みんながそうすることで客単価が1.2倍になれば、店の売上は1.2倍になる。

ひと通り料理とビールに満足して、周囲を見渡して満席だったり、入口で待っている人を見かけたりしたら、長居せずにさくっと帰ろうではないか。そうすれば次のお客さんのために席を空けることができ、客席の回転につながる。これが常連客の粋というものだ。席を譲ったのが新規のお客さんだったとしたら、その人が新たな常連客になるかもしれない。何度でも言おう、売上は掛け算だ。いつもは2回転の客席が3回転すれば、売上は1.5倍になるのだ。

昔の私の経験から断言するが、上記のような振る舞いで「店を支えよう」という気持ちを持ったお客さんは、間違いなく店員の記憶に残る。このような常連客の存在は、売上に貢献するだけではなく、店舗で働く人たちの心の支えにもなるのである。

飲食店はこれから正念場だ。私たちがそれぞれの行きつけの店を応援しつつ、お互いに幸せな時間をずっと過ごしていけるような、そんな関係を改めて築いていこうではないか。

(なお、飲食店を利用する際には、店舗ごとの感染防止策に協力すると同時に、各自が感染防止マナーを守ることも忘れずに!)

 

《「あのビアバー・ビアパブ」を救おう!》JBJA支援ページ
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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはスタウト。趣味は乗り鉄。

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